魔力と新たな力
俺は今、猛烈に感動していた。転生して初めて良かったと思えた。なぜなら目の前に美少女エルフがいるからだ、俺はこのイベントを必ず成功させハーレム作成の第一歩にするんだ!!転生ライフを謳歌するんだ!
「っく!まじかよ!!ここに来て更にオークがくるのかよ!」
「畜生!俺はぜってぇ生きて帰ってやる!」
男冒険者2人は俺の登場によって慌てているようだ。エルフである残り二人はトカゲ共となぜか男達を警戒しつつこちらを見ている。
「ギャギャギャ!マタ肉ガフエタ!」
「タイリョウ!ゲギャギャギャ!!」
トカゲ達は洞窟にいた奴ら同じ種類の魔物のようだ。もしかしたら、獲物を求めてここまできたのかもしれない。夜中に森の中を徘徊していたのはトカゲどもだったのか。
普段ならこいつらを相手にしたりしない。だが、今の俺はいつもとは違うぜ!!
「ふん!俺は逃げんぞ!!さぁ、こいや!!…あり?」
俺は棍棒を構えようとして……無い事に気付いた。
「しまったーーー!?武器がない!?」
俺は手ぶらのままでここに来た事に気付いた。ナイフなら持っている。だが刃毀れしているし、トカゲ相手にナイフと言うリーチの短い武器で戦うのは…、戦闘初心者である俺には難しすぎる。
「ギャギャギャーー!!」
トカゲの一匹がこちらに向かって駈けてくる。トカゲの手に持った槍はとても鋭く、軽く体を貫かれてしまいそうだ。実際、近くに倒れている冒険者は槍によって貫かれて死亡している。
「ちょっ!待った待った!!待ってーー!」
俺の叫びも虚しく、トカゲが槍を構えてこちらに向かってジャンプしてきた。見た目に合わず、高い跳躍力でこちらに向かって槍に体重を合わせて突き降ろしてくる。
「わわわっ!」
幸い、こちらは疾風の靴をはいていたせいか素早く回避する事が出来た。槍が地面に突き刺さる。トカゲが悔しそうな顔をしてこちらに向かってもう一度槍を向ける。
「どどど、どうしよう!?」
『(イサミよ、我の力を使え)』
「ヤシロ?どうすればいい!?」
俺はトカゲの槍を必死によけながらヤシロから力の使い方を教わる。使い方は、魔力を敵の周囲に撒き散らして相手の注意を違うところに向けるように意識することらしい。
『(簡単であろう?)』
「魔力なんてわかるか!!」
なに自然に魔力を撒き散らすと言ってんの?そんなの分かんないし、できないって!でも、出来ないと死んじまう!
俺は必死にトカゲの攻撃を避けつつ体に力を入れて意識する。こ、こんな感じか?
『(少し違うな。魔力は筋肉の力を込めるイメージでなく、体の中の水の流れを強く流すイメージだ)』
「(んん!? よくわからんが、やるしかない!)」
俺は言われたとおりにイメージする。すると、今まで感じた事がなかったような力を込める事が出来た。これが魔力なんだろうか?体の中に大きな水の流れのようなものが溜まっていく感じがする。この体になったから出来るようになったのか、この世界に来た為にできるようになったのかは分からないが、とにかく溜めた力をトカゲの周辺に撒き散らすイメージをする。
「ギャギャギャ!?」
トカゲの周辺に薄い霧のようなものがいきなり出現し、慌てている。次に相手の注意を近くの木に向けるように意識する。すると、霧が消失し始める。……失敗か?
「ギャギャギャ!!ソコカ!!」
急に声を上げると木に向かって槍を突き出す。
「ギャギャー!?ナンデ死ナナイ!?」
トカゲは何度も狂ったように木に向かって突き出す。
「何だこれは?急におかしくなり始めたぞ?」
『(我が力である「夢幻」だ。相手に幻惑を見せる事ができる)』
「幻惑?」
良く分からないが、トカゲは木に槍を突き出すのに必死でこちらには目もくれない。俺は、近くに倒れていた冒険者(来た時にはすでに死んでいた冒険者)から剣を借りる。そして、今もなお攻撃し続けているトカゲの首に向かって、剣を振り下ろした。一撃では倒す事が出来ず、連続して三回振り下ろすとようやく首が切り落ちた。
「ギャギャ!?オマエ!ヨクモ!!」
仲間の一匹を殺された恨みからか残り三匹が俺に向かって迫ってくる。トカゲ達の足元にはトカゲに殺されたのか男冒険者2人が倒れていた。慌ててエルフたちの方を見ると足を怪我しているのか、女性エルフが地面に座り込み、足を抑えながら忌々しくこちらを見ているがまだ無事のようだ。初老の男性エルフの方は女性エルフを庇うように細い剣を構えて立っている。
「この力は複数にも効くのか?」
『(当然だ)』
「(なら、こんな風に使えるか?)」
俺は思った事をイメージしながらトカゲ達の周囲に魔力を放つ。すると、
「ギャギャ!?イツノマニヨコニキタ!」
「!?シネー!」
「ギャギャギャーーーーーー!?」
トカゲ三匹が殺し合いを始めた。どうやら、俺の思惑は成功したようだ。トカゲの注意をトカゲ同士に向けた結果、トカゲには仲間が俺に見えるようだ。
しばらくした後、傷だらけのトカゲ一匹が残っていた。俺は少し悪いと思いつつも、もはや死にそうになっているトカゲに向かって剣を振り下ろしトドメを刺した。




