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最終話 天然王子と鈍感令嬢の恋の行方

「ジェラルド……なぜここに」

「それはこっちのセリフだよ、エドガール。君には王命が下っているから伝えなければならない」

「王命?」


 エドガールはジェラルドに掴まれた腕を振り払って、彼をにらみつける。

 その隙にジェラルドはクラリスを守るようにベッドの傍にいく。


「クラリス、少し待っていてくれるかい?」

「はい、私は大丈夫です」


 クラリスに優しい微笑みをかけると、今度は振り返ってエドガールに蔑んだ目を向ける。


「宮殿に君がいろんな令嬢に手を出したという苦情が来ていてね」

「なっ!」

「何か弁明はあるかい?」

「あれは他の令嬢たちが言い寄ってきたんだよ! 僕はなにもしてない!」


 そう弁明する彼にジェラルドはさらに追及する。


「おかしいね、一人や二人なら好意を受けることもあるかもしれないが、十人一斉に被害を出してきたんだ」


 ジェラルドの言葉を聞き、目を見開いてエドガールは驚く。

 悔しそうに唇を噛みしめて反論を開始した。


「証拠は! 証拠はどこにあるっていうんだ!」

「数々の目撃情報がある。令嬢の部屋に押し入る姿を見たメイドたち使用人に、嫌がる令嬢に無理矢理言い寄る姿もある庭師が見ている」

「そんなのでたらめだ!」


 冤罪だと言い張るエドガールだが、罪はそれだけではなかった。


「それだけじゃない。君は私財だけでは飽き足らず、国庫にも手を出していたね? 調べはもうついている」

「それは……」

「これはもう父上の耳にもすべて通っていることだ。言い逃れはできない」


 エドガールはなんて言い訳を言おうかと思案するが、もう何も思いつかなかった。

 彼が諦めた様子を見ると、ジェラルドは王命を伝える。


「君の行動、行為は王族の名を大変汚した。よって、王命により君の王族身分を剥奪し、今後一切に我が国への入国を禁ず」

「なっ!」

「ちなみに、私財も没収のためこれからは最低限の生活金のみで生活してくれ。もちろん、平民としてだ」

「そんな……」

「それから……」


 ジェラルドは王命での彼の処分を伝えた後、エドガールの顔に容赦なく拳を振るった。


「ぐはっ!」


 殴られたエドガールは勢いよく飛び、そのまま床に倒れ込んだ。


「これは、クラリスを傷つけた分だ。これでも足りないほどだがな」


 ジェラルドの指示でエドガールは衛兵の手によって連れていかれた。

 残されたクラリスとジェラルドはぎこちなく会話を始める。


「すまない、怖かっただろう」

「いえ、大丈夫です」


 そう言いながらも彼女の体はわずかに震えていた。

 そんな様子を見たジェラルドはクラリスの体を抱き寄せて、安心させるように優しい声をかける。


「大丈夫、もう君に危害を加える者はいない」

「ジェラルド様……」


 クラリスが少し落ち着きを取り戻した頃、彼は静かに口を開いた。


「すまない、強引な婚約破棄で君を傷つけてしまった」

「私は大丈夫です。それよりも、私のせいでご公務に集中できないと仰せでした。それは……」

「やはり集中できない。

「え……」


 ジェラルドは少し照れたように目を逸らしながら言う。


「だが、クラリスがいなければもっと集中できなかった。これは俺の勝手な気持ちだ。聞くだけ聞いてほしい」


 彼の言葉にクラリスは耳を傾ける。


「俺はクラリスが好きだ。エドガールは君が妃教育に身が入らないといっていた。それに、好きな男もいると」

「え……」

「君が他の男が好きなのであれば正式に婚約を破棄しよう。おじ様とおば様にもこの足で謝罪をしに向かう。だから……」

「殿下、いつ私が殿下以外を好きだと言いましたか?」

「え……?」


 クラリスの意外な反応と返答にジェラルドは戸惑っている。


「私は昔から殿下……ジェラルド様しかみておりません。今もずっと、あなた様をお慕いしております」

「それは、本当なのか?」

「嘘を言ってどうするのですか。それに……」


 そう言って、クラリスはとびきりの笑顔を見せる。


「でなければ、『氷雪令嬢』がこんな感情的な表情を見せますか? あなた様だけです、この顔を知る者は……」


 彼は彼女の笑顔に頬を染めると、彼女に尋ねる。


「もう一度、俺とやり直してくれるのか?」

「ええ、もちろんです。私にはジェラルド様しか考えられませんので」


 そう言って二人は優しく唇を重ねた。


「クラリス、私の妻となってくれるか?」

「あなた様が嫌だと言っても、もう離れませんよ」


 互いに顔を赤らめると、ジェラルドはクラリスを抱きしめた。


 こうして不器用な二人の恋は、再び同じ道を歩いていく。

 勘違いやすれ違いの多い二人は末永く仲良くし、国家を支えたという──。


最後まで読んでくださりありがとうございました!

短いお話ではありましたが、不器用な二人の恋が書けて嬉しく思います。


よろしければブクマや評価をしていただけますと大変励みになります!

また、連載中『白い結婚の行く末~戦地から夫は妻の秘密を持って帰りました~』もよかったら、下のリンクからどうぞ!

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