哀れな最期
エルフといえば弓。弓といえば……。
「ど、どうしましょう!?」
運転手さんが慌て始める。ノアさんは盗賊襲来を聞いた途端、馬車から下りて外を確認しに行った。エルミアも短剣と弓を準備している。エルミアって弓使うんだな。今まで、ルドルフさんが主に戦っていたんで確認していなかった。てか、エルミアもノアさんも場馴れしすぎでしょ…。
「イサミ殿」
「ん?」
ルドルフさんが声をかけてきたのでそちらを向く。見れば、剣を取り出すところだった。そしてしばらく悩んだ後、取り出した剣を俺に差し出してきた。
「ルドルフさん?」
「正直なところ、イサミ殿に武器を与えるのはいまだ抵抗があります。ですが、今は非常事態です。こちらをお使いください」
「……」
俺もルドルフさんが警戒している事は気付いていた。エルミアが例外なだけで、当然だと思っていたし、しばらくはこのままだろうと思っていただけに驚きだった。ルドルフさんが少しは俺を信用してくれた事に感激しつつ、もらった剣を抜く。ズシリとした重さだが片手で十分持てる重量、そして少し刃の幅の広い片手剣だった。
「ブロードソードです。安物ですが、身を守る分には十分かと。お気をつけて」
頷きながら剣を収める。初めて、剣を持つ。刀と違って斬ることに特化した武器ではなく叩っ斬る事を重点に置いた武器なので、棍棒と同じ使い法でも問題ないかもしれない。少なくとも今から剣技を学ぶことはできないので、自分が分かる使い方でやるしかない。
貰った剣を片手に、外に出た。馬車の中にはキース、ルノリックさん、マロクさん、そして運転している村人さんがいる。ホントはエルミアも中にいてほしいとも思ったが、本人が「私だって戦える」と言ったのと、出来るだけ目の届くところにいた方が安心と考えたので今は一緒にいる。
「イサミ、私の事は大丈夫だから。そんな心配そうな顔しないで?」
「お嬢様は今回は補助に徹してもらうので、ご心配には及びません」
「(…分かったよ)」
2人の言葉にコクリと頷く。エルミアが言うには、俺は自分で思っていたより酷い顔をしているらしい。なにせ、今から戦闘が始まるかもしれないのだ。まだまだ戦闘には慣れない。一度、深呼吸をして落ち着かせる。そして、まだかなり遠いが確実にこちらに近づいてくる盗賊団へ目を向けた。
盗賊団は砂埃を巻き上げながら馬に乗ってこちらに向かってくる。盗賊と分かったのは明らかに盗賊と分かるような旗を掲げながら向かってきているからだ。数としては20人近くだろうか?結構多い。
「数としては多い方だな。ところでお前は戦えるの方なのか?」
ノアさんがこちらに話しかけてくる。俺は何も言い返せないが、ルドルフさんにもらった剣を見せて少しは戦える事を示す。
「そうか…、話せないんだったな。まぁいい。お前は彼女の傍にいろ。あの爺さんはともかく、悪いがお前が強いようには見えないのでな。足を引っ張られたら迷惑だ」
「……」
爺さんは多分ルドルフさんだろう。俺はノアさんの言葉に素直に頷く。ここでカッコつけてもしょうがない。
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まずはエルミアが弓矢で相手をけん制する事になった。まずあり得ないが、こちらに用がない場合、それ以上近づくなという意味を込めての一矢だ。
エルミアの手から放たれた矢は、見事に盗賊団の手前で突き刺さる。だが、盗賊団は関係ないと言った感じにスピードを緩めずにこちらに近づいてくる。
「警告はしたから」
エルミアが呟きながら新たな矢を手に取り、弓の弦を引く。十分に狙いを付けて矢を放った。矢は馬に当たり、音を立てて騎手と共に倒れる。そして倒れた馬に、二人ほど巻き込まれて倒れた。
もう一度、弓矢を構えてから放つ。また見事に先頭の一頭に当たり、倒れる。が、今度は用心していたのか、巻き込まれる奴はいなかった。
その後もエルミアの弓矢だけで2人ほど倒したが、残りの14人が迫ってきた。俺は右手で剣で抜き、左腕に"金剛"をかけた瞬間、ノアさんが盗賊に向かって駈けて行った。
「(ちょっ!?1人で行くつもりかよ!?)」
俺の心配を他所に、ノアさんは肩に備え付けてあった小さい短剣を抜いて盗賊の一人に向かって投げつける。盗賊は短剣を防ぐが、その隙に跳躍したノアさんの剣で貫かれる。そのまま、盗賊の剣を抜いて奪い、近くの盗賊に向かって投げる。
「(すっげー、あんな状況でも正確に投げれるもんなんだな)」
『おそらく、スキルによるものだろう』
「(スキルですか。やっぱりあるんだな)」
俺も何かスキル持ってるのかなぁ?でも、どうやって確認するんだろう?と考えつつノアさんを見る。最初と同じ方法で盗賊を倒している。確かに馬上では細かな身動き取れないので、単純でありながらも防ぐのは難しい。だがあれでは馬から降りた複数相手では難しいだろう。
相手も厄介だと思ったのか、三人が馬から降りてノアさんに向かって攻撃している。先ほどの戦法では相手が1人の時しか通用しない。よって徐々に押されつつある。それでも、三人の攻撃を防いでるだけでも大したものだが。
「ノア殿!助太刀します」
ルドルフさんが助っ人に入ったことにより、再び盗賊たちを押し返し始める。2人とも強いなぁ、次々と倒していく。気がつけば、残り4人だけとなった。俺が盗賊側なら間違いなくもう逃げる。…あっ。1人が馬を反転させて逃げ出した。リーダーっぽい奴が逃げた奴に向かって怒鳴ってるが、その隙をつかれてルドルフさんにレイピアで貫かれた。残りの奴らも「ノア&ルドルフ」コンビにやられていく。
「うおおぉぉらあぁぁ!!」
最後の盗賊の一人がこちらに向かってくる。俺は剣を構え…る前にエルミアが盗賊の膝を射抜いた。あぁ!?膝に矢って、めっちゃ痛そう!
射抜かれたことによって苦痛の声をあげる最後の盗賊は、碌に何もできないままルドルフさんに引導を渡された。
「(膝に矢をくらってしまってな…)」
『イサミ?何だそれは?』
「(いや…、なんでもないよ…)」
俺は、街についたら膝当てを買おうと思った。




