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水流物語  作者: JULY
第一章
1/7

世紀の大誤算

 ピカーテ王国の北部、コートベールの大森林、通称”焔の森”の中にブレンネン家と呼ばれる大貴族が住む屋敷があった。


 ブレンネン家とは王国に仕える主要な貴族である六大貴族の一つであり、永らく優秀な魔術師を輩出し王国のために身を粉にして捧げてきた。


 ブレンネン家と言えばと問われれば誰もが『一族全員が優れた炎魔術の使い手であること』、と口をそろえて言うだろう。


 一族はもちろんのこと、この家に仕える使用人や関係者すべてが炎熱系魔術に適正のある者だけに限っている徹底ぶりであった。


 この一族から生まれる子らは全員燃えるような緋の髪と瞳を持っていた。それは紛れもない炎熱系魔術に最適魔力である『熱い魔力』を持って生まれたことの何よりの証拠であった。


 ブレンネン家はこうして、優秀な炎熱系魔術師を輩出し宮廷魔術師へと据えることで国内での存在感を高めていったのである。


 しかし、どんなに猛き炎であってもいつかは、陰りも生まれるというもの。ここ近年のブレンネン家は徐々に権力が落ちぶれてきていたのだった。


 その一番の問題は宮廷魔術師を据えられなくなってきたからであった。


 現在ブレンネン家で宮廷魔術師に在籍しているのは、宮廷魔術師師団長グリセン・ブレンネンただ一人であり彼も御年八十を超える長老者であるため現役を退くのも時間の問題であった。


 彼が師団長の位置に居座っているのも宮廷魔術師からブレンネンの血筋が絶えないようにするためであり、すでに老い先長くない身で踏ん張っているような状況である。


 また六大貴族とて当然一枚岩ではなく、ブレンネン家の座を蹴落として更に国内で発言権を伸ばそうと虎視眈々と狙っている家も少なくない。


 特にブレンネン家と長らく犬猿の仲として争ってきた○○家はブレンネン家の脱落を今は今かと待っているような状況だろう。


 そうした事情があり、現在ブレンネン家では早急に優れた魔術師の排出が求められ、家内部の空気は非常に緊迫したものとなっているのであった。


 だが肝心のブレンネン家現当主オイリンとその正室ターリアの間には中々子供に恵まれなかった。そのせいでブレンネン家の内部からはこの二人の印象はすこぶる悪くなり、『種なし』だの『悪部屋』だの揶揄する声が多くなってきていた。


 そして内圧から正室ではなく妾からも子を成す必要に迫られてきたそのとき、ついにターリア懐妊の知らせが舞い込んできた。


 ”ブレンネン家の子は代々『熱い魔力』を持って生まれる”


 そう誰もが信じて疑わなかった。これでブレンネンは安泰だと、先代当主グリセンも胸を撫でおろした。


 それからブレンネン家では、ターリアが出産する数か月先まで息をするのも憚られるような地獄のような空気から解放され、誰もが未来に期待を寄せる穏やかな雰囲気が流れるのだった。


 ターリアが子を産み落とすその瞬間までは。


 ”その子をみた時誰もが息を呑んだ” 


「これは……」


 母から生まれ産声を上げるその赤子は、燃えるような緋の目ではなかったのだ。


 それどころか流れる水のような透き通った水色の瞳で世界を見ていたのだった。

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