戦闘開始-黒ローブ-
イサミが持っている剣が強すぎる気がするけど、お、お気になさらずに!(^▽^;)
---赤ローブの男---
黒いローブを被った男達が部屋中の資料や魔法道具などを急いでまとめていた。それを赤いローブの男が溜息をつきながら眺めていた。
「まったく、まさかこんな事になるとは…ね。時間と必要人数が足らなかったとは言え、やはり金貸しなどの情報などを頼りにしたのが間違いでしたね。」
誰かに伝えるではなく、1人イラついたような口調で男は呟く。だが男の意思とは関係なく、その言葉を聴いた黒ローブたちは手を動かし急いで作業を進めていく…まるで男に自分が目を付けられないように。
「…そこのあなた、奴隷達の回収班はまだ戻らないのですか?」
「は、はい!まだ戻っていないようです。どうやら何体かのオーク共が急に此方に逃げていたらしく、それを捕らえることに時間が掛かっているようです。」
「オークが?…オークなどまたすぐにでも用意できるでしょう?そんなオークなど斬り捨てれば良い。それよりも奴隷回収のほうが優先でしょうに…まったく無能ばかりで困りますねぇ。」
「は、はっ!申し訳――」
黒ローブの男が謝罪の言葉を述べ終わる前に首が遠くに飛んでいってしまう。首が飛んできたところにいた男の小さい悲鳴が上がるのも気にもせずに赤ローブの男は自分の剣についた液体を布で拭き取ると、別の男に向かって指示を飛ばす。
「そこの貴方。はやく奴隷回収を優先にすばやく進めろと回収班に伝えなさい。」
「あ、あぁ。分かった…、あ、いえ、分かりました。」
指示を受けた黒ローブの男はすぐに回収班が出て行った扉から出て行った。それを見届けた赤ローブはまたしても溜息をつきながら、近くの木箱の中に幾つか入っている内の一本の筒状の小瓶を取る。小瓶には薄緑色にきらめく透明度の高い水が詰まっており、見るものを魅了してしまうような不思議な美しさであるが、どこか寒気を感じさせる。そんな水が入った小瓶をしばらくの間赤ローブは目を細めて見続けた後、再び小瓶を木箱の中に戻そうとするがふと何かを考えついたのか手を止めて木箱には戻さずに懐に大事そうに仕舞った。
「…さぁ、引き上げの準備を急ぎなさい。もたもたしている様ならそこに倒れている人に会わせてあげますよ?」
---イサミ---
扉の奥を進んでいると奥のほうから誰かが駆けてくるのを感じた。先ほどフクロウが倒していた黒いローブを羽織った奴らの仲間だろうか?どちらにしろここは隠れるところの無い一本道なので迎い撃つ以外は無い。幸い、ここには俺以外はいない。金剛や夢幻を使っても何も問題は無い。なので、俺は左腕に金剛をかけて右手で剣を抜く。
暗闇の向こうからやって来た男は俺を見つけると仲間でない事に気付いたのか慌てて剣を抜いて此方に怒声を発してきた。
「ぬおっ!?なんだ!?お前は!?さてはお前が今回の侵入者だな!」
「……(うん?何処かで聞いた声だな?)」
「ハッハッハ!ここまで快進撃は見事だと言ってやる!だが、ここで俺にあったのが運のつきだ!このゴールドになれると言われた元シルバークラスのキース様が相手―――」
ヌギッ←(イサミが頭に被っていたローブを脱いで顔を見せる。)
「スンマセンでしたー!私めは貴方様に降伏いたします!!だから見逃して下さい!!!」
「(おー、見事なスライディング土下座。…額は痛くないんだろうか?)」
奥から進んできたのは、昔にエルミアを奴隷にしようとして失敗して捕まった元冒険者のキースだった。
「“それで、キースはギルドからの命令でこの組織の護衛を命じられたんだね?”」
「あ、ああ。命じたのは胡散臭ぇ男だったが正式なギルドの印が入った手配書を持っていたから断れなかったんだ。俺たち犯罪奴隷はお上には逆らえないからな。」
見事なスライディング土下座をしたキースに何故ここにいるのかを問いただすとどうもギルドに依頼されてここに来たらしい。…妙な話だ。この組織の事はリルリカちゃんが攫われるまでギルド嬢はまったく知らなかったみたいだし、ここの情報についてもエルミア達が発見したために発覚したはずだ。それなのに、キースは依頼されたと言う。ここの敵が犯罪を犯す前にギルドに依頼して護衛を雇った?それならばギルド嬢の誰かが知っているだろう。単に情報が行き渡っていなかったとも考えられるけど、それほどギルドが無能とは思えない。…もしかしてギルド、いやギルドの一部の者がこの一連の事件の協力者?
「“キース。ここの組織を率いている人の情報を教えてくれる?”」
「…悪いがそれは無理だ。その情報を話せば俺は死んでしまう。…ほ、本当だ!今の俺は普通の冒険者じゃなくて奴隷なんだよ!だから主人であるアイツの情報を教えれば裏切りとみなされて首が絞まっちまうんだ!」
キースが首についている首輪を俺に見せる。そこには俺のようなSMプレイの首輪ではなく、只の鉄の輪のような物がついていた。
「な!?だから無理なんだって!」
「“でも、今こうして俺に降伏して裏切っているんじゃない?”」
「それは口だけだからな。…待て!だから口だけで首輪には裏切りとは見なされていないだけだ!だから剣を抜こうとしないでくれ!俺は絶対にあんたを攻撃しないから!!」
俺が剣の鞘から手を離すとキースがホッと息を吐く。
「“キースのほかにもギルドに命令されてここに来た人たちはいるの?”」
「ああ、いるぜ。だが、あいつ等も逃げ出そうとした奴隷達に…まぁ色々やってたみたいで俺は仲間だと思っちゃいないがな。(こんな気味の悪い奴らがいる所でする気が起きなかっただけだけどな!)」
「……(ふーん…。)」
少しはギルドからやって来た人たちを助けてやろうと思っていたけど、なんか楽しんでいるみたいだし手加減無しでいいか。そもそもキースが言う事が本当ならここに連れてこられたのは過去に何かしら問題を起こした犯罪者達な訳で…別に気にしなくても良いだろう。
「(な、なんだか険悪な雰囲気になってきたな。ここは何とか助かるように弁明しておかないと!)信じてもらえないかもしれないけど、俺はここで起きている事はほとんど知らないんだ!だから…」
「“ここでオーク共が行っていた事は?”」
「あのオーク達に関しては俺は本当に知らないんだ。管理は俺たちが来る前から居た奴らがしていたし、オークがいた部屋まで入る事は禁止されていたからな。」
「“そうか。わかった。”」
俺はローブを被りなおしてからキースにここに残るように指示すると、「喜んで待機しています!」と言ってその場で固まっていた。そんなキースを置いて俺は奥の扉を開けて中に入る。中では黒ローブたちが資料か何かを急いで纏めているところだった。俺が扉を開けた音に反応した何人かが俺のほうを向いて、入ってきたのが仲間ではないと分かった瞬間に仲間達に注意を促しながら臨戦態勢を取り始める。
「何者だ!」
「……(黒ローブばっかりだな。)」
「おい!司教様にお伝えしろ!」
「分かった!」
「……(その司教様がキースが言っていた赤ローブかな?)」
「っち!だんまりか?ならぶっ殺すだけだ!おい!行くぞ!」
剣を抜いた黒ローブたちが俺に向かってくる。俺は剣を抜いて魔力を剣に通し始める。
「“サンドスパイク!”」
魔力を通した剣を地面に突き刺し、発動言語を発して魔法を発動する。剣が突き刺さった土の部分が盛り上がり一本の大きな土の針が黒ローブたちに向かう。
「ッ!?魔法!?避けろ!!」
「グアアアァァ!?」
「ヒグッ!?」
魔法を発動してから真正面に居た何人かが避けきれずに纏めて突き刺さる。…正直、とても直視できないようなグロさだが俺は至って平然だ。っふ、俺も成長してるな。…え?感覚が麻痺してるだけだって?…ま、まぁそれでも今はありがたいさ!
俺は剣を地面から抜くと土で出来た針が崩れ落ちる。魔法の初撃に驚いている近くの黒ローブに向かって力の込めて剣を振り下ろす。「…え?」と何が起こったのかわからないような顔をしながら黒ローブは肩から斜め下にかけて袈裟切りされて息絶えた。
「(おわ!?なんか思った以上に簡単に斬れた!)」
「なっ!?気をつけろ!こいつかなりの力だぞ!散開して奴に攻撃しろ!」
俺を囲むように黒ローブたちが動いて連携するように攻撃してくる。だが、なぜかその攻撃のどれもが攻撃の瞬間だけゆっくりになる。俺は黒ローブたちが繰りだす剣戟全てを最低限だけ体を動かしてかわす。なんだろう?舐めているんだろうか?それともコレも作戦なのだろうか?どちらにしろ俺にとっては好機にしか見えないので、剣戟をかわした瞬間に黒ローブ達の首や胴体に剣を振り全て絶命させる。…面白いぐらいに簡単に首が飛んでいくな。
「なっ!?な、ななな、なーー!?」
指示を出していた黒ローブが意味不明な言葉を発する。モールス信号?
「な、なんなんだ!お前は!!一瞬でそいつらを皆殺しにするなんて!?」
「……(一瞬?結構時間が経っていた気がするけど?)」
俺が無言のまま指示を出していた黒ローブを見つめると、それが威嚇に思われたのか「ひ、ひいぃ!?し、司教様ぁ!!」と叫んで逃げ始めようとする。だが、後ろのほうから声が掛かった。
「やかましいですよ。一体何事です?」
「し、司教様!!お逃げください!とんでもない奴が!!」
「…ふむ、もう冒険者ギルドの救援が?思ったよりも早いですね。」
赤いローブを羽織った男が数人の黒ローブを引き連れてやってきた。
イサミは自覚していないですが、戦闘中のイサミの動きは黒ローブには一瞬で移動したかのように見えています。無自覚って怖いね!( ̄Д ̄;;




