エピローグ
数ヶ月が流れ、俺たちは卒業式の日を迎えた。
結局、俺の高校生活最後の数ヶ月は、凛と陽菜の壮絶なアピール合戦に振り回されっぱなしだった。
それでも三人の関係は変わらず、周りからは「公認の仲」として扱われるようになっていた。
「はー、やっと卒業か。平凡が一番だって、つくづく思うよ」
卒業証書を片手に、俺が校門の前でそうぼやくと、両脇から「まだそんなこと言ってるの」「湊くんは全然平凡じゃないよ」と呆れたような、でも愛おしそうな声が聞こえた。
見ると、俺の両手はいつの間にか凛と陽菜に固く握られていた。
右に凛、左に陽菜。これが俺の定位置になってしまった。
ふと、制服のポケットに入れていたスマホが震える。
あの日、凛の呪いを解いた代償に砕け散ったはずのスマホ。実は月島家の財力によって、全く同じものが新しく用意されていた。
そして、そこにはご丁寧に【1日1回ガチャ】のアプリも再インストールされていたのだ。
どうやら俺とこのスキルの縁は、まだ切れていないらしい。
「今日のガチャ、引いてみるか」
「あら、今日は何が出るのかしら」
「わくわくするね!」
三人で画面を覗き込み、俺がガチャを引く。
派手なエフェクトはなく、コロン、とカプセルが一つ。
『Cランク:思い出を記録するアルバム』
手の中に、一冊の真新しいアルバムが現れた。
表紙を開くと、そこにはこれまでの俺たちの写真が自動的に収められていた。
初めて俺が凛を助けた夜の、ぼやけたフード姿の写真。
体育祭で一位になった瞬間の、俺の情けない顔。
三人で初めてダンジョンに潜った時の、緊張した面持ち。
そして、朝日の中で三人が笑い合っている写真。
一枚一枚ページをめくるたびに、あの騒がしくも愛おしい日々が蘇ってくる。
「ふふっ、懐かしいわね」
「この湊くんの顔、面白い!」
凛と陽菜が、アルバムを覗き込んで楽しそうに笑っている。
その笑顔を見て、俺もつられて笑った。
平凡を望んだ俺の人生は、この不思議なガチャと、二人のかけがえのない少女たちによって、とんでもなく色鮮やかなものになった。
俺たちの物語は、ここで一区切り。
でも、きっとこれからも、このガチャが繋ぐ騒がしい日常は、ずっと、ずっと続いていくのだろう。




