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第3話 様々な思惑

 クラリスの父親──ルノアール公爵は急いで国王に謁見を申し出ていた。


「国王陛下、殿下とクラリスが婚約を破棄したというのは真実でしょうか?」

「ああ、そのことなんだが……」


 国王はため息をつくと、苦笑いをして事の仔細を伝える。


「実は、うちの愚息がクラリス嬢に一方的に婚約破棄を申し出たようで、それをクラリス嬢も引き受けたのだと」


 公爵は妻から聞いていたことと相違ないと言った様子で耳を傾けていた。

 国王はこめかみを掻くと、言いだしづらそうに口ごもりながら告げる。


「それが……愚息はクラリス嬢のことを恋い慕っているのは間違いないようで……」

「え……それではなぜ……」

「どうやら想いすぎるあまり公務に支障が出ると言い張っておりまして。その……」


 国王の困った表情を受けて公爵は彼の言いたいことを察する。


「もしや、うちの娘が何か殿下に失礼なことを……」

「いいや! そうではない! 恐らく愚息が至らぬゆえ、思ってもいないことを口走り、クラリス嬢へ婚約破棄してしまったのではないかと思っておる」

「つまり……」

「ああ、おそらくこれはただ若者の恋のすれ違いの類かと。それゆえ、ルノアール公爵わしとお主でここは見守って婚約は継続してみてはどうかと」


 国王の提案に公爵は驚きつつ、返事をする。


「もちろん、陛下の思し召しであればその通りに」

「悪いな、おそらく二人とも恋愛に不器用なだけではないかと」

「では……」

「ああ、もう少し様子をみたいと夫人にも伝えてくれぬだろうか」

「かしこまりました」


 こうして国王と公爵夫妻は、クラリスとジェラルドのことを見守ることに決めたのだった。




 一方、宮殿では第二王子であるエドガール・ド・カリエが密かに暗躍を開始していた。


(まさか、あの兄上に「邪魔になっているのはクラリス」と言っただけで、本当に婚約破棄を言い渡すとは)


 エドガールは宮殿の廊下を歩きながらにやりと微笑んでいる。

 そのままエドガール専用の馬車に乗り込むと、馬車はゆっくりとある場所へと向かい出した。

 彼は余裕の表情で足を組んで深く座り、大きく体を仰け反らせる。


「ふ、ふははは! あのバカ兄貴め!! まんまとハメられて婚約破棄したわ」


 馬車の中に彼の大きな笑い声が響き渡った。

 彼はなんとも嬉しそうに笑みをこぼす。


(これでクラリスは私のものだ。あの兄貴が昔から気にくわなかったんだ! あいつのもの全て奪ってやる)


 エドガールを乗せた馬車はルノアール公爵邸へとまっすぐに進んでいく──。

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