デストルドー
デストルドー=死の欲動
「ねぇ、」
「 」
「ねぇ、こっちむいて。」
「 」
タバコの灰が真っ白なシーツを黒くする。
小さな穴。
うっすらと香るキナ臭さ。
「ねぇ。」
全てに興味を失った目が二つ、私に向けられる。
近くにあった灰皿を手に取り投げ付けた。
舞い散る灰に吸殻。
眉間に寄せられた皺に目をやる。
ジジジジジ
手から離れた吸い掛けのタバコが染みを広げ、繊維一本一本を赤く焦がしながら侵食していく。
白→赤→黒
捕まれる髪の毛、引きつる頭皮。
「痛い、痛い。」
真似して眉を顰めてみた。
刹那宿る光。
見逃しはしない。
「愛して、私を愛して。」
「 」
「あいして」
ブチブチブチブチブチブチブチブチ
髪の毛が大量に抜ける音が鼓膜を震わす。
冷たい両手。
あなたはさっき生き返った。私を見て生き返った。
見逃しはしない。
愛せるでしょう?私を。
ヒュヒュ プチプチプチ ヒュヒュヒュッ
毛細血管が切れ顔面に浮き出る赤斑。醜い私。
気管は圧迫されても本能で呼吸する。延髄の私。
口の端からだらりと垂れた涎が冷たい手をぬめらせた。
「・・・あ い し て・・・」
酸欠の魚宜しく口をぱくつかせて精一杯伝える。
より一層深く突き刺さってゆく爪先。
脳細胞が死んでいく。溶解していく。
a i si te
執りつかれたように唇を動かそうとする私。
さよなら私。
大脳新皮質の私が狂喜した。
あなたは灰皿を拾い、再びタバコに火を付けた。