一つ目ゴブリン
異常進化って覚えてますか?(;-ω-)ハテ?
一つ目のゴブリンが恐ろしい形相で此方を睨んでいる。…木の陰に隠れても良いかな?
「一つ目?ホブゴブリンでもそんな情報は無い…まさか異常進化?」
「そ、そんな!?」
「……。(異常進化、確か通常ではありえない進化を遂げた奴の事で、前に大きな三つ目の狼の奴がそれだと言っていたな。コイツもそうなのか?)」
そんな俺達の考えを他所に、一つ目ゴブリンが馬鹿でかい血塗れの棍棒を持ち上げながら俺に向かって走ってきた。
「来る!イサミ!気をつけて!」
弓矢を素早く構え、エルミアが矢を放つ前に俺に向かって一つ目が棍棒を横薙ぎに振るう。
「うおぉっ!?」
体を伏せて一つ目の攻撃をかわす。轟音を立てながら頭上を通過していく棍棒の速度はこれまで戦ってきた奴らの中でも一番早い攻撃だった。
「ッ!」
エルミアが矢を放つ。だが、警戒していたのか矢を放たれた瞬間にその場から退き、矢をかわした。明らかに他のゴブリン達とは違う行動、警戒していたのも勿論だが、エルミアの命中率の高さを警戒しての受けの防御ではなく避けに徹している事からある程度の知能の高さを窺える。
「避けられた!?」
「あ、氷の槍!」
渡辺さんが魔法を放つ。魔法によって練成された氷の槍は一つ目に向かって飛んでいくが、標的に届く前に一つ目が持つ棍棒によって粉砕された。驚く渡辺さんだが、すぐに次の魔法を唱えようと準備すると
GAAAAAAA!!
「きゃっ!?」
一つ目が大声で吼えた事で渡辺さんが軽く吹き飛び背後の木に背中を打ちつける。ほんと、何なの!?あの大声!?
「きゅ~~~…。」
渡辺さんは目を回してそのまま倒れてしまった。結構まともに咆哮を食らったからな。元々、前線タイプではない渡辺さんにはきつい攻撃だろう。一つ目は倒れた渡辺さんにとどめを刺そうと棍棒を構えて走りだす。
「渡辺さん!」
俺は走り出して一つ目と渡辺さんの間に入り込む。だが、その事が分かっていたかのように俺が来るとすぐに棍棒を振り下ろしてきた。
「っく!?」
剣と棍棒が力強くぶつかり甲高い金属音が辺りに響く。ものすごい力だ。今は耐える事が出来てはいるが、それも何時まで耐えられるか…。
「…オークカ?ナゼ人間共ニ味方スル?」
そこで、初めて一つ目が俺の正体に気付いた為か話しかけてきた。どうやら被っていたローブが捲れてしまったらしい。
「…ッ!(話しかけてきても力を緩めない辺り、完全に敵と見られているな。)」
俺が無言のまま、棍棒を受け止めていると、その事が苛立ったのか一つ目は一度棍棒を振り上げてからもう一度俺に向かって振り下ろしてきた。
「答エルツモリハ無イカ。マァ良イ!死ネ!」
それ以上話すことは無いと言わんばかりに何度も棍棒を振り下ろしてくる。一撃一撃が重い。まだ何とか耐える事ができるが、俺よりも剣が心配だ。
『イサミ、金剛をした腕で防御すれば良いだろう?』
「ッ!?そうだった!」
今一度、一つ目が棍棒を振り下ろそうとしているので俺は直ぐに金剛をかけた左腕で防御しようとした…その時、
「“光よ、我等の道を照らす道標となれ。光照の矢!”」
背後からエルミアの声が聞こえたと思った瞬間、物凄い量の光が背後から発生した。
「ッ!?ガ、ガアアァァァ!!??」
俺は背中越しだったので特に問題は無かったが、一つ目はまともに光を見てしまったのか目を両手で押さえ、苦しそうに地面を転がりまわり始める。
「イサミ!大丈夫!?」
エルミアが心配そうな声を出しながら俺に近づいてくる。恐らく先程の光はエルミアの魔法か何かだろう。ともかく助かった。
「“エルミア、助かった。ありがとう。”」
「うん!でも、まだ油断したらダメよ?」
エルミアが言うように一つ目は目から涙を流してはいるが、徐々に回復したのか此方を睨んでいる。
「普段なら逃げたいところだけど、ワタナベが気絶しちゃった以上、逃げるのは難しいわ。イサミ、ここで一つ目を倒すわよ!」
俺は頷いてから剣を構える。一つ目は怒り狂ったような声を上げながら棍棒を振り上げる。だが、振り下ろす前にエルミアが棍棒を持っていた一つ目の腕を短剣によって斬りつける。
「ガルアアアァァ!!」
エルミアは斬りつけた後は、その場に留まらずそのまま後方に走りぬいて一つ目の背後に回る。攻撃する瞬間を邪魔された事がイラついたのだろう。一つ目は俺からエルミアに目標を変えてエルミアに向かって棍棒を振り下ろす。だが、その攻撃を問題なく避けたエルミアは、攻撃した後に隙だらけになった一つ目に攻撃を繰り出す。短剣による攻撃のため致命打に欠けるがそれでも確実にダメージを与えている。
「ガ、ガアアァァ!」
棍棒による攻撃ではダメだと判断した一つ目は素手による攻撃に変える。巨大な棍棒よりも与えるダメージ量は減るが、巨体が繰り出す拳は決して侮る事が出来ない。だが、
「今度は俺の番だってな!」
俺はエルミアに夢中になっている一つ目の背後から斬りかかる。卑怯だとは言わない。こうでもしないとコイツに勝つのは難しいし、死んでしまったら卑怯も何も無いからな。
俺の剣による攻撃が一つ目の背中に大きな傷を作り出す。そのまま次の攻撃に移ろうとしたとき、一つ目が慌てて棍棒を掴んで、俺とエルミアから距離を取るようにジャンプした。だが、着地した後に地面に膝をついてしまう。
「ッ!?ここで決める!」
エルミアがチャンスと見たのかゴブリンに向かって走り出す。
「ま、待って!エルミア!!罠だ!」
先程、コイツは渡辺をエサに俺を釣りだして攻撃してきた奴だ。あんなあからさまな姿をみせるとは思えない。となると、あの弱った姿は此方を油断させる為にわざとしている可能性がある。俺は咄嗟に呼び止めようとするが言葉が通じない為にエルミアを静止できなかった。
「これで――ッ!?」
一つ目の近くまで来たエルミアが止めを刺そうと首に向かって短剣を振るおうとしたその時、一つ目がエルミアの首を掴んで持ち上げた。一つ目の形相はもはや口から血を吐き、死にかけだが負けを諦めていない顔をしていた。
「ック!?カハッ!」
「ガルガアアァアァ!!」
エルミアを掴む一つ目の力が増していく。増えていくたびにエルミアの表情に苦痛が帯び始める。一つ目が少しだけニヤリと笑みを浮かべたとき、
「おおりゃああ!」
「ッ!?ガガアアガアアア!!!」
俺はエルミアを掴む一つ目の腕に渾身の力を込めて剣を振り下ろして切断する。「あ、ありがとう。イサミ。」とエルミアを無事、開放できた事を安心しながらも、目前の怒り狂った一つ目が俺に向かって片手で棍棒を振り下ろしてきたので、エルミアを庇うように俺の体の傍に引き寄せてから左腕で防ぐための体制をとる。
「ガアア!?」
左腕に棍棒が当たる瞬間に腕を真上に上げる様に力を加えると面白いぐらいに棍棒が跳ね返り、一つ目が隙だらけになる。
「今度こそ!」
エルミアが一つ目の肩に乗り短剣を顎から上に向かって突き刺した。突き刺した瞬間、一つ目の瞳がグルッと回るように白くなり、そのまま後方に倒れていく。
「わっ!?」
一つ目の肩に乗っていたエルミアがバランスを崩して落ちてきたので、俺は咄嗟に剣を手放してから両手で受け止める。うわっ!軽い!良い匂いがする!!
「あっ!?え、えへへ。ありがとう、イサミ。」
受け止めてくれるとは思ってなかったのだろう。少し照れながらも笑顔でエルミアは礼を言ってきた。……すいません!!このままお持ち帰りしても良いですか!!??あと、もっと近づいてクンカクンカしてもいいですかね!?
俺は自分の中の何かが何処かに行ってしまうそうになった時に、「え、えっと、イサミ?降ろしてくれるかな?」と言われたので、渋々ながらゆっくりと、本当にゆっくり降ろしてあげた。
「何とか倒せたね!イサミ!お疲れ様!」
エルミアは偉い偉いとでも言うかのように俺の頭を撫でてきた。ううむ、森に入る前は俺がエルミアちゃんにしてあげただけに、なんか恥ずかしいな。でも、エルミアの顔はとても嬉しそうな顔しているし、払いのけるつもりにはまったくなれないな!でも、またペット扱いされてるみたいで少しだけへこむ。
「イサミ、腕は大丈夫?」
「“あぁ、問題ないよ。すぐに直したから。”」
「本当?嘘はついてない?」
…嘘をつくのに少しだけ申し訳ないと思うが、まだ金剛のことはあまり話さないほうが良いだろう。再生の力だけでも驚かれたんだ。それ以上に特別な力があると知られたら最悪、別れる事になるかも、それだけは絶対に嫌だ~!
「でも、驚いたよ。だって急に腕で一つ目の攻撃を弾き返すなんて。」
「“痛かった。”」
「フフフ、当たり前だよ。でもおかげで隙を作る事が出来たからね。本当にお疲れ様、イサミ。」
今度は左腕を優しく撫でながら俺に笑顔を向けてきた。ドキッと何時もとは違う俺の何かが反応して俺は思わず頬をかきながら視線をずらす。そんな俺をエルミアは優しく見つめていた。
あれ?何か忘れてる気がする?
「きゅう~~~~…。」
言葉が通じないって本当大変だよね!(o≧ω≦)○エイゴ?ナニソレ?




