突然の来訪者
私は旅に出ていました。はい、二つの剣を携え、化け物を倒しながら娘の尻を追いかける冒険者として…( ・`ω・´)人は俺を白き狼と呼ぶ
いやぁ、新作のゲームが面白くて…( ̄ω ̄;)スンマセン
---マロク---
「彼は大丈夫でしょうか?」
ネコ耳の少女とクマ耳の少女が心配そうな声でマロクに話しかけていた。今、開放された人たちはマロクと一緒に檻が沢山ある部屋の中の一角に固まっており、それぞれがお互いを声を掛け合いながらマロクが持っていた応急薬を使って簡単な怪我の治療をしていた。その光景を見つつ辺りを警戒しながらマロクは2人の少女に声を返す。
「さてねぇ~。まぁ大丈夫なんやない?イサミはん、只のオー…っとと、只の人やないから。」
思わず口が滑りそうになって慌てるが、2人には怪しまれなかったようだ。
「でも、たった一人ですよ?それに相手は沢山のオークですし…」
「なら、ワイも行けと?勘弁してやぁ~。それにワイが行ったら誰があんたらを見るっちゅうんや?」
「そ、それは…」
少し強めの口調で話しながらネコ耳の少女を見る。相手を怒らせてしまったと思ったのか慌ててクマ耳の少女が代わりに謝りはじめたので、「いいんよ、その子の言うことももっともや。」とおちゃらけに笑いながら話すと、2人が安心したかのような溜息をした。
「心配せんでもイサミはんは死なんよ。あの師匠が目をつけたほどや。それに…ッ!?」
「「???」」
マロクは話の途中で急に息を呑んでイサミが出て行った扉の方向を見る。2人の少女はなにがあったのか分からないといった顔をしていたが、マロクが短剣を抜いて構えるとすぐに異常事態だと感じて捕まっていた人たちの所に向かった。
「(なんや…?何が起きている?)」
扉の向こうから複数の足音が聞こえる。どれも慌てていて、まるで何かから逃げているような…そんな感じだ。この洞窟にいるのはマロクたちとイサミ、そして先にやって来たエルミア達以外は敵しかいないはず。イサミやエルミア達である可能性もないとは言えないが、可能性は低いだろう。
「(さてさて、蛇がでるか、鬼がでるか…。)」
後ろのほうに捕まっていた人たちが集まっているのを感じる。チラリと見れば動けるものは椅子や鉄の棒を構えて抵抗の構えを見せていた。少し不安が残る光景だが、ただ怯えているよりはマシだと思いながら扉のほうを見る。バンッと大きな音をたてながら扉を開いたのは複数の豚鬼共だった。
「まぁ、やっぱりね。」
案の定だったと思ってるとこちらを見つけたオーク共が駆け出して向かってきた。「来るで!みんな気ぃつけや!」と言いながら短剣を構えてオークに向かう。先頭を走っていたオークに向かって短剣を突き出す。勿論、そんな攻撃が当たるとは思っていない。恐らく、避けるか防御するであろうからその後の隙をついて仕留めるつもりだった。だが、
「あり?」
短剣はオークの胸に突き刺さりオークは悲鳴を上げながら倒れる。フェイク攻撃とはいえ本気の攻撃なので当たれば致命傷にはなるが、こんなあっけなく当たるとは思わなかった。一瞬、呆けてしまったが、すぐに周りのオークの反撃に備える。
「ありあり?」
周りにはオークが一匹もいなかった。全てのオークが仲間が殺されたというのに振り返りもせずに捕まっていた人たちに向かっている。
「ちょっ!?どゆこと!?」
マロクは慌てて、オークの後を追い始める。捕まっていた人たちの女性の何人かが向かってくるオークに恐怖し悲鳴を上げる。マロクも急ぎオークを追い、一匹、二匹とオークを倒していくが止まらない。そして遂に捕まっていた人たちの所にオークがたどり着いてしまった。
「(チッ!どう言う事だ?)」
思わず心の中で舌打ちしながらマロクはオーク共が蛮行を行う前に仕留める必要があると思い、マテリアを付与した武器を取り出そうとすると
「な、なんだ…?」
てっきりオーク共が捕まっていた人たちを襲い始めるのかと思っていたのだが、オーク共は捕まっていた人たちの後ろ側に回り込むと、まるで何かに怯えたかように震えながら、隠れるようにしゃがみ込んでしまった。その行為に捕まっていた人たちも訳が分からないといった表情だ。
あまりの意味不明な行動にその場にいたオークを除いた者たちが唖然としていると、オーク共が出てきた扉のほうから再び大きな音が聞こえた。
「ッ!!今度はなんだ?」
扉のほうをみると、そこには
「な、なんだあれは?」
そこには大きな漆黒の蛇がいた。いや、よく見れば蛇ではなかった。体は何か竜巻の渦のように常に動いており頭の部分も目や鼻と言ったモノがなくただ大きくパックリと二つに裂け別れてまるで大きな口のようなモノだけしかなかった。その姿は正常なモノではなく討伐されたりする化物ですら可愛らしく思ってしまえるほど禍々しいものだった。
その蛇はこちらに気付いたかのように頭の部分を此方に向けると、大きな口を開いて此方に物凄い速度で向かって来た。
「ッ!? ヤバイ!!」
「う、うわああぁぁ!?」
「キャーー!?」
「ブビャーー!?」
マロクは咄嗟にその場から退避する。蛇が大きな音をたてながらマロクの横を通過し捕まっていた人たちとオーク共に向かう。捕まっていた人たちは余りの出来事に対処できずにその場から動けず、オーク共も恐れていたものを見たかのように悲鳴を上げているだけだった。そして、そのまま全員が蛇に飲み込まれてしまう。
「ック!?コレはどうしようもない。」
マロク自身も逃げるので精一杯で助けることが出来なかった。蛇の喉が何かを飲み込むように動いている。ともかく、この場から逃げることが先決だと思ったマロクは短剣をしまい、蛇に気付かれないように移動しようとする。だが、移動する前に信じられないモノを見てしまう。
蛇は目的のモノを飲み込んで満足したのか頭を上げた。頭があったその場には血まみれた惨劇の場…ではなく、意識を失ったのか寝息をたてて崩れ倒れている人たちがいた。蛇に飲み込まれたと思われたその以前と変わっていたのは、オークが一匹もいないことだ。
「(どうなっている?)」
先ほどから理解不能の出来事が続いている。蛇は未だ得物を探しているかのように首を動かしている。マロクを見つけると口を開いて向かってきたので、捕まっていた人たちはそのままにしてその場から逃げ出した。向かう先はイサミが入っていった扉の向こうだ。
「(もしかすると…これもあのオークが関係しているのか?)」
蛇の体は扉の向こうから続いており、先が見えない。竜巻のようなその体には触れないようにしてその奥に向かった。
---ルドルフ&渡辺---
「お嬢様!!」
ルドルフはエルミア達が消え去っていった落とし穴の方に向かって声を荒上げる。そんなルドルフの声に落とし穴の傍にいた赤ローブが反応する。
「おやおや、彼女達は何処に行ったのでしょうかねぇ?落ちた先に彼女に乱暴するものが居なければ良いのですが…まぁ、そんな事はご老人には関係ないことですよ。」
「き、貴様ァ!!」
「おぉ、怖い怖い。臆病者の私は退散するとしましょう。」
赤ローブは笑いながら洞窟の奥に消えていった。ルドルフが追おうとするがサクリファイス・ゴーレムが邪魔をする。このゴーレムと戦闘を開始してから約20分経った。あの赤ローブの言葉を信じるなら、リルリカちゃんを助けるには最早時間がない。
「クッ、ワタナベ殿!ゴーレムの間接を凍らせることが出来ますか!?」
「む、無理ですよぉ~!魔法があのゴーレムに届く前に相殺されちゃいます!」
「ならば、相殺する時間を与えなければ良いだけの事!私が隙を作ります!その間にワタナベ殿が魔法で間接部を凍らせて下さい!それで動きを封じてリルリカ様をお助けします!」
「わ、分かりました~!!」
渡辺が了承したのを確認するとルドルフはレイピアを縦に構えて目を瞑り集中し始める。その光景がゴーレムには隙に見えたのかルドルフに向かって大きな拳を振るう。渡辺が「危ない!!」と叫ぶがルドルフは動かない。そして、拳がその体ににぶつかる寸前で…ルドルフがカッと目を見開いた。
「ハァ~ッ!!」
体を横にずらし大きな拳を紙一重で避けて後、ルドルフはゴーレムの懐に入り込む。リルリカを奪われると感じたのかゴーレムが片腕をコアの前に防ぐように配置する。だが、ルドルフの狙いはコアではなく、
「ここです!」
レイピアを拳を突き出した方の腕の間接部に向かって突き出す。ガキンッと甲高い音が響く。レイピアの先が削れたのではないかと思えるぐらいだったが、ルドルフはそんなことは気にせずにすぐにレイピアを抜き、そのままもう一度突き刺す。ゴーレムも溜まらず防御に回していた腕をルドルフに向かって伸ばすがルドルフはすばやい動きでゴーレムに隙を与えない。
効果がないと思われた攻撃だったがルドルフのレイピアは間接部を完全に破壊することに成功した。破壊されたことにより右腕が大きな音を立てて崩れ落ちるが、すぐにノアが攻撃したときと同様に腕が再生を始める。ゴーレムのほうも右腕のことは気にせずにルドルフに向かって攻撃を続けようとしている。だが、それこそがルドルフの狙いだった。
「ワタナベ殿!今です!」
「は、はい!“水よ!そのものに纏わり凍てつかせ!《氷の塊》!”」
渡辺の呪文と共に杖の先から大量の水が放出され、ゴーレムのその身を濡らしていく。片腕をなくし、もう片方は攻撃にまわしていたゴーレムは渡辺の呪文を防ぐ防魔の壁の発動が間に合わなかった。次々に濡れた箇所から凍り付いていき、次第には間接部も凍り始めゴーレムの動きが急速に遅くなり始める。右腕の再生も破壊された箇所が凍ってしまった為に止まっているようだ。
そんなチャンスを無駄にするほど、ルドルフはバカではない。ゴーレムの動きが鈍くなった瞬間、コア部のガラスを破壊し中にいたリルリカちゃんを救出することに成功する。中に捕まっていたリルリカちゃんは捕まる前は健康的な体をしていたのに、今はとてもやせ細ってしまい明るい茶色だった髪も少し白くなっている。まるで急激に年をとったかのような状態で、抱えているルドルフは少しの衝撃で崩れてしまいそうな恐ろしさを感じた。
「リルリカ様!お気を確かに!」
ルドルフが少し強めに語りかける。だが、リルリカが目を覚ますことがなかった。近づいてきた渡辺が急いで脈を確認する。
「…だ、大丈夫です。微かですが心拍を確認できます。でも、本当に弱い…今にでも消えてしまってもおかしくないぐらいに…。」
「…まさか、こんなことになるとは。ここにいないイサミ殿でも治せるかどうか…いや、今は早くお嬢様達と合流しイサミ殿のもとに急がなければ!」
こんなことならイサミ殿を連れてこればよかったと悔やみながらルドルフは自分が来ていたローブを裸の状態のリルリカちゃんに着せる。「イサミ?」と渡辺が首を傾げていたが、リルリカちゃんを救出した以上、この場所に長居は無用だ。それに先ほど赤ローブが言っていた事が気になって仕方がない。
「行きましょう!時間がありません!」
「そうですね!それじゃ…あッ!!」
背後のサクリファイス・ゴーレムが大きな音を立てて凍り付いていた状態から動きだしていた。コア部を失ってもまだ動くことが出来るようだ。そんなゴーレムが左腕を2人に向かって攻撃する為に高らかに振り上げる。
「いけない!」
「キャ、キャーー!?」
渡辺は恐怖から、ルドルフはリルリカちゃんを抱えていたために避けられる状態ではなく、そのまま二人に向かって冷たい岩の拳が振り落とされそうになった時、
ゴギャギャギャギャ!!
恐らく、エルミアが落ちた場所であろう穴から、一匹の巨大な漆黒の大蛇が大きな耳を劈くような音を立てながら這い上がってきた。その音はまるで、岩そのものを無理やり削りながら進んでいるかのような音だった。
「なっ!?あれは一体!?」
「も、もう、一体全体なにが起きてるんですかー!?」
突然の来訪者に驚いている二人を他所に、漆黒の大蛇は得物を見つけたかのように、ゴーレムに頭を向けるとありえないと思えるぐらいに口を広げて迫る。対して、ゴーレムもルドルフたちから大蛇に攻撃対象を移したのか、振り上げていた左腕を大蛇に向けて振り落とす。
ゴシャッ!!と大きな音をたてて、左腕が大蛇の頭ごと大地に振り落とされる。だが、大蛇は頭をつぶされたと言うのに何事もなかったかのようにすぐに体を起こすとゴーレムの体に纏まりつき始め、大きな音を立てながら締め付け始める。ゴーレムも必死に大蛇の体を引き剥がそうとする。
「わ、ワタナベ殿!?ここは危険です!急ぎましょう!」
「は、はいぃ!!」
いまだ、背後で盛大な音を立てながら戦闘を繰り広げているゴーレムと大蛇を気にしながらも渡辺とリルリカちゃんを背負ったルドルフは赤ローブが入っていった洞窟の先に向けて足を進めた。
補足:サクリファイス・ゴーレムはコアを失っても次のコアを手に入れるために約一日は動き続けることが可能です。もし捕まってコアにさせられると…
(~ヘ~;)うーむ。ゴーレムが美人な女性ならなぁ




