第二話 妄想。空想。夢?現実?
元軍人、セアドア・ラングフォード23歳。類まれなる才能から探偵として生活している。
そんな彼も何気ない日常を過ごすごくありふれた人間だった。
しかしある日から突然彼につきまとう変人...セドリック・モールトンが現れた。
いつもつきまとってくる彼にセアドアは嫌気さえ差していた。
___が、彼がある事件に巻き込まれたことからセアドアの人生は大きな急展開を迎える。
...セアドアは結局あの後事務所に帰り、疲れからか何も食べずに寝てしまった。
***
「...ドア!」
「セアドア!大丈夫か?おい!しっかししろ」
40歳ぐらいだろうか。明らか焦っている。なんだ?やけに私を心配している。
見慣れた天井は無い。濁った煙と遠くの爆音が耳を打つ。
__夢だろうか。しかしあまりにも生々しい。
「はい。何も痛いところはありません。大丈夫です」
私はこれを大にしてはっきり彼に伝えたつもりだ。
このような爆音に包まれている環境では声を荒げなければとてもじゃないが伝わることは無いだろう。
「はぁ?なんて言ってんだこの馬鹿が!顔中血だらけだぞ!?そんなわけ無いだろ!意識を持て!」
そういいつつ、彼は私を2、3回殴った。
どうやら声がしっかりと出ていなかったようだ。
痛みは感じない。
なんだろう。これは。しかしこれだけわかった。
これは私達の生きる世界で起きてることではない。まさに夢の中のような、矛盾の中である。
そして、妙に安心する。まるで母の元へ帰ったかのような。
そうして私は目を閉じた。
***
…セアドアは、目を覚ました。うっすらと汗をかいている。額に手を当てたが、指先は震えていた。
そういえば、セドリックはなんて言ってただろうか。
「セアドアは人を殺した」
...これも夢の中でおきたことなのだろう。
きっとそう思う。いや、そうだ。そうに違いない。
しかし何故だろう。無性に苛つく。そして激しく心臓が鼓動する。
さっきまで眠っていたとは思えぬほどに激しく鼓動している。
セアドアは窓の外を見る。空は白み始めていた。朝が近い。
いつも通り、探偵としての準備を始める。
どれほど心が乱れていようとも、依頼者は変わらず、彼の元を訪れる。
セアドアはそれに応えねばならない。
それが、日々の仕事だ。
あれから、二週間が経過した。
セドリックは、あの日以来一度も事務所を訪れていない。
電話も、手紙も、何もない。ただ、時間だけが静かに流れた。
セアドアはいつも通り依頼をこなし、報告書を書き、簡素な食事を摂っては眠る日々を繰り返していた。だが、どこか空虚だった。日常は戻ってきたように見えて、どこかが欠けている。
――例の夢のことは、いまだに頭を離れなかった。
あの血、遠くから聞こえる爆音、そして「人を殺した」というセドリックの声。
現実か幻かも判然としないその記憶は、まるで泥のようにセアドアの思考に絡みついて離れない。
そんなある日のことだった。
事務所の扉が、唐突に開いた。
――セアドアが、来た。
「久しぶり。元気にしていたか?」
セドリックは例の件等気にしていないのか、前のようにふざけた態度を取り続けている。
「お久しぶりです。二週間ぶりですね」
...セアドアは正直、どういう風に接しればいいのかわからなかった。
「ああ。だけど今日は依頼を頼みに来た」
セドリックは真剣な眼差しでセアドアを見つめる。
まさしくあの時と同じような視線だ。
セアドアは一瞬固まりながらもなんとか声を発する。
「...わかりました。こちらへどうぞ」
セアドアはセドリックを事務所の席に座らせ、2人分の紅茶をいれるための湯を沸かす。
お湯が沸くまでの間、セドリックは思考を巡らす。
一体何の依頼だ。前のように私を陥れるための依頼なのか。
その手は汗ばみ、震えている。
セアドアは彼の行動にを恐怖すらしている。
お湯が湧くまでの間すら彼と対面しなくていいとそう考えている。
しかし、ときは来るもの。セアドアは沸いたお湯で紅茶を入れ、セドリックの元へ向かう。
セアドアは紅茶を机に置き、セドリックの向かいに腰を下ろす。
手は震えているが、探偵としての冷静さを装う。
素の自分ではなく探偵としての肩書に身を委ねられるのは、セアドアにとってはありがたいことだった。
「おまたせしました。セドリックさん。では依頼について、お話しましょう」
声は低く、慎重に言葉を選んだ。
作者の裏方みげぃです。2話では1話の反省を踏まえ、感情表現を多く取り入れました。少しじれったいかもしれませんが、これは私の今後の成長に期待するほかありません。
この物語は一応2つのルートが有るな、と思うんですが、どちらにしようかは決めかねています。
割と早い段階で決めとくと後が楽になるのかなとは思います。
どちらにせよ、今後の裏方みげぃに期待するほかありません。