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平凡志望なのにスキル【一日一回ガチャ】がSSS級アイテムばかり排出するせいで、学園最強のクール美少女に勘違いされて溺愛される日々が始まった  作者: 久遠翠


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第3話「犯人捜しと勘違いスパイラル」

 昨夜の出来事は夢だったんじゃないか。

 そんな淡い期待は、翌朝、教室に足を踏み入れた瞬間に打ち砕かれた。


「――昨夜、私を助けてくれた方。この学校の生徒のはずです」


 ホームルームが始まる前。教壇に立った月島凛が、ざわつく教室に響く凛とした声で宣言したのだ。

 教室中が「え、何?」「月島さんが誰かに助けられた?」と一気に色めき立つ。

 俺は自分の席で、心臓を鷲掴みにされたような心地で息を殺した。


(やめろ! やめてくれ! なんでそんな公衆の面前で!)


 月島は続ける。


「フードを被っていましたが、制服はうちのものでした。心当たりのある方は名乗り出てください。必ず、お礼をします」


 彼女の真剣な眼差しが、生徒一人一人を射抜くように見渡していく。

 俺は必死に窓の外を眺めるふりをして、彼女と目を合わせないように全力を尽くした。

 幸い、俺のような陰キャ男子に彼女の視線が長く留まることはなかった。


 結局、誰も名乗り出るはずもなく、チャイムの音と共に月島の犯人捜しは一旦幕を閉じた。

 しかし、俺の胃はキリキリと痛みっぱなしだ。


(まずい、まずすぎる。なんであんな目立つことしちゃったんだ、俺…)


 後悔してももう遅い。

 とにかく、これまで以上に凡人を装い、月島のレーダーに引っかからないようにするしかない。

 そう固く誓った矢先のことだった。


 昼休み。いつものように購買で買ったパンをかじろうとした時、隣のクラスの男子がふざけて投げたサッカーボールが、一直線に俺の顔面に向かって飛んできた。


「うわっ、神谷、危ない!」


 クラスメイトの悲鳴。俺も「あっ」と思ったが、避ける間もなかった。

 視界が白と黒の模様で覆われ――ドゴォッ! と鈍い音が響き渡った。


 ……あれ? 痛くない。


 顔面にめり込んだはずのサッカーボールは、まるで分厚いゴム壁に当たったかのように、ぽよんと力なく弾かれて床に転がった。

 俺はパンを口にしたまま、きょとんとした顔でそこに立ち尽くす。

 周囲は一瞬の静寂の後、大騒ぎになった。


「え、うそだろ!?」「今の直撃だよな?」「神谷、平気なのか!?」


「あ、ああ。平気、みたいだ…」


 自分でも訳が分からない。なんで無傷なんだ?

 そこでふと、今朝引いたガチャの結果を思い出した。


『Aランク:絶対防御の弁当箱』


「……これか!!」


 俺が膝の上に置いていた、何の変哲もないプラスチック製の弁当箱。

 どうやらこいつが、俺の身体の前に不可視のバリアでも張ってくれていたらしい。

 Aランク、地味な見た目のくせに仕事しすぎだろ!


「すごいわね、神谷くん。体幹がしっかりしているのね」


 不意に背後から透き通るような声がした。

 振り返ると、そこには腕を組んだ月島凛が、興味深そうな目で俺を見つめていた。


「つ、月島さん…。いや、これは、その、たまたま…」


「普通の人間なら、衝撃で倒れているはずよ。少なくとも、首はむち打ちになっているわ。それなのにあなたは微動だにしなかった」


 彼女の瞳が、獲物を見定めるかのように細められる。

 嘘だろ、こんなことで疑われるのか!? 俺は必死に言い訳を考えた。


「いや、本当に偶然というか、ボーッとしてて力が抜けてたからかな、なんて、アハハ…」


 乾いた笑いが教室に響く。だが月島は納得していない。

 彼女は俺の顔と床に転がったサッカーボール、そして俺の膝の上にある弁当箱を順に見て、ふっと小さく息を吐いた。


「……そう。なら、いいのだけれど」


 それだけ言うと、彼女はすっと自分の席に戻っていった。

 しかし、俺の背中には、さっきよりも遥かに強く鋭い視線が突き刺さっているのを感じていた。


(終わった…俺の平凡ライフ、完全に終わった…!)


『絶対防御の弁当箱』は、確かに俺の顔面をサッカーボールから守ってくれた。

 だがその代償として、俺の平穏な学園生活に巨大な亀裂を入れてしまったのだった。

 勘違いのスパイラルは、まだ始まったばかりだった。

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