面白いものが手に入った---エルフ---
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---美少女エルフ---
ルドルフがオークに敗れてしまった。幸い死んではいないようで、呼吸で胸が動いているのを確認できて安心する。だが、オークがこちらに近づいてきて否が応でも現実を直視させられる。これから起こるであろう事を考えると体の震えが止まらない。しかし、震える姿を見せると相手が喜ぶだけだと考え出来る限り平素を装う。
「ブフ、ブヒヒ、ブフー?」
「くっ!? 寄らないで!オークめ!!」
「……」
なにやら話しかけてきたようだが、恐怖にせいで咄嗟に叫んでしまった。その事に傷ついたのか唖然とした表情をしている。向こうは何を言っているのか分からないが、もしかしてこちらの言葉をちゃんと理解しているのだろうか?
「ぶひ……。ブフフヒ……」
「何を言っているの!?っく!こんな人語も話せないオークに遅れをとるなんて…。人間族め!厄介な事を!!」
「……ブフ?」
いったい何を言いたいのか分からないが、オークと二人きりという状況が私を焦らせる。本当に人間族め!奴らが毒さえ盛らなければ倒す事ができるのに!
ふと見ればオークがなんだか不思議な顔をしている。だがそんな事はどうでもいい。とにかく私はその間に魔力操作を試みるが…、うまくいかない。
「ブ……、ブヒ。ブヒヒ……」
「せめて、魔力さえ戻れば…!」
「ブー、ブフヒ。ブヒィ」
オークが世界に絶望しているような表情をする。いったいさっきからなんだというの?やけにオークらしくない。と言っても、オーク自体を見るのは初めてだけど。
「ぐっ!?」
「ブ?ブヒゥィ?」
体の痺れを耐えているが流石にきつくなってきた。思わず、地面に手をついてしまう。それを見たオークが近付いてくる。遂に私を襲うというのだろうか?
「来ないで!それ以上近づけばただでは……!」
「ブゥブゥ、ブフヒィ」
私は精一杯声を出してけん制をしようとしたが、有無を言わさずに私に近づいてくる。体が動かないので逃げる事も出来ない。私は出来る限りオークを睨んで抵抗をする。何をされようとも心だけは折られるわけにはいかない!
「……」
「っく!?………な、なにを?」
これから起こるであろう事に覚悟を決める。そして遂にオークは私に触れてきた。だが触れた場所は何故か怪我をしている足の上で、手のひらを置いたあとしばらく何もしなかった。
一瞬、何をしているのか分からなかった。先程出血を止めたばかり怪我の上に手を置いたオークは、何かに集中するように手を置いた場所を見つめている。
途端に怪我をしていた所が暖かい感触が包み込んだ。見ればオークの手が淡く光っている。これは…一体何が起こっているの?
淡い光はオークの手を伝って私の足に移っていく。そしてしばらくすると足に移った淡い光が消えていった。一体なんなのだ?と思っていると、すぐに足が何もなかったような感触になった。
「(え?どういう事?)」
そう、"何もなかった感触"になったのだ、先ほどまでは痺れと怪我の痛みが走っていたというのに全く痺れや痛みを感じなくなった。まるで怪我そのものがなくなってしまったかのように。
「……ブヒィ?」
オークは手をどけて怪我をしていたところを見る。何をしたのか分からないが、どうやらオークが傷を治したようだ。もしかするとだが、恐らくオークが使ったのは回復魔法ではないだろうか?
「(まさかそんな!?回復魔法は高位魔法だというのに!?)」
だが、現に怪我は治っている。だが、驚く事はオークが回復魔法を使用して私を治した事だけではない。切傷の怪我を治療すると同時に、痺れ毒までを同時に治療できる事に私は驚いていた。話に聞く回復魔法は、片方ずつしか治せない。なのにこのオークは同時に、しかもあんな短時間で治したのだ。これで驚くなと言うほうが無理がある。
「(このオークは一体?)」
私が驚いた目でオークを見ていると、オークが急に倒れた。しばらく動かないところをみると、演技ではなく本当に気絶しているようだ。
「………」
あまりの出来事に無言になってしまっていた。目の前にいるオークはいったい何者なんだ?どうやらこちらの言う事をしっかりと理解しているように見えた。まるで高い知性を持っているかのように。
何よりも尋常じゃない回復魔法を使用できるオークなんて、今まで聞いたことが無い。いやそもそも、オークは魔法が使えないはずだ。なぜならそこまでの知恵がないからだ。…無い筈なのだ。
「……と、とにかく、ルドルフが心配ね」
気になることは沢山あるが…とりあえず、元気になった体を起こしてルドルフのもとに向かう。
「ルドルフ!大丈夫!?」
「ッ!?……?? お嬢様?」
「ふう…、大丈夫そうね」
見た感じ特に問題はなさそう。だけど一応として、人間族に奪われていた道具袋から回復薬を取り出しルドルフに手渡す。
「お嬢様、申し訳ありません。…いったい何があったのですか?」
「分からない、むしろ私が聞きたいくらい」
「は、はぁ?」
私は自分の身に起きた事をルドルフに話す。話し終えると、ルドルフはとても信じられないと言う顔をしていた。
「まさか、オークが魔法を使用できるとは…」
「…そうね。それに加えてこのオーク、私たちの言葉をしっかりと理解していたように見えた」
「オークは多少なら我らの言葉を理解できると思います」
「そうなの?でもなんとなくと言った程度なんでしょう?このオークはそうは見えなかった」
「しかしそれならば何故、我らの言葉を喋らないのでしょうか?」
「そこが不思議なのよね。なぜ、言葉を理解しておきながら話せないのか…」
あれよこれよとルドルフと話す。しかし結局なにも分からなかったので、とりあえずこのオークを捕えることにした。
ルドルフは危険だと言ったが私にはこのオークに興味が湧いてならなかった。先ほどまで、大変な目に会っていたというのに。だがそんな事を忘れてしまうぐらい、普通なら魔法を使えない筈が見た事もない魔法を使用するオーク、という面白いモノが目の前転がっていると思うと、そちらの方が気になって仕方なった。
オークをどう捕えるか考えながら、人間族の持ち物を確認する。ロープなどがあれば助かるのだけど…。
「ん?」
杖を使っていた男の懐から変な首輪が出てきた。私は、不思議に思いつつ道具袋から鑑定アイテムを取り出し首輪を鑑定する。
"隷属の首輪"
:この首輪を付けられた者は首輪を付けた者の奴隷になり命令に服従しなければならなくなる。命令に背いた場合、首が閉まる。また、首輪を付けた者に対して攻撃しようとする時も首が閉まる。
「……」
これは…。今まさに欲しい物が手に入った。私は思わずにやけてしまった。これがあればあのオークは私の言いなりになるというわけだ。そう考えると、すぐに倒れているオークの元に向かっていた。そして迷わずにオークの首に付ける。使用方法は先ほどの鑑定アイテムに書いてあったのでそれに従い使用する。
ステータスカードを取り出し自分のステータスを確認する。すると、ステータスの一部に今までなかった所有奴隷が表示されていてそれを確認すると、"イサミ"と書かれていた。
「ルドルフ!やったわ!これを見て!」
「お嬢様?」
つい嬉しさのあまり大声を出してルドルフを呼び出し、ステータスカードを見せる。
「所有奴隷?」
「そう!このオークをたった今私の奴隷にしたの!ふふふ、面白いモノが手に入ったわ!」
「お嬢様、いったい何をお考えなのですか?」
ルドルフはなにやら困ったような顔をしている。まったく、分からないのかしら?こんな面白いモノはそうそういないというのに。
「ブブブ、ブヒィア……ブヒッ!?」
ルドルフと話している時にオークが目を覚ました。
「…………ブヒィ?」
オークが首輪に気付いたようで不思議がっている。
「あっ!起きた?」
「……ブフ?」
オークは一瞬何か分からない目をしていたが、だんだん期待した目でこちらを見ている。
「さぁ!起きて!!ルドルフ!!これは面白いモノが手に入ったわ!!」
「お嬢様……、本気でございますか?」
心配性なルドルフがまだ渋っている。まぁ心配してくれるは嬉しいんだけどね。しかし、本当に人間族は良い物を持っていたわ!
「ふふふ、人間族め!私を誑かした罪は重いけど、良いものを持っていたわ!まさか、たまたま隷属の首輪を持っているなんて!」
「お嬢様、それは恐らく……いえなんでもありません」
ルドルフが何か言いたそうな顔をしていたが黙り込んだ。まぁ、大したことではなかったのだろう。
「……ブ?」
そんな事を考えているとオークが不思議そうにこちらを見ながら首を傾げている。
「さぁ、来て!あなたは今日から私の奴隷よ!!」
「ブヒアァァァーーーーーー!!」
オークが両頬に手を当てて大声を出す。
あは!そんなに私の奴隷になるのが嬉しいのね♪
次からまたイサミ視点に戻ります。




