表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ライフ!オークライフ!?  作者: エケイ
第五章 : 次なる街へ
109/186

色仕掛け侵入作戦


「誰だ!」


 急に大声で叫びだしたマロクのせいで門の前に居た警備の兵士がこちらにやって来た。俺は未だに驚いた顔をしているマロクを掴むと物陰に隠れた。


「むぐっ!?むぐぐぐぐ!!」


 マロクに声を出されると困るので口に手を当てて黙らせる。そして、


「誰もいないか?気のせいか…。」


 兵士は暫くの間、辺りを見渡していたが誰も居ないのを確認すると元の場所に戻っていった。


「ふー…。」


 なんだか最近物陰に隠れる事が多い気がする。まったくマロクのせいで危うい所だった。ん?そういえば静かになったな。


「あ…。」


 そこには口だけでなく鼻まで押さえられて顔を青白くさせていたマロクが居た。








「はぁはぁ、死ぬかと思ったわ…。」


 壁に手を当てながら大きく呼吸をしているマロクが文句を言っている。仕方ないだろ、急だったんだから。


「“叫んだお前が悪い。”」

「そりゃ、叫ぶでしょ!あんな格好で出てこられたら!…と言うか本当にイサミはんやったんやな。」


 呼吸を整えたのか、壁から手を離すと俺に向き直った。


「変や…。今もほんまの勇者アヤカにしか見えんのに、さっきの手の大きさや感触はオークであるイサミはんのものやった。どういうこっちゃ?」

「“気にしたら負けだよ、ワトソン君。”」

「いや、気にするやろ!てか、ワトソンて誰やねん!?」


 俺の夢幻に幾つかの疑問があるようだが、答えるつもりは無いので適当にはぐらかす。とりあえず、今の俺は彩華に見える事は間違いないようだ。…ふむ。


「“マロク、今の俺はどのような姿をしている?”」

「は?いや、普通に勇者アヤカにしか見えないけど?」

「“違う、服装とかだ。”」

「服装て…、王都で見かけた姿のままやけど?なんでそないなこと聞くんや?変装したのはじぶんやろうに。」


 王都で見かけた…か、となると公園で見たお忍び姿か帰還の凱旋時に着ていた見たことの無い学生服っぽい姿に少し西洋風の鎧がついた姿だろうか?どちらにしろ、俺の服装で彩華になっている訳では無いらしい。


「(これだと少しまずいか?となると…。)」


 俺は顎に手を当てて考える。このままでは、勇者が来たとして大騒ぎになるかもしれない。それだと意味が無いからな…よし。


「“少し待ってろ。”」

「いや、今度は何をするつもりや?まぁ流石にもう驚き疲れてきたから、余程の事じゃないと驚かないで?」

 

 俺はマロクが見えない位置に移動すると、俺自身に掛かっている夢幻の力を少し弄る。元々、他の奴らに見せようとしてイメージしたのは彩華自身だけなので恐らく最近見た彩華の姿が定着したのだろう。だから、その姿を少し弄る。


「(…これで良しっと。…もし今の姿を彩華アイツにバレると殺される気がしてきたな。)」

 

 流石に偽者とは言え、自身そっくりな容姿でこんな姿をしていると知れば幼馴染であろうが絶対に許さないだろう。…つまりそんな服装着た姿を今しているわけだ。どんな服装かはご想像にお任せする。


 その後、マロクに姿を見せると最早声が出ずに白目をむいて固まってしまったので、起こすのには苦労した。











---三十分後---



「ほ、ほな、行くで?」


 頬を赤く染めているマロクの言葉に俺は頷く。しかし、あれだな。作戦の為にそういう服装をしているとは言え、男に頬を染められると言うのは予想以上にキモいな。


 マロクが、先に歩く形で俺達はブレトンの館の前にやって来た。当然、警備の兵士がマロクを見つけると武器を構えて尋ねてきた。 


「何者だ!…ッ!?」


 槍の矛先をマロクに向けるが、後ろに居た俺を見つけると男達は頬を染めて釘付けになり、ゴクッと飲み込む音が聞こえる。


「いやぁ、夜分に申し訳ない。実は私は奴隷商人でしてね?」


 そんな男達の意識を戻したのはマロクの声だった。先程の動揺しまくっていた時とは違い、しっかりとした口調だ。


「ど、奴隷商人がブレトン様に何のようだ?今日は面会の予定は無いはずだが?」

「はいな、実は本日偶々この街にやって来たんですが、あの高名と噂のブレトン様がこの街に滞在中だと窺いましてね?これは会わないと損だと思いましたので…。」

「それで…こんな夜分にやって来たと?」

「えぇ。」

 

 そこでマロクは俺の方を指差すと


「ブレトン様は美しい女性がお好きだとか。どうです?コレはそこそこに美しいでっしゃろ?ブレトン様のお眼鏡に適うのではと思いまして…。」

「そ、そうだな。確かに、気に入る美貌だろうが…。」


 そう言って男は俺の姿を見つめてくる。キモいキモ過ぎるわ!!


「お、おい!!待てよ!俺、コイツの姿を見たことあるぞ!!」


 マロクと話していた男がブレトンに伝えるかどうか悩んでいる時、不意に兵士の1人が俺を指差した。


「なんだと?誰だ?」

「お前は王都に居なかったから知らないだろけど、勇者アヤカだよ!前に王都での凱旋の時に見たんだ!あの凛々しくて美しい姿は一度見ただけで虜になっちまいそうだった。」

「な!?勇者だと!?貴様!勇者様に何をした!!」


 色仕掛けの効果でフラフラになっていた雰囲気が一変して変わり、一斉に槍の矛先をマロクに向ける。


 だが、矛先を向けられているというのにマロクは余裕綽々といった感じのままだ。


「おやおや、流石にバレてしまいましたか。その通り、コレはかの有名な勇者アヤカです。…と言いたいですが、コレはあくまで似ているだけです。流石に勇者を捕まえるなどしませんし、そんな力もないですよ。」

「…つまり、似ているだけで偽者だと?」

「えぇその通り!……ところで、そこのお兄さん。」

「な、なんだ!!」


 マロクが元々糸目の様に細い目をさらに細めて口を歪ませてから、先程勇者だといった若い兵士を指差した。


「コレが本物か、偽者か今は置いておくとして、コレをあんた達の好きにしても言いと言ったら…どうします?」


 またしても、唾を飲み込む音がする。


「だ、だが、それは…。」

「大丈夫。誰にも言わへんし、ブレトンの旦那には他をあてるさかい。どや?今日一日貸してやってもいいんやで?」

「ゆ、勇者アヤカを俺達の自由に…。」

「……ッ!?」

 

 思わずブルッと体が震えほどの全身を嘗め回すような視線が俺に感じる。やばい、この作戦の考案者は俺だけどもう失敗でいいから夢幻を解きたい。


 

「へ、へへ。勇者様がこんなところに居るはずがないっての。」

「そ、そうだな。何時も、綺麗なねぇちゃんがここを通っていくのを見ていくだけだったんだ。今日ぐらい良い目をみても…。」


 始めこそ、勇者への尊敬から俺を保護しようとしていた目が段々と暗い色に染まっていく。そして、1人だけならともかくその場に居る殆どが同じ状況になってしまっているからこそ、最早止まる事ができなくなっていた。


 そして、1人の兵士が口元をニヤけながら俺に近づいてくる。その男は最初に兵士を勇者彩華と気づいた男だった。


「やべぇ、すげぇ興奮してきたぜ。あの勇者アヤカを…いや、よく似た奴を好きに出来るって考えただけで俺は…ひひひっ!」

「……。」


 男の言葉に俺はスーと気持ち悪いわ!気持ち悪いわ!という考えが抜けていき、次々に怒りが沸いてきた。肩に腕を回そうと伸ばしたその腕を俺は…


「はいはい。チョイまってや。」


 俺が掴む前にマロクが手を掴んで持ち上げた。


「あ?なんだよ?」

「ワイも慈善事業じゃないんでねぇ。ちゃんと払うもん払ってもらわんと。」


 マロクの言葉に兵士達は互いに顔を見合わせる。そして、すぐに全員が頷いた。


「…良いぜ。こんな時間だがまだ執事達は起きているだろうか中で交渉するが良いさ。俺達は黙って通すだけだ。」

「まぁ、良いでっしゃろ。ほな、ワイはコレで。」


 マロクは良い笑顔を浮かべながら屋敷の門を潜り中に入っていった。残されたのは俺と兵士達だった。


「さぁ向こうで楽しもうぜ?」

「大丈夫だって、俺達はここの主人みたいに女をいたぶる趣味は無いからさ。」

「互いに楽しむだけだって。」


 そういって案内されたのは門の近くにある納屋だった。ふむ、最悪だな。色々と。


 俺は門にいた兵士4人が全員納屋に入り、納屋の扉が閉まるのを確認する。閉まる瞬間、マロクがチラッと見えて頷いている姿が見えたので最早変装(夢幻)を解いても問題ないことを確信した。

 

「さぁ、これで邪魔は入らな――」

「うおおりやぁあああ!!」

「なッ!?」


 


---納屋の外---


「さてさて、中はどうなっているやろかなぁ?流石にイサミはんに男と楽しむ趣味があったら嫌やなぁ。お、悲鳴――うおっ!?」


 扉が閉まって中から悲鳴らしき物が聞こえたと思った途端、壁に何かが強く衝突する音が4回響き渡ったので思わず情け無い声を上げてしまった。そして未だに衝突した振動で僅かに揺れている納屋を見ていると、すぐに中がどういう状況なのか大体想像できた。


「はぁ~、容赦ないなぁ。自分で、勇者アヤカの姿になったくせに…。兵士達がアヤカ様の姿に色目を使ったら激怒とかイサミはん…流石に自分勝手すぎやないかぁ?まっ、面白いから良いけどね。」


 今の状況をとても楽しんでいるかのように笑うマロクは、頭の後ろで両手を組んで静かに納屋の扉が開くのを待った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ