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第三章 投げつけられた中立を、忘れない

『とあるコミュニティの女性についてレビューして欲しいとリクエストがあったので、注目の人物をピックアップして、勝手にレビューしました。 苦情は一切受付ません』


リクエストした奴誰だ出てこい、とか。 苦情以前の問題だたわけ、とか。

勝手にレビューされた本人として、言いたい事は山ほどあった。


(さすがに、ここまで露骨なセクハラ投稿を擁護するアカウントなどあるまい)


元凶のMに人間としてのまともさを期待するほうがあほらしいのは確実として、Zに無数にある他のアカウントが、こんなふざけた投稿の存在を許すはずがない。


……と、思っていた時もありました。 ごめんなさい、私の認識が甘かったです。

ごく一部の人間の陰湿さが、ここまでひどいとは思いませんでした。


中立とか、ひとつの意見とか。


言い訳がましい前置きに続く「結論、おまえが悪い」の書き込みやそれに賛同する反応の数々に、元凶のそれよりも傷ついた、なんて。 好き放題にお手製の中立を投げつける匿名の誰かさんたちには、一生理解できないでしょうね。


立場、代わってみます?


中立とは、対立するどちら側の肩も持たないこと。

中立を口にしながら、こちら側に非があるかのような書き込みや反応をするのは、中立でも何でもない。中立に見せかけた、言葉の暴力でしかない。


自分なりの主張に中立や自由の冠を被せれば、事情をよく知らない誰かには、立派に見えるかもしれない。けれど、今まさに災難と戦っている当の本人には、その冠は屑鉄にしか見えない。ものによっては、冠ではなく肉叩きに見えることもある。


中立、あるいは自由の冠を被り、声高らかに私の心を踏みにじり続けた誰かを。

それを止めることもせず、一緒になって面白がった誰かを。

もっともらしく飾られて投げつけられた中立を、私は忘れない。


今回私がレビューという名目のセクハラに遭ったのは、知人の配信者の嫌がらせを表立って批判したから、らしい。 きっと、本当はこう言いたいのだろう。


「あの子と仲良くしてるから、あなたも仲間はずれ! 陰口!」

「それでもあの子と仲良くするなら、あなたもイジメちゃうよ?」


これを、成人をとうに過ぎたおじさんが恥ずかしげもなく主張している姿を想像すると、情けなくて、セクハラされても出てこなかった涙が出そうになる。

「最近の若者は」ではなく「最近の中年は」なんて言われても、返す言葉がない。


MとMに依頼した何者かの狙いは、このセクハラで目障りな私を配信者のコミュニティから強制的に弾きだすことだったのかもしれない。弾きだすだけではなく、Zそのものからも追い出し、他のアカウントたちへの見せしめにするつもりだったのかもしれない。もしかしたら、誰かに何かをアピールしたかったのかもしれない。


全世界公開の場所でセクハラするような厄病神そのもののアカウントを受け入れるコミュニティが存在するとは、とても思えないが。もしそんなコミュニティがあったとしたら、そこはもう永くは保たないだろう。MとMの依頼者がしでかした事の重大さを見誤り、Mたちを更に調子に乗らせる無責任な何者かが現れないことを、祈るしかない。

MとMの依頼者の狙いは半分的中したが、もう半分は外れている。

女性として、人間としての屈辱なら、一生分味わった。

だからといって、私が知人の配信者への手助けをやめる理由にはならない。


(だって、私は知っている)


変わっているからという理由で、心ない言葉を浴びせられる辛さを。

人間に生まれながら、まるで汚物のように扱われる悲しみを。

卒業までの長い時間を、たった一人でやり過ごす心細さを。


それを知りながら、自分かわいさに知人を見捨てることなんてできない。

それは、かつての自分を裏切る事だ。


(今の自分は、幼い子供じゃない)


かつての、怯えて泣くことしかできなかった子供じゃない。

だから、あの時できなかった事をしよう。

だから、あの時誰かにしてほしかった事をしよう。

だから、あの時置き去りにしてしまった自分の心を、迎えに行こう。


他に、ちょうどいい人材がいなかったから。

だから、バレないと思ってセクハラしたらしいが、残念だったなM?

お前が標的にした女は、この上なく厄介だぞ。


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