ゴブリンの群れ
時々、イサミがオークである事を忘れがち…(-д-;)マズイ
俺達は三匹のゴブリンを倒した後、討伐の証であるゴブリンの耳を袋に入れてからさらに森の奥に向かって進み始めていた。あっ、耳を取ったのは俺でなくエルミアです。作業する流れで耳を刈り取る姿は少し怖かった…。
それはともかく、先に倒したゴブリン達の後方には特に他のゴブリンの臭いもせず、ゴブリン達の集落を探すべく奥に進み続けているのだが…
『何もおらぬな。』
ヤシロが呟いたように他のゴブリンどころか他の魔物等もいない。ゴブリンの集落があると予想されるのだからそれなりの数がいるはずなのに、まったく遭遇しないのだ。危険が無くていいかもしれないがここまで静かだと逆に怖くなってくる。自然と何時も以上に警戒しながら進んでいると、
「2人ともみて。」
エルミアが何かを見つけたらしく地面を指差していた。俺と渡辺さんがエルミアに近づいて指している地面をみる。そこには恐らくゴブリンのものであろう複数の裸足の足跡が残っていた。エルミアはその場にしゃがみこんでよく観察し始める。
「…まだ新しい足跡ね。どうやら向こうに走っていったみたい。」
どうやら足跡の痕跡から分かるようだ。「(すげー…。)」と1人でエルミアに感心していると急に立ち上がって急ぎ足で歩き始める。
「急ぎましょう。もしかしたら他のパーティがゴブリンの群れと交戦中かもしれない。」
「えぇ!?ど、どうしてそう思うんですか?」
「言ったでしょ?もしかしたらって。ただゴブリンが慌てて戻っているところを見る限り、何かあったのは確かよ。行くわよ!」
俺達は頷いてからエルミアの背中について行く。先頭を行くエルミアは足跡を追って、俺は足跡に注意しているエルミアの代わりに臭いに注意して周囲の警戒をする。
足跡を追跡し始めてから暫くすると、急にエルミアが「止まって。」と静止を促してくる。なんだ?と思ってエルミアが見ていた地面を見ると止めた理由が分かった。
「これは…多いわね。」
エルミアが見ている先には数え切れないほどの足跡があった。そのおびただしい数の足跡はこの場で合流した後、北のほうに向かっているようだった。たしか…この先は指定されていた三つのパーティの内の1つが森の奥に進むとかち合う所の筈だ。これは本格的にやばいかもしれない。
「こ、これは大変じゃないですか!?この先には…」
「えぇ。急ぎましょう。このクエストのランクはブロンズ、だから恐らく受けた冒険者もブロンズの可能性が高い…この数は明らかにブロンズクラスの冒険者では荷が重過ぎる。」
俺、アイアンなんだけど…という野暮な突っ込みは今は無しだ。俺達はそれぞれの装備の状態を確認した後、足跡を追って走り始める。
---数分後---
「ッ!?」
足跡を追跡し始めてから、俺はようやくゴブリンの臭いを嗅ぎつけた。予想通り大量のゴブリンの臭いだ。だが、それよりも
「(血の臭い…だな。)」
もはや、血の臭いぐらい嗅ぎつける事ができるようになった自分に驚くが、これによって他のパーティが戦闘中、あるいは戦闘があったことが確定した。その事をほかの二人に伝えようとすると、
GAAAAAA!!
ゴブリンとは思えないぐらい荒んだ声が三人の耳に届く。もはや、伝える必要はないと考え、おれは剣を抜いて速度を上げて先頭を走り始める。俺、エルミア、渡辺の順で森の木々の間を走り抜き、怒声が発せられた場所へと向かう。
「(ッ!?いた!)」
臭いだけでなく目視でゴブリンを捕らえる事ができた。ここからだと数匹しか見えないが、奥には更に多くのゴブリンがいる事が臭いで分かる。だが、今は奥にいるゴブリンよりも目の前の敵に集中だ。
「(金剛!!)」
俺はいつも通り、念の為に左腕に金剛をかける。そして、そのまま此方に気付く前にゴブリンに斬りかかる。
「うおおおぉぉ!!」
久しぶりに大声をだす。ここには俺の正体を知っている2人しかいない。例え、他の冒険者がいてもまぁなんとかなるだろ。…とにかく、俺は大声で自分を鼓舞しながら剣を一匹のゴブリンに振るう。
「ギャヒッ!?」
突然の襲撃に自分が斬られたことも分からないと言った表情をしながらゴブリンは倒れる。そこでようやく他のゴブリン達が俺達の事に気付く。
「ガギャグア!」
「ガギャギャ!」
最初とは違う傍にいたゴブリンと戦闘を始めていると、横から二匹のゴブリンが俺にボロボロの剣を向けて走ってくるのが見える。だが、俺は気にせずに前方のゴブリンに集中する。
「ギャギャ―――」
「ギャフッ!?」
横からはしてきたゴブリンの内、一匹は脳天に矢を、一匹は腹に氷の槍を受けて倒れる。何回もこの戦闘パターンだが、単純なこのパターンは強力だ。前衛のおれが敵の注意をひきつけている間に背後の2人が援護射撃をする。特にエルミアに至っては必殺命中と言える腕前で敵を屠っている。
「ギャギャギャ!?」
「ギャヒィ!?」
戦っていたゴブリンを斬り捨てると、それを見ていたほかのゴブリン達がこのままでは敵わないと思ったのか他のゴブリン達の元に向かって走り始める。俺達もその後を追って走り始める。そして、ゴブリン達が向かった先には一本の木が無理やり引き抜かれた形で倒れており、その木の近くには多くのゴブリン達が群がっていた。
「(うっ!?)」
「ひっ!?」
思わずと言った感じの悲鳴を俺の背後で渡辺さんが上げた。俺もあまりの光景に一瞬悲鳴を上げそうになったが、そこは男の子としての意地で我慢する。
「あれは…他のパーティの冒険者…でしょうね。」
目の前には此方に背中を向けている一際でかいゴブリン?に血だらけの男が頭を掴まれて持ち上げられている。他にも地面に倒れている2人の男をゴブリンが複数でめった刺しにしている光景や、恐らく冒険者がいるであろう所にやけに多くのゴブリンが群れたがっている光景が見える。臭いからして、…恐らく女性が襲われているのだろう。
「ッ!?助けないと!!」
「(エルミア!待って!)」
恐らくエルミアにも女性がゴブリンに襲われていると分かったのだろう。すぐに矢を構えて放とうとする直前に止める。エルミアがなぜ?と言うように俺を見る。俺は努めて冷静にだが急いで文字を書く。こういうときに言葉が通じないのは不便だが、仕方がない。
「“焦らないでエルミア。渡辺さん、広範囲魔法は使える?”」
「…え?は、はい!一応使えます。」
「“よし、ならお願い。エルミアはワタナベの援護を!”」
「イサミ!でもそれだと彼女が!?」
「“大丈夫。俺が助けてくるよ。”」
俺達に気がついた何匹かのゴブリン達が吼え始める。急がないと。
「イサミ!助けるってどうやって!?あれだけのゴブリン相手に1人じゃ無茶よ!」
「“エルミア、俺を信じてくれ。”」
普通なら確かに無茶だ。だが、俺には金剛があるし、再生の力もあるから多少の無茶なら押し通す事が出来る。だからこそ今はこれが最善だと考えた俺はエルミアに肩を抱いて無理やり俺と向き合わせて目を見て意思を伝える。一瞬、エルミアの瞳が迷いによって揺れるが、すぐに俺の目を見返してくれた。
「~~ッ!?わ、分かったわよ…。でも、危ないと思ったらすぐに引き返すのよ!」
心配してくれるエルミアに感謝しつつ頷いてから、渡辺さんに目配せすると、渋々といった感じで頷いてくれてた。そして俺はゴブリンの群れを見るとき、剣を握る拳が若干震えている事に気付く。かっこいい主人公ならここで武者震いとか言うんだろけど、これは完全に恐れによる震えだ。
正直に言おう、めっちゃ怖いです!!あんだけの数の殺気だったゴブリンども相手に1人で、それも特に戦闘の達人でもない俺が突っ込むとか正気の沙汰じゃ無理だよなぁ。
でもまぁ、女の子であるエルミアや渡辺さんに行かせる訳にも行かないから、俺がやるしかないんだけども…。なにより、エルミアに見栄をきった以上、かっこつけたいのが男ってもんだ!!
「よっしゃ!いくぜえぇぇ!!」
俺はゴブリン達の注意を俺自身に向けさせるために、そして恐怖を紛らわせる為にわざと大声を出しながら突撃する。既に俺達に向かっていたゴブリンの遅い攻撃をかわしてから鉄の剣先を喉元にお返しする。向かう先は襲われている女性がいる場所だ。
「(あぁ、畜生!ひでぇ臭いだ!!)」
男なら分かるあの匂いだ。他人のモノなんて臭くて近づきたくないのに、ゴブリンとなると更に酷くなる。鼻が良いだけに強烈だ…。
『来るぞイサミ!』
近づいた為に強くなったあまりの臭いに一瞬気を失いそうになったが、ヤシロの声で我を取り戻す。俺はゴブリンの剣をブロードソードで受け流し、左腕でゴブリンの首を掴む。掴まれたゴブリンが爪で腕を引っかくが、金剛をかけてあるので痛くはない。
「おらあぁ!」
俺は力の込めてゴブリンをぶん投げる。飛ばされたゴブリンによって群がっていたゴブリン達がボーリングのピンのように吹き飛ぶ。それによってやっと女性の姿を見ることが出来た。…まぁ想像していたが、ひどい状態だ。
「今の内に!」
ゴブリン達が吹き飛んでいる間に女性に近づいて持ち上げようとする。色々と触れたくなかったが仕方がない。その時、
「うおっ!?」
目の前を男の冒険者だったものが飛んでいった。思わず、横を見るとそこには飛んでいった男を持ち上げていた巨大なゴブリンが俺を睨みつけていた。他のゴブリンとは明らかに違う巨体を持つゴブリンだったが、何よりも違うのが
「(目が1つ?だが、今はそれどころじゃねぇな。)」
もはやゴブリンに見えない容貌をしているそれの相手をしている暇はない。俺はすぐに近くにいるゴブリン達を斬り捨てながら女性に近づき持ち上げると、エルミア達の所に向かって走り始める。見ればエルミアが一匹のゴブリンを短剣で倒したところだった。
「イサミ!急いで!」
「(あいよ!!)」
後ろから多くのゴブリンが追いかけてきていることが分かるので、女性を抱えていることで走りづらい事この上ないが、俺は必死に走って少しでも距離を離す。見れば渡辺さんが持っている杖の先が淡く青白く光っている。そして呪文を呟き、魔法を発動させた。
「み、“水よ!氷の礫と成りて降り注げ!《氷の雨》!”」
発動言語と共に杖の先から水の塊が出現し弾ける。弾けた水はゴブリン達の上空に広がっていき、氷の雨となって降り注ぎ始める。
「ギャヒィ!?」
言うなれば、拳の大きさの雹が降り注ぐ魔法だ。魔法によって位置に見合わない速度で降り注がれる雹の雨は、単純なようで恐ろしい。突然の雹によってまともに受けたゴブリン達は頭をかち割られて倒れる。
「(お、恐ろしい魔法だ…。)」
背後の死屍累々の光景をみながら俺はそんな事を思ったのであった。
「イサミ、女性は?」
エルミアが近づいて心配そうな顔で見つめてくる。俺は抱えていた女性を地面に降ろしてから脈を確認する。
「……。」
「……どう?」
俺は首を横に振って女性が既に事切れていた事を伝える。エルミアは残念そうな顔で、「そう…。」とだけ呟くと。懐から布を取り出し、女性の顔に付いていた汚れを拭き取り始めた。
「い、イサミさん!エルミアさん!あれを!」
俺とエルミアは渡辺の声に反応して渡辺さんが指差す先を見る。そこには体に乗っていた雹を振り払いながら恐ろしい形相をした一つ目の巨大ゴブリンが此方を睨んでいた。
一つ目の子鬼…まさか!?お主、鬼○郎!?ΣΣ(゜д゜lll)!?
ヤメロ!(*゜□゜)=○)´Д`):∵グハァ!?




