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転生ライフ!オークライフ!?  作者: エケイ
第六章 : 世界樹の島
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その4


 話がまとまりかけていた所で急に俺が立ち上がり手を叩いて音を出した事に、その場にいた誰もが驚いた顔をしていた。


「イ、イサミ?どうしたの?」

「…先程から気になっていたのですが、この者達は一体誰ですか?見たところ、そちらは人間の方のようですが」


 ラタトスクがマロクに視線を向けると、マロクは困ったような顔で苦笑していた。だが、エルミアが「あぁ只のオマケよ。」と答えると「ちょっ、ワイの扱い酷くないッ!?」と絶望の表情を浮かべていた。


「彼はイサミ。私の奴隷で…この角をくれた恩人よ」


 エルミアの言葉にエルフ達はざわつき始める。


「恩人でありながら…奴隷ですか?なんとも奇妙な関係ですね。いや、それよりもこの者がディアリームの角を見つけたと?」


 表情から「余計な真似を…」と考えている事が容易に想像できる。だが、そんな事はどうでも良い。大事なのは…先程の話の方だ。


 文字を書くために羽ペンを懐から取り出すと、周囲の警護のエルフやサーシャさんが腰の剣に手を伸ばしていた。恐らくは武器でも取り出すかと思ったのだろう。俺は気にせずに文字を書き始める。


「“エルミア、先程の話。どうか考え直して欲しい”」

「え?どういう事?」


 やはり、エルミアは先程の条約の恐ろしさが分かっていないらしい。あのルドルフさんですら止めない辺り、もしかしなくてもエルフは外交関連に疎いのかもしれない。今までは鎖国状態だった為だろうか?


 俺はラタトスクに向き直ると、文字を書いて、それを見せる。


「“ラタトスクさん、先程の話。ちゃんとエルフの皆さんに説明されたのですか?”」

「当たり前でしょう!何を馬鹿なことを――」

「“申し訳ないですが、説明した内容を聞いても?”」

「はぁ?なぜこの私が貴様の為に、わざわざ説明してやらなければならない?身の程を弁えろ!奴隷風情が!」


 うっ。ちょっと怖いです。相手はやり手のサラリーマンと言った感じに対して、こちらは只の高校生…だった奴隷オーク。初めから相手にならない気がする。だけどこのままじゃエルミアだけでなく、エルフの皆が危険な目にあう事になる。逃げては駄目だ!エルミア(マイエンジェル)や可愛いエルフの子供達マイフェアリーの為にも!


 思わず下がりかけた足を、グッと踏ん張ってラタトスクの立ち向かう。


「“奴隷かどうかなど、今は関係ありません。私は貴方が提示した三つの要求が全て危険なものであると感じました”」

「危険?どこが危険だと言うです?理解できていないくせに頭から否定する貴様のような者を愚か者と呼ぶのだ!」


 いきなりしゃしゃり出てきた奴隷が、生意気な事を言っている事に苛立っているのだろう。ラタトスクの声がかなり荒立っている。よし良い流れだ。冷静でいられるよりは苛立っている方がこちらとしてはやりやすい。…怖いけど。


 皆が注目していて落ち着かない環境ではあるが、出来る限り急がず慌てずに文字を書いていく。


「“まず最初に貴方が提示した人間族の優位待遇。それはこの国における人間の地位の確立。つまりエルフ側の意見よりも人間側の意見を尊重すると言う、恐ろしい条件。それはこの国を人間達の属国化とする事を意味する”」

「ハッ!何を言うかと思えば…、主人エルミアの言葉、そのままではないか!そしてその問いについては先程答えたばかりだ!それすらも忘れたというのか?はぁ、これだから愚か者は嫌なのです。理解できずに何度も聞いてくるのは苛立ちしか覚えません」


 ラタトスクは少し落ち着いた感じに戻り、眼鏡をクイッと上げて俺を見下ろしている。気にせず、続けて文字を書き続ける。

 

「“2つ目の要求。入国検査の撤廃。言葉から察するにこの国に入る者の素性を調べる事等をしなくなると言うものですね?”」

「そうだ。商人達一人ひとりが審査していると、時間が掛かってしまう。私はこの国で自由な商売をして欲しいのです。その為に、入国審査などと言う無駄な作業をやめるべきだ。そしてそれが人間国とエルフ国の友好関係を築く事になるのです!」


 最後の方は高らかに言い放っていた。それに同調するかのように複数のエルフ達が拍手を送っていた。…アホか。


「“先程からあなたは商人、商人と言っているが、入国検査の撤廃、これはこの国に沢山の犯罪者達が流れ込んでくる事を意味する”」

「なッ!?」

「“それに危険薬物、取り扱い禁止物などもこの国に容易く持ち込む事が出来るようになる。まさかとは思いますが、入国検査撤廃はそう言う目的で求めたので?”」

「貴様!何を馬鹿な事を――」

「なんだと!?」

「そ、そんな馬鹿な!?」


 ラタトスクが焦って否定する前に何人かのエルフ達が戸惑いの声を上げて遮られてしまった。見ればエルミアとルドルフさん、サーシャさんも驚いた顔をしている。マロクは商人ギルドに属している為か今の考えが予想できていたのだろう。1人腕を組んでうんうんと頷いていた。


「ラタトスク殿!これはどういう事だ!」

「お待ちを!これはその者の詭弁です!私はそういう目的で要求した訳ではありません!」

「しかし、その者の言う事はもっともだぞ!」

「そ、それは…」


 幾人のエルフに問い詰められているラタトスクは答えに困っている様子だ。だが、問題はここで終わりではない。


 俺が羽ペンを持って書き始めると、その場にいたエルフの殆どが俺の行動に意識を向けて静かになった。だが、ラタトスクはこれ以上俺に何か書かせるのは不味いと判断したのだろう。先程、同調していたエルフの1人を呼び寄せると、リリアーナ女王に向かって跪いて進言し始める。


「リリアーナ女王陛下!この者は自分勝手な考えで無理やり私を貶めようとしています!すぐにバムタール殿にこの場からつまみ出す御指示を!」

「女王陛下!このバムタールにご命令を!」

「それは…」

「母上、なりません!ラタトスク!貴方の考えが間違っていないというのならイサミに言い返せば良い!」

「お待ちください!エルミア様!ラタトスク殿はこの国に無くてはならないお方!そんな方を貶めようとするその者を許すわけには――」

「黙っていなさい!バムタール!今、貴方の意見など求めていない!」

「――ック!?」


 バムタールと呼ばれたエルフの男は苦虫を噛み潰したかのような顔をするが、すぐに「…かしこまりました」と答えた。エルミアが、真剣な眼差しで俺を見つめてくる。


「イサミ、続けて」


 俺はエルミアの言葉に頷くと、再び羽ペンを動かし始める。


「“最後の三つ目。これが一番問題です。領事裁判権の確立。これはこの国で問題を起こせば相手の国の法で裁かれる事になる”」

「…えぇ、その通りです。この国で問題を起こした人間はすぐさま連れて帰り、人間国の法で裁きます。それがこの国と友好築く為に必要な処置であり、当然の事です。人間の犯罪者が出れば人間達が責任をもってこれを罰する。それの一体どこが問題だというので?」


 問題ありまくりだっての。


「“エルミア、例えの話だけど。エルフの1人が故意に別のエルフを殺したとする。その場合、この国ではどのような処分になるの?”」

「え?それは…捕らえて長年の懲役でしょうね。最悪、死罪もありえるわ」

「“それではラタトスクさん。先程の話、人間同士の場合も同じですか?”」 

「…当然です」

「“またしても例えの話ですが、ラタトスクさん。この国のエルフの1人に乱暴を働いた人間がいた場合、その人間はどうなるのですか?”」

「ッ!何度も言っているだろう!人間の国に連れて帰り法で罰する事になる!」

「イサミ、私もイサミの言いたい事が分からないわ。それがどうしたの言うの?」

「“エルミア。人間の国にエルフに乱暴を働いたから罰になるという法は、本当に存在しているの?”」 

「え?」


 確か、昔は人間国にいるエルフは保護されていたと聞いた事があった。だがそれは、人間国に滞在しているエルフが実力者で名が知れていたから人間国の王に保護されているだけであって、全てのエルフがそうではない筈だ。恐らく、エルフという種族を守る為の法は人間の国には存在しないだろう。


「“エルフに乱暴に働いたから罰する法はありますか?ラタトスクさん?”」

「そ、それは…」

「“何よりも恐ろしいのが罰を犯した人間を国に連れて帰った後、うやむやにしてその人間を解放する事も十分に考えられる”」

「――ッ!?」


 最初は自信ありげに上がっていたラタトスクの顎の位置も今では普通の位置に戻り、何も声を発する事が出来なくなっていた。ただ、信じられないと言った顔でこちらを見ている。


「“貴方が提示した内容、それは全て不平等な条約ですよね?”」

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