マテリア屋
「いらっしゃいませ!」
元気のいい女性店員の声を聞きながらエルミアと店に入る。店内には小さく綺麗な石が沢山置いてあった。一つ一つが透明に輝いており、ちょっとした宝石店のようだ。
「いらっしゃいませ!当店は初めてでしょうか?」
横から先ほどの元気のよさそうな店員さんが話しかけてきた。俺は頷いて答える。
「よろしければご説明しましょうか?」
「ありがとう。お願いできる?」
「はい!では、こちらへどうぞ!」
俺の代わりにエルミアが答えると、店員さんは良い笑顔を浮かべて店の奥に案内してくれた。奥にはテーブルが設置されており、それぞれ別の色をした7個の小石が置いてあった。
「こちらがマテリアになります!当店では、マテリアの販売を主に行っております。また、装備品にマテリアの付与も行っています。お客様は初めてとのことなのでマテリアの種類からお教えします」
店員さんがマテリアの一つを手に持つ。
「こちらの赤いマテリアが火のマテリアです。次にこちらが……」
店員さんが丁寧に一つ一つ教えてくれる。赤い色のマテリアが火、水色が水、緑色が風、茶色が土、黒色が闇、白色が光、そして銀色が雷属性らしい。
「良く採れるのは火、水、風、土の四つのマテリアでして、こちらは比較的お手頃な値段で購入できます。闇と光は稀少でして、少しお値段が高くなります。雷は特に稀少でして、マテリアの中で一番お値段が高くなっております。」
なるほどね。マテリアでも価値の違いはあるらしい。そして、マテリアの大きさによっても値段が変わってくるらしい。テーブルの上に置いてあるのは先ほど店で見ていたものよりかなり小さい。恐らく盗難を恐れて、安い物を置いているのだろう。
「そして肝心のマテリアの使用方法ですが、マテリアに魔力を流し込んでいただきマテリアが反応すれば使用可能になります。なので、逆に言うとマテリアが反応しなければ使用することはできないのです。では、実際にマテリアに魔力を流し反応する所をお見せします」
店員さんが水のマテリアを手に持った。そして、静かに目を瞑る。すると、マテリアから水が少量流れ出てきた。
初めて見る魔法の現象に、俺が驚いている間にも水は流れ出てくる。しばらくした後、店員さんはテーブルの下から布巾を取り出しマテリアと手を拭く。
「次はこちらを」
店員さんは次に火のマテリアを手に持つ。そして、また目を瞑ると今度はマテリアから火が出てきた。店員さんの手のひらの上で火が出ているのに熱くないのかと、無言ではあるが慌てているとエルミアが「大丈夫よ。」と言ってくれた。そして、店員さんも目を開いてこちらを見る。
「ふふ、大丈夫ですよ?マテリアから出現するのは私の魔力を使って出現したものです。なのでこの火も、私の魔力そのものなので私自身には何の影響もありませんので、熱くはありません。とはいえ、お客様は触れると危険ですのでご注意ください」
言い終わるとマテリアを手のひらで握り、再び開くと火が消えていた。俺はちょっとした手品を見ていたような気分になった。
「マテリアの説明は簡単ではありますが以上となります。次に装備品にマテリアの付与についてご説明します」
店員さんは一度奥に行くと、木の杖っぽい物を持って戻ってきた。
「こちらが実際にマテリアを付与したものとなります。今回お持ちしたのは木の杖、武器スキルは魔法操作Lv1となります」
「(また、分からないことが出てきたな。武器スキル?スキルと何が違うんだ?)」
俺が聞いた事もない事に悩んでいると横からエルミアが話しかけてきた。
「イサミ、武器スキルというのは武器自体が持っているスキルの事よ。例えば装備者が魔力操作を持っていなくても、魔力操作を持っている武器を装備することで装備者が魔力操作を扱えるようになるの」
「その通りです。ちなみに魔力操作Lv1を持っていて魔力操作Lv1を装備することでLv2になる事はありませんが同Lvの装備スキルを持っている物を装備する事によって魔力操作Lv1+になります。こちらはややLv1より強く、Lv2よりは弱いくらいです」
なるほどね~。と俺は頷く。
「それでは話を戻しますが、こちらが先程と同じクラスの火のマテリアを付与されたものです。付与の方法はお教えできませんが、付与することによってマテリアの持つ力を引き出すことが出来ます」
店員さんがこちらへと更に店の奥に進む。進んだ先は店の中庭となっており、中央にはややボロボロの木の的があった。俺たちは案内されて中庭の椅子に座ると、店員さんが木の的に向かって杖を構える。
「いきます!ファイアーボール!」
店員さんが魔法発動言語を言いながら杖を振る。すると、木の杖の先から拳大の火の球が現れて木の的に向かって飛んでいき、火の球は見事に木の的に当たった。的が燃える事はなかったが当たった跡には焦げた跡が残っていた。
「“すげー!”」
「…?ありがとうございます!」
店員さんは、紙に文字を書いて感想を述べる俺に一瞬、不思議に思った顔をしたが、すぐにお礼を述べた。
「このように、マテリアを装備品に付与することによってマテリアの力を上げる事が出来ます。魔法発動言語はマテリアによって異なりますが、付与された武器が完成された時に教えてもらえるのでご安心ください」
店員さんの説明を聞いている内に、俺は少し興奮してきた。これだよな!異世界と言えば魔法だよ!俺はどんな魔法を使おうかな~。ステータスカードには魔力操作もあったし、魔法を使う事は問題ないはずだ。
「説明は以上となります。ありがとうございました!」
「“ありがとうございました。非常に助かりました”」
俺は店員さんに向かって感謝の言葉を紙に書いて伝える。
「ところで、あの…、失礼ですが、お連れのお客様は喋れないのでしょうか?」
「えぇ。ちょっと事情があってね」
「そうですか…。魔法発動言語が言えないとなると…、魔法は使用できないかもしれませんね…」
「あっ!?そういえば!?」
「(え?…ええええええええっ!!!???)」
俺は心の中で絶叫を上げた。




