私の名前は・・・
「貴方の名前はイサミと言うの?オークにも名前はあったのね」
「いえ、普通はオークに名前と言う概念がありません。相手の名前を覚える事すら出来ない乏しい知性しか持ち合わせておりませんので…」
「ん~、となるとこのオークが特別なのかしら?やはり良い拾い物ね!」
「あの…、勝手に自分の持ち物のように扱わないで欲しいんですが?」
「ん?どうしたのイサミ?…なんだか新鮮で良いわね!イサミ!返事をしてみて!」
「はぁ…?」
「ルドルフ!これ面白い!!オークがちゃんと返事をしてくれた!あっ、オークじゃなかった。ごめんね、イサミ?」
「まぁ、いいですけど」
「~~ッ!!」
エルフの美少女は何が気に入ったのか分からないが俺が返事を返すたびに嬉しそうに飛び跳ねてはしゃいでいる。う~ん、可愛い。見た目的にはちょっと小さい女の子。だが、女性として育っているところは慎ましくではあるがちゃんと成長している。これは数年後に化けるな…、エルフの成長速度は分からないけど。てかこの子何歳だろう…。
そんな事を考えながら首についている物を触る。
"隷属の首輪"
う~む。名前からして、付けた者を奴隷にする道具なんだろう。つまり、俺は奴隷という事になる。マジか~。奴隷ってことは色々不便がありそうだなぁ。少なくとも普通のところでなにかしら優遇される事は無くなるな。…それは困る。俺には勇者としての使命があるんだから。だからなんとか解放してもらわないと。
俺は解放してもらえるように嘆願しようと改めて美少女エルフを見る。
何度見ても綺麗な顔、見事で鮮やかな金髪、無駄な肉は無く将来有望な白い身体…。良い、凄く俺好みだ。
ん?まてよ…。俺は今奴隷なんだよな?そう、この理想的な女の子の……。
「フゥゥイイイイバアアァァァァーーーーーー!!」
俺は思いっきり大声をあげて喜ぶ。なんだよ、なんにもまずいところないじゃん!むしろ今の状況って勝ち組じゃね?来たぜ!俺の転生ライフ!!
「わぁ!イサミが大声をあげて喜んでる!」
「確かに、喜んでおられますが、何やら邪な事を考えてそうです…。やはり、オークということでしょうか?」
「そんなことはないと思うけど…。とにかく私はイサミが気に入ったの!それに、何かあれば隷属の首輪が作動するから問題はないわ」
「まぁ、その通りでございますが…」
「少しは安心してルドルフ。私も気をつけるから」
「……承知いたしました」
「うん。さてっと…」
美少女エルフと目が合う。とても綺麗な瞳だ。やべぇ目が離せない…。俺の心臓がドキンドキンと高鳴る。
「言葉は分かるのでしょう?なら自己紹介といきましょう!と言っても既にイサミの名前は知っているけど」
一度、コホンと一息ついてから
「私の名前はアイナリンド・エルフ・エルミア!通称エルミア。よろしくね!イサミ!そして、こっちは……」
「ベレーバム・エルフ・ルドルフと申します。通称ルドルフです。以後お見知りおきを、イサミ殿?」
エルミアと名乗った美少女エルフは自信満々に、たいして執事っぽい初老エルフはややこちらを疑いながらもルドルフと名乗ってくれた。
「エルミアとルドルフね。よろしく!って言葉が通じないのはホントに残念だな……」
「お!ちゃんと挨拶出来たね!えらいよ!イサミ!」
俺が挨拶したのをなんとなく察したのであろう。挨拶出来た事をほめようと、必死に俺の頭に手を伸ばそうとする姿に胸がキュンッとなった。これは……破壊力があるぜ。
俺は、オークになったせいか元々170cm後半だったのだが今は190cm近くに伸びていた。一方、エルミアは150半ばぐらい。正に美少女と野獣の図だ。今もなお、必死に頭に手を伸ばそうとつま先を立てている。なので届くようにしゃがみ込むと満足そうに頭を撫でてきた。
「ムフフ、イサミは賢いね!」
「かわええなぁ!この子!!」
「なんでしょう?なぜか何かが噛み合ってない気が……」
しばらく、エルミアに撫でられながら視界の端に、はてなマークの作っているルドルフ入れつつ、俺はエルミアの満足そうな可愛い顔をしばらく鑑賞していた。
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「お嬢様、この後はどうなされますか?」
「そうね…、神隠しの森の場所を知る前に奴らは死んでしまったし。仮に行ったとしても帰ってこられないと言うのは……厄介ね」
エルミアは満足したのか、撫でるのをやめて、俺から離れるとルドルフと今後の事について話し合っていた。
「(神隠しの森?)」
『…恐らく我とイサミがいた森の事だろう』
「(ヤシロ?なにか知ってるのか?)」
『知っているわけではないが、時々、我が結界になぜか人間族や亜人族が入り込む事があってな。結界は入ったらなかなか出られないが、稀に運よく結界から出る事が出来た者がいたようだ』
「(よく出られたな)」
『我が結界と言えど完璧ではない。たまたま、結界の綻びにて奴らが出入りしただけだろう。ただ、結界内では時間の進み方が違っているので、数日で結界から出た時、入った時から数カ月たっていたという事があったのだろう』
「なるほどね、だから神隠しの森か」
結界に入って出てこられた者はそんなにいないだろう。出てきたとしても、出たら数か月経っていたというプチ浦島太郎現象が起こったりすれば、皆怖がって神隠しの森と言ってもおかしくないか。
「イサミ?どうしたの?」
つい声を出してしまい、それに反応してエルミアが話しかけてくる。
「お嬢様、もしかしたらイサミ殿は神隠しの森について知っているのでは?」
「え!?本当?イサミ?」
俺は無言で頷く。何しろ、つい数時間前まではそこにいたのだから。
「本当に!?イサミ!案内してくれない?」
「お譲様、罠の可能性もあるかと」
「まったく、ルドルフも心配性ね。なら…、イサミ!正直に答えて!あなたは私たちを騙そうとしているの?」
これは、問われているな。正直に答えないと隷属の首輪が何かしら反応するんだろうな。主人に嘘をつけば罰が下るというのはありがちな話だ。
「そんなことは考えてないです」
と素直に答える。しばらく、エルミアとルドルフは首輪を見ていたが何も反応がない事を確認すると
「ほらね?」
「ええ、どうやら本当のようですね」
安心したのかホッ息をついたルドルフと当然だと胸を張るエルミア。あぁ、エルミアちゃんのドヤ顔がすっげー可愛い。
「よし!それなら案内して、イサミ!私たちは神隠しにいるという幻獣ディアリームの角が必要なの」
「ディアリーム?」
なんだそれは?と思っていたら
『結界内に沸いた鹿のことだ。あれは我の魔力の一部に反応して育ったためか、簡単な幻術を使える』
「鹿?」
そういえば鹿がいた事を思い出す。あれはとにかく素早い、というか目に見えないほど速い時があったが、もしかしたらあれは幻術を使っていつの間にか素早く移動したことで目に見えないほど早く移動したかのように見えたのかもしれない。
「あの鹿の角なら持ってるけど」
主に角を使う用途が無かったので、池の傍に置いてある。
「イサミ?どうしたの?」
急に独り言を言いだしたせいだろうか?不思議そうに声をかけてくるエルミアに向かって向き直り、池の方向に指をさした。
「向こう?」
俺は頷いてから、案内するように歩き出す。やや慌てて、エルミアとルドルフがついてきた。辺りは、朝日が照らされすっかり明るくなっていた。




