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平凡志望なのにスキル【一日一回ガチャ】がSSS級アイテムばかり排出するせいで、学園最強のクール美少女に勘違いされて溺愛される日々が始まった  作者: 久遠翠


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第1話「日常とスマホの中の神様」

登場人物紹介


神谷かみや みなと

本作の主人公。平凡と平穏をこよなく愛する高校二年生。面倒事を避けるため、クラスでは常に空気でいることを心がけている。ある日、【1日1回ガチャ】スキルに覚醒。本人は地味なスキルだと思っているが、その排出アイテムは世界を揺るがすほどのポテンシャルを秘めている。


月島つきしま りん

湊のクラスメイト。腰まで届く黒髪と、透き通るような白い肌を持つ、学園一と噂される絶世の美少女。文武両道でクールな完璧超人にしか見えないが、その正体はS級探索者。一族にかけられた呪いを解くため、人知れず戦い続けている。湊に命を救われたことで、彼に強い興味と執着を抱くようになる。


日向ひなた 陽菜ひな

湊の隣の家に住む幼馴染。明るく家庭的で、何かと湊の世話を焼きたがる。ショートボブの似合う、小動物的な可愛らしさを持つ。その正体は、希少な回復スキルを持つヒーラーの一族の末裔。自分の力を隠しながら、人助けを続けている。湊のことになると、普段のほんわかした雰囲気からは想像もつかない行動力と嫉妬深さを見せる。

「――神は言っている。ここで全てを出し尽くす運命ではないと」


 俺、神谷湊かみやみなとは平凡な高校二年生だ。

 信条は『平穏第一、目立つべからず』。学校という小さな社会で空気のように存在し、波風立てずに卒業というゴールテープを切ること。それが俺の切なる願いだ。


 だから体育の授業でドッジボールが始まっても、俺は外野の隅っこで存在感を消し、流れ弾が飛んでこないことだけを祈る。

 文化祭の出し物を決めるホームルームでは、その他大勢の意見に静かにうなずき、実行委員なんていう面倒事の塊から全力で逃げる。

 それが俺の生存戦略だ。


 そんな俺の平凡な日常に亀裂が入ったのは、数日前のことだった。


 見慣れたスマホのホーム画面に覚えのないアイコンが一つ。黒い背景に金色のクエスチョンマークが浮かぶ、シンプルながら怪しげなデザインのアプリ。その名は【1日1回ガチャ】。


「……なんだこれ、ウイルスか?」


 思わずつぶやくが、タップしてもアンインストール画面が出てこない。再起動してもアイコンは消えなかった。

 まるで最初からそこにいるのが当たり前かのように、スマホの一等地に鎮座している。


 仕方なくアプリを開くと、画面には巨大なガチャマシンが一つ。そして『タップしてガチャを引く』という無機質な文字。説明も何もない。あまりに不親切だ。


(まあ、手の込んだゲームか何かだろう)


 どうせろくなものじゃない。そう思いつつ、好奇心には勝てなかった。

 どうせ一日に一回しか引けないなら、まあいいか。

 そんな軽い気持ちで画面のガチャハンドルをタップしてみた。


 画面がまばゆい光を発し、派手なエフェクトと共にカプセルが一つ転がり出てくる。そして表示された文字は――


『Cランク:よく消える消しゴム』


「は?」


 呆気に取られていると、手の中にふっと軽い感触が生まれた。

 見ると、そこには今しがた画面に表示された通りの、何の変哲もないプラスチックケースに入った消しゴムが握られていた。


 あまりの超常現象に、俺はしばらく自分の手とスマホの画面を交互に見つめて固まっていた。

 これは、ゲームじゃない。本物だ。


 近年、世界ではダンジョンやモンスターが出現し、それに伴って『スキル』と呼ばれる異能力に目覚める人間が現れ始めた、というニュースをよく目にする。まさか、自分がその一人になるとは。


「よりにもよって、ガチャ…?」


 しかも出てきたのは『よく消える消しゴム』。Cランク、コモン。ありふれた、つまらない等級だ。

 いや、待て。これはスキルなんだ。漫画やアニメみたいに、炎を出したり空を飛んだりするような、かっこいい能力かもしれないじゃないか。

 ランクもCからSSSスリーエスまであるらしいし、いつかはすごいのが出るかもしれない。


 そんな淡い期待を抱いた翌日。俺は祈るような気持ちでガチャを引いた。

 結果は『Dランク:ちょっと美味しい飴玉』。

 その次の日は『Cランク:絶対に絡まないイヤホンコード』。


「……うん、知ってた」


 俺は静かに悟った。このスキルは、そういうものなのだと。

 日常をちょっとだけ便利にする、地味で平凡な能力。俺の人生そのものを体現したかのようなスキルだ。


 危険なダンジョンに潜ったりモンスターと戦ったりするような力じゃない。

 むしろ、そんな面倒事に関わらずに済むのだから好都合だ。

 落胆がなかったと言えば嘘になるが、それ以上に安堵の方が大きかった。


 俺は決意を固める。

 この力のことは誰にも言わず、これまで通り空気として生きていこう。俺の平凡な毎日は誰にも邪魔させない。

 そう、固く、固く誓ったのだ。


 この時の俺はまだ知らなかった。

 このスマホの中に住まう気まぐれな神様が、俺のちっぽけな決意など一笑に付すほどの、とんでもない厄介事を運んでくることになるなんて。

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