神隠しの森へ---エルフ---
今回は美少女エルフの視点のみで、勇と会う前になります。
---美少女エルフ---
”神隠しの森”とはこの森の深奥の事らしい。ここに来る途中の村で実際に神隠しにあったという男性から話を聞く事が出来た。なんでも神隠しにあった本人が言うには、神隠し中にはそんな違和感など感じる事が無かったらしい。いつもより森の深くまで入ってしまい、何日か彷徨っている内に気がついたら村に戻ってこれたと言うのだ。しかし、村の方では彼がいなくなってから6か月経っていたそうだ。
森の中で何を見たか?と聞いたが、特に生き物とは出会っていないらしく、幸い食料を多く持っていっていた為に助かったらしい。しかし、夜中には森の中で何かが動きまわっている気配がしたので、夜は常に焚火の火を絶やさないようにしたそうだ。得られた情報はそれぐらいだった。
「ルドルフ、本当にこの森にディアリームはいると思う?」
「現時点では何とも言えません。しかし、今はこの森を調べるしか方法は無いかと」
「そうね…」
確かに、ルドルフの言うように他に情報がないのでここを調べるしかない。
「そろそろいきやしょうや。へへへ……」
「本当に神隠しの森への行き方を知っているんでしょうね?」
「もちろんでさぁ」
「だったら、無事に帰る方法も知っているのでしょう?」
「当然ですぜ」
「ふ~ん、ならどのようにして帰るのか教えてもらえる?」
「そ、それは…」
ギルドで雇った冒険者に聞くが黙りこむ。本当にこいつらは知っているのだろうか?強い口調でルドルフが彼らに問い詰め始める。
「どうしたのです?なぜ答えぬのですか?」
「いえ…。それはその…秘密でして…」
「それは、雇い主である我らにも話せぬというのですか?」
ルドルフが冒険者にやや怒りがこもった声で話す。森に行って本当に帰ってこれるのか分からない以上、不安な要素は出来る限り減らしておきたい。だから何としても、帰り方だけでも知っておこうというのだろう。ルドルフには本当にいつも苦労をかけてるわね。
「まぁまぁ、そう怒らんでくださいや」
「そうですぜ。これは、言わば俺たちの商売情報なんだから」
残りの冒険者二人が話しかけてくる。
「商売情報?神隠しに行こうという奴なんてたかが知れているでしょうに」
「それでも、アンタ方のような方もいるっちゃあいるんでね。こっちも生きるのに必死なんですよ。勘弁してくださいや」
「む…」
確かに私たちのような、訳ありか或いはモノ好きな連中はいるだろう。これ以上文句を言ったところで、この男達は情報を話す事は無いだろう。
「とにかく、行くんでしたらすぐにでも向かいましょうや」
「…そうね」
この村で得られる有益な情報は既に無いと判断し、旅の準備を整える。冒険者たちは少し話したい奴がいると村の中に消えていったが、すぐに戻ってきた。特に気にする事もないと考え、連中と合流してから森の中へと出発した。
たどり着いた森は至って普通の森だった。故郷のエルフの森とあまり変わらない所を見ると、本当にこんな所に神隠しの森があるのか?と不安になってくる。だが今はこいつらを信じていくしかなかった。
森の中に入ってから時間が経ち夜になった。休憩もなしに歩いてきた為、今日一日でだいぶ森の奥深くまでこれたと思う。
「ねぇ、神隠しの森はどれくらいで着くの?」
「へぇ…、まぁもう少しで着くかと」
「?? 結構近いのね?」
「へへへ……」
確かにだいぶ進んだがそんなに近くにあるんだろうか?と不思議に思っていると
「そろそろ飯にしやしょうや」
冒険者たちが食事の準備を始める。私も手伝う為に加わろうとすると
「あぁ、お嬢さん方はいいっすよ。お疲れでしょう?」
「ん?確かにやや疲れているけど、別に手伝えない事もないわよ?」
「いいんですいいんです。明日も大変になるでしょうから。今のうちに休んどいてくださいや」
「そう?そこまで言うなら…。ルドルフ、遠慮なく休ませてもらいましょう」
「承知いたしました」
私は近くにあった倒木に腰かけ、剣の具合を確かめる。ルドルフは、簡単ではあるが湯を沸かして紅茶を用意してくれた。
「お嬢様、どうぞ」
「ありがとう」
ルドルフが入れてくれた紅茶を飲みながら剣の手入れをする。ルドルフは横に立って辺りを警戒しているようだ。
「できやしたよ~」
剣の手入れをし始めてからしばらくした後、声がかかる。
「さぁ、どうぞ」
木の器に入ったシチューらしきものを受け取る。正直、あまり美味しそうに見えないが贅沢は言えない。どうやら、その考えはルドルフも一緒だったらしく、少し顔を顰めつつも礼を言ってシチューを受け取っていた。
晩食を食べた後、冒険者の一人がルドルフに声をかけた。
「すいやせん、焚き火用の枯れ枝が減ってきているようで。補充したいんですが、手伝ってもらえやせんか?」
「別にかまいませんが…」
チラッとこちらを見るルドルフ。まったく心配性ね。
「私なら大丈夫。悪いけど手伝ってあげて」
「…承知しました」
ルドルフは渋々といった感じで了承し、冒険者の一人に付き添って森の中へと入って行った。
私はする事もなしに、ただ焚火を見つめていた。だが、しばらくすると体に違和感を感じた。初めはちょっとした痺れだったので気のせいかと思ったが、だんだん痺れが強くなってきたので異常事態が起こっている事に気付いた。
「な、…なに?これは…?」
「やっと、効いてきやしたね?」
「な!?あ、アンタ達!?」
動く事が難しかったがなんとか後ろを向くとそこには冒険者3人が気味の悪い笑みを浮かべて立っていた。
次回も、エルフ視点になります。ルドルフはちょっとお歳をとった執事的なポジションだと思ってもらえると助かります。




