残念!あなたは呪われました。
デデデデデデッテデン♪
あなたは呪われました。
とある有名なゲームの聞きたくないBGMナンバーワンが頭の中で響いた気がした。あの音はトラウマなんだよなぁ。セーブデータが壊れましたと表示された時は絶望したもんだぜ。この気持ち…絶対俺以外の人にも分かってくれる筈だ。
「う、ぐ、なんとか生きてる?転生はうまくいったのか?」
ゆっくりと目を開ける。周りには見知らぬ木々が至る所にあり、明るさ的にはやや暗い程度。いわゆる森の中というやつだろう。少なくとも先ほどまでいた教室や見知らぬ病室ではなかった。
「は、はは、ははははは!うまくいった!俺の時代がきたーー!」
と、叫びながらやや疲れ気味の体を無理やり起こして両腕を上げた。一頻り叫んだ後で、もう一度周りを見渡す。そういえば、あのめんどくさい三人や生徒たち、彩華の姿がない。まぁどうでもいいが。それよりも王様は?お姫様は?美女、美少女は?おかしい、なんで誰もいないんだ?
「うーむ、これはもしかしなくても、森からのスタートで今から王国に行って「俺が勇者だ!」と言わなくてはならないのか?」
まぁそれでも構わんか。早いか遅いかの違いだし。それよりも、ステータスを確認しないとね!転生したからにはステータスが見れるようになるのはお約束だ。しかし、どうやって見るのだろう?
「よし!ステータスオープン!!」
とりあえず思ってみた事を言ってみる。
「……?何も…出ないな?」
うーむ、違っていたか?ふっ、まぁいきなり正解というのも面白くないさ!とりあえずいろいろ試してみるか。
「ステータス確認!……ステータス!!………ステー…」
---10分後---
「…ステータスさん、お願いです…どうか…出てきてください。」
最後は半分泣き顔になりながら呟いていた。まさか、ステータスを見るだけでここまで苦戦するなんて…。どないしよう。異世界に来たものの綺麗な女の子達のお出迎えもないし、知らない森の中だし、しかも一人…もうぐれちゃってもいいかな?
「…ステータス閲覧はもう諦めよう。べ、別にステータスなんて見れなくても良いし!!さ、さて、これかれらどうするかな」
俺は溢れ出る未練を押し殺しながら、一度冷静に考える。周りは木々しかない森の中。初めにするべきことはレベル上げだが、ステータスが見れない以上、レベルが上がったのかどうかもわからん。と言うかレベルの概念があるのだろうか?ここがどこだかもわからんし…正直何をすれば良いのか俺にはわからない。
「(とりあえず第一にすべきは水と食料の確保か?何をすれば良いか分からないときは衣食住を確保することを考えろって何かの本で読ん…だ気はしないけども。恐らく間違っていないだろう)」
そう考えると、朝から何も食べていないことを思い出した。朝飯食べる前に(朝9時に起きたっけ?)彩華の奴に引っ張られていったからな。ふむ、どうしよう?何かリンゴか何か果実があればいいんだが。
そうしてようやく、俺は食料と水を求めて行動を開始した。
何かないか探しながら森の中を進む。初めて進む森の中だが普通なら小さい動物やあるいは鳥の一匹ぐらい見かけるものだと思っていた。だがこの森の中では動物どころか鳥の鳴き声すらしない。風も入り込まないのか俺が歩いて進む音以外何も聞こえない。薄暗く、何も音がしない森の中と言うのはかなり不気味だ。
「何も…ないな」
思わず呟いてしまうぐらいホントに何もなかった。一応、途中で毒々しいキノコがあるにはあったがとてもじゃないが食べれる気がしなかった。
う~む、こうして取り出したキノコを見ていると市販の物以外の食べ物を口にするのは抵抗したくなる。配管工のおっさんはよくキノコを食べていたが現実では難しいな。一応、とって置いたけど。
「(しっかし、今更だけど俺って何も持ってないよな。武器も防具もないしこんなので魔物にでも出会ったらどうすん…だ…)」
「……ギ?」
「………」
1つの樹の横を通り過ぎた時、目の前にソレはいた。緑色の肌、額には小さな角、そして口には鋭い牙を備えているその姿は正に、
「ゴブリン!?」
「ギャギャーー!!」
俺が驚いて叫ぶと同時に目の前のゴブリンが手にしていた棍棒を振りかざし、こちらに迫ってくる。
「チョッ!?待って!!」
と言っても待ってくれる筈もなく、ゴブリンはこちらに向かって棍棒を振り下ろしてきた。「ヒッ!?」と悲鳴をあげながら咄嗟に後ろに倒れて尻餅をつくで事で、奇跡的に寸前で回避した。先ほどまで俺がいた場所に棍棒が振り下ろされ、ガッ!!と低くも大きな音を立てて軽く土が吹き飛ぶ。俺は怯えながらその光景を目にする。
「あっ…あっ……」
「ギャギャリュギャ!」
声が出ない。人は思わぬ事態に遭遇すると直ぐには行動が取れなくなると聞く。まさに今の俺はその状態だった。そんな俺をよそに攻撃を外した事がイラついたのかゴブリンが怒気を含めた声をあげながら、もう一度棍棒を振り上げた。その時、一瞬だがゴブリンと目が合った。ゴブリンの目にはこれから行うであろう事を、素人の俺でも容易に分かるぐらいありありと浮かんでいた。そして相手の行動を読めたことで、自分にとれる行動はすぐにわかった。
「う、うわあぁぁぁ!」
逃げた。それも大声を出しながら一目散に。後ろから追いかけてくる気配がする。俺は後ろを振り返らずにただ、ただ前だけを見て走る。後ろを振り返ると、逃げれているかのように思えて実は直ぐ後ろにいるのではないか?ゴブリンが棍棒を振り下ろしてくるのではないか?と考えるとより足は速く動き、ただ俺は一目散に走った。
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…走り出してからどれくらい経っただろう?もう息が切れて呼吸をするのが辛い。恐らく今の自分の速度は普段歩いている速度より遅いだろう。だが、それでも足を止めない、止めることができない。本当はとっくに追いかけてきている気配はないことを感じているが、それでも生まれて初めて感じた”殺される”という恐怖に体が止まることを許さなかった。
「ッ!?あぐっ!!」
足を木の根に引っ掛けて転んでしまった。全力で走っていた為か一度倒れると、すぐに起き上がれることが出来なかった。
「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ」
なんでこんな目に?確かに転生したからには戦闘イベントはあるものだと思っていた。だが何の準備も無い。本格的な訓練すらしたこともないのにいきなり戦闘、いや戦闘なんて甘いものではない、あんな“殺し合い”なんて出来るはずがない。
「はぁ、はぁ、殺し合い…なんだよな…」
甘かったとしか思えなかった。ディスプレイの向こうの世界では当たり前のように魔物等を殺して、さもそれが当然のように思っていた自分が情けなくなってきた。
ゴブリンはゲームでは雑魚モンスターだ。それこそ作業のように倒すことが出来る。だが、この世界ではしっかりと生きており武器を持って殺気を向けてくる。そして…、殺されることだって十分に有り得るんだ。
「はぁ、はぁ、俺はこのままこの世界でやってけるのかなぁ?」
ゴブリンから逃げることができたが、この世界にいる以上また危険に会う事は避けられないだろう。いや、さっきよりも強大な敵と戦うことになる可能性は高い。
「(…それでも)」
正直言って怖い。体の震えが止まらない、先ほどまで死にかけた状況にいたのだから当然だ。
「(…それでも!)」
俺はスゥと一呼吸してから、これだけは、これだけは外せない事を大の字に倒れながら大きな声で叫ぶ。
「それでも、俺の転生ハーレムライフの為に挫けてたまるかぁ!待っててくれよ!俺の嫁達ぃ!」
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「はぁ、はぁ、とにかく今は休むか」
呼吸を落ち着かせるようにしながら、目を瞑る。音がしない森の中だが、本当にまったく音がしないわけではない。気が付かない程度の空気の動きによって動く木々の葉が囁く音。薄暗いことで不気味だったはずが、今ではその薄暗さが気分を落ち着かせるのに都合が良い。さっきまでは、不気味な森だったが、こうやって静かに見ることで違う森に見えてくる。
「(なんか落ち着くな…。ゴブリンとかいる物騒な世界でけど自然の美しさはどこの世界も変わらないな。いや、さっきまでは気が付かなかっただけか…)」
だいぶ呼吸が落ち着いてきたと感じて立ち上がる。そして、改めて周りを見渡す。
「(どこもかしこも木しかない。結構走ってきた気がするが、だいぶ広い森なのだろうか?まぁ実際に森の中を走り切ったことはないが)」
考えながら鼻で大きく呼吸する。ふと、水のにおいがした。
「!?水のにおいがした!!」
水の音はしないが確かに水のにおいがする。しかし、俺って水のにおいを嗅ぎ分けるほど鼻がよかったけか?まぁ、とにかく
「水!水!みーーーーずーーーーーーー!!」
と叫びながら鼻を頼りに森の中を進んでいく。しばらく進んでいると、遂に匂いのもとに辿り着いた。小さな川から出来た学校のプールほどの池があった。良く澄んでいて、小さな魚もいる。生水を飲むのは抵抗があったが、今はそんなことを言ってられない。すぐに池のほとりに走り寄り水を飲もうと、顔を近づける。
「…へ!?うわあぁぁ!?」
水を飲もうとすると池の中に魔物らしきものがいた。まるで豚のような顔だった。あわてて、近くの木の陰に隠れるが先程の魔物は現れなかった。
「…?気のせいか?しかし、確かに見えたんだが」
一応周りと池の中を気にしながらゆっくりと池に近づいていく。池全体を見渡しても、小さな魚以外は見当たらない。
「…何もいないな。俺も疲れてるのかな」
そう呟きつつもう一度水を飲もうと顔を池に近づける。
「ッ!?やっぱりいる!!」
そう、やはりそこには醜い豚の顔をした何かがいた。しかし、二度目のせいか、少しだけ冷静にそれをみつめた。
「な!?な…ん…だと…!?」
それは、確かに豚の顔をしたものが水に”映っていた”。そう、自分の顔はどこにも映らずに豚の顔だけが映っていた。
「ま、まさか、これが俺の顔なのか?」
そ、そんなわけがない
「そうだ、この池が変なんだ!この池は見る者を醜く映るようになってる池なんだ!」
そうだ、そう決まっている!
「はぁ、はぁ、危ないところだったぜ。」
そう思いつつ、恐る恐る自分の顔を触れてみる。それは、確かにあった。豚特有の大きな鼻が。
「なんだこれは!?この池の呪いか!?~ッ!?呪い?」
自分の言葉で俺は、ふとこの世界で目を覚めたときに聴いた言葉?を思い出した。
”あなたは呪われました。”
遂に転生できた勇ですが、どうやらオークになっていたようです。最初に気づけよと思いますが、自分の顔が変わってもすぐに気付かないですよね?一応、皮膚や体型も変わっていますが、主人公は周りしか見ていなかったため気づきませんでした。…という設定でお願い致します。