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その1
最初の何度かは違う人間の手によるものだった。
でも今は、マシキがその扉を開けてくれる。
白い部屋。
ベットと鉄格子の窓。
一日数回の食事と訓練。
連れてこられて、もう3ヶ月。
私には空とこの部屋しか行く事が出来ない。
帰りたくて泣いた夜もあった。
何も感じない心を抱えた事も。
でも、そよ風のようにマシキは私の心を動かした。
それだけで私は生きていこうと思えるようになった。
ブラシア国の実験施設。
ここにマシキがいる。
今日も空を飛ぶ。
飛風とマシキと私。
マシキがいつものように私の名前を呼ぶ。
「おいで、ヤナ」と。
『 扉 』
森は海を唄い
海は森を唄う
小鳥は空に帰り
魚は水に帰る
心は全てを超える
私は貴方のもとへ帰る
貴方が翼をくれたから
貴方がそこにいるから
青い空の見える裏庭。
唄い終えた私に、マシキは拍手をしてくれる。
マシキの話し。
私の歌。
時々こうやって穏やかな時間を過ごす。
「開発ナンバーSX11、コードネーム「飛風」開発副主任及びテストパイロット」。
それがマシキ。
そして「飛風生体原動力、シエナ族協力戦闘員」
それが、私のここで与えられた全て。
それ以外には何もない。
だから私達はここでの時間を大切にする。
たとえそれがつかの間の平穏でも。




