手掛り
関西弁をうまく使いこなせていないかもですが、ご容赦下さい。m(_ _ )m
「…ん。朝か…やっべ!?」
窓から差し込む眩しい朝日で目覚めた俺は、未だ眠たい目をこすりながらも慌てて体を起こす。昨夜、リルリカちゃんが攫われて、それをエルミアたちが追いかけて行った後、俺は今にも飛び出していきそうなリレーアさんに休むようにやや説得気味に伝えたのだ。リレーアさんが眠っている間は、部屋の扉の横で座って、再度の襲撃に警戒していたのだが途中で眠気に勝てなくなったようだ。
「リレーアさん。朝です。起きていますか?」
扉に向かって声をかける。…が、返事がない。
「っ!?ごめんなさい。入りますね!」
悪いと思いながらも部屋の扉を開ける。まさか俺が寝ている間に何かが!?と心配になったのだ。だが、部屋に入るとベットの上で眠っているリレーアさんを見ると、それが杞憂であったことが分かった。
「よかった…大丈夫だった。ん?」
俺はリレーアさんが何か大事そうに抱えて眠っていることに気付く。そっと、覗き込む。おぉ…、あんなにでかいメロン二つが上下に…ではなく。よく見るとそれは一枚の絵が入った額縁のようだった。絵は、おそらくリルリカちゃんであろう赤ん坊を抱えるリレーアさんと、旦那さんであろう男性が優しそうに微笑んでいる姿が描かれている幸せそうな絵だった。
「……」
俺は一度目を閉じてから、「よし…」と小さく呟いてから部屋を出る。そして、紙と鉛筆を取り出し置手紙を作る。
「“リレーアさん、おはようございます。私はしばらくの間出掛けて来ます。私が戻るまで決して宿から出ないでくださいね”」
と書いておく。そして紙をテーブルの上に置くと、俺はローブを被ってから宿から出る。目指すは、ルノリックさんだ。昨日手に入れたエンブレムについて何か知っていればいいのだが…。
「(さてと…、問題はルノリックさんが今どこにいるのかだけど…)」
とりあえず、マテリア屋にでも向かってみた。商人ギルドマスターと言っていたし、何かしら分かるだろう…と思っていたのだが…
「あ!この前の!…へ?ルノリックさん?商人ギルドマスター?えぇ?誰ですかその人?確か、セルジュークの商人ギルドマスターってトルステンさんですよ?」
詰んだ。いきなり詰んだ。
「(どういうことだってばよ!?もしかして騙された?うーん、でもそんな風には見えなかったけどなぁ)」
結局、このままでは埒が明かない。俺はそのトルステンに会えないか女性店員に尋ねることにした。
「トルステンさんに会いたいんですか?…多分、無理だと思いますよ?結構偉い方ですし」
ですよねぇ~。俺は、女性店員にお礼を伝えながらマテリア屋を出た。一応、トルステンのいる商人ギルドの場所を教えてもらったが、多分会えないだろうなぁ。いきなり来て「ギルドマスターに会わせろ!」なんて言ったら怪しさ抜群だもん。あっ、俺、話せないんだった。だとしたら尚更、怪しすぎるわ!
「(…まぁ、一応行ってみるか。会えなくてもルノリックさんの事が分かるかもしれないし)」
他に行く場所も思いつかなかったので、そのままトルステンさんが居る商人ギルドに向かった。
---商人ギルド前---
「(ここかな?)」
俺は、商人ギルド前に来ていた。商人ギルドはどこか役所みたいな所で、色々な人が書類を持ちながら仕事をこなしている様子が目に入る。場違いなようでおずおずと商人ギルドに入ると、すぐさま職員であろう男性が俺に話しかけてきた。
「ようこそ!商人ギルドへ!御用は何でしょうか?」
「“人を探しているんです。ルノリックさんを知りませんか?”」
いきなり文字を書き始める俺を見て、男性職員は一瞬、?マークを浮かべたが、すぐに納得したような顔で頷いた。多分、俺が話せないと察したのだろう。
「あぁ、人を探していらっしゃるんですね?…ルノリックさんですか。うーん、私は存じ上げませんね。只今、上司に聞いてきますので、こちらで少々お待ちください」
そう言うと、すぐさま男性職員は奥の方へと行ってしまった。特にすることもないので、邪魔にならないように椅子に座って大人しく待つ。今もこうしているうちにも、リルリカちゃんの身に危険が襲い掛かっていると思うと、気持ちが焦ってしまう。だが今はこうしている他ない。
「(ふー、エルミア達は手がかりとか掴めたかな?)」
「あ。イサミさんやん」
「(ん?)」
入り口のほうを見ると、なんとマロクが立っていた。俺は咄嗟に立ち上がり、マロクに詰め寄ると、紙に急いで文字を書く。
「“マロク、ルノリックさんは?”」
「師匠?師匠ならここに居てはるよ」
マロクが思いがけないことを口にした。ルノリックさんがここにいると言う。
「“すぐに会いたいんだけど”」
「…昨夜の事やね?事情は聞いてるよ。よっしゃ!師匠の所に案内したるわ」
「(…え?)」
俺は一瞬唖然とした。確かに昨夜の事は、俺達にとっては大事件だ。だが、世間にとってはそこまで重要性は高くないだろう。だから、何か起きた事すら知らないとばかり思っていた。
しかし、マロクは知っているようだった。まだ事件が起きた翌日の早朝だというのに、もう世間に広まっているのだろうか?この世界での情報伝達方法はどうなっているんだろう?
「ほら、ボゥっとしとらんと、こっちに来てや。リルリカちゃんをはよ助けなあかんのやろ?」
俺は頷きながら、手招きするマロクについていく。途中、「あっ!この先は関係者以外は…」と言われたりしたが、「ええから、ええから」とマロクが軽くあしらいながら進む。
「イサミさん。よくお出で下さいました。早速ですが、昨夜の事は暗殺ギルドから情報が入っています。私も協力を惜しみませんよ」
マロクに連れられて入った部屋には、いつもの動きやすい服装ではなくてどこかお偉い人が着てそうなピシッとした服装をしたルノリックさんが、椅子に座りながら紅茶を飲んでいた。どうやら、情報は暗殺ギルドと言うところから入手したようだ。…暗殺ギルドって…。そんなギルドがあっていいのかね?と思いながらもお礼の言葉を書く。
「“ありがとうございます”」
「いえいえ、その代わりと言っては何ですが、マロクを連れて行ってください」
「(えぇ!?)」
「はい~!?」
俺とマロクの気持ちが一緒になる。当然だ。俺は情報だけを手に入れたいだけであって、戦闘に行くわけでもないのだから。…いや、本当は行きたいけどさ。足手まといにはなりたくない。
「ちょ!?師匠!?何考えてんですか?」
「黙りなさい。これは決定事項です。師匠の命令です」
「職権乱用反対!?」
俺の気持ちをよそに2人が話している。
「“あの、俺は情報が欲しいだけで、実際に助けに行ったりはしないですよ?”」
「…ほう?そうなのですか?まぁ、それでも構いません」
「師匠!ワイの意思は!?ワイの意思は無視ですかぁ!?」
埒があかないので、俺は話を進める為に懐からエンブレムを取り出してルノリックさんに見せる。
「これは?」
「“昨夜の犯人達の一人が持っていたものです”」
エンブレムを受け取ったルノリックさんがマジマジとエンブレムを見つめる。
「…これを預かってもよろしいでしょうか?申し訳ないですが、初めて見るので、これを知り合いに見せて話を聞いてみようと思います」
俺はたまらずガクッと肩を落とす。ルノリックさんならもしかしてと思っていたが、どうやら的が外れたらしい。
「お力になれず申し訳ない。とりあえず、宿に一度戻られては?リレーアさんも落ち込んでいるでしょうし…」
俺は頷いてからとぼとぼと部屋から出た。
---???---
「…何をお考えなのですか?私を護衛から外すなど」
「そう言うな。確かにお前以上の護衛はいない。だが、他にもそれなりに腕の立つ護衛はいる。今回は、護衛の数を増やせば良いだけのこと。何より、イサミさんと同行することで、あの不思議な力について何か情報が掴めるかもしれん」
「それほどまでに、あのオークに価値があると?」
「…イサミさんと呼べ。お前の悪い癖だ」
「……」
「ふぅ、まぁいい。いずれ分かるさ。イサミさんは私が見込んだお方だ。…絶対に死なせるな」
「…では、すぐに暗殺ギルドに連絡し、腕の立つものを数人護衛に回します」
「あぁ、そうしてくれ」
男は風のようにその場から消え去り、もう一人の男は一息ついてから先ほど手に入れたエンブレムを忌々しげに見つめる。
「ルーラー・サプライン教団…か…」




