願いむなしく---エルフ---
---美少女エルフ---
「ブヒヒーーー!ブヒヒーーー!!」
突然現れたオークは、なぜか大きな歓喜の声をあげて今もなお万歳している。
「っく!まじかよ!!ここに来て更にオークがくるのかよ!」
「畜生!俺はぜってぇ生きて帰ってやる!」
男たちがオークの登場によって慌てているようだ。私は意味不明なオークとリザードマン、男二人を警戒しつつこの後どうするかを考える。オークとリザードマンがもしも仲間だった場合、ただでさえ低い生き残る可能性がさらに減ることになる。
できればオークとリザードマンが仲間でない事を祈りつつ、オークの方を見る。近くにいたリザードマンもオークに注意を向けている。
「ギャギャギャ!マタ肉ガフエタ!」
「タイリョウ!ゲギャギャギャ!!」
言葉からしてどうやら、あいつらは仲間ではないようだ。少しだけ、安心していると
「ブッ!ブヒヒ!!ブゥ、ブヒ!!」
急にオークがリザードマンに向かって声を上げる。そして、腰に手を伸ばして……何か探しているようだが、目的の物が見つからないようだ。
「プギャーーー!?ブファヒ!?」
そして無い事に気付いたのか慌て始める。……あのオークは一体何をしているんだろう?
「ギャギャギャーー!!」
近くにいたリザードマンがオークに向かって駈けて行った。結局あのオークが何者なのか分からなかったが、この機会を幸いとルドルフの手を借りて、倒れた男の傍から離れて怪我をした足の血止めをする。痛みに堪えて血止めをしながらも男二人の方を見る。
一人は剣と盾を構えてリザードマンの攻撃を何とかしのいでいる。その間に、もう一人は杖を取り出して呪文を唱えている。そして、詠唱が終わったのかリザードマンの一匹に向かって、
「エアカッター!」
男の一人が魔法を発動させる。魔法によって作られた空気の刃物が対象に向かって飛んでいく。しかし、対象のリザードマンは持っていた槍の刃先でエアカッターを難なく弾いた。弾かれたエアカッターは後ろの木に刺さり、木の幹の4分の一ほど切断する。
「なっ!?俺の魔法が!!」
「馬鹿野郎!油断するな!!」
「え? ぐあ!?」
自分の魔法が簡単に防がれた事に驚いていたのか、僅かの間だが唖然としてしまっていた。その瞬間をリザードマンが見逃すはずもなく、盾を構えた男に二匹のリザードマンが攻撃している間に、もう一匹のリザードマンが魔法を使った男の胸を槍で貫いた。
「バリス!?ちくしょう!なんだってこんなことに!」
必死に3匹の攻撃から身を守りつつ男が愚痴っていると、不意にこちらと目があった。
「おい!あんたら、助けてくれ!頼む!礼なら何でもする!」
「馬鹿を言わないで!助けるはずないでしょう?」
「なっ!」
ルドルフも同意見の意を示すように私の言葉に頷く。本当に何を言っているのか。私を襲おうとした後だというのに。しかも、碌に動けない状況だ。自分で毒を盛ったのを忘れているのだろうか?
私とルドルフが呆れていると男の一人の背中にリザードマンの槍が突き刺さる。男は悲鳴を上げようにも肺を貫かれたのか声も出せずに死んでいった。
その光景を見て、哀れと思いつつも次は自分の番だと思うと恐怖が湧きあがってくる。出来るだけ恐怖を心の内に押さえつけながら魔力操作を行おうとする。しかし、どれだけ集中しても途中で乱れてしまう。
魔力操作に四苦八苦しているとリザードマン達が声を荒上げた。
「ギャギャ!?オマエ!ヨクモ!!」
いつの間に最初に殺された冒険者の剣を手に入れたのか知らないが、オークが剣を使って最初に近くにいたリザードマンを倒したようだ。仲間を殺された恨みからか、リザードマン全員がオークに向かっていく。
この機会に退避したかったが、体が思うようにいかず、忌々しくオークとリザードマン達を睨みつける事しかできなかった。その時なぜかオークがこちらを見ていた気がしたが、再びリザードマンに目線を戻すと急に棒立ちになる。
諦めた?と思っていると
「ギャギャ!?イツノマニ横ニキタ!?」
「!?シネー!」
「ギャギャギャーーーーーー!?」
「なに……?」
急に大声を上げ、リザードマン達が仲間割れをし始めた。互いに攻撃し合い、最後には傷だらけの一匹だけが残った。その一匹にオークが剣を振り下ろす。明らかに異常な光景だった。
最後の一匹を倒した後、オークが近付いてくる。醜悪な顔で気持ち悪い笑顔を作りながら…。その光景は、凶悪な殺人鬼を見ているようで、恐ろしい以外なんでもなかった。
「ブヒ!ブヒヒ!ブ……」
「死ねぃ!オーク!!」
「ブヒァーーー!?」
ルドルフも、オークの恐怖の笑顔の恐ろしさゆえか、毒なんて無かったように俊敏な動きでオークにレイピアを突いた。しかし、オークは直立した状態から上体を後方に反らせ、背中を地面につけるが如く勢いでルドルフの攻撃を避けた。…よくあの体勢で避けれるものね。背中は大丈夫なのかしら?
「ブヒッ!?ブファ!?」
「っく!?外すとは私も老いたか…。だが、お嬢様には指一本手は出させません!!」
「ブヒィ!?ブフヒァ!!」
ルドルフは見事な体勢で避けたオークを追いかけ絶え間なく攻撃を仕掛ける。オークはその攻撃すべてを避けている。なんて見事な反射神経。いくらルドルフが毒で体を思うように動かないと言っても、あのように動く事は私には無理だ。
少しオークに感心しつつも、早く倒されてほしいと願う。もし、ルドルフが倒されてしまったら、残るは体を思うように動かせない私だけ。オークは他種族の女性を好むと聞く。特に基本的、容姿が優れた者が多い女性エルフは特に狙われるだろうと聞いたことがある。オークが女性エルフを手に入れてすることと言えば…想像に難くない。
その瞬間を想像しただけで身を震わせてしまう。だからこそ、ルドルフの勝利を切に願った。しかし、その願いは虚しく、ルドルフが急にオークの隣に向かってレイピアを突き出して木に突き刺してしまった。必死にレイピアを抜こうとするルドルフにオークが剣の柄でルドルフを攻撃した。…なぜ、柄で攻撃なのかは分からなかったが。
ルドルフは柄での攻撃の痛みを耐えながら、なぜかオークを見失ったかのように周囲を警戒していた。目の前にオークがいるのにだ。
何をしているの!と叫びたくなったが、その前に遂に限界が来たのか、ルドルフは意識を失って倒れてしまった。




