第1話 仮想空間
前回公開していた話を少し変えて再投稿です。
———【西暦2xxx年】
日本の機械文明は急成長し人間は人工知能と共に生き、娯楽を仮想空間で満たす生活を送っていた。
人工知能は人間の行動を助言する役割を補う。次第に人間達は《《自分の意思で考える》》能力が衰えAI無しでは、もはや生きる事が難しい状況だ。
とある大学生の青年は賃貸の小さなアパートに住み、戸棚に収納しているカップ麺に手を伸ばす。
「星冬様!この優秀AIであるフェアリー11Rが助言します!最近、カップ麺を食べてばかりですので栄養満点の冷凍お弁当を食べる事を推奨します!」
キラキラと輝く小さな妖精の姿をしたAIは青年の顔面前まで移動し強く話す。
星冬 「自分で優秀って…。わかりましたよ」
フェアリー11Rの助言に星冬は仕方なしに冷凍庫に保存している弁当を手に取ると電子レンジの中に放り込む。
「むか~しに比べるといまの冷凍保存は温めるだけで出来立てほやほのご飯を食べれますしね!カップ麺は昔のまま不健康です!」
星冬 「あのジャンクな味が食いたくなるんだよなぁ」
電子レンジの音がチンっと鳴ると星冬は温まった弁当を取り出しテーブルの上へと運ぶ。
星冬 「いただきます」
手を合わせると箸を握り、ふっくらしたお米にジューシーなチキンステーキ、温野菜、甘い玉子焼きとバランスの良い出来立てほやほやの食事を口の中へ運ぶ。
「今日も仮想空間で遊ぶのですか?」
フェアリー11Rにそう言われ星冬はもぐもぐと食べながら頷く。
「ダイバーエリアで遊ぶのは1日、2時間までが推奨です!」
星冬 「昔の映像に映っていた日本の《《おかん》》みたいな事を言うよな」
「せ・い・と・さ・ま!」
星冬 「へいへい」
星冬は力強く話すAIに頷き、手をヒラヒラと動かす。この場限りはすんなりと頷く星冬だが、AIの意見に聞く耳を立てる事もなく深夜まで遊ぶ気満々だった。
星冬 「ごちそうさまでした」
弁当を空にすると、星冬は仮想空間にダイブする椅子に座り、目の前のデスクに置いてある眼鏡を装着する。
「星冬様!2時間推奨ですからね!」
星冬 「わかったわかった。ダイバーエリアでも適格な助言よろしくな。優秀なフェアリー11R様」
「ふふっ!仕方ないですね~!」
フェアリー11R上手くおだてられ腰に両手を当てる。黒いゲーミングチェアに座ると星冬の眼鏡越しに起動メッセージが表示されアナウンスが流れる。
―――意識をダイバーエリアに移行します。目を閉じて下さい
―――Loding...80%
―――プレイヤーの身体が安全か確認。異常なし。
―――プレイヤーの瞼を閉じているかの確認。異常なし。
―――Loding..100%
―――意識をダイバーエリアに移行します。
Loadingが100%になると人々がガヤガヤと騒ぐ声が響き渡る。
―――意識移行、完了。目を開けて下さい。ダイバーエリアで楽しいひと時を。
星冬は瞼を開くと夜を迎えた広場に移動していた。イルミネーションのように色鮮やかな灯りが幾つも輝き、穏やかな水の流れる音のする大きな噴水。
広場のプレイヤーはアニメに出てくるピンク色の髪でツインテールに結びフリルな服装や、高身長で俳優のように整ったスタイルと美貌。
ダイバーエリアでは自分がなりたい理想の姿になる事が可能だ。
全てが実物では無いのかと錯覚してしまう世界にダイブした仮想空間は皆、ダイバーエリアと口にするVR空間だ。
星冬は手を伸ばすと目の前に空間のモニターを映し出す。右上に自分のプレイヤー名、Seitoと表示されたモニターでフレンドのログイン状況をタップする。
ちなみにダイバーエリアでSeitoの姿は現実世界と一緒の背丈ではあるが、アッシュ色をした短髪で容姿は当然の如く整っている。
Seito 「Seikaはまだログインしていない…か」
肩を落としそう呟くと現実世界と全く一緒の姿をしたフェアリー11RがSeitoの顔前まで移動する。
「ふふっ!Seito様~…気になる方がログインしましたよ~~?」
仮想空間でゲームが出来る日が来るといいな~
読んで頂きありがとうございました!