会いたい人---エルミア視点---
良い所で終われなかったせいで、かなり長めです。
( ノ゜Д゜)ヤッチマッタ!
街に着いたのは、夜が明けて朝日が昇り始めた頃だった。普段なら朝を迎えて人々は目を覚まして仕事に向かい始めているものだが、なぜか街の入り口付近に多くの人だかりが出来ている。
どうやらギルドから今回の騒動を聞いていたらしく、住人達は口々に冒険者達を褒め称えていた。
「街の救世主達の帰還だ!」
「すげー!よくやったぞ!」
「ありがとう!君達のおかげで助かった!」
街に入りギルドに向かって歩く途中でも色んな人から賞賛の声をかけられる。町の若者や老人、中には憧れるような視線を向けている少年などもいた。
そんな状況の中、私を含めた冒険者達は照れながらも毅然とした態度でギルドに向かって歩んでいく。目的地にたどり着くと、ギルドの前にはギルド員とでっぷりとした体格のギルド長が立っており、先頭を歩いていたラザレスを見つけるや否なすぐさま駆け寄ってきた。
「おぉ!無事に帰ってきたか!やはり君に託したのは間違いなかったようだな!」
「ギルド長。これも皆が頑張ってくれたおかげだぜ。今回の報酬には少しぐらい花を付けてくれよ?」
「あぁ!もちろんだとも!さぁ、皆もご苦労だった!今日はギルドのおごりだ!沢山飲んでくれ!」
ギルド長の言葉に「よっしゃぁ!」「今日は浴びるほど飲むぞぉ!」と冒険者達は大きな歓声を上げてからギルドに入っていく。
我先にと入っていく冒険者達に私とルドルフも続いて入ろうとすると、ラザレスから声が掛かった。
「2人とも、今回は助かったぜ。2人がいなかったらどうなっていたか…」
「何言ってるのよ。貴方なら遅れはとらないでしょうに。」
「まぁ、俺1人ならな。だが、今回は敵の数もそうだが味方が多くて俺1人じゃ全部に目が届かなかった。あんたらが、フォローしてくれたおかげだ。」
魔物との戦闘ではこのラザレスが主に活躍していた。ルドルフは混戦を恐れて私の傍から離れようとしなかったのもあるだろうが、流石はゴールドクラスと言うべきか。殆んどの主力級の魔物はラザレスによって倒された。
彼が主だった魔物を倒してくれるので、私は苦戦している味方の補助にまわる事ができた。だからこそ奇跡的にも死者は出ることなく、今回のクエストは大成功と呼べる結果となった。
「とにかく、助かったぜ!今度困った事があったら言ってくれ!あんた達2人の為なら喜んで力を貸すぜ!」
そう言うと、笑いながらギルドに入っていった。その姿に私は少しだけ微笑む。
「(彼のような人ばかりなら人間を嫌いにならないで済むんだけど…。)」
しかし、そんな事は理想論でしかないと頭を軽く振って否定してから、2人でギルドに入る。中は既に宴が盛大に開催していた。
「キース!お前も大した実力者だったぜ!」
「い、いや俺のことは気にしないでくれ。頼むから。」
ラザレスにキースと呼ばれた男は、顔を見られたくないのか必死にローブを掴みながらチマチマと酒を飲んでいた。時折、私が視線を向けると「ヒィッ!?」と違う方向に顔を向けていて変な人間だった。
カウンター席に着くと、受付嬢が冷えた発泡酒が入ったジョッキを持ってきてくれた。…ルドルフだけに。私の前には果実水が置かれていた。
「あっ!?ごめんなさい!てっきり、お子様かと…」
「…別に気にして無いわ。果実水、好きだし…。」
今はエルフの特徴である耳を隠しているために、私がエルフだと思わずに未成年だと思ったのだろう。…別にいいもん。発泡酒なんて苦くて嫌いだし…。
私はちょっと不貞腐れながら果実水を飲んでいると、とある会話が耳に入ってきた。
「へぇー!すごいんですね!」
「あぁ、大した事の無い敵ばかりだったよ。」
ちらりと見ればフィーロが新人っぽい若い女性冒険者達と話をしていた。どうやら今回のクエストについて話しているようだ。
「(確かに、大した敵はいなかったわね。…だからこそ貴方は生き残る事が出来たんでしょうに…。)」
フィーロが自信満々に答えている姿を見ながら敵に苦戦していた姿を思い出すと「プッ!」と思わず噴出してしまった。
その音に気づいたのか此方にフィーロは視線を向けると、何かを思い出したかのように周りにいた女性冒険者達に別れを言ってから此方に向かってくる。その事に、思わず私は「っげ!?」と言う風な顔になってしまう。
「やぁ!お二人さん!隣いいかな?」
とても爽やかな顔をしながら声をかけて来た。なんだろ、急にここから去りたい衝動に駆られてきた。
「先ずは今回のクエストの成功に乾杯!」
結局、私の答えを待たずに隣に座ってワインが入ったグラスを持ち上げる。まぁ、特に断る必要も無かったので私は無言で果実水を持ち上げて応えてやる。
一口飲むとフィーロは私の方に体を向け、先程までとは違う雰囲気の声で
「それで…。あの件について考えてくれたかな?」
「(っち、覚えてたの。)…えぇ。」
「本当かい!?ならこれからよろし――」
「お断りよ。報酬は後になるみたいだし。ルドルフ、一度宿屋に戻りましょ。疲れたから休みたいわ。」
「え?は、はぁ?彼の話は――」
「もう終わった。さっ、行きましょ。」
受付嬢に礼を言ってから席を立ち出口にむかう。ルドルフは慌ててついて来たが、フィーロは信じられないと言った顔をして動けないでいるようだった。
---宿屋---
「どうやら、イサミ殿とマロク殿はどこかに出かけているようですね。」
「…そっ、なら私はしばらく部屋で休んでいるわ。ルドルフはどうする?」
「私は街の道具屋に行こうかと。今回の戦いでかなりの数を消耗しましたからな。」
昨夜の戦いの最中、応急薬を冒険者達に使ってあげたりしたのだ。その為、今はストックが殆どない状態だった。
「そうね。疲れているでしょうけど、お願いできる?」
「はっ!お任せください。お嬢様、昨夜はお疲れ様でございました。ごゆるりとお休みください。」
紳士らしくお辞儀をしてからルドルフは部屋から出ていった。
ルドルフに感謝しながらローブを脱ぐと、ボフッとベットに倒れ込むと目を閉じる。
「疲れた…。」
目を閉じた事によって一気に疲れが体を駆け巡る。そして、徐々に意識が薄くなっていくのを感じながら
「イサミ…、どこいったのかな?」
ふとイサミのことを思い出す。この時間にいない事自体は珍しくない。だけど、冒険者ギルドにはいなかったしギルドまでの最短の道のりの途中で出会う事もなかった。そこで、私はとある事を思いつくとバッと体を起こす。
「(も、もしかして出て行った!?…いや、それはないはずよ。)」
一瞬の内に覚醒した頭で考える。イサミは私の奴隷だ。主人の許可なくして勝手に離れていく事はできないはず。一時的には可能でも、指示無しに一定以上の期間を離れていると首輪が締まるからだ。だから勝手に出て行くことはできない。
「(そうよ。心配ないわ。きっと街に出かけているだけ…。)」
でも、もしイサミが首輪の事を知らなかったら?
一瞬でも考えたその事が頭の中でぐるぐる回って離れない。気がつけばベットから立ち上がりローブを羽織っていた。そして、少し慌てて部屋から出て行った。後には武器である弓矢や短剣が部屋に置かれていた。
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「(イサミッ!どこ!?)」
あれからしばらく街中を探し回っていたが、見つからない。途中、イサミらしき体格をしたローブを被っている人に声をかけたりしたが全員違う人だった。
歩きつかれてきたので、近くにあったベンチに腰を下ろす。軽く乱れていた呼吸を落ち着かせながら、考える。
「(落ち着いて。イサミが私に断りをいれずに出て行くわけ無い。だとしたら、クエストか何かを受けているのかも。)」
今朝帰る時に会わなかっただけで、イサミは違う道でギルドに向かったのかもしれない。冷静に考えてみればそれ以外にありえない気がしてきた。でも、頭では分かっていても体が落ち着かない。何故か今はイサミに早く会いたかった。
私はすぐに立ち上がって冒険者ギルドに向かった。普通、冒険者がどのクエストを受けたかをギルドが教える事は無い。教える事によって、悪意ある者が冒険者を襲ったり、手柄を横取りしたり等する恐れが発生するからだ。だけどイサミは私の奴隷であり、今朝の事もあったのだから断る事はないだろう。
冒険者ギルドにたどり着くと、すぐに受付嬢にイサミの特徴を教えてからどのクエストを受けたのかを聞いた。
最初は少し困った顔をしていた受付嬢も、相手が私の奴隷の事だと分かると、それから反対する事も無く情報を教えてくれた。どうやら今は探し物関連のクエストを受けているらしかった。
その事を聞いて、私はホッと息をはいた。
「(よかった…。出て行ったわけじゃなかった。)」
心の中に突っ掛かっていた物が取れたかのような、一気に疲れが取れていくような気分になりながら、私は受付嬢から貰った地図を見ながら依頼主の元に向かう。
---住宅街---
地図に描かれた場所はそんなに遠くない場所で、住宅街の中だった。そして、目的の家が見えてきたかと思うとふとローブ姿の人物が目に入った。
「ッ!?」
私は咄嗟に近くの袋小路入り口の壁に隠れてしまう。体が勝手に動いてしまったのだ。しかも、心臓がひどく高鳴っているのが分かる。
「(イサミ…。)」
ようやく探していたイサミが見つかった。そう見つけたのだ。喜ぶべきはずなのに何故か緊張してたまらない。
「(何を怖がってるのよ私!)」
そ~っと、顔を少しだけ出してイサミを見る。イサミは依頼主の家に向かっているようだ。横にはマロクと…犬?あ、もしかして今回のクエストの対象かな?だとしたら、探す事ができたと言う事だ。
「(さすが私のイサミね!)」
こそこそと壁から引き続きイサミの様子を窺う。マロクがドアをノックすると中から男性が出てきたかと思うと、すぐに犬を見ると喜んだ顔をして中に戻っていった。そして、すぐに元気よく中から少女が走って出てきて犬を抱きしめた。犬も嬉しそうに尻尾を振っている。
あまり状況は知らないが、その光景はとても微笑ましいもので、見ているだけで心の底が暖かくなるものだった。
少女は目に涙を浮かべながらもイサミとマロクにお礼を言っているかのようだった。そして、手を出して銅貨小を数枚イサミに渡していた。
「(もしかして、あれが報酬?)」
幾らブロンズのクエストと言っても少なすぎる。それでも、イサミは文句1つ言わずにそれを受け取ると少女の頭を撫で始めた。
横から見えるイサミの顔はローブのせいで見えないが微笑んでいるのが分かる。少女も最初は少し怖がっている節があったが、撫でられ始めるとすぐに笑顔に戻った。
「ッ!?また…、なんなのよこれ…。」
その光景を見ていると胸の奥が痛くなる。微笑ましい光景のはずなのに見ているのが辛くなってくる。
「もう、何してんだろ。私…。」
勝手に相手に暴言を吐いて、勝手にいなくなったと思って慌てて、勝手に…見るのが辛くなっている。
勝手、勝手ばかり。こんなの私じゃないみたい…。
気がつけば、イサミは少女に向かって手を振って別れを伝えているようだ。
イサミが行ってしまう。
「ッ!ま、まって!」
足が竦みそう。スケルトンやグール相手でも最早恐れないと言うのに、何故こんなに足が震えるんだろう。それでも、今一歩踏み出さないとずっと変わる事ができない気がした。
「(一歩、たった一歩で良い!お願い動いて!)」
足が鉛のように重く感じる。だが震えながらもゆっくりと足が宙に浮いて、前のほうに動いてゆっくりと地面に着こうとした時、
「おい!待てよ!」
少し荒げた声をだした声の主に、肩を後ろから掴まれて強制的に後ろを向かされる。そこには苛立った顔をしたフィーロがいた。
未だに肩は掴まれていてギリギリと音が出るのではないかと思うぐらい力を込めている。
「痛ッ!?なにするのよ!離しなさい人間が!!」
「ああ!?うるせえ!下手の出てればいい気になりやがって!エルフの癖に俺に誘いを断ってんじゃねぇよ!」
「ッ!」
パンッ!と大きな音を立つ程の力で頬を叩かれた。叩かれた頬がジンジンと痛む。
「何度も済ました態度でイラつくんだよ!てめぇら女は、俺の言うとおりにしていれば良いんだ!」
頬に手を当てて、必死に涙が出ないように耐えながらフィーロを睨みつける。
「…それが貴方の本性って訳。私にこんな事をして唯で済むと思っていないでしょうね?」
「へっ…、いいねぇその顔。怖いのを必死に我慢しながら平気ぶってる顔だ。俺はそんな女の心を壊すのが大好きなんだよ!」
誰がお前なんか恐れるかと言おうと思いながら、こっそりと腰に差している短剣に手を伸ばした…のだが。
「(…ッない!?)」
何時も腰に差しえているはずの短剣が何処にも無く、そこでようやく宿に置きっぱなしだった事に今になって気づいた。
「(しまった…!?)」
この場で逆転できるはずの手段が無いと感じた瞬間、ニヤニヤと笑うフィーロの笑みに狂気に似た何かを感じてしまう。そして心の奥底からすぐにこの場から逃げ出したくなる衝動が生まれてしまう。
「いただき!」
「むぐっ!?」
そんな心情だった為か、フィーロが口元に布を押し当ててくるのを避ける事ができなかった。
布からは何処か甘いような香りがして、嗅ぐたびに視界がぼやけて思考がうまく纏まらなくなってきた。
「へへへっ!俺は本当に運が良いぜ!今贔屓にしてもらってる旦那は、あんたみたいなまだ成人していないエルフの娘を求めていてな!」
「なっ、なにを言って!?―――っく!?」
不意にガクッと膝の力が抜けて体制を崩してしまう。そんな私の顎をフィーロが掴んで無理やり視線を合わせてくる。
「予定は狂ってしまったが、まぁいいさ。安心しろって。痛いのは最初だけさ。そのうち、病み付きになるだろうぜ。」
「――っ!!ふざけるな!誰がっ!」
「へへへ、その強情さが何時まで持つか楽しみだぜ。」
そして、力の入らない私を無理やり壁に押し付けて体を固定すると、
「最初は獲物として近づいたが、やっぱりこうして見ると綺麗な顔してるぜ。ガキに興味は無かったが少しぐらい味見してみるか。喜べ!最初は太ったおっさんじゃなくて俺が相手してやる!」
「や、やめっ…。」
声がうまく出せない。場所も悪く周囲には誰もいない。そんな絶望的な状況の中、フィーロの顔がゆっくりと私の顔に近づいて…きて…
「ッな!?」
フィーロが驚いたような声をあげている。
咄嗟に瞑っていた目を開けて見上げれば、フィーロは私に触れる前に頭を後ろから鷲掴みにされていた。私はフィーロの後ろにいた人物を見て、必死に呂律も上手く回らない舌で名前を口にした。
「い、イサミぃ!」
やっとエルミア編は終了っす!正直、ここまで長くなるとは思ってなかったです。次はイサミ編です!
( ゜ω^ )ゝガンバルゼイ!




