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第1話 氷雪令嬢は婚約破棄される

「クラリス・ルノアール! 貴様とは本日をもって婚約を破棄する!」

「理由はなんでしょうか?」

「お前が好きすぎるからだっ!」


 高らかに婚約破棄を宣言したのは、この国の第一王子であるジェラルド・ル・カリエである。

 そしてたった今婚約破棄されたクラリスは公爵令嬢であるが、そのあまりにも冷たい表情や態度から「氷雪令嬢」と呼ばれていた。


 彼の婚約破棄宣言が二人きりの部屋に響き渡った。

 彼女はジェラルドの言葉を聞いて、静かに首をかしげる。


「私には好きという感情から、婚約破棄に至る殿下の思考がわかりません」

「俺はもっと公務を一生懸命しなければならない立場なのだ!」

「はい、それはもちろんでございます」


 冷静な顔でクラリスは返事をした。

 しかし、彼女とは対照的に感情を露わにして彼は叫ぶ。


「だ・か・らっ! お前がいて気が散るのだ!」


 もう一度クラリスは首を傾けて彼に尋ねる。


「私が邪魔だとおっしゃりたいのでしょうか?」

「違うっ!」


 ジェラルドは書類でいっぱいに広げた執務机をバンッと叩いて反論した。

 その顔は唇をかみ、うまく言いたいことが言えない苦悶の表情を浮かべている。


「お前のことが頭から離れず、一向に公務が片付かん!」

「それはやはり、私は殿下の邪魔になっておりますね」

「そうかもしれん!」


 口元に手を当てて考える素振りをするクラリスに対し、ジェラルドは反射的にそう答えてしまう。

 明らかに先程とは矛盾した答えを言ってしまう彼の意図を汲み、クラリスは冷静に言葉を紡ぐ。


「わかりました。婚約破棄を受け入れますわ。私はこれより殿下に会いに来ませんし、静かに実家にて暮らすことにいたします」

「ありがたい! では婚約破棄の件を私から父上を通して両家に伝えておく」

「かしこまりました、よろしくお願いいたします」



 そんなやり取りをした帰り道のクラリスの足取りは重かった。

 馬車の中で流れる景色を眺めながら、考え込む。


(はあ……なぜ、好きなのに婚約破棄されるのでしょうか。きっと殿下は、私のことを本当は好きではなくて、邪魔なだけなのよね。殿下のためには婚約破棄を受け入れるのが一番だわ)


 二人のすれ違いはこうして始まった──。

以前のお話をブラッシュアップして投稿しております。

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