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転生ライフ!オークライフ!?  作者: エケイ
第三章 : 王都 誘拐
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久しぶりのお風呂


 俺はDO・GE・ZA!の姿勢から立ち上がり、再びルノリックさんの横に恐る恐る座る。途中、「そんなに畏まらないでください」と苦笑しながら言ってくれた。俺も心の中では分かっているのだけど、勝手に体が緊張しちゃってる感じだ。例えで言うならそうだな…。学校登校日の朝に、校長先生に話しかけられた感じだろうか?とにかく、落ち着かない。


「“どうして、俺にその事を話してくれたんですか?”」


 ベンチに座ると、気になっていた事を聞く。ルノリックさんが商人ギルドの長と言う事は、初めて会った時には話していなかった。先ほども、夢幻で幻惑を見せるまでは話していなかった所を見ると、この事は恐らく秘密にしていた事なのだろう。


「正直に話した方が利益があると感じたからです」


 俺の質問に、ルノリックさんは正面から俺を見て答えてくれた。オークに向かって信頼を寄せる事がどれだけ難しい事か俺には分からないが、ルノリックさんを見ていると嘘は言っていないように感じる。


「“利益ですか?でも、俺にはそこまで価値があるとは思えないんですが?”」

「……本当にそうお考えですか?先ほども言いましたが、この薬は国が数個あるか無いかと言うぐらいの貴重な薬です。それをあなたはあの少女に何の見返りもなく差し出していたではありませんか。それに、転生が本当かどうかは別にしても、オークがこれほどまでに文字を覚えられるのは珍しいのですよ?」


 うっ。確かに、文字の件は誤魔化せても、薬の件はどうしようもない。まさか、それほど貴重なものだとは思わなかったんだよな…。精々、銀貨2、3 枚で売れればと思ってた。


「……」

「人を見る目には自信があるのです。そんな私の感覚が、イサミさんとは交流を深めておいた方が良いとささやいているのです。ですからこれから先、困った事があれば私を頼っていただきたい」

「“ありがとうございます”」


 感謝の言葉を伝えながら、俺は?マークを浮かべていた。そこまで、してくれるのはなぜだろう?


「そして、私が困った時はイサミさんに助けてほしいのです。えぇ、無茶を言うつもりはありませんから。ふふふ……」


 この時、俺は気がつかなかったが、偶然通りがかった野良犬がルノリックさんの笑みを遠くから見て「キャン!?キャン!?」と吠えながら逃げて行った。まるで、何か恐ろしい物を見たかの様に…。




-----------



「「お帰りなさい!」」


 あの後、俺はルノリックさんと一緒に宿屋タカナミに戻ってきていた。タカナミの扉を開けた途端、中からリルリカちゃんとエルミアの元気な声が掛けられた。それに手を振り返して答えていると、2人の声が聞こえたのか、キッチンの奥からリレーアさんが少し慌てて出てきた。


「……あ、あの、イサミさん。リルリカから話を聞いたよ。私達の為に貴重な薬を譲ってくれたんだってね?普段なら同情なんていらないよって言うんだけど、その…リルリカに説得させられてね…「イサミさんの気持ちを無駄にしないで!」ってさ。まさかこの子に説教させられる日が来るなんてね…。イサミさん、本当にありがとう。貰ったお金は大事に使わせてもらうよ!でも、全部はいらないから半分は返すわね」


 最後は苦笑しながら、俺に金貨十枚を渡してくれた。正直、そんなにお金に困ってるわけでもない。だから別に全て貰ってくれても良いのにと思っていると、リレーアさんが「流石にこんなに沢山貰えないよ」と笑みを浮かべてキッチンの方に戻って行ったので、仕方なく持っていた袋の中に金貨を入れておいた。


 その後、何時もより少し豪華な夕食を食ベている途中に「これからどうされるのですか?」とルノリックさんに聞かれたので、一週間後に港町の方に向かう予定だと伝えると、「ならば、私たちも一週間後に移動しましょう」と言っていた。どうやら、ルノリックさんは俺を逃がすつもりは無いらしい。夕食が終ると、ルノリックさんとマロクは帰って行った。

 

「そういう事があったのですか…」


 ルドルフさんに今日あった出来事について説明する。エルミアが何度も「イサミは凄いんだよ!」と言って話がなかなか進まなかったのだが、興奮気味のエルミアちゃんが可愛かったので良しとする!


「ルノリック殿は、恐らくイサミ殿が普通の人間ではないと気付いているのでしょう。幸い、あの方はそれを理由に何かしら仕掛けてくる人物とは思えませんが…。イサミ殿、それにお嬢様も、もう少し危機感を持って行動していただきたい!」


 そうしてルドルフさんに一時間ほど叱られた後、俺は風呂に入る為に大きめなタオル(少しボロボロだが)を借りていた。なんと!この世界では風呂が世間に流通していたのだ。流石に、どこの家にでもあるわけではないらしいが、このタカナミには少し大きめなお風呂が設置されていたのだ。…さっきエルミアから教えてもらって初めて知ったんだけどね。


「お風呂~♪お風呂は日本の心~♪」


 俺は小声で鼻歌を歌いながら風呂場に向かう。ここ(タカナミ)なら多少、声を出しても心配ないので気楽になれる。脱衣所に着くとパパッと服を脱ぐ。服を脱いだ時、デブンッと揺れる自分の腹を見て「はぁ…」と溜息が出てしまった。


『どうした?イサミ?』

「ん~、やっぱり太ってるなぁと思って」

『仕方あるまい。その体型はイサミに負荷をかけない様になった姿だ。我慢しろ』

「まぁ、分かってるけど…。はぁ~…。はっ!?」


 俺はふと気がついた。俺の知ってるオークと言えば豚の化け物だ。鏡が無いので確認できないが確か、水に映った俺の顔は豚顔だった。ならば、…尻尾も生えているのでは!?


「!?………ふぅ、良かった無いや」


 バッとお尻の部分を手で触れて確認するが、それらしいものは見当たらない。俺の杞憂だったようだ。


「さて、お風呂♪お風呂♪」


 俺は久しぶりのお風呂を満喫した。



---リレーア---


 イサミさんがお風呂を満喫している間に、私とリルリカは夕食の後片付けをしていた。エルミアちゃんとルドルフさんは、今後の予定について話すと言っていたので、今は2階の部屋にいるのだろう。


「お母さん!今日は本当に良かったね!」

「えぇ、そうね。これもエルミアさん達が来てくれたおかげね」

「うん!ねぇ、お母さん!イサミさんってかっこいいんだよ!この前、私を苛める子達から助けてくれたし、今日も私が泣いてて「誰か助けて!」って思ってる時にイサミさんが助けてくれたんだよ!」

「そう。良かったわね」

「うん!」


 私は本当に嬉しそうに笑うリルリカを見て、本当にイサミさんに感謝の心で一杯だった。リルリカは大好きだった夫が亡くなってから、あまり笑わなくなってしまった。いつも、借金取りが来るたびに震えていて、借金取りが帰ると私に抱きついていた。そんな姿を見るたびに早くこの子を幸せにしてあげたい。その為なら、体を売ってでも…と考えていたが、夫に対して申し訳ない気持ちと、リルリカに知られた時の事をと考えてしまい一歩を踏み出せずにいたのだ。


「(だけど、もうそんな心配もいらないわね…)」


 リルリカ自身は気付いていないかもしれないが、今も本当に幸せそうに笑っている。その笑みこそ私が求めていた姿だった。お金が手に入った事は勿論嬉しいが、この姿をくれた事が一番嬉しかった。


「(イサミさん達にお礼をしなくちゃね…。お礼かぁ…)」


 一瞬、一度だけ見たイサミのオークの姿を思い浮かべる。時折、本や街に配布される冒険者ギルドの討伐書類でオークの姿を見た事があったが、正にその通りの姿だった。初めて見た時は、本当に恐ろしかった。オークと言えば異性を狙って襲ってくる魔物の一種であり、非常に危険だと教わってきたからだ。だが、実際は変にいやらしく絡んでくる男達よりよっぽど紳士で、今回も私達家族の為に貴重な薬を差し出してくれた。だからか、今こうやって思い浮かべても嫌な気持ちが浮かばず、むしろ…


「(な、なに考えてるのかしら私!?もうおばさんだってのに…。…でも、オークってそういう事が好きなの…よね?)」


 多分、誰から見ても分かるぐらい自分の顔が赤くなっていると感じた。リルリカも「お母さん?」と不思議そうに聞いてきたので「な、なんでもないよ!?」と答えて自分の変な気持ちを一蹴した…その時だった。


「おい!リレーア!いるんだろう!出てこい!」


 入り口の扉を強引と言った感じに開き、苛立ったような声を出しながら男が入ってきた。その男は、今朝がた借金を取りに来た男だった。


「あ、あなたは!?何しに来たのよ!」

「あぁん?ここには確かお前の娘がいたよな?12歳くらいの」


 男はリルリカを見つけると品定めでもするかのような目で見つめる。そんな男の視線が嫌だったのかリルリカは「ヒッ!?」と言うと私の後ろに隠れた。


「リルリカを変な目で見ないでちょうだい!お金なら返すから出てってちょうだい!」

「あぁ!?お金を出すだぁ?」


 すぐさま金貨3枚を取り出すと男に向かって差し出す。男は最初、馬鹿にするような顔で私の顔を見ていたが、手のひらの金貨三枚を見るとギョッとした顔をする。


「なっ!?金貨3枚!?」

「ほら!これで文句ないでしょ!もうここには来ないでちょうだい!」

「い、いや!それは、俺も困るっ…!?」

「…何をしているんですか?」


 なぜかお金を受け取ろうとしない男に無理やり渡そうとすると、入り口から知らない別の男が入ってきた。その男はやや暗い赤色をしたローブを被っていて、素顔が見えない。


「だ、だれ?」

「これはこれは、美人な奥方ですな。いやはや、これほどの女性を置いて死ぬなんてあなたの夫は罪作りな方ですなぁ」

「ッ!?」


 赤ローブの男は、私をジロジロと見つめてくる。その視線に私はゾッとした良くわからない嫌悪感を感じた。これまで何度も知らない男達からいやらしい視線を感じた事はあるが、この赤ローブの男の視線は、今まで感じた事が無いぐらいの不気味で気味が悪い視線だった。


「ですが、残念ながら今回はあなたに用は無い。そちらのお嬢さんに用があるのです」


 ローブを着た男は、視線を私の背中に隠れているリルリカに向ける。私以上に恐怖に感じたのか、リルリカはガタガタと震えている。


「あ、あなたも借金取り!?お金ならあるから出てって!」

「借金取り?」


 赤ローブはしばらく黙り出したかと思うと、急に剣を抜いて私に切っ先を向けた。


「訂正しなさい。…私を借金取りなどと、低俗なものと一緒にするなぁ!!!」


 男が急に大声を出したかと思うと、剣を一閃するのが見えた。それが、私が見た最後の光景だった。


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