【貴族の住まう国】
3日前。
私は【魔獣の洞窟】にて少年【ゼノ】と出会った。
元々の目的地だった第二王国【貴族の住まう国】にて、異様な存在と出会う。
建国256年1月25日
[ゼノ]を引き入れて3日が経過した。
雨も止み、曇りが続く。
悪評の耐えない第二王国【貴族の住まう国】にて、異様な存在と出会う。
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「えっと…」
黒髪の少年[ゼノ]は、私の袖を掴み声を漏らした。
通りかかった川で、魚を捕まえる事になったのだが…
「大丈夫だよゼノ。私も理解出来ないから」
目の前の光景に、ため息が出る。
川の水を持ち上げる[ゼウス]
生態系が壊れないように少し逃がす[イリス]
第二王国までの距離を確認する[アキラ]
何かを察知し、第二王国に走った[ジン]
面白そうだから着いて行った[ノア]
「よし!!ゼウス!!こんぐらいとったら充分だろ!!下ろしてくれ!!!」
「ん」
川を戻すと魚が優雅に泳ぐ。数匹の魚を捕まえたイリスは、緑色の球体を取りだし魚に付ける。瞬間。魚は消え、球体は少し光る。
「【保存】」
「…それすごい便利ですよね」
「まぁな。鮮度はそのままの永久保存。欲しいか?」
「大丈夫です。…それぞれの役割がありますから」
「……そっか?」
少し落ち込んだイリスに、ゼノは興味津々で話しかける。
「欲しいって?!みんな出来るものなんですか?!」
「…!おう!!スキルの応用だな!!【収納】スキルを球体に付与し、その上から【保存】すれば俺以外も使える。二重構造のスキル玉だ。いるか?」
「欲しいです!!!!!」
目をキラキラと輝かせるゼノは、10個の【保存玉】を貰った。
「すごいですよね…私なんか1つのスキルすら扱い切れないのに、100つ以上も…コツとかあるんですか?」
「ん~?分かんないけど。頭悪いからってのはあるかもな」
「?」
「多くのスキルを有する人に求められるのは、精神力と判断力。適応力、器用力、頭脳…うんたらかんたら……まぁ、器用過ぎるってのはある意味不器用な証拠だ。頭捻って思考働かせるより、日常の動作の一環として使った方が使いやすいかな~って。ほら?コップ取るために腕を動かそう!って考えないだろ?」
「…確かに」
(ノアさんと居る時とのギャップに追いつけない…)
実は天才なのでは?と疑う私の横から、アキラが興味津々に参加する。
「…時々訪れる斜め上の発想には、いつも助けられるよ。…スキルを日常的に…か…。僕の【盤上】の場合はどう考えるべきだと思う?」
「ん?ぁぁ…【盤上】は頭使わないとキツイくね?強いて言うなら移動を【盤上】に変えてみたら?」
「……移動行為の基礎からねじ曲げろって事か。無意識的に足を動かすのが生物な訳で……難しいな…」
「あ?やってみないと難しいか分かんないだろ。考えるより実践した方が絶対身に付くって」
「…確かに。心得るよ」
「おう!」
考えながら離れたアキラは、早速【盤上】を展開し呟いた。
「…自分と他者を動かす為のイメージ…第二王国への最短移」
瞬間。アキラが消え、イリスが叫んだ。
「おい?!?!失敗したな?!急ぐぞ!!アキラ無しだと第二王国がどっちにあるかすら分かんねぇ!」
「…だったら急いでも分からんだろ」
「あ、ほんとだな」
ツッコむゼウスに私は戸惑った。
「え?!じゃあ離れ離れって事ですか?!」
「だな~…この前みたいに道成なら分かるけど…寄り道してちんぷんかんぷん……」
「第二王国なら東南東に徒歩4時間程で着きますよ!!」
嬉しそうに笑うゼノは、指を指し答えた。スキルに夢中だったゼノは、アキラの操作する【盤上】もしっかり見ていたのだ。
「助かる」
「すげぇな?!」
「ゼノがいて良かったよ」
怒涛の褒め言葉にゼノは微笑んだ。
休憩を取りながら歩くこと4時間半。
太陽は沈み初め気温は下がる。
眠りについたゼノをおんぶして歩く私は、壊滅した第二王国を目の前に言葉を失った。
「ぇ…………」
「……?」
「どうなったらここまで壊れるんだよ…」
魔族が襲撃したかテロが起きたか、間違いないのは…想像を絶する何かが起きたという事。
「貴族の連中…厄介な奴に恨み買ったか?」
「…アキラ達を探すぞ。」
「……うん」
ここまでの損壊なら必ず重傷者が居る。亡くなった人や失った人も……
「命をなんだと思ってるの……」
この時の私は、……ただただ。怒りが込み上げていた。でもそれは、すぐ別の感情に切り替わる
「お姉さん。可愛いね!」
「「?!」」
瞬間ゼウスとイリスが戦闘態勢に入った。
驚いた私は、袖を引っ張る真っ白な女の子に笑顔で問われる。
「あなたは悪い子?それとも良い子?」
「ヒーリェ!!!!離れろ!!!」
「えっ?」
イリスの声が聞こえたと同時に、ゼウスが女の子に攻撃した。驚く女の子は、ジト目になり可愛い声を漏らす。
「悪い子だね?」「悪人だな?」
黒い男の子が右手で押すと、ゼウスは瓦礫に吹き飛ばされた。咄嗟のことで、頭が追い付かない。ただただ……怖い。
「頑丈だなぁお兄さん。でも女の子に手を出すなんて…増しては妹に…死刑ね?」
▶︎黒髪の男の子【ブラック】
「他の子は?良い子?悪い…」
ドゴンッ!!!!!!!
話す真っ白な女の子を、イリスが吹き飛ばした。
「必要に応じて悪い子になる」
「お前!!」
「不思議な感覚だな」
「?!」
激怒したブラックの振り上げた腕をゼウスが掴む。
「気安く触るなよ犯罪者」
「ゼウスさん!!」
「あ~ぁ。だめだよ。女の子には優しく接しないと。」
「?!」
瓦礫の中を歩く裸足の女の子は、ゆっくり近付き微笑む。その姿は、神話に登場する天使のようで息が詰まる程綺麗だった。
「女の子にモテないよ?」
▶︎真っ白な女の子【ホワイト】
「傷一つ無し…流石に傷付く」
「躊躇なく女の子を殴れるなんて…女の子とは無縁の人生なのかな?それとも心の底から悪い子なのかな?」
「仲間のピンチに女も男もあるかよ。」
「…?ジンくんと同じこと言うね?もしかしてお仲間だった?」
「「?!」」
剣を取り出したイリスは剣先を向け、怒鳴る。
「ジンさんに何をした!!」
「ほーらすぐキレる。」
「?!」
ブラックが呟いた瞬間、イリスの剣は上に弾かれた。あまりの衝撃に、息を飲む。それもそのはず。
剣を弾いた張本人は、紛れもなく【ジン】だった。
「かっこ悪い奴の特徴だよね。女の子にキレるなんてさ?」
「何って?私はもう1人の男の子と遊んだけど、ジンくんはブラックと戦ったからどうだろ?」
「くっ?!」
目にも止まらぬ剣撃がイリスの体を切り刻む。仰け反った身体に追撃を仕掛ける[ジン]は、体を浮かし剣を振るう。
「やばい?!」
「イリス!!」
「ダメだって」
援護しようとするゼウスの腕を掴み、地面に叩き付ける。と同時に、[ジン]に切られたイリスは、壁に激突する。
「タイマンから逃げるとか、まじ論外」
「プライドは戦闘に必要ない」
「?!」
地面に倒れるゼウスは、剣を抜く。振りかざした腕は、地面を透過し加速する。
「は?」
バンッ!!!!!
「ぐっ?!?!」
空気に叩きつけられたブラックは、追撃の剣を交わし反撃する。
「がはっ?!」
反撃をまともに食らったブラックは、吹き飛び地面に転がった。
「なんだ今の?!」
反撃したのは間違いなくブラックだった。なのに何故、地面に転がるのか。
「反撃したのは俺だ。」
「どう見ても俺のが入ってただろ…」
「あぁいい攻撃だった。痛かったから少し時間を戻して結果を上書きした。」
「は?」
「結果とは認識だ。真実の結果ですら、伝え方を変れば偽の結果になる。[俺が反撃された]と言う結果を、[俺が反撃した]と言う結果にしただけだ。」
「イカれてるな」
「よく言われる。イリス?大丈夫か?」
地面に転がるイリスは、ヨロヨロしながら立ち上がった。
「回復系スキルは持ってねんだよ……無茶言うな」
「治癒を【促進】させろ」
「馬鹿ほど疲れるんだよ馬鹿!!体力無くして[ジンさん]の攻撃防げっかよ…」
剣を再び構えるイリスは、ヒーリェを見る。
咄嗟に回復しようとしたヒーリェの手を、ホワイトが優しく包んだ。
「だめだよ。あなたまで悪い子になっちゃう」
「悪い子って?!仲間のピンチを助けない方が悪い子でしょ?!」
マナを集中させ、対象をイリスに絞る。
「【試練】」
「?!」
突然視界からイリスは消え、当たりは花が咲き乱れる。
「あなたを悪い子にはさせない。」
「なにここ?!」
「私の試練の中だよ?初めて見たかな?戦いが終わるまで、ゆっくり待とうよ。」
いつの間にか背後にいたホワイトは、ゼノを抱えて花畑に座る。
「?!」
「あなた達2人は、どうして彼らと一緒にいるの?せっかく可愛いのに。勿体ないよ。」
「溢れるぐらい良い人達だよ。それこそ、私には勿体ない。」
「…?」
ゼノを優しく置いたホワイトは、重力を感じさせない動きで立ち上がる
「なにか…辛い事があったの?」
ヒーリェの目の前に覗き込み唇を触る。
「…!」
当たり前のように空を飛ぶホワイトは、細い腕でヒーリェを抱き締めた。
「もう大丈夫。頑張ったね。辛かったね。偉いね。良い子。凄いね。」
脳に響くホワイトの甘い声に力が抜ける。
ボーッとする私の耳に唇が触れ、気を失いそうな程安心が押し寄せる。
「辛い事。苦しい事。全部教えて欲しいな。あなたのこと。初めて見て、一目惚れしちゃったの。よしよーし。良い子。いいこだから。力を抜いて、頑張った分。休んでもいいんだよ。私が守るから。あなたを愛してあげる。心の底から。あなたに寄り添ってあげる。だって…良い子だから。怯えた夜も、孤独を感じた日も、涙を流した思い出も、罪悪感を覚えたあなたの優しさも、無邪気な笑顔も、謙虚な態度も、寄り添う心の広さも、助けたい思いやりも、生きる事を辞めなかった強さも、我慢した配慮も。全部全部。私は理解してあげる。尊重してあげる。一緒に思ってあげる。産まれる環境は選べないもん。生きる環境を…私が整えてあげる。辛い事。苦しい事。全部忘れて楽しく。幸せに生きようよ。好きなデザートを食べて、オシャレして、街を歩いて、遊んで、好きな時に寝て、いい夢を見て、疲れが溜まったら温泉に行こうよ。身体流してあげる。マッサージもしてあげる。必要であれば、身体も使わせてあげる。私はあなたに私の全てを差し出すことが出来る。たくさん友達を作って、好きな人と遊んで、夜更かしする夜があっても良いかも。ダラダラして、ゴロゴロして、あ!コスプレとかって興味あるかな?メイド服とか…ケモ耳とか…たくさん。たくさんしてみたいことがあるの。あなたとなら。きっと楽しいし、あなただけが、私を退屈から救ってくれるって、今は本気で思ってる。あなたは優しいから。あなたは可愛いから。あなたは綺麗だから。あなたが女の子だから。運命なのかな?きっとそうだよ。私はあなたに寄り添うために…ここに来たのかもしれない。旅行もしたいよね。【テラス】に飽きたらさ?他の世界も冒険しようよ。飽きることの無いほど、沢山の楽しさと幸せと未知が待ってる。きっと…私たちのためにあるんだよ。ご褒美があるのは、あなたが生きているから。生きている事が、何よりも偉いし凄いことなんだよ。たとえ自殺したとしても。耐えて耐えて、誰も助けてくれなかったから。その人のせいじゃない。私のせいなんだよ。私がみんなを守れないから。私が悪い。だから、あなたを守りたい。私の手中にあれば、どんな災害からも運命からも守ってあげられる。どうかな?寝ちゃったかな?可愛い寝顔。ほんとにすきだよ愛してる。だからこそ。悪い子にはなって欲しくないな。無理やりされてるなら教えて欲しい。あなたにとって彼らはどんな人?」
「…み、んなは」
「……うん」
優しく頷くホワイトは、ヒーリェのおでこを撫でる。涙を流すヒーリェは、過去を思い涙を流した。
「みんな…は、私を救ってくれたの…見つけてくれたの…」
「…うん」
モノクロの世界だった
あの日から全てが壊れた
みんなを助けたい一身に、頑張った
そんな私を、みんなは見なかった
初めてを奪われた日。
どうしても死にたくなった。
でも。きっと。こんな私でも。
力になれるんじゃないかって…
必死に生きた
探される恐怖、眠れない恐怖
誰も信用出来なくなっていた
なのに
「やっと見つけた!!」
彼らは違った。
顔を見た時、目を見た時。一目でわかった。
彼らはみんなとは違うと
目を見て話してくれた。
そんな彼らにどれほど救われたか
震える私を彼らは心配し最大限の配慮をしてくれた。
「…私にとって…彼らは。悪い人じゃない。」
「…うん。ありがとう。ごめんね。」
ヒーリェの涙を見たホワイトは、試練を解除し、叫んだ。
「ブラック!!!」
「っ?」
「悪い人じゃないみたい!!」
「…はぁ。」
振り向き瓦礫に埋まるゼウスを睨む。
「だってさ?誤解みたいだ。ごめん」
「…」
「でも!!」
「?!」
ドガンッ!!!!!!!!
距離を詰めたブラックは、ゼウスの顔を殴った。
驚いたゼウスは、剣をしまう。
「これはホワイトを攻撃した分!!!…ほんと頑丈な奴だな」
「こちらこそ。お前みたいな奴とは初めて出会った」
「ふん!」
頬っぺを膨らましそっぽを向いたブラックは、指を鳴らした。瞬間。[ジン]は消え、力の抜けたイリスは地面に膝を附けた。
「に、偽物だったのか」
「さっきのは俺の【創造魔法】だ。認めた奴しか作らないけどね」
「って?!ジンさんはどこだ?!」
「……友達を守って貰ってる。お前らを認めた訳じゃないけど…まぁジンの仲間なら信頼してやる」
「お、おう」
態度の変化に戸惑うイリスは、ゼウスに向かって苦笑い。焦ってヒーリェに目をやると、ホワイトがヒーリェにくっ付いていた。
「あなたを助けたのは…彼らなんだね」
「うん…」
「そっか。…じゃあこの子を貰おうかな。」
スピスピと寝ているゼノを見たホワイトから取り上げたヒーリェは、焦りながら答えた。
「ゼノは渡しません」
「…?好きなんだね?」
「……まぁ弟みたいな存在だし…」
「…そっか。ねぇブラック?あの子達の安全は、この人達に預けてみるのはどうだろう?」
「…本気か?」
「うん。私達はもっと沢山の人を助けないとだし、2人ともまだ衰弱してるから。」
「……おいお前?」
「なんだ?」
「名前は?」
「…ゼウス」
「ふ~ん。かっこいいな。あの子供は?」
「ゼノだ」
「かっこよ…どこで知り合った?」
「【魔獣の洞窟】で1人。暴走状態だったから保護した。」
「!!……なら良いかも。…ほんとに勘違いだったんだな悪い」
「そんなキャラだったか?」
「うっせ」
再びそっぽを向いたブラックは、地面に倒れる男に聞いた
「お前は?」
「あ?ぁ~イリスだ」
「微妙な名前だな」
「んだと?!?!」
「まぁいい」
「良くねえが?!?!ってか…ジンさんとどんな関係なんだよ」
「……数時間前に出会って衝突したけど、割と早い段階で良い奴って分かった。あとかっこよかった✨」
「あ?あぁ」
満足気なブラックは、着いてこいと言い国へ歩き始めた。イリスさんを回復した私達は、ブラックとホワイトに案内される事となる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
突然の戦闘に困惑してしまった。
理解のある人だったから良かったが、ほんとの悪人だったら、死んでいたのは私の背中にいたゼノだと思うと、自身の緊張感の無さに苛立ちを覚える。
案内されつれられた先にて、酷く怯える少女【ナタエル】と偽りの笑顔を持つ少年【アトナ】に出会う。
追記:ホワイトちゃんには…色々注意(性的な意味で)
ヒーリェ目線の印象
・【ゼウス】お兄さん
・【アキラ】頭のいい人
▶︎勉強熱心な努力家 new
・【ジン】怖めのお節介さん
・【ノア】陽気な男の子
・【イリス】知性の低いハイスペックな男の子
▶︎天才肌 new
・【ゼノ】優しい少年
▶︎可愛い弟 new
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