王都セルジューク
王都のイメージとしては某ネズミーランドをイメージしました。できれば脳内BGM
でFFⅩⅡの"王都ラ○ナスタ"のBGMを流しながら読んでもらえるとうれしいです。
「それじゃあ、ステータスカードと王都に来た理由を言ってくれ」
衛兵の一人がこちらにステータスカードの提示を促す。エルミアとルドルフさんがステータスカードを見せる。今更慌てても仕方ない…えぇい!ままよ!と俺も続いて衛兵にステータスカードを渡す。
「ふむ、お二人はエルフですか。えっと、もう一人の方が…えぇっ!オーク!?」
「安心してください。隷属の首輪をつけていますので」
「え?…あっ、本当だ」
ルドルフさんが衛兵だけに見えるように俺が付けている隷属の首輪を見せる。少し慌てた衛兵だが首輪を見ると安心したようだ。
「オークを奴隷化しているのは分かった。しかし、なぜ王国に連れて行こうとしているのだ?場合によっては…
「このオークは、たまたま手に入れたの。王都の冒険者ギルドで登録しようと思って連れてきた。でも、それはついでの用事。今回、王都セルジュークに来た理由はこいつをギルドに突き出す為よ」
エルミアがキースを衛兵の前に突き出す。キースはあの件以来大人しくなっている。今もエルミアが衛兵に経緯を説明している間、文句を言わずただ静かに立っている。
「なるほど、分かった。オークを連れて行くのは感心しないが、これまで魔物を連れて行く奴がいない訳でもないから良いだろう。だが、このオークが街中で問題を起こせば所有者である貴女に責任が問われるのでそのつもりでな。それでは、通行料として1人100アルムの合計300アルムだ。そいつの分は払わなくてもいいぞ」
「分かったわ」
衛兵もエルミアの説明に満足したのか、手に入れた経緯などの深いところまで追求しなかった。恐らく一々構っていたら仕事がいつになっても終わらないからだろう。衛兵としてどうなんだ?と思ったが、こちらとしては助かるので何も言わない事にした。ルドルフさんが銅貨大を3枚、衛兵に渡す。
「よし、通っていい。次!」
---------
思ったよりもあっさりと関所を抜け、しばらく道なりに進んでいくと遠目に大きな白い壁が見えた。
「おぉ!あれが王都か!?でっけー!?」
「あれが人間国、王都セルジュークよ」
初めて見た大きな城壁に興奮している俺をみて、エルミアが微笑みながら説明してくれる。人間国、王都セルジュークか。となると、やっぱり魔族の国とかあるんだろうか?
城壁近くまで来ると更にその凄さに興奮する。クレーンなどある訳がないのに、どうやってこんな大きな城壁を作ったんだろうか?と思いながら城壁を見渡す。どこも見事な城壁だが、特に目を引いたのが城門だ。
大きな城門には非常に細かな彫刻がほられている。もはや門と言うよりも芸術品と言っても過言ではない。非常時にこれで耐久性などは大丈夫なのだろうか?と思ったりもしたが、王都に攻め込まれている時点で終わってるようなものだと考えるとこれでもいいのかとも思う。
見事な城門を抜けると人が大勢いる大通りになっていた。いたるところに露店があって「いらっしゃい!」と声が飛び交いっており、とても賑やかだ。そんな大通りの奥、遠目にだがシン○レラ城のような城も見える。これぞ王都!って感じであり、まるでネズミーランドに来ている気分になってきた。
「(すっげーー!!やっぱり異世界来てよかった!!)」
「イサミ~。感動してるところ悪いけど早く行くわよ~」
1人感動しながら、エルミア達に従って大通りを進んでいく。しばらくすると、食べ物関連の露店通りから鍛冶屋や道具屋といった、露店とは違ってどっしりとした雰囲気の店が並んでいる通りに着いた。その中でも一際大きな建物に向かっていく。
「さぁやっと着いたわ!ここがギルド本部よ!」
「(おぉ!すげー!)」
フフンッ!となぜか誇らしげなエルミアに癒されながらもギルド本部を見る。外から見た感じだと一階部分は酒場と受付が一緒になっているようで、西部劇で出てくるような入り口になっている。
「さて行きましょう」
ルドルフさんに続いて俺たちも入っていく。ギルドに入ると酒場特有の酒臭さが鼻にこみ上げてきた。そして入った瞬間、酒場にいる何人かの冒険者たちがジロリとこちらを見る。
ローブ姿の奴が三人と男一人。怪しさ抜群なのだが、冒険者にとってローブ姿はそこまで珍しくないのか、すぐに興味を失ったようにそれぞれ会話や酒を飲み始めた。
「ようこそ!冒険者ギルド本部へ!ご用件は何でしょうか?」
おぉ!!めっちゃ綺麗な受付嬢がこちらに挨拶してきた。
「(そう!これ!これだよ!これを俺は待ってたんだ!思えばこちらに来た時から思っていた事なんだが、この世界に来てからというもの――)」
「えぇ、ちょっと大事な話をしたいんだけどギルド長はいる?」
「ギルド長ですか?すいません、今ギルド長は出かけているところでして」
「そう。なら副長は?」
「あ、副長ならいらっしゃいますよ」
「良かった。なら悪いけど、呼んできてくれない?」
「分かりました。しばらくお待ちください」
「(――説明書も無しに放り出されて、それからも苦労ばっかりでまったくもってこの異世界は…)」
俺がこの異世界云々について考えている間に、エルミアと受付嬢が話を進める。しばらく待っていると受付の奥から片眼鏡を付けた女性が出てきた。うおおお!なかなか美人だ!これぞ秘書美人ってやつだな!
「お待たせしました。私がギルド副長のネリナです。この度はどのようなご用件で?」
エルミアがこれまでの事を説明する。何度も説明して大変だなホント。
「そんな事が!…申し訳ありませんでした。こちらも注意しておけば気付けたはずでしたのに…」
ネリナさんがこちらに頭を下げてくる。
「ネリナさんが謝らなくてもいいわ。私たちも油断していたのが悪いんだし」
「いえ、そんなことは…もしかするとエルミアさんが奴隷にされていたかもしれないんです。同じ女性として、そのような事はあってはならないものだと思います。今後二度とこのような事が無いよう、このギルド本部は勿論の事、各支部ギルドにも注意を促します」
「ありがとうございます、ネリナさん。でも、本当にそこまで気にしていないんですよ?確かに危なかったですが目的の物は手に入れられたし。なにより…」
エルミアが俺を見る。
「面白い奴隷が手に入ったから♪」
---------
キースをネリナさんに引き渡し、謝礼金を受け取る。そのあと、ギルドから出て宿に向かい始める。あたりは夕方になっていた。
「さて、思わぬ謝礼金も入ったし。今日はごちそうね!」
「そうですな。久しぶりの王都です。それにイサミ殿の歓迎会もしていなかったので良い機会かと」
「そういえばそうね!イサミ!今日はごちそうよ!おいしい店を知ってるの!」
「(おー!楽しみだぜ!)」
「ふふふ、イサミは可愛いなぁ~!」
俺が嬉しそうなジェスチャーをするとエルミアが嬉しそうな表情をする。しかし、オークである俺が可愛いって…。今更だがエルミアってすこし変わった感性してるなぁ。もちろん俺としては否定されるより、こうして可愛がってくれる方が数倍嬉しいので全然構わないけど。
ギルドがあった通りを抜け、しばらく歩いていくと宿屋が幾つか並んでいる通りに出た。
「そこのお兄さん!!今夜の宿は決まってるかい!決まってないならぜひ当店へ!」
「安いといえば当店が一番だよ!早いもん勝ちだから急がないと無くなるよ!」
「景色がいい部屋が空いてるよー!どうだい?」
そこらじゅうで宿屋の勧誘が始まっている。俺も何度か声を掛けられるが、返事が出来ないので無視のような形になってしまう。だがそれでも話しかけてくる彼らの商売魂には恐れ入る。勧誘にやや疲れてきたときに、エルミアが目的の宿らしき所の前でとまる。
「ここよ!ここは宿と料理店を一緒にやってるの!」
中に入るとちょっとした料理店になっていた。だが、そこまでお客が座る所が無いようなので、料理店は副営業的なものなのだろう。
エルミアが宿の扉を開いて中へと入ると、
「いらっしゃい!!ようこそ!タカナミへ!!」
「い、いらっしゃいませ……」
受付のところから声がかかる。1人は胸が大きな若い女性でもう一人は年端もいかない少女だった。
「こんにちわ!リレーアさん!リルリカちゃん!」
「あら?その声はエルミアちゃん?久しぶりね!」
エルミアとルドルフさんがローブを脱いで顔を見せる。どうやら信頼できる人らしい。まぁ俺はローブを脱ぐわけにもいかないけど。
「お久しぶりです。リレーア様」
「ルドルフさんは相変わらずだねぇ。リレーアで良いってのに。…で?そちらの人は?」
「あぁ、イサミの事?紹介するわ!イサミよ!私の奴隷よ!」
「ど、奴隷?」
奴隷と言う言葉に、リルリカちゃんが少しうろたえる。だがすぐにエルミアが「大丈夫よ」と窘める。
「奴隷…ねぇ。なにがあったのか知らないけど、あまり感心できないね」
「まぁ、私も奴隷制にはあまりいい気分はしないわ。でもイサミの場合、無いと困るのよ。まぁ、奴隷の首輪が無くてもイサミが悪い事するとは思えないけど」
そりゃー、オークが自由に王都を闊歩してたら問題でしょうね。奴隷なら何か問題を起こそうものなら首が閉まるので、周囲の人間も少しは安心できるだろう。
「まぁ、エルミアちゃんなら奴隷を酷使したりしないだろうからいいけど。一応聞くが、あんた元犯罪者かい?それとも金に困って親に売られたりした口かい?」
「………」
返事をするわけにもいかないので無言になる。
「あぁ、ごめんなさい。実はイサミはオークなの」
「「オーク!?」」
リルリカちゃんがヒィッ!とリレーアさんの後ろに隠れる。リレーアさんも少し俺から遠ざかる。うん、これが普通の反応だよな。……けっこう傷つくなぁ、これ。




