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転生ライフ!オークライフ!?  作者: エケイ
第五章 : 次なる街へ
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ブレトンと言う男


「ッな!?」


 急に頭を掴まれた事により男は驚いたような声を出しているが、俺は気にせずにそのまま掴んでいる手の力を強めていく。


「くそっ!は、離せ―――ッ!?」


 後ろから掴まれた手を解こうとエルミアから手を離した瞬間に、俺は男を後方に投げ飛ばした。


「っと!」

「い、イサミぃ!」 


 男から解放された途端、力が抜けたかのようにその場に崩れそうになったエルミアを支える。エルミアは涙目で俺の名前を呼んでいる。よく見れば、エルミアの頬は打たれたのか赤く腫れ上がっており、痛々しい姿になっている。


「(ッ!!野郎!…怖かったんだろうな。もう大丈夫だ。)」


 俺は後ろで地面に転がっている男をキッと睨むが、すぐにエルミアのほうに向き直り右手で支えつつ、左手で頬に触れる。


 触れる瞬間、エルミアが痛みによる反射を起こすが、すぐにエルミアの方から俺の手に頬を当ててきた。そして治癒を開始すると、俺の左手が淡く光り始めてエルミアの頬を癒し始める。


 治療に集中していると、ふと自分の手にエルミアの手が重ねられるような感触がした。


「……??」


 どうしたのかとエルミアを見ると、どこか安心したかのような表情で俺を見ている。 


「ありがとう…イサミ。」


 俺は頷いて応えてから、左手を頬から離す。一瞬、離れるのを拒むように重ねられたエルミアの手が邪魔をしたが、それもすぐに解放してくれた。


「(…うん、大丈夫そうだな。)」


 手を離した後には、傷1つのない綺麗は頬が見て取れた。痛みのも無くなった為か、エルミアの表情も先程とは違って落ち着いている。俺は最後の仕上げと言わんばかりにエルミアの目尻に溜まっていた涙を指でそっと拭ってから、支えていた右手を離す。


「イサミはん~。こいつどうする~?」


 マロクの声がしたので後ろを振り返ると、地面に倒れ込んだ男の上にマロクが胡坐をかいて座っていた。よく見ると、マロクの片手で男の頭を摘まれて地面に無理やりキスさせられているようだ。


「“頭を離してやれ。”」

「ん、了解。」

「――っぶは!お、お前ら!俺にこんな事をして唯で済むと――ゴブッ!?」


 頭を解放した瞬間にバッと顔を上げて文句を言おうとした男の顔をエルミアが遠慮が全く無い蹴りを喰らわせた。それもつま先で。


「(お、おおう!?)」 

「うっわ…、容赦ないね~エルミア嬢。」


 男は容赦なく蹴られた事で、鼻が折れたのか口の中を切ったのかは知らないが顔から血を出しながら痛みに悶絶している。


「(なんだろう。さっきまで、この男のことを物凄く怒ってたはずなのに一気に冷めた感じ。…あ、あれだ自分以外に激怒している人がいるとかえって冷静になるあれだ。っと、それどころじゃなくて。)」


 何が起こったのか分かっていない男に更なる攻撃を加えようとしたエルミアを、俺は咄嗟に間に入って止める。


「イサミ!どいて!そいつだけは絶対に許せないの!」

「“落ち着いて。”」


 今まで見た事無いぐらいの怒りを露にしているエルミアだったが、俺の文字をみてから少し冷静になったのか、一旦大きく息を吐き出すと「…ごめん。」と呟いた。


 もう大丈夫だと感じた俺は体をずらしてエルミアの前から退く。


「お、お前ふぁ!?なふぇ、動けるんふぁ!?」


 やはり鼻が折れたのか両手を鼻に押さえながら、へんな声で驚いている。って、こいつってフィーロじゃん。誰かと思ってたけどお前だったか。


「あなたが使った薬なんて、イサミの前じゃ意味は無いわ。」

「なっ!?」 

「(薬?何のことやろか?)」

「イサミはん。イサミはん。多分、この事やわ。」


 首を傾げる俺に、何時の間にか男の背からいなくなっていたマロクが1つの布を俺に手渡す。んん?別段、おかしな所は…


「~~~ッ!!!???」


 くっせええええええええええ!!??


 布に鼻を近づけた途端、物凄い異臭が鼻を襲った。鼻がツンと曲がるような匂い。ずっと嗅いでいると頭が可笑しくなりそうだ。俺は鼻を押さえながら布をすぐにマロクに返す。


「あぁ、ごめんごめん。イサミはんは匂いに敏感やったね。これは恐らく幻覚作用を持つキノコを使って作ったハルシや。」

「“ハルシ?”」

「そそ。これは匂いを嗅ぐと軽い催眠と洗脳状態になってしまうんや。だから直に匂いを嗅ぐと大変な事に…」

「ブリュアアァ~~~!!(先に言えやぁ~~~!!)」←オークの声です。

「あぶしッ!!??」


 マロクに綺麗なアッパーカットが決まった。マロクは錐揉み回転しながら空中に飛んでから地面に落ちた。あんなぁ!そういう大事な事は先に言えっての!白い粉を舐めて「ぺろっ…これは青酸○リ!」と言うようなもんじゃん!?あれ普通に死ぬからな!?


 そんな俺とマロクの楽しい?やり取りの中、エルミアは男にゆっくりと近づいていく。


「言いなさい!あなたが贔屓していると言う人物について!!」

「へ、へっ!誰ふぁ言うか。」

「“エルミア、どういう事?”」


 俺はエルミアからフィーロが自分を餌に擦り寄ってきた女性をとある人物に売り込んでいるという話を聞く。そして、その人物は若いエルフの女性を求めている事も。


「…なるほどねぇ。そりゃ、エルミア嬢が怒るのも無理ないわな。」


 マロクの言葉に俺は頷く。唯でさえ、人間嫌いなエルミアだ。その理由は、強欲な人間が仲間であるエルフを攫っていくからで、正に嫌いな理由になっている人物が目の前にいるわけだからそりゃあれだけ怒ると言うものだ。


「この事をあの方に伝えればお前達のような雑魚なんて一発で消えるぜ。へへへっ!ざまぁみやがれ!」


 痛みに歪みつつも、嬉しそうに笑うフィーロ。…うーん。


 俺はマロクとエルミアに目を合わせてから互いに頷いた後、


「“とりあえず、分かった事はそれなりの立場にある人物と言うことだな。”」

「それに、このハルシは本来医学に用いられる高額なモンやから、これを内密に入手するルートを持った奴なね。」

「…となると、医学関係の人間で高い地位の人物ね。でもそんな人物なんて記憶には…。」

「たしか~、王都から1人のお偉いさんが休暇でこの街に来とるはずやわ。恐らくその人物やろな。」

「なっ!?何を言って!?そんな訳ないだろうが!!」

「(はい、確定。)」



 次々とヒントをくれるこのバカはどうでもいいとして、この裏にいる人物について考える事にする。


「“マロク知っているのか?”」

「まぁね。一応その手の情報も押さえてるから。」


 一体何時の間に?と思っているとエルミアがマロクに一歩近づいて


「マロク。すぐにその人間バカは一体誰なのか教えて。」

「え、エルミア嬢。そんな恐ろしい顔せんといてな。ちゃんと教えるから。」


 エルミアの気迫にマロクは冷や汗を?きながら一歩下がる。


「名前はブレトンや。一週間前ぐらいからこの街に休暇にきとる。…色々な噂を聞く人物や。」

「“と言うと?”」

「女遊びが豪遊で有名なんや。それも、大きな声で言えんような事のな。」


 マロクの最後の言葉にその場に沈黙が流れる。いや、一人だけ「違う!何を言っているんだ!!」と叫んでいる奴がいたが、マロクが頭を踏んでまたしても地面に顔を押さえつけた。鼻の傷が痛むのかとても痛そうな声を上げているが、誰も気にしていない。


「そいつは放置しておく訳にはいかないわ。すぐにコイツを連れて――」

「やめとき、エルミア嬢。こんな奴を連れて行っても適当に流されて終わりや。」


 所詮、コイツは雑魚でしかないから、相手にもされないということだろう。エルミアも分かっていたのか、悔しそうな顔をして腕を組む。


「どうすれば…。」

「…エルミア嬢、この件、ワイに任せてくれんかな?」

「どういうこと?」

「ルノリック師匠に知らせようと思うねん。あの人、色んな所に顔が利くからね。多分、悪いようにはしてくれんはずや。それに…エルミア嬢も人間に関する面倒ごとは、出来れば避けたいやろ?」

「……悔しいけど、その通りよ。でも、あなたの師匠が解決できるっていう確証はあるの?」


 ブレトンと言う男を放置すれば、他のエルフに危険が迫る。だからこそ、嘘を言わせないような気迫でマロクを問い詰めている。


「信じてもらうしかないよ。大丈夫、あの人は結構やり手やから。ね?イサミはん。」

「(そこで俺に振るか。)“あぁ。あの人なら信用できるよ。”」

「…イサミが、そう言うなら。」


 まだ何処か納得していない顔だったが、とりあえずはこれで落ち着いたようだ。


「んじゃ、ブレトンはワイに任してもらうとして。コイツはどうする?」


 無理やり押さえつけ続けたせいか、痛みで気絶しているフィーロをマロクが指差す。


「決まってるわ。ギルドに突き出して処分してもらう。」

「まっ、そうやわな。ならワイは師匠に連絡するさかい、エルミア譲とイサミはんはコイツを連れてギルドに言ってや。証拠はこの布だけで十分やろ。」


 俺は臭い布を指先で摘みながら懐に入れて、未だに気絶しているフィーロを肩に担ぐと、エルミアと一緒にギルドに向かって歩き始めた。


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