ブロンズのクエスト
とある方からキーワードを追加したらどうか?と言う意見があったので、キーワードに”まったり”を追加しました!ご意見ありがとうございました!
(≧∇≦)/アリガトー
暗闇に包まれていた町並みに静かにかつゆっくりと朝日が差し込んでいく。町に住んでいる人の中でも既に目を覚ましている人もいるが、差し込む光によって目を覚ます人が大半だ。その大半の中の1人として俺は目を覚ました。
「…ん。朝か。」
どこぞのゲームの開始のような言葉を発しながら俺は未だ眠気が取れない目を擦りながら体を起こす。ブヨンッとでも音がしそうなこの脂肪だらけの体を起こすのはもう慣れたけど、力を入れて起きれない事は前の体ではあまり無かったことなので、改めて思う。俺は人間じゃなくてオークになったんだな…と。こんな今更の事を思うのは昨日の事が原因だろう。
俺は起き上がってから服を着替えてから壁にかけてあるローブを羽織る。この宿では頭を隠す必要は無いが、外では正体がばれないようにする必要があるからだ。机に立てかけておいた剣、ブロードソードを腰に装備すると「よしっ!」と一言呟いてから俺は扉に手をかける。
下の階におりると既に俺以外のメンバーが揃っていた。
「あっ!おはよう!イサミ!」
「おはようございます、イサミ殿。」
「“おはよう。”」
エルミアとルドルフに挨拶をした後、俺はルドルフさんの横に座る。俺が座るとすぐに、カウンターの奥から朝食を持ったリレーアさんとリルリカちゃんがやって来た。俺は礼を言いながら受け取る。
「イサミ、エルフの島に行く件なんだけど…。」
俺がスクランブルエッグを口にしている時、エルミアが話題を振ってきた。
「明後日ぐらいにはこの町を出ようと思うの。大まかな準備は私達がやっておいたけど、何か準備するものがあるなら急いでしておいてね?」
俺は頷いて了解の意を示す。
「町を出た後は暫くの間は馬車での移動になります。およそ、四日ぐらい掛かりますな。そして港町に着きましたら船の手配をして向かう事になると思います。」
「“港町での滞在期間は?”」
「それは、船の出航状況によりますな。まぁ長い間滞在する事は無いでしょう。」
「(…そういえば、エルフの島に向かった後の事について考えてなかったな。エルミア達の目的は幻獣ディアリームの角を持って帰る事らしいが、あんなものを持ち帰ってどうするんだろうか?ここで聞いておくか?)」
そんな風に考えていると、エルミアが身を乗り出し、やけに目を輝かせながら俺に向かって声を出してきた。
「イサミ!ねぇ、今日はこの後は暇かな?もし暇ならその…私と一緒に町に――」
「す、すいません!勇さんはいらっしゃいますか?」
エルミアが話している途中で、後ろのほうから声をだしながら宿に入ってくる人物がいた。俺たち三人は振り返って見ると、入り口付近には青い水晶がついている杖を持っていて、魔法使い特有のローブを着た渡辺さんが立っていた。渡辺さんは俺たちを見つけると眼鏡の位置を正しながら此方にやってくる。
「あっ!皆さん、おはようございます!勇さん、おはようございます!」
「…おはよう。」
話を途中で切られたせいかどこか機嫌が悪いように返事をするエルミアちゃんだったが、渡辺さんは気にしていない…というか気付いていないな…あれ。
「ワタナベ、今日はどうしてここに来たの?それもこんな朝早くから。」
「はい!今日は勇さんと一緒にクエストを受けるために来ました。朝早くにギルドに言ったほうが良いクエストがある場合もあるので!」
「え…?」
渡辺さんの言葉にエルミアはとても驚いたような顔をした。あ、そういえば言ってなかったな俺。だが、そんなに驚くような事だろうか?
「い、イサミとワタナベが?へ、へぇ~、何時の間にそんな仲良くなったの?貴方達…。」
「えっと?仲良くなったというか私にとって大事な人(彩華さんの代わりに守らないといけない人)になったと言えば…良いんでしょうか?」
「なっ!?」
「なっ…なっ…」とわなわなと震えながらエルミアは1人呟いている。そして、急にバッと俺の方を向いたと思うと
「どういう事よ!イサミ!説明しなさい!!」
とても強烈な声を出し、少し目尻に涙を浮かべながら俺の胸倉を掴み迫ってきた。こんな時にだが…
「(な、なんかよく分からんが怒ってるエルミアちゃん…可愛ええぇぇぇ!!)」
俺は自分で自分が屑だと思ってしまった。
---10分後---
「なぁ~んだ、そう言う事ね。」
俺が昨日ルフに襲われていた商人を助けた事や、その事で渡辺さんにギルドで助けられその際に、今日一緒にクエストを受けようという事になったことを説明した。説明を聞いたエルミアはどこか安心したような声を出している。
「えっと、それでどうするんですか?」
「“クエストの事?受けるよ。”」
「なら、早めに行きましょう。良いクエストはどんどん取って行かれちゃいますから。」
俺は頷いてから立ち上がり宿の入り口に向かい、渡辺さんも杖を持ち直してから俺の後に続いてくる。そしてそのまま出ようとすると
「待って、私も行く!」
後ろのほうから弓を持ったエルミアがやって来た。
---冒険者ギルド---
相変わらず今日も冒険者ギルドは人で一杯だ。クエストの成功を祝って酒を飲む者達もいれば、クエストの依頼書を見て「う~ん…。」と唸っている者もいる。中には昨日の件を思い出して「おっ!今日も来たのかい?期待の新人君!」と気軽に声を掛けて来る者もいた。
俺とエルミア、渡辺の三人はクエストの掲示板前に移動する。掲示板前には人だかりが出来ており、ローブを羽織った背の低いエルミアが「見えないよ~…。」と呟いている。…エルミアちゃん!なんて可愛い子!!っと、エルミアちゃんの可愛さに見惚れてばかりじゃいけない。俺はエルミアと渡辺を近くの椅子に座らせてから1人で掲示板前の人だかりに入っていく。
「(っぐ!?これはまるで安売りスーパーの主婦の争いみたいだな。)」
何とか押し寄せる人並みの間を少し無理やりにだが進み、掲示板前にたどり着く事が出来た。俺は早速、アイアン、或いはブロンズのクエストで良いものが無いか探し始める。幾つか、アイアンやブロンズのクエスト依頼があったが俺はその中でも三つほどに目をつける。
クエストランク:アイアン
クエスト内容:ケルンの角の収集(角5本)
近くの森に住むケルンの角を集めてくれ。角さえ集めてくれれば良いので無理してケルンを殺す必要は無いからな。
クエスト報酬:銅貨中4枚
ケルン…、よく分からないが、角を集めてくれと言う事は当然、角が生えた生物なのだろう。ランクがアイアンということから大人しい生物と言う事が窺えるが一応警戒すべきだろうな。
クエストランク:アイアン
クエスト内容:フレール・ボアの討伐(1頭)
フレール・ボアの討伐をお願いしたい。食用として利用したいので出来るだけ状態が良い事が望ましい。
クエスト報酬:銅貨中5枚
二つ目のクエストは今まで見なかったアイアンにしては珍しい討伐と言われるクエストだ。まぁ先程と同様にアイアンからしてその討伐対象の実力も察する事が出来る。この2つのクエストのどちらもが昨日よりも報酬が言い分、時間が掛かりそうなクエストだ。恐らく昨日のようにどちらも受けるという事は難しいだろうな。そして、三つ目が
クエストランク:ブロンズ
クエスト内容:ゴブリンの群れの討伐(最低4体)
街道で何度も商人や旅人がゴブリンの群れに襲われたと情報があった。このままでは更に被害者が増えるので早急に、これらの討伐をお願いしたい。ゴブリンとは言え群れでいるとの事なので複数パーティで受ける事が望ましい。
クエスト報酬:銅貨大5枚(ゴブリンの討伐数に応じて追加報酬あり)
初といえるブロンズのクエスト報酬はさすがというべきか、アイアンより多い。まぁその分、危険性も高くなっているが。とりあえず、この三つの依頼書を俺は掲示板から剥ぎ取り、エルミア達の下に向かう。
「あ、イサミどうだった?」
俺は2人に持ってきた三つを見せる。
「まぁどれもそこまで難しくは無いですね。」
「そうね。私としてはこのゴブリンの群れと言うのが気になるけど。」
「え?どうしてですか?」
「私達は明後日にはこの町を出るからね。その時にゴブリンの群れが出るから馬車が出られないとなると困るのよ。」
「えぇ!?明後日には何処かに行っちゃうんですか?」
俺とエルミアは頷いて答える。
「そ、そんな、勇さんも一緒に?せめて勇さんだけでもこの町に――」
「なんでイサミだけ残していかないといけないの?」
エルミアが厳しい口調で渡辺の言葉を遮る。その事が渡辺を驚かせたのか何も言えずにあたふたしている。…俺も驚いた。だが、このままでは嫌な空気のままだと思った俺は
「“渡辺さん、俺はエルミアと一緒に行くよ。”」
「えぇ!?そんな…。」
少しショックを受けたような顔になる渡辺さん。恐らく同じ世界人として俺を心配してくれているのだろうが、俺はエルミアと行動したい。え?理由?可愛いからに決まってるジャン!
「ッ!?も、もう!イサミったらそんな私と一緒にいたいの?仕方ないなぁ!」
仕方ないなと言っておきながらどこか嬉しそうな声を出しているエルミアちゃんを見ろ!こんな可愛いのになぜついて行かないと言えよう!?否!言える筈がない!!
『どうでもいいから、どれも受けるのか決めないのか?』
ヤシロ先生は今日も冷たかった。
「わ、分かりました。…それで、結局どのクエストを?」
「“これにしよう。”」
俺は一枚の依頼書を渡辺さんに渡す。その依頼書はランクブロンズのクエスト。つまり、ゴブリンの群れの討伐だった。
「わかりました。それじゃあ、受付所に向かいましょう。」
俺達三人は受付所の列に並び、暫く並んだ後、受け付け嬢に依頼書を渡した。今日の受付嬢は昨日のちょっとお姉さん的なミィネさんとは違い最初に会った可愛い女の子の受付嬢だった。
「久しぶりですね!ロメール…ッ、じゃなかった、イサミさん、エルミアさん、ワタナベさん。」
相変わらず、変な名前と間違えそうになっているが、その眩しい笑顔を見ると全て忘れてしまう。ふっ、男って単純な生き物なのさ…。
俺が1人軽くたそがれていると、受付嬢はステータスカードを要求してきたので渡し、何時ものようにカードと依頼書を水晶玉に入れてから依頼書に判子を押す。
「はい!これでクエストを受注した事になります!今日も一日、頑張ってきて下さいね!」
俺達三人はそれぞれのステータスカードを受け取ると、冒険者ギルドを後にした。
---受付嬢---
「ううむ、あれは…」
私は悩んでいた。それは先程出て行った三人組ついてだった。なぜなら
「ジュリエッタ(エルミアさん)に難敵登場…なのかしら?」
ロメール(イサミさん)の横に勇者であるワタナベさんがいた。通常ならたまたま三人で受けただけだと思うだろう。しかし!私は今朝、同僚であるミィネさんから昨日の話を聞いている。何でもイサミさんが困っていた所をワタナベさんが助けたらしいのだ。そして、何よりもその後に2人で一緒にギルドから出て行ったらしいのだ!夜の街に2人で出かける…。も、妄想がとまらないわ…。
「もしかしたら、その事をジュリエッタ(エルミアさん)は知らないのかも…。これは!修羅場の予感!!」
私は1人「キャーーー!!」と頬に手を当てて小さく叫んでいると「あ、あの…。」と前のほうから声が掛かってきた。いけない、いけない今は仕事中だったわ。続きは帰ってから考えましょう!




