子は親に似る
1000ポイント越えを祝して連日投稿!
(›´ω`‹ )オラガンバッタヨ…
船が出港してから二日が経った。あれからコレと言って問題が起きる事も無く、正に順調と言って良い航海だろう。しかし…
「“暇だな”」
「だから言ったやん。暇になるって。」
俺は同部屋のマロクに愚痴をこぼしながらベットに腰掛けていた。対してマロクは今日も何かと忙しそうに手紙を書いている。ここは船の上なのだから手紙が出せる訳もないだから島に着いてからで良いのでは?と聞くと。
「アホか!時間は有限なんやで?今の内に書ける事は全部書いておかな!」
まったく持っての正論を返され、俺はグウの音も出せずに見守る事しか出来なかった。
ちなみにエルミアとルドルフさんの部屋に尋ねてみるとなにやら此方も忙しそうに何か話し合っており、とても暇だから遊びに来たなんて言えなかった。
「(ううう、携帯もないからゲームも出来ない。自分の良い時間の潰し方がわかんねぇ…。)」
何か一人ぼっちになってしまったような気分になりながらもみんなの邪魔にならないように今日も部屋で過ごしている。
「(いや、正直言うと俺にもしたいことはあるんだよ?ただ、人目がある所じゃできねぇし…。)」
実は無間暴食や金剛、夢幻の練習などをしたいとは思っている。ただし、ここですると誰かにばれる危険がある。それは避けたいところだ。
「(仕方ない、俺も手紙でも書いてみるかな。)」
そうして取り出したのは、王都で渡辺さんから貰った手紙鳥だ。確かコレなら船の上でも渡辺さんに向かって飛ばす事が出来る。なので早速ペンを取り出して書き始める。
「(う~ん、どう書こうかな?)」
“暇”…う~ん、流石にこの一文字だけで送るのは悪い気がする。この紙、高いらしいし。
“こんにちは、元気ですか?私は元気です。”…小学生かッ!?
仕方ない。ここは無難に経過報告だけでも書いておくか。渡辺さんに心配させるわけにもいかないし。そうして、俺はペンを動かし始めた。
「“渡辺さん、そっちは変わりないか?こちらはリングネース島に向かう船に乗っている所だ。思っていたよりも船旅と言うのは暇なモノで、毎日マロクと共に部屋で過ごしている。ところで王都の方はどうだ?皆、元気にしているか?彩華の奴がまた無理していないかが心配だ。悪いが渡辺さんがあの馬鹿を支えてやってくれ。それじゃあ、また。”」
…こんなもんか?まぁ、初めて送るんだから難しい内容まで書く必要はねぇだろ。
俺は手紙を持って立ち上がると、部屋を出て甲板を目指した。
甲板の上には見張りに立っている船員や、釣りをしている船員などがいた。そんな中、俺は手摺りの近くまで来ると
「“お届け物”」
渡辺さんをイメージしながら呪文を唱える。すると、手の上にあった紙が独りでに折りたたまれていき、1つの見事な鳥型になった。そして、鳥型になった紙は本物のように羽ばたくと船の後方に向かって飛んでいった。恐らく、渡辺さんの所に行ったのだろう。
俺は紙の鳥が飛んでいくのを確認すると、甲板のほうに向き直る。するとそこにはドクロマークの眼帯をした男が立っていた。
「よぉ!イサミ…だったよな?隣いいかい?」
男は…確かラザレスだったか?ラザレスは俺の隣に来ると小型の瓶を取り出した。
「飲むか?」
「(これお酒か?)」
ラザレスの持つ小瓶は僅かに水滴がついており、程よく冷えた酒だと感じられた。だが俺は首を横に振って断る。
「ん?そうか、残念だ。」
そういうとキュポンッ!と音を立てて瓶の蓋をあけると、グイッと瓶を傾けて飲み始める。
「ップハァ!うめぇ!」
『イサミ!我にも飲ませろ!飲ませろぉ~!』
俺の中でヤシロが大声で叫んでいたが、とりあえず今は目の前のラザレスに尋ねる事があった。
「“それで、何の用ですか?”」
「あぁ、実はな…。」
そういうと、ラザレスが少し屈む。そして次の瞬間――
「ッオラアァァ!」
「ッ!?」
目の前に剣先が迫ってきたので、俺は咄嗟に体を横に動かして剣をかわす。
「へぇ!今のを躱すのか!やっぱり親父を倒したのは本当なんだな!」
俺は転がした体を起き上がらせながら、いきなり攻撃してきた目の前のラザレスを睨む。
「“何のつもりだ?”」
「いや、悪い悪い。あんたが親父を倒したなんて話、正直信じられなくてな。そこで確かめようと思ったのよ!」
俺はその言葉を聞きながらどこかキョトンとした顔をしてしまう。だってそうだろう。普通はラザレスが俺を親の敵とも言えるような顔で睨んでいるとかなら、まだ分かる。でも、目の前にいる男はどこか嬉しそうな顔をしながら俺を見ているのだ。
普通なら、殺されかけたと憤怒する所の筈が、ラザレスの笑顔を見ていると何処かそれすらも許してしまえる気がしてしまう。恐らく、俺が躱せなくても寸前でラザレスは止めただろう。そんな風に思わせる雰囲気がこの男にはあった。
「“納得しましたか?”」
「いいや!まだだ!アンタが、本当にあの親父を倒したのかを確認させて貰いたいな!」
単に腕相撲で勝っただけだろうに、と愚痴りたいところだが、自然と俺は
「“良いですよ。勝負です。”」
「そうこなくっちゃな!おい、剣を貸してやってくれ!」
ラザレスの言葉に何時の間にか周囲に集まっていた男の1人が腰の剣を抜いて、俺に渡す。普段と違う握り心地の剣だが、普段手にしている武器は全て部屋の中だ。仕方が無い。
「互いのどちらかが負けを認めるまでの一本勝負!それでいいな?」
俺は頷いて答えると、ラザレスは懐からマテリアを加工した装飾品を取り出して強く握り締めた。
「“風よ!我が身に纏いつけ!《速度上昇!》”」
呪文言い終えるとラザレスの体に風が優しく纏いつき、僅かにラザレスの体が淡い緑色を発し始めた。そして、先程の倍以上の速さで剣を突き出してきた。
「(早いッ!?だけどッ!!)」
決して対処できない速さではない。俺は咄嗟に剣の腹で剣先を受け流し、ラザレスの剣の力を上に向かって弾く。そして、隙が出来た懐にむかって俺は剣を構えるが――
「あめぇぜ!“水よ!壁となりて我が身を守れ!《水の壁!》”」
ラザレスが呪文を唱えると剣が青く光り、ラザレスの足元から大量の水が壁の如く立ち上がる。その魔法の為にラザレスの姿が見えなくなってしまったが、俺はかまわず剣を一閃する。
「(なっ!?いない!?)」
一閃された水の壁はバターが溶けるように崩れ落ち、まるで最初から無かったように消えるが、その場にいるはずのラザレスが見えなかった。
『イサミ、上だ。』
「(むっ!?上!?)」
ヤシロの言葉に従って上を見ると、何時の間にどうやって飛び上がったのか、俺のはるか上空にラザレスが飛び上がっていた。
「おっ?よく気づいたな!流石だ!」
空中で不敵な笑みを浮かべるラザレスに向かって俺は剣を構える。
「いくぜ!“水よ!波となりて敵を飲み込め!《水の津波!》”」
今度はラザレスの指輪が青く光ると、空中に大量の水が発生し津波のように俺に向かって突っ込んできた。そして、ラザレス自身は水に上に浮かんでいるかのように、津波に乗るとそのまま剣を構えて向かってくる。
ドクロマークの眼帯をして船長の帽子やマントを着て、笑みを浮かべてサーフィンをしているようにこちらに来る姿は正直、すっげーカッコイイ!
だが、そんなラザレスの雄姿に見惚れているわけにもいかず、チャキッと剣を構えると思いっきり力を込めてジャンプする。
「「うおおおぉぉ!」」
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「いてて。やっぱり勝てねぇか~。」
俺は倒れたラザレスの肩を支えながら立たせる。
「いやぁ、さすがあの親父を倒した男だ!見事の一言に尽きるな!」
そんな笑みを浮かべて俺を見るラザレスの表情は何処かルーペントさんに似ていた。あの親にしてこの子ありとはよく言ったものだと思う。
周りの男達は俺たちの健闘を称えながらも、ラザレスの魔法で散らかった荷物を片付けてくれていた。水自体は時間がたてば消えるが、散らばった荷物は元には戻らないからな。
「いやぁ!お見事!」
「まさかあの親子のどっちも倒しちまうとは!」
「こりゃ!ちょっとした伝説だぜ!」
「すまねぇな。お前ら。」
「「「気にしないでください!ラザレス船長!」」」
俺は階段までラザレスを連れて行くと階段に腰掛けさせた。本当は傷を治してもいいかと思ったが、本当に軽傷なのでそこまでする必要ないと感じたのでやっていない。
「あんたもすまねぇな。俺の我侭につき合わせちまって。」
「“構いません。”」
「…へへへ、まさかここまで実力の差があるとは思わなかったけどな。」
その言葉に俺は何も言えなくなる。この力は、俺自身のものではなく、ヤシロ達の力によるものだ。それを精一杯努力して実力を身に付けたこの人たちに勝ったところで、それは本当に俺の勝利とは言えない気がする。
「(本当は俺のほうが弱い…ヤシロ達がいなかったら俺は…。)」
『…そう思っているだけで十分だ、イサミ。お前は弱くなんか無い。』
「(ヤシロ…ありがとうな。)」
ラザレスが問題ない事を確認した俺は立ち上がる。その際に、ふと考えて俺はラザレスが持っていた小瓶を一つ拝借する。
「“これ戦利品として頂きますね?”」
「ん?おぉ、いいぞ!持ってけ!」
『なっ!?イサミ!それはもしかしてさっきの酒か?酒なのか!?酒だと言ってくれ!!』
「(はいはい、酒ですよ~。)」
『おぉ~!我にくれ!飲ませろ!』
「(はいはい。)」
俺は心の中で苦笑しながら、ヤシロに酒をあげる為に人目の少ないところに向かって歩き始めた。
ちなみにラザレスは30代前半です。大人の男性として磨きがかかってかなりカッコよく、実力もあり、性格も良し。正に優良物件……爆ぜれば良いです。
ヾ(`ε´)ノチクショー!




