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転生ライフ!オークライフ!?  作者: エケイ
第四章 : 王都 クエスト
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乾杯!

 俺が最初に思ったのは「(またしても渡辺さんが出てきた。結構冒険者ギルドに来てるのか?)」だった。前にも似たように渡辺さんが大声を出して登場したのだから、また?と思うのも仕方ないだろう?


「あぁ!?何だあんた!?」


 フィーロが苛立ちながら渡辺に尋ねる。渡辺さんはゆっくりと歩きながら俺たちに近づいてくる。…あの子って結構度胸あるね?俺だったら絶対他人の振りするのに…。


「わ、私は渡辺と言います。僭越ながらこの国の勇者をやらせて貰っている者です。」


 渡辺の声にフィーロと一部の冒険者が動揺するような声を出す。全員が驚かないのは前回、渡辺を見たことがある冒険者がいる為だろう。僅かにざわめく中、渡辺さんは近くまで来ると話し始める。


「こ、この人は以前、私と一緒に誘拐された人たちを助けるために一緒にシルバークラスのクエストをやっていたんです。」

「あ!?だから!そいつはアイアンで…」

「勿論、この人のランクは低いので依頼を受けていない状態で私達を手助けしてくれたんです。ランクは低いですが実力はシルバークラスの私と引けをとりません!」


 今度は話を聞いているこの場の全員がざわめき出す。アイアンなのにシルバークラスのクエストをこなせる実力を持つ新人と言うのも驚きだが、何よりも勇者が自分の実力と同じぐらいだと言った事に驚いている者が多かった。勇者はこの国の希望に近い存在だ。その成長速度もさることながら、実力もこの国では抜きんでているはこの国の人間は誰しもが知っている。特に彩華などこの国一番と謳われた騎士を、僅かな月日で倒したほどだ。これで勇者が名前だけだと言うものはいない。


「おいおい…。じょ、冗談だろ?だってコイツはアイアンのクエストを受けようとしてたんだぜ?子供でも出来るようなクエストだぞ?」

「簡単なクエストを受けているからと言って、じ、実力が無いわけではないでしょう?」


 クイッと眼鏡を上げながら渡辺はフィーロと話し続ける。ううむ、ちょっとカッコイイ…噛まなければ。


「おいおい…。あんたが知ってるのか知らないが、襲ってきたのはルフって言う大きな怪鳥だ。シルバークラスでもパーティを組まないと倒すのは無理だっての!それを1人で出来るはずが…」

「いえ、撃退だけで倒していません。」


 今度は商人さんフィーロの言葉を遮って話し始める。自分が手に入れたルフの卵を取り返そうと親鳥が襲ってきた事、そしてその時にイサミが助けに来てくれて、卵を親鳥に返す事で何とか撃退する事が出来たことを説明する。武力だけによる撃退ではなく相手の目標を達成させる事で撃退(と言うより相手が勝手に去って行ったと言うほうが正しいが)した事を話すと、最初信じていなかった冒険者達も


「な、なるほど…。」

「実力で撃退した訳じゃないんだな。なんだ…驚かせやがって。」

「まぁ、アイアンでそれだけやれば上等だろ。シルバーでも実力で撃退は難しい相手だし、ブロンズでまともに戦うと間違いなく死ぬからな。」


と、徐々に信じるものが現れ始めた。冒険者達の会話をフィーロが面白くないような顔をしながら聞いていた。


「ルフの卵を無くしたのは痛手ですが、命には代えられませんので。」


 商人の男はやや苦笑いしながら頭を搔いていた。まぁそうだろうな。大事な商売道具?を取られてしまったんだからな。少しだけ、商人の男に同情しているとフィーロが悔しそうな声を出しながら一歩下がる。だが、フィーロの後ろにはいつの間にかギルドの役員?の男が2人立っており、逃がさないと言わんばかりにがっしりと肩を掴む。肩を掴まれたフィーロは苛立ちながらも腰から袋を取り出すとしぶしぶと数枚の銀貨を取り出した。


「っち!?…わかったよ!払えばいいんだろ!払えば!」


 銀貨をテーブルに力任せに叩きつけるように置くと役員の男が手を離したので、フィーロは近くに立っていた冒険者達に向かって「どけっ!!」と大声を出してから冒険者ギルドを出て行った。その光景を見ていた野次馬達(冒険者達)は完全にフィーロの姿が見えなくなると一斉にドッとギルドを振るわせるぐらいに笑い始めた。


「わっははは!!見たか!?フィーロのあの情けねぇ後ろ姿!」

「おう!何時も「俺はテメェらとは違う」的な雰囲気をだしてる冒険者様のフィーロのあの姿!!」

「何時も違う女を侍らせて見せ付けてやがるイケメン様はやっぱり俺たちと違うわ!!あんな子供みたいなの言い訳しながら最後は金を払って逃げ出すんだからよ!」

「とにかく!今言えることは!!がんばった期待の新人とフィーロの負け犬姿に、乾杯!!」

「「「「乾杯!!」」」」


 泡立つ麦酒を持つ片手を、中身がこぼれるのも構わずに一斉に持ち上げて声を出す冒険者達。そこからはお祭り騒ぎのように騒ぎ、歌い、飲み食いを始める。リルリカちゃんの事もあってまだ素直に冒険者達の事を良く見れないが、こう見ると根は悪くないんだろうと思える。今もまた俺に向かって杯を突き出して「期待の新人に乾杯!」と笑顔で言ってきてくれる冒険者達を見ると自然と笑みがこぼれて来た。


 商人の男はフィーロが置いていった銀貨を数え終えると頷いてから袋に入れ、俺と渡辺に頭を下げて礼を言う。


「最後の最後までご迷惑をかけて申し訳ありません。今はお金が無いので大したお礼は出来ませんが、この恩はいずれ必ず。」

「“気にしないで下さい。お気をつけて。”」

「はい、それでは。ワタナベ様も、ありがとうございました。」


 「い、いえそれほどでもぉ。」と渡辺が少し照れながら答えるのを確認するともう一度頭を下げてから商人の男は、冒険者ギルドを出て行った。その後俺は、渡辺に礼をしたいと伝えて果実ジュースを一杯奢る事にした。


「“先程は助かった。ありがとう。”」

「いえいえ、どういたしまして。今日はエルミアさんとは一緒じゃないんですね?」

「“ああ。君は何時も冒険者ギルドに?”」

「え?いえ、今日は冒険者ギルド副長のネリナさんに用事があったんです。」

「(ネリナさん?)」

『この国に来たばかりのときにここであった女性だ。』 

「(え~と、あぁ!初めて冒険者ギルドに来たときにあった片眼鏡をした美人さんですな。)」


 そんなギルド副長に渡辺さんはどんな用事があったんだろうか?と考えていると急に渡辺さんがもじもじしながら俺に聞いてきた。


「と、ところで、あの後マロクさんと、ご、ご関係の進展は…?」

「“マロク?アイツなら今、商人ギルドに行ってるよ。どうしてそんな事を?”」

「い、いえ!なんでもありません!!無粋な事を聞いてしまいましたね!」


 やや顔を赤くしながら慌てて話を切られてしまった。…なんで無粋?その事を聞こうと思ったけど渡辺さんが果実ジュースを飲み干してしまったので、ギルドを出る事になって聞けなくなってしまった。まぁいいか。


 その後、途中まで一緒に歩く事になった。あたりはすっかり暗くなっていた。この商店街通りあたりの夜の城下町はロウソクなどによる明かりが灯されやや幻想的だった。少し冷たい夜風を受けながら二人で夜道を歩く。


「イサミさんは…オーク、なんですよね?」


 歩いていると、ふと渡辺が俺に聞いてきた。俺は頷いて答える。


「正直、イサミさんがオークだなんて信じられないんです。私も何度かオークと対峙した事はありますが、…どのオークも匂いがきつくて私達女性を見ると、その…発情して襲ってくるような気色悪い魔物だったので…あ!?ごめんなさい!」


 俺は気にしなくて言いと首を横にする。


「ありがとうございます。それで…変な質問ですけど、どうしてイサミさんはそんなに賢いのでしょうか?誰かに師事されたとか?あと、その名前は誰がつけたんですか?」

「………。」

 

 どうしよう…。確かに俺も他のオークを見たのであれが普通だとすると俺は明らかに異常だ。名前についてもどう説明しよう?うう、困った。こう改めて聞かれるとは…こんな時に頭が良ければ上手い言い訳を思いつくかもしれないけど、残念な事に俺は優秀と呼べる頭を持っていない。


 悩んで無言のまま歩いていると、渡辺さんが俺の方を見上げていた為か足を躓いてしまった。


「あっ!?」

「ッ!?危ない!渡辺さん!」

「えっ!?」

「ッ!?(しまった!?)」


 俺は咄嗟に声を出してしまった。こけそうになった渡辺さんを支えながら、周りをみる。幸い、周りには誰もいなかったので、オークの声を出しても問題なかったようだ。ホッと息をついていると、下から視線を感じた。そちらを見ると、とても驚いたように渡辺さんの眼鏡の奥の瞳を大きく開いて俺を見ていた。


「……?(なんだ?)」

「い、イサミさん。今、私の名前を呼びました?」


ヒロインのエルミアちゃんが出てこないでござるぅ(/□≦、)スマネェ!

補足:フィーロのギルドランクはシルバーで、世間では中級と言われるレベルです。と言っても、ルフと戦えるほどの実力はありませんでした。ランクはギルドに認定さえされれば上がるので、あくまで目安です。同じランクでも実力がある者と無い者とでは雲泥の差があると言う設定でいこうと思ってます。∠( ̄◇ ̄)ヨロシク!

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