表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ライフ!オークライフ!?  作者: エケイ
第二章 : 王都セルジューク
40/186

大馬鹿---彩華---


 お風呂から上がり、健二君達と皆で話をした後で、私は部屋で本を読んでいた。大分、部屋に来てから時間が経っている。それでもナターシャさんが来るまではまだ掛かるだろうと考えていると、元からこの部屋に置いてあった本があったのでそれを読んでみることにした。


 手に取った本の内容は「聖覇王」についてだった。軽く中身を見ると子供でも分かるように絵が大きく描かれており文字が少しだけという絵本のようなものだった。


「聖覇王って確かこの世界を一度は統一しかけた人だったかな?統一目前で急死したって聞いたけど…」


 本をめくる。最初の一ページ目にはお墓の前で泣いている少年の姿が描かれていた。


 “昔、昔、とある帝国に1人の少年がいました。その少年には1人の友人がいました。しかし、あるとき、その友人は悪い人によって殺されてしまいました。少年は友人が死んでしまった事を嘆き、1人泣いていました。”


 次のページをめくる。次のページには剣を振っている少年や、机に座ってローブを被った老人?に勉強を教えてもらっている場面、あとは上半身が裸で剣を持っている男の人と騎士、そして少年の三人で笑っているシーンが描かれていた。


 “少年は友人を殺した人、そしてそれを正そうとしない国に復讐する為に、力をつけようと考えました。ある時は、剣を振るい、ある時は、賢者に教えを請い、ある時は、友人達と仲を深めていきました”


 次のページには城壁の上で右手に剣を掲げ、左手に旗を持っている少年と、それを見上げる人々が描かれていた。


 “修練を積み、仲間を増やしていった少年は、遂に帝国に反乱しました。反乱には少年と仲が良かった人たちや追放されていた騎士たちが加わり、少年がいた街を見事陥落させました”


「(大分省略可されているけど…子供向けだし仕方ないのかな?)」


 私はふと窓の外を見る。外は真っ暗だが、僅かに霧が出てきているようだ。私は開いていた窓を閉めてからページをめくる。次には絵と言うよりも地図が描かれていた。街がある所に丸が描かれていて、次の街まで矢印で記入してある。恐らく、侵略図なのだと思う。


 ”少年と仲間たちは次々に帝国の砦や街を陥落させていきます。中には帝国への反乱に賛成し戦う前から仲間として加わった砦もありました。それは少年が持つ人を引き付ける力と交渉力のおかげでした”


 次の絵は跪きながら王冠を差し出している豪華な服を着た人と、その王冠を受け取る少年の姿が描かれていた。


 “旗揚げしてから僅か3年で帝国は少年に降伏しました。少年は当時の王様達を許し、新しい王になりました。僅か3年で当時世界最強と言われていた帝国を攻め落とした偉業をたたえて少年を新しい王となる事に反対する人はいませんでした”


「三年で征服なんて…、かなり物語として話を変えられてそうね」


 勝てば官軍という諺があるくらいだし、実際どれくらいかかったのかは当時でしか分からないと思いながらページをめくる。そこには先程までの少年がすこし年を取った感じの青年が立っていて、その前にいろんな人種の人たちが跪いていた。

 

 “少年が帝国の新しい王になってからは、帝国は画期的な発展を遂げました。少年が青年になる頃には多くの国を支配し、色々な種族の国をも支配していきました。しかし、青年は支配した国を無理やり押さえつけるのではなく、共存による平和を目指していました”


「……」


 私は無言でページをめくる。そこには城で多くの人から祝福を受けている青年、というより大人の姿があった。


 “帝国で旗揚げしてから約8年で世界の大半を支配し、支配地は発展と平和を与え続ける偉業を成している王を、あらゆる種族の人たちが尊敬と畏怖の念を込めて「聖覇王」と呼びました。その後も平和な時が続くと思われました。しかし…”

 


コンコン


「アヤカ様。ナターシャです。」

 

 なんだか続きが気になる所で扉がノックされナターシャさんの声が聞こえてきた。


「ナターシャさん?今、開けます。」


 本を本棚に戻してから私はドアの鍵を開けてから扉を開いた。


「ナターシャさん。こんな時間にごめんなさい」

「いえ、構いません。それよりも残念なご報告が…」

「あっ…、いえそれだけでなんとなく分かった気がします」

「申し訳ございません…。報告としましては、未だにそれらしい手掛かりはつかめていないそうです。ギルドの方にも問い合わせているそうですが、色よい結果は得られていません…」

「そうですか…、ありがとうございますナターシャさん」

「申し訳ありません」

「良いんです。それよりも今日は休んでください。明日も早いんでしょう?私の我儘に付き合ってくれてありがとうございます」

「アヤカ様…。…それではおやすみなさいませ」

「はい。おやすみなさい」


 ナターシャさんはすまなそうな顔をしながら一礼してから帰って行った。私はもう何度目か分からない残念な報告を思いだして肩を落とす。


「もう…、諦めた方がいいのかな?」


 扉を閉めてからベットに倒れこむ。すると睡魔が急速に襲いかかってきた。ナターシャさんには疲れていないと言っちゃったけど、やっぱり疲れていたみたいだ。


「勇…」


 私はそのまま深い眠りについていった。







 彩華が眠りついた後、彩華の部屋の扉が開いた。そして眠っている彩華の近くの本が何者かに持たれたかのように宙に浮く。簡単にペラリペラリとページをめくられた後、元の本棚に戻る。しばらく静寂が続いたかが、ふと彩華の髪が撫でられたかのように動く。そして机の上にポトリと何かが落ちた後、再び扉が開き、閉まる。深い眠りについていた彩華は、その事に気付く事がなかった。



私は暗闇の中にいた。ずっと一人ぼっちでさみしくて気が変になりそうだ。

『だ、誰かいませんか?』

返答はない

『誰か!?健二君!優斗君!大吾君!皆!』

返答はない

『…誰か』

誰もいない暗闇の中私は1人。立っているのが怖くなりうずくまる。

『……勇ぃ』

私は小さく震えた声で呟いた。誰にも聞こえないくらい。私でも聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で。

『あん?呼んだか?』

『ッ!?』

私は驚いて顔をあげる。そこには高校にいた時と同じ格好をした勇がいた。

『勇!?』

『彩華、お前頭いいくせに本当に馬鹿だよなぁ』

『い、勇?』

『なんだ?俺の事忘れたのか?』

勇が笑う。私はそんな事は絶対に無いと強く否定するかのように首を振る。

『どうした?誰かがいなくなると思ったのか?』

『…うん』

『皆、近くにいるだろうがよ』

私は周りを見ると暗闇だった世界が晴れていき、私の周りには大勢の人たちがいた。

『み、みんな!』

『な?』

『…でも』

『あん?』

『勇がいない…』

途端にまた世界が暗闇に包まれていった。

『勇!どこにもいかないで!』

私は立ちあがって勇の左手を掴む。

『お願い!』

私はギュッと目をつぶって勇の左手を強く両手で握りしめる。二度と手放さないように。

『はぁ…』

勇は溜息をつく。そして、右手で私の頭を撫でてきた。その手はとても優しく温かい気持ちにさせてくれる心地よさだった。

『俺は消えたりしねぇよ』

『でも!』

『心配しなくてもそのうち会えるだろ。だから大丈夫だって』

私は勇の顔を見る。なっ?と言う風な笑顔で私を見ている。

『うん…』

私は勇の左手から両手を離す。

『よしよし。んじゃ、俺はもう行くわ』

『えっ!待って!勇!』

『またいつか会えるって。んじゃな!』

勇は背を向けて歩いていき後ろ手を振っている。

『待って!』

私は咄嗟に走って右手を伸ばした。






「待って!…あれ?」


 気がつくと天井に向かって右手をのばしていた。先ほどまでの事が夢であった事に、気付くのに数秒かかった。


「あはは…、ダメだな…私」


 上半身を起こして頭を触る。夢まで勇の事を考えるなんて、惨めになるだけなのに。…でも、やけにリアルな夢だったなぁ。特に頭を撫でられている時なんて本当に撫でられているようだったし。


「はぁ…。しっかりしなくちゃ!」


 私は一度、両手で頬を軽くたたくとベットから起き上がる。今日はフレデリック学園にいかないといけないので、支給された制服に着替える。着替え終わってから今日持っていく物を取ろうと机の上を見る。


「ん?何かしら?」


 机の上には鞄の他にややぼろぼろの小さなメモ帳らしきものが落ちていた。それを拾い上げると、私は思わず目を疑ってしまった。


「これって生徒手帳!?私のじゃない?一体だれの?」


 少し慌てて生徒手帳を開く。そこには


「ッ勇!?」


 山県 勇と記入してあった。


「嘘!?どうしてここに!?」


 私は慌てながら生徒手帳をめくる。生徒手帳があると言う事は勇がこの世界に来ているという事になる。ここに手帳が置いてあるからには、何か勇に関する事が書いていないかと思ったからだ。


「ッ!?」


 生徒手帳の最後の方のメモ用シートの所に勇が書いたと思われる文章があった。


 “よっ!元気にしてるか?俺は元気に異世界ライフを楽しんでいるぜ!まぁ波乱万丈だったが、なんとかやってるぜ。お前は俺を探しているって聞いたけど心配ないんで探さなくていいぞ?んじゃ、元気でな!

P.S. 一応、俺が書いたって証拠を書いとく。お前って小学5年生の時に布団に見事な世界地図を書い…”


 バンッ!と言うくらいの勢いで手帳を閉じた。あの事を知っているのは確かに私の家族か、勇ぐらいのものだ。だからこれは勇が書いたものなのだろう。勇が無事であることを確認できて、本来の私なら喜んでいただろう。でも…


「あっのっ大馬鹿(イサミ)!!人がどれだけ心配したと思ってんのよ!なのに心配ないんで探さないでいいですってぇぇ!!??」


 この日、城中の皆が何事か!?と思うぐらいの大声が響き渡った。その声にはもう何かを心配しているような落ち込んだ気持ちは含まれていなかった。




次回から、イサミ編に戻ります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ