うろこ雲
夜には寒いくらいに
なっていた。
寒冷前線の通過。
境界線を越えていた。
しのぎやすくなり、
眠りやすくなり、
エアコンをつけなくても
そっと過ごせる。
もう九月も終わり。
仕事の締め切りと、
畑作業の芋掘りが
近づいている。
ありがたや、ありがたや。
今日も一日ありがたや。
そう自然に思えたら、
一番の、自分になる。
今年もだいたいは
いつも通りの秋で、
寝込むこともなく、
ありがたい話となる。
そんなときの感情が、
しばしばこぼれると、
身の回りにもそれに
相応しい出来事が起こる。
もう十月の始り。
年末の段取りと
冬野菜の植え付けを
終わらせてゆく。
ありがたや、ありがたや。
今日も世界へありがたや。
そう信じて眠れたら、
一番の、人生になる。
この時代のこの国で
生きているそれこそが、
ありがたや、ありがたや。
夢の中でも口にした。
朝には水色の空が
目に優しく広がった。
心地よく冷えた風、
うろこ雲が散らばる。
そろそろ、笑っている。
そろそろ、歌っている。
寒いあの国の人も、
暑いあの国の人も。
ありがたや、ありがたや。
今日も誰かがありがたや。
そう思わず叫んだら、
一番の、地球になる。