戦闘レベル試験2---彩華---
「はじめ!」
エゴールさんの声が響き渡る。その声に反応したダミードールがこちらに向かってくる。私は木刀を両手で構え、集中する。
「………」
静かに息を吐きながら相手の動きをみる。盾を持った左側から攻撃するのはあまり意味が無い。なのでどうしても剣を持った右側になる。そして相手の隙を突いて一瞬で決めないと、竹中君や佐々木君のように対応されて次の攻撃が難しくなる。
「(勝負は一撃で決めないと…)」
ダミードールの攻撃範囲に入ったのかダミードールが剣を振り上げようとする。
「ッ!!」
私は振り上げた一瞬を狙って、右胴側に剣を横なぎにしながら過ぎ去る。カンッ!と今まで聞こえた音よりも小さな音だったが、確実に胴を叩いた感触があった。
「っ!?そ、それまで!!」
エゴールさんが慌てて声をだす。勝負は一瞬で終わった。
「おぉ~~!!」「すげー!」「一瞬かよ!?」
皆が驚きの声をあげているのを聞いて、何とか上手く言ったと分かり、ホッと息を吐く。
「…お見事ですね。まさかあんな一瞬で決まるとは…」
「偶々、うまくいっただけです」
「偶々?あれが偶々なのでしょうか?…まぁ、良いでしょう」
どこか納得いかないと言った顔をしながらも、エゴールさんが皆にこちらに集まるように声を掛ける。こちらに来た皆が私に賛辞を送ってくれた。
「凄かったよ!彩華さん!!流石、剣道個人大会、全国一位を取った事があるだけあるよ!」
「あぁ、あんだけ綺麗に、しかも一瞬で勝負を決めるんだもんな。流石だぜ会長さん」
「お見事でした、会長。私も精進しないといけませんね」
「ありがとう、皆!」
ダミードールとの戦闘後、エゴールさんとは別の人たちがやってきて私たち一人ずつのステータスカードを確認していく。そして、武術と魔法のどちらを中心に覚えていきたいか、どのような戦いをしたいかといった簡単な質問を受けた。先ほどの戦闘から得たデータとステータスカードからの情報、そして最後の質問から検討してクラスを決めるそうだ。
「アヤカさんという方ですね?ステータスカードを確認しました。さすが勇者というべきでしょうか?レベル1で速さがこれほどあるとは…」
「そうなんですか?」
「はい。普通、レベル1だと速さ4あればいいほうですよ。もちろん例外はありますが」
「例外ですか?」
「たとえば、あなたたちのような「女神の加護」を受けた勇者や、もともと才能がある方たちですね。といってもその中でもアヤカさんは異常といえるほどですが」
私達のステータスはこの世界ではかなり上位のものらしい。どうやら「女神の加護」というものがステータスを上昇させているらしい。
全員の質問等が終わると、今日は城に戻ることになった。みんな、初めての戦闘というものを体験したせいか、どこか疲れたような顔をしていた。
城に戻ってから私はアレイさんに勇が見つかったかどうかを聞いてみた。
「申し訳ありません。未だ、イサミ殿の関する情報が入っておりません」
「そう、ですか…」
「全力で探します故、何とぞご安心を。なに、その内に見つかりますよ」
咄嗟に元気をなくした私を見て、アレイさんが励ましの言葉をくれる。だが、私は力無く頷くことしかできなかった。
そのあと、私はみんなと見たことのない豪華な夕食を食べる事になった。伊勢海老のような大きく真っ赤なエビを茹でたようなものや、とても良い匂いがするスープ、花のように綺麗に盛られたサラダなどがあり、みんな食べたことのない料理に夢中になっていた。私もおいしい料理が食べられて嬉しかったが、勇のことを考えると少し落ちこんだ気分になってしまった。
夕食を終えてから、女性陣と共に見たことのないような大きなお風呂に入った後、私は部屋で勇のことを考えていた。
「勇…、本当にどこに行ったのよ…」
もしかすると、勇は世界に来ていないのかもしれない。それならそれで良いはずだ。あの後、教室にいなかったのなら何とか助かって元の世界で元気にやっているかもしれない。
「(もしそうなら喜ぶべきなのに…。どうしてこんな気持ちになるんだろう…?)」
勇が近くにいないと言う事に、心配を通り越して焦りのようなものが私の中にあった。昔から自分の近くには勇がいるのが普通だった。いや、勇の近くに私がいたと言うべきか。とにかく、私と勇はいわゆる幼馴染というやつで、小さい頃から今までずっと一緒にいた。なのに今は近くにいないと思うと、なぜか落ち着かなかった。
「(…もしこの世界にいるのならアレイさんが全力で探してくれるって言ってくれてたし、すぐにみつかるわよね?それにもしこの世界にいるのなら私が助けてあげないと!そのためにも私は力をつけなくちゃ!)」
私は誰にでも言うのではなく、自分自身に言い聞かせるように「心配いらない」と口にして、その日は休むことにした。
翌日、私たちのクラス別けが決まり、私と鈴木君は剣術、竹中君は体術、佐々木君は魔術を主に習うクラスに分けられ他の学生たちもバラバラに分けられていった。戦い方でクラスを分けている為、大体2人か3人に別れてそれぞれのクラスに行く事になる。ちなみに私は鈴木君と2人で剣術を主に学んでいくクラスになった。
皆と別れる際に、それぞれ頑張ろうと互いに声を掛けてから別れる。私は鈴木君とエゴールさんについていく。どうやら私たち二人の直属の教師はエゴールさんらしい。
「ここが教室になります。後で、私が声を掛けますのでそれまでここで待機してもらえますか?」
エゴールさんの言葉に私たちは頷く。それを見て頷いてからエゴールさんは教室に入って行った。
「彩華さん。なんだか、緊張してきたね」
「そうだね…。でも、思っていたよりも私たちの学校に似ていて驚いたよ」
「確かに」
しばらくすると、中からエゴールさんの声が聞こえてくる。
「サイトウさん、スズキさん。中に入ってください」
その言葉に私と鈴木君は互いに頷いて中に入る。教室のドアに手を触れた瞬間、小さい頃から私が困った時、いつも助けてくれた勇のことを思い出す。何故か勇の姿を思い出すと、重くなっていた気持ちが少しだけ軽くなった気がした。
「(…勇、待っててね。私、今よりもっと強くなって今度は私が勇を助けるから!)
私は教室のドアを開いて、中に入った。
次回は半年後(イサミとっては現在)の話です。




