城に潜入!
匂いを頼りに夜の街の中を進む。彩華の匂いは城門前であった時に覚えたので問題ないのだが…、匂いを嗅いで人の後を追うとか変態みたいだ。…どうしよう。既になんか色々挫けそうになってきた。
「(何やってんだろ…俺)」
途中何度も帰ろうかな?と考えてしまったがその度に彩華の悲しい目を思い出してしまい、気がつけば彩華がいると思われる所まで来てしまった。
「(あ~、やっぱりここかぁ)」
悲しい予想通りと言うべきか…、そこに見えるある建物はこの国で一番大きく重要な建物である"王城"であった。
「(もしかすると、どこかの高そうな宿とか淡い期待をしてたけどダメだったかぁ。やっぱり勇者となると王城に住んでるのか。…俺なんて異世界に来てから一週間近く死ぬ思いをしながら野宿したってのによ~…)」
ちょっと愚痴りながら、王城の城門の他に裏口のようなものがないか探す。だが、王城は大きな水掘に囲まれており王城へ入るには、跳ね橋を通って城門を通る以外に道はなさそうだ。
「(これは…流石に無理か?ヤシロ)」
『ふむ、この城から少しだが魔法障壁の気配を感じる。だが、この程度ならば問題ない。イサミ、やや広範囲だが城全体を少しずつ自分の魔力で包み込むようにイメージして夢幻を発動するのだ』
「(また無茶を仰る。城全体って…、これ東京ドームよりも大きいんじゃね?)」
『東京ドーム?まぁいい。今度は発動相手の意識を無理にどこかに向ける必要はない。イサミ自身が見えないように意識するだけでよい』
「…わかった(ヤシロは厳しい。これは決定事項だな。)」
城の入り口である跳ね橋の近くに近寄ると、俺は自分の魔力を城に流すように意識する。
王城は非常に大きいので正直自分の魔力で包み込むなんて無理なんじゃ?とも思ったが、自分がどれくらいできるのか試してみたかったのと、ヤシロに言われた通りにすれば何とかなるのでは?と言う淡い期待から、諦めずに静かに集中して行っていく。
自分の中に流れている水のような流れを、城に向かって流していく。すると少しずつ城全体を俺の魔力で囲っていくのが感じられた。
ある程度流し込むと、次第に城周辺に霧が発生して白く包まれていく。そして、城全体が俺の魔力で包まれたのを確認すると夢幻を発動する。いつもならば注意を違う場所に向けるのに対して、今回は俺自身に注意を向けさせないようにイメージする。
「(俺は道端にある石ころのようなもの。俺は道端にある石ころのようなもの。…なんか悲しくなってきた)」
夢幻のイメージを完成させると、魔力の流れが一定毎に循環して流れ始める夢幻発動時の特有の感覚を感じた。多分これでうまくいったと思う。
「(これで大丈夫かな?)」
『うむ。問題ないだろう』
俺はやや恐る恐るといった感じに、跳ね橋前で見張りをしている兵士に近づく。一応、王城とその付近全てに夢幻を発動しているから問題はないはずだが…?
「…問題なさそうだな。本当に夢幻って便利だな」
ローブで顔を隠して夜の街を歩いている怪しさ抜群の俺が、兵士の目の前で何度も繰り返して歩いているのに何も言ってこない。試しに兵士に向かって手を振ってみたが何も反応なし。本当に俺が見えていない、或いは気にすらされない存在になっているようだ。
「よし、なら進むかな」
兵士の間を通って跳ね橋を渡り城門前に辿り着く。王城の大きな城門は固く閉ざされているが、城門の他に兵士用の扉があったのでそちらから王城の中へと入る。
王城の中は、非常に多くの道が存在しており、どの道がどこへと繋がっているのかさっぱり分からない。匂いで追いたいが、多くの匂いが邪魔をして上手く追えそうに無い。
「(予想はしていたけど、本当に広いな。さて勇者達はどこにいるんだろう?)」
兵士の詰め所らしき所を通って王城の中庭が見える通路を通る。時折、深夜だと言うのに働いている兵士やメイドさんが俺の横を通り過ぎる度にヒヤリとするが、全く俺を気にする様子もない。
「(ふぅ~、分かってても緊張するなぁ。…ん?)」
「だから、いいじゃないか。今夜、どうだい?」
「や、やめてください!」
しばらく通りを歩いていると柱の陰から話声が聞こえた。少し気になって近づいてみると…
「(っげ!?鈴木じゃねぇか!)」
声がした場所には私服姿の鈴木と、困り顔のメイドさんがいた。どうやらメイドさんを柱の陰で口説いるところだった。女癖が悪いというのは本当らしいく、今も柱に片手を当ててメイドさんを逃がさないように話している。
「いいじゃないか。君だって僕の事は嫌いじゃないんだろう?」
「そ、それはそうですが…」
「なら…」
鈴木がメイドさんに向かって顔を近づける。メイドさんは鈴木に対して強く出れないせいか、ギュッっと目を強くつぶる事しかできないようだ。
「(…さすがに止めた方が良いな)」
メイドさんが嫌がっているようにしか見えないので、城にいる事がバレるのも構わずに鈴木を止めようとした瞬間、
「スズキ様!お戯れはそこまでになさってください」
後ろから青色で肩まである髪をしたメイドさんが声をかけてきた。
「メイド長!」
「…おや?ナターシャさんじゃないか。今、この娘と大事な話をしている所なんだけど…邪魔しないでくれないかな?」
「申し訳ありませんが、そちらの者がアヤカ様に呼ばれておりまして…遅いので迎えに来たのです」
「え?彩華が?そ、そうか…、それはごめん」
鈴木はやけに素直にメイドさんから身を引いた。メイドの方も助かったと言った顔をしている。というか、今、鈴木、彩華の事を呼び捨てにしやがったな。学校にいた頃では「彩華さん」だった気がするが。
「ほら、アヤカ様をお待たせしないで!」
「え?は、はい!」
「あ、あのこの事は彩華には…」
「えぇ、私は何も見ておりませんでした。こちらの者も所用で遅れただけでございます。…ですよね?」
「そ、そう!そうだね!あっ!それじゃ僕はこれで失礼するね」
少し慌てて立ち去る鈴木。なんか浮気現場を見られた男みたいだったな。せっかく良い顔してるのに色々と台無しだな。…ザマァ!
「あ、あの!ありがとうございます!メイド長」
「はぁ…、いいのよ。スズキ様の女癖にも困ったものね。あなたも、すぐに自分の持ち場に戻りなさい」
「はい!…あのアヤカ様が呼ばれているというのは?」
「もちろん嘘よ。私がアヤカ様に呼ばれたので、偶々、此処に来ただけ。ほら、もう行きなさい」
「あ、ありがとうございました!」
メイドさんは頭を下げて礼を言ってから走って行った。メイド長さんは走り去っていったメイドさんをしばらく見届けてから、歩き出した。
「この人、彩華に呼ばれてるのか。…運がいいな」
俺はメイド長の後をついていく。…後ろから改めて見るとかなり女性らしい体をしている。胸は大き過ぎず、かと言って小さくもなく体全体もスリムだ。先ほどチラリとしか見ていなかったがかなりの美人さんだ。ちょっときつそうな顔をしているが、美人なせいか様になっていてむしろ好感が持てる。…うむ、かなり上玉ですな!
などと、くだらない事を考えながら後ろをついていくと、しばらくしてひとつの扉の前でメイド長は立ち止った。そして、ノックをしてから声をかける。
「アヤカ様。ナターシャです」
「ナターシャさん?今、開けます」
久しぶりに聞いた彩華の声に、ちょっと懐かしく思いながらメイド長の後ろで待っていると、鍵が開く音がした。
「ナターシャさん。こんな時間にごめんなさい」
扉の向こうには申し訳なさそうにこちらを見る彩華がいた。
お城って言うとネズミ―ランドのシン○レラ城を思いつきます。あとは、デモンズソ○ルやダークソ○ルとかのお城とかも参考にさせていただいてます。




