金剛
長い文章になってしまい申し訳ないです。それから評価下さった方々、本当にありがとうございます!これからもがんばっていきます!!
結界が解けたせいだろうか?いつもと森の雰囲気が違う。なんと言うか、今まで束縛されていたものが解放されたような感じがする。さっき気付いたが、今まで吹いてなかった風が森の中に流れ込んでいた。
「リザードマンがやけにそこらじゅうにいるのは結界が解けたせいか?どうでもいいけど面倒だな」
俺は、エルミアとルドルフを連れて元拠点である森の中の池に向かっていた。途中、リザードマンらしき匂いを感じたが、昼間のせいか、暗い所でじっとしている感じだった。俺は、リザードマンがいる場所を避けながら進む。
「なんとも影が深い森ね。私も森での進み方には慣れているつもりだけど、これだと方向が分からなくなりそう」
「えぇ、確かに。しかし、イサミ殿は良く迷いなく進む事が出来ますな」
確かに、この森は一本一本の木がかなりでかく、影が深く昼間でもやや暗い。俺は記憶と鼻を使えば道に迷うことはなかったが、普通の人では道に迷うか。…俺も初めは迷っていたしな。
進み始めてから約4時間ほどで池に辿り着いた。リザードマンを回避ばかりした為、思ったり時間がかかってしまった。
「はぁ、はぁ、着いたの?イサミ?」
「うん」
俺はやや疲れ気味のエルミアに返事を返しながら近くの茂みを探る。幸い、食べ物系は残していなかったのでリザードマンやゴブリンには荒らされていなかった。幾つかの収集物から鹿から取った角を取り出す。
「何をしているのかしら?ここでいったん休憩?」
「何か探している様子ですが?」
「うーん、まぁイサミの好きにさせましょう。しかしここが、神隠しの森か。…ルドルフ、感じている?」
「はい。若干ではありますが何か強大な力が発動していた気配があります。今はもう無くなっているようですが」
「そうね、何が起こっていたのか分からないけど、この森は普通じゃない。だけど、逆にこの森にディアリームがいる可能性が高くなったと言うことでもある。早くディアリームを見つけて角を持って帰りましょう」
「おっしゃる通りでございます」
「へぇ…、確かに昨日まではヤシロの結界があったからなぁ。しかし、良くわかるもんだな」
「どうしたのイサミ?とにかく、しばらく休んだ後に…」
エルミアは俺が持ってきた角を見たとたん目を丸くして凝視した。そして、指をさしながらわなわな震えている。
「イサ…ミ…??もしかして、それって……?」
「お嬢様?むっ、イサミ殿それは?」
「鹿の角」
「いや、まさか…ね。ただの鹿の角の可能性も……」
「お嬢様、落ち着いてください。まずはマグニでで鑑定してください」
「ハッ…!そうね!イサミ、それを貸してくれない?」
俺は頷いて角をエルミアに渡す。エルミアは恐る恐るといった感じで受け取り、腰のポーチから虫眼鏡っぽい物を取り出して角を鑑定?した。
・ディアリームの角
:非常に珍しいディアリームの角、特殊な環境下で育った為か角にも若干魔力がこもっており、芸術品としても武具の素材としても一級品。レア度 星4
おお、鑑定した虫眼鏡に文字が浮かび上がってきた。すげーな、どんな原理なんだろ?やっぱり魔法?てかレア度って?
「(ヤシロ、分かるか?)」
『ふむ?私も良く知らないな。だが彼女がもつ物から、ほんの少しだけだが神々の魔力を感じる』
「(マジか、これって神様が作ったのか?それとも、神父さんとかが作ったのかな?)」
俺が初めて見た鑑定アイテム(ルドルフがマグニと呼んでいた。)に感心していると
「ルドルフ!これ、本物よ!!」
「まさか…、知っているどころか持っているとは。名前持ちと言い、……イサミ殿。あなたは本当に一体何者なのでしょうか?」
エルミアが大きな声で驚きの声を上げ、ルドルフは小さな声で呟いていたので最後の方は良く聞こえなかった。しかし、この角、珍しいのか。確かに俺が狩ったのはたった一匹だけだったが。どっちかと言うと、角より今はいてる靴と肉の方が俺には嬉しかったが。
「やったー!良くやったわ!イサミ!!これがあれば頑固な母上を説得できる!」
「母?なんだか大変そうだなぁ。まぁエルミアちゃんが喜んでくれたならそれでいいや!」
「む、むぅ。これはどうしたら……」
「さぁ、帰ろう!角も手に入ったし、何より皆にイサミを自慢しなくちゃ!」
「お、お嬢様?本当に…本当にイサミ殿を連れていくのですか?」
「何を言っているの?当たり前でしょう?」
「当たり前なんだ…。あぁ、ルドルフさんが苦虫を噛み潰したような顔をしてる。まぁ気持だけは分かりますよ」
確かにオークの俺を連れて帰って、奴隷にしました宣言をされれば正気かどうか疑われるもんな。しかも、ルドルフの口調からしてどこかのお嬢様らしいし…。絶対俺も大変な目に会うのは目に見えてる。断腸の思いだが、ここはお互いの為にもここで別れた方が……。
「あ!イサミも嬉しい?一緒に行きましょうね!」
「うん!行く行く!」
やっぱ無理。だってエルミア超可愛いんだもん!周りがうるさい?そんなもん知るか!エルミアに迷惑をかける?何とかするさ!はっはっはっは!
「ブヒヒヒヒヒ!!(エルミア視点)」
「やっぱり嬉しいのね!良かった!アハハ!」
「お嬢様ぁ……」
結局、説得を諦めたのかルドルフは涙目になっていた。
「さぁ、欲しい物は手に入ったし。すぐにでも帰ろう!」
「……そうですね。母君様に報告しないといけませんし」
「やっと、森から出られる。ホントに長かった」
俺はエルミア達と出会った場所まで案内し、そこで遅めの昼食を取った。昼食はエルミア達が持っていたパンを食べた。久しぶりのパンに感動したが、旅用なのか固くてあまりうまくなかった。昼食が終わった後は、今度はエルミア達についていくことになった。
歩き始めておよそ3時間ほど経ったとき前方に複数の人間の匂いがした。
「人間の匂いがする。…それも男ばっかだな」
「どうしたの、イサミ?ご飯はまだだよ?」
「いや、違うんだけど…」
「しょうがないなぁ。チョットだけだよ?」
そう言って一口サイズのパンをくれた。違うんだけどな~。まぁ、人間全部が危険なわけないし。むしろフレンドリーな人かもしれんし。
若干、気になりつつもエルミア達に伝えるのは難しいと思い諦めた。まぁ、エルミアはどれくらいか知らないけど、ルドルフさんは強いのは知ってるし。
匂いを感じてから5分経ったあと、匂いのもとについた。
「む?お嬢様。用心を」
「ルドルフ?…分かった」
流石はルドルフさん、出会う前から気配で分かったようだ。エルミアもルドルフの言葉を信じて用心している。如何にも冒険者って感じがする。様になってるなぁと俺は二人の姿を後ろから見ながら思っていた。
「あん?やっと来やがったのか?どんだけ遅れて…って、お前ら!?」
一人の男が草むらから出てきた。どうやらこちらを誰かと勘違いしていたようだ。まぁ、なんとなく察しが付くが…。
「お前はギルドにいた冒険者?よくもあの馬鹿のパーティを推薦してくれたわね!おまえのせいでこっちは大変な目にあったんだから!」
初めて会ったわけではないようだ。どうやらこいつにあいつらを推薦してもらったらしい。恐らくというか、確実にこいつも共犯者だな。
「ッチ!あいつらしくじりやがって!!おい!お前ら!こいつらをやっちまえ!!」
「「「おう!」」」
なんていうか、フラグ抜群のセリフを吐いてこちらに向かってきた。そこはすっとボケたりすればいいのに。あ、無理してでもエルミアを手に入れたかったとか?確かに可愛いし、エルフだ。この世界の価値観は分からないが、奴隷にでもすればさぞ高く売れただろう。
むぅ。そう考えると、だんだんイライラしてきた。こいつら、俺のエルミアちゃんに手を出そうとしてたわけだ……。ふっふっふ、どのようにしてくれよう。
「お嬢様!お気を付けを!来ます!」
「む?逆恨み?怒っているのはこっちよ!」
どこか勘違いしているエルミアを見つつ、一歩下がる。武器はルドルフがどうしても持たせてくれなかった。しょうがないので魔力を込めようとすると…、
『イサミ、あまりこの二人の前で夢幻を使わない方がいい』
「(ん?どうしてだ?ヤシロ)」
『先の戦いでは危険だったのでやむを得なかったが、夢幻はこの世界でも強大で異質な力だ。力を曝け出し過ぎると思わぬ危険が寄ってくる。どうやらイサミはこの娘が気に入っているようだし、この娘を思うならあまり大々的に使わない方がいい』
「(…そうだな。ヤシロの言う事も、もっともだ。忠告ありがとう)」
『例は不要だ…と言いたいが、ふふふ、ありがとうか。その言葉を聞くのは久しいな。どういたしましてイサミ』
ヤシロが嬉しそうな感情を出しているのが分かる。俺も、ちょっと照れながらも人間を見る。確かに、過ぎた力は身を滅ぼす。あまり広範囲の夢幻は多用しないで勝つしかない。しかし、武器なしで俺に勝てるだろうか?
『心配はいらない。夢幻は色々な使い道がある。夢幻を自分の一部に掛けるイメージをしてみろ。全体ではないぞ?いきなり体全体は危険なのでな』
「(…結構ヤシロって鬼教官だよね。急にやってみろって…)」
やるしかないけど…。人間たちをルドルフがけん制し合っている間に俺はこっそりと魔力を込める。二回目なだけあって簡単に込める事が出来た。そのあとは……どうするんだ?
『そのまま、腕の中で魔力を固めろ』
「(む、難しいな…)」
腕の中で込めた魔力を固めるイメージをするがなかなかうまくいかない。流れている水を無理やり塞き止めようとしている感じだ。止めようとしても横から流れて元に戻ってしまう。
『無理やりではなく、元々固まっていたかのようにイメージするのだ』
「(元々固まっていたようにイメージ?)」
初めから水ではなく、氷がそこにあったようにイメージすればいいのか?
そう不思議に考えながらイメージすると先ほどまでが嘘のように旨く固まっていった。初めから固まる事が決まっていたかのように。
「(おお!出来たぞ!)」
『そう、それでいい』
「(でも、これで何が変わるんだ?…ッ!?危ない!!)」
と考えていると、人間の一人が背後からエルミアに向かって剣を振り下ろそうとしているのが見えた。思わず咄嗟に俺は間に入って無謀にも腕を交差して防ごうとする。
男は急に動き出したオークに驚きつつも剣を振り下ろした。次の瞬間、俺の腕は剣に斬られて落ちる……事はなかった。
キィンッ!
甲高い音をして剣を弾いた。……弾いた?
「なんだこりゃ!?」
『これが夢幻闘争術 壱の型、"金剛"』
「金剛?」
腕を触るがいつも通りだ。固くない。まだ魔力がこもっている気配がするのに。
「イサミ!?大丈夫!?」
「なんだ!?このオーク!?腕になにか仕込んでるのか?」
『イサミ、そのままそやつの剣ごと殴り倒せ』
エルミアと男が驚いている。俺も驚きつつも、ヤシロの言うとおりに男に向かって殴りかかる。男は慌てつつも剣を横に構えて防御の態勢を取った。剣に向かって素手の拳を振るうのは若干躊躇われが今は只、ヤシロの言葉だけを信じて殴りつける。
「うおおおりぃやあああああ!!」
バキィッン!
剣がまるで発泡スチロールのように簡単に砕けた。
「なっ!!」
男が俺に代わって驚きの声を上げた。そして、俺は勢いを殺さずそのまま男を殴り付けると
「ハギィッ!?」
変な声を出して、後方の木に向かって吹っ飛んでいた。
「リ、リーダーがやられたぁ!?」
「なんだ!?あのオークは!?」
「てか、なんでエルフがオークを連れてるんだよぉ!?」
辺りから声が上がる。
「イサミ!?」
「イサミ殿!?」
エルミア達も驚いている。そりゃそうだよな。いきなり、リーダーだった男がオークに素手で殴られて吹っ飛べば誰だって驚く。
「ば、化け物だ―!!」
「ひ、ひぃいいいい!?」
男たちが一斉に逃げ出す。
「む!?あなただけは逃がすわけにはいきません!」
「ひいいぃぃ!!」
ルドルフさんが蜘蛛の子を散らして逃げ出す男たちの中から、最初に出てきた男を捕まえる。さすがだな。それよりも……
「(ヤシロ、夢幻よりこっちの方が目立ってる気がするんだが、気のせいか?)」
『………』
うん、ヤシロさん?困ったら無言になるのやめましょうね?
人間たちは全員で10人近くいましたが、リーダー格の男が一撃でやられた光景を見たことで逃げてしまいました。




