こんなはずでは!?
主人公は見た目が怖くて醜悪なオークです。オークです。……大事なことなので。
最後のトカゲの命を絶った俺はエルフたちのもとに向かう。どうやらエルフさんはこちらを警戒しているようでこちらを睨んでいる。まぁ見た目は醜いオークだからな。仕方ないと言えば仕方ない。醜いオークなんて誰得…?
ちょっと泣きそうになりつつ、出来る限り笑顔を作り相手を怯えさせないように気をつけながら声をかける。こういうのは第一印象が大事だからな。さぁ!これから!始まる俺の転生ライフ!
「やぁ!こんばんわ!俺は……」
「死ねぃ!オーク!!」
「ギャーーーー!?」
俺が渾身の挨拶をしているときに、初老エルフが細い剣、レイピアで突いてきた。俺は咄嗟に大声を上げつつブリッジで回避する。背骨が悲鳴を上げている気がする。
「ちょっ!?まて!?」
「っく!?外すとは、私も老いたか…。だが、お嬢様には指一本手は出させません!!」
「だから!人の話を!!」
初老エルフはこちらの言い分を一切聞かずに攻撃を絶え間なく繰り出してくるので必死に逃げる。有無を言わさない言動にさすがの俺もイラついてくる。
「このっ!?話を聞け爺エルフめ!!」
俺は、魔力を少しだけ爺エルフに向かって流す。爺は俺に集中していて、霧に気付いているのかいないのかわからないが、周りに少しだけ霧が出現する。そして、爺エルフの意識を近くの木に向かわせる。
「むっ!?遂に諦めたか!覚悟!」
サシュンッ!!
大きな音を立ててレイピアが木に突き刺さる。木に向かって鋭くレイピアを突き出し抜けなくなっている姿が少し滑稽に見えたが、木を完璧に貫いているさまを見ているとぜんぜん笑えない。なぜか抜けなくなった事に慌てながら、必死に抜こうとしている爺エルフの横から剣の柄を腹に向かって強く打つ。
「ぐっ!? い、一体何が!?」
「ありゃ、やっぱりマンガみたいにはいかないか」
かなり強く打ったはずなのに気絶するどころか痛みに耐えつつ辺りを窺って近づきがたくなった。どうやらトカゲの時もそうだったが幻惑にかかっている時は俺の姿が見えていないようだ。
さて、この後どうするかなと考えていると、
『(イサミ、相手はかなり弱っている。今なら我が夢幻を使って意識を奪う事も可能だ)』
「(おぉ!便利だな!)」
早速、爺エルフの意識を失う、というか奪うように強く念じる。すると、爺エルフが苦しそうな表情を浮かべだした。初めは踏ん張っていたが遂に意識を失って倒れた。
「ったく。人の話を聞かないじい様だ」
しかし、これなら最初からこうすればよかったな。
『(相手の意識を強制的に奪うには、相手が弱っている時や相手が格下の時ぐらいだ)』
「あ、なるほどね。そううまい話な訳ないか」
ヤシロの言葉に頷きながら爺エルフの近くに行って安否を確かめる。ちゃんと呼吸音が聞こえるので問題ないようだ。
俺は少し安心してから美少女エルフの所に向かう。
「さて、初めまして。レディー?」
俺は自分で言ってて恥ずかしくなるセリフを言いつつ、美少女エルフに挨拶する。さっきのは、爺さんだったから、頑固者だったのだろう。しかしこちらは見た目麗しき美少女。きっと、俺の事を理解して……
「くっ!? 寄らないで!オークめ!!」
「……」
…まぁ…やっぱりそうなりますよね。だってこんな見た目だもんな。恐れたり、近づきたくないのは分かる。でも、挨拶している相手をこんなに拒絶しなくても良いんじゃないだろうか?
「あの…、もう少し俺の話を…」
「何を言っているの!?っく!こんな人語も話せないオークに遅れをとるなんて…。人間族め!厄介な事を!!」
「……んん?」
あれ?もしかして…、いや、もしかしなくても俺の言葉が通じてない?だから、さっきの爺さんも俺のことを攻撃してきたのか?
「えっと…、すいませんお嬢さん。お尋ねしたい事が…」
「せめて、魔力さえ戻れば…!」
「あぁ、やっぱり通じてないな。だめだこりゃ」
なんだこれ…。確かに?異世界なんだから言葉が通じなくてもおかしくないだろうけど。転生したんだからさ!翻訳ぐらいできろよ!!エルフが言ってる言葉は分かるのに、こちらの言葉は通じないなんてなんて中途半端な…。まぁ言ってる事が全く分からないよりマシだけど…ってあれ?でもヤシロとは話通じてたよな?
『(我はお主の心の声を聞いていたからな)』
「(そ、そうですか…)」
チクショー!!なんだこれ!?上げておいて落とすとか!?あの転生させてくれた女神?は見た目に似合わずドSだったのか?
心の中でこの世界と女神様に向かって苦情を発していると目の前の美少女エルフが弱ったように地面に手をつく。
「ぐっ!?」
「ん? 具合が悪いのか?」
俺は美少女エルフに近づく。
「来ないで!それ以上近づけばただでは…!」
「はいはい、病人は黙ってろ」
有無を言わさず美少女エルフに近づいていく。エルフの方は思うように動くことすらできないらしく、体を震わせながら半ば諦めたような目でこちらを弱々しく睨む。…何も変なことはしないっての。……多分。
「…………。(さて、できるかな?)」
「っく!?………な、なにを?」
俺は美少女エルフの怪我をしている足の上に手のひらを置き、出来る限り健康な状態になるよう意識を集中させる。
エルフは触れた瞬間、嫌な顔をした。だがしばらくしてもそのままの俺に、何をしているんだ?という顔をする。
…あ、そういえば初めて女性の太ももを触ったな。…なんか色々やばい事になりそうだったが今は、治療が先決だった。静まれ~!我が煩悩よ!!これは治療!これは治療!!
ひとまず心を落ち着かせて治療に集中する。だんだん頭の中で、何か水の流れのようなものがくるくる回ってきて眩暈のような感じになってきた。だが、我慢して治療に集中する。一度出来たのだからもう一度出来るはずだ。
だいぶ眩暈が酷くなってきたとき、手のひらが熱くなってきた。見れば手が少しだけ光り始めている。その手の光が俺の手を伝ってエルフの足に移っていく。そして光が移り終えると、一気に手の温度が覚めていく感じがした。
「…終わったか?」
俺は美少女エルフの太ももを舐めまわすように…ゴホンッ!もとい、怪我の様子をを確かめると、初めは結構痛々しく斬られていたふとも……足が何も無かったように綺麗になっていた。
美少女エルフが驚いたように目を大きくしている。俺は少し安心し、立ち上がろうとする。だがその瞬間、眩暈が酷くなって目の前が暗くなった。そして、体は俺の意思から外れて地面に倒れてしまった。あれ?最近、俺倒れすぎじゃね?
『(イサミ、初めて魔力を使用したせいだ。精神が持たなくなったようだ。なに、死にはせぬ)』
「(マジかよ……。まだ誤解が解けてないのに、ここで倒れたらやばいん……じゃ……)」
目の前が完全に暗闇になった。
「……」
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「ぐぬぬ、俺はオークの嫁なんていらな……ハッ!?」
最悪の夢を見た気がする。汗が酷い。シャワーを浴びたい。
そんな事を考えながら寝ぼけてた目をこすりながら体を起こす。目の前にはにやにやしている美少女エルフと困り顔をした爺エルフが話し合っていた。そして、なにか首に違和感を感じる。
「……何だこれ?」
どこぞのSMプレイで用いるかのような首輪をしていた。
「あっ!起きた?」
「…なんだ?」
目を覚ます前とは打って違って、エルフの娘は元気な目をしながらでこちらに話しかける。こ、これは、恩返しイベント!?やっぱピンチを助けた俺に恩返ししてくれるとか?よっしゃーーー!!
「さぁ!起きて!!ルドルフ!!これは面白いモノが手に入ったわ!!」
「お嬢様…、本気でございますか?」
美少女エルフは思ったよりも腕白な性格のようだ。爺エルフがなにやら困ったような顔をしている。
「ふふふ、人間族め!私を誑かした罪は重いけど、良いものを持っていたわ!まさか、たまたま隷属の首輪を持っているなんて!」
「お嬢様、それは恐らく…いえなんでもありません。」
どうやら冒険者に騙されてあんな状態になっていたらしい。
「…ん?」
色々突っ込みたいところがあるが、一つだけ聞き逃せない言葉があった。
"隷属の首輪"
まさか、もしかして、もしかしなくても今俺がしている首輪って……。
「さぁ、来て!あなたは今日から私の奴隷よ!!」
「いやああああああぁぁぁーーーーーー!!」
俺の転生ライフはどうなるんだろう?
オークに首輪……、想像したくないですね。ちなみに、主人公が話す言葉はエルフたちからは、豚が鳴いているようにしか聞こえていません。




