偉業の中にある影
ニライカナイ編2話目〜!いやそれにしてもまさかソロモンと出会うとはですよね!あの伝説の預言者ソロモン。しかし、とあるところでは大罪人として呼ばれるようになった。何故、伝説の預言者と呼ばれた英雄は大罪人と呼ばれたのでしょうか。今回の話はその原因を見て行こうかと思います
いせロリ豆知識24
世界樹の魔法割合は基本的に記憶が6、循環が2、歌による認識阻害が2で出来ている。
「あ、そういえばさっきの話、魔法って言えばよかったね。あはは。長生きしてる弊害だな......」
「...そういえば思ったんですけど、いつから魔法に変化したんでしょうか...」
先程のソロモンの話を聞いて疑問に思ったのかリノアがそんなことを呟くと、その独り言を聞いたソロモンが皆の疑問を解消出来るようにと答え始める。
「それはボクが魔導を世界構造の1つにして...。適性のある者だけではあるけど、普通の人でも魔導が扱えるようになった瞬間からかな」
「...ふむ、なるほどのぅ。魔を導く力から魔の法則へと変化したんじゃな...」
「そ、そういう事なのですか!?」
アヴァロンの発言を聞き、リノア達は驚きと共に目を輝かせる。どうやら魔法という言葉の意味を知り、胸が昂っている様子。
「実はそうなんだよね」
「本当にそうなの!?」
ソロモンの解答に思わずリノア達と一緒に驚くカラ。どうやらアヴァロンのボケだと思ってたようだ。
「個人的に魔粒子を導く力として魔導を使ってたんだけど、一般化に至るまでに色々あってね...。その内部構造の複雑さからただ魔粒子を導く力では説明つかなくなってしまって...。新たな名称を色々考えたんだけど、思いつかなくて名付けるのを辞めちゃったんだよね...」
そう言いながら頭の後ろを摩るソロモン。どれだけ才能を持った人でも、名称を付ける才能は無かったらしい。
「その結果、人々が魔粒子別変換可動法則。つまり魔法という単語を編み出した...」
「まりゅう...え?」
アヴァロンが言った長い単語を聞き取れず、カラ達は困惑する。
「魔粒子別変換可動法則、それが魔法の正式名称でな。意味はそのままで、魔粒子を他の力へと変え、動かす法則じゃよ。まぁいちいちこんな長ったらしい法則なぞ、覚える必要はないがの」
名付けた者に対し、何か思うことがあるのかと思わざるを得ない雑の扱いに少し困惑するカラ達。
「そういえば著者不明の魔法に関する書が世に出回り、世界中に魔法使いが現れた...と言う伝説は、当時を生きておらん妾でも知っておる」
片目を閉じ、ソロモンを見つめながらそう言うアヴァロンは、皆にその魔法書が誰なのかを暗示していた。
「あはは、懐かしいね。ボクが最初に出した本だよ。確か題名は何もつけてはなかったはずだけど...」
「え、その題名のない魔法書って、もしかして今使われてる魔法書の元となった原本の事ですか?」
「あ、そうそう!それだね。ボクも今の魔法書を見たけど、凄いよねー。やっぱり84億人も魔法使いがいると、ボクだけでは見つけられなかった物も見つけてくれる」
カラはソロモンが言った事に違和感を覚える。84億人も魔法使いがいる事に。ふと、前にクゥロ達が言っていたことを思い出す。魔法使いは全員が全員使えるわけではないと。
つまり、全員じゃなくて84億人。という事はこの世界の人口は...。そう考えると頭から湯気が出てくる。
(元の世界と比べて、やけに人口密度が高いと思っていたがまさかそういうこととは...)
〝カラさん、大丈夫ですか...?〟
「んぇ?あぁ大丈夫だよ」
頭を抑えるカラを見て、シフィは心配そうに見つめるが、そんなシフィの頭を撫でる事で、自身を落ち着かせていく。
「す、凄いね...ソロモンさん。あなた...あまりにも伝説すぎるよ...」
ソロモンによる逸話のオンパレードに、若干引き気味になるクゥロ達。
「まぁ...ソロモンは伝説的な扱いをされておる存在じゃからなぁ......。まさか実在してるとは思わなかったがの...更にいえば会ったことあるやつとも思わなかったが」
「あははごめんて...。あの時は仕方なかったんだ...」
「何かあったんですか?」
カラの素っ気ない質問に、ソロモンは突然表情を変え、口を噤む。どうやらあまり触れてほしくない様子だ。
「あ、あの...ごめ」
「いや...話すよ、大丈夫。これはボクが背負うべき物だから。これから世界を救うであろう君たちに是非聞いて欲しい話だ」
ソロモンにデリカシーのない質問だったと謝ろうとするも、その謝罪を止め、話すべきだと意を決してソロモンは言う。
「ほ、本当に大丈夫ですか...?」
「うん、大丈夫。当時のことを思い出して少し動揺しただけさ」
リノアが心配そうに聞くが、ソロモンは優しく微笑みながら答える。
「...君たちは聖戦と呼ばれる戦いを知っているかい?」
「聖戦...!!聞いたことあります!」
「確か、世界規模の戦いが起きて、名も無き英雄がそれを終わらせたという...」
カラ達はソロモンの口から出た聖戦について、知っている情報を話す。そんな中、クゥロは少し複雑そうな顔をする。
「...どうやら君はあの聖戦を見たみたいだね」
「クゥロ...様?」
そんなクゥロの表情を見て、即座にクゥロの心情を理解し言い当てる。やはりあれ程悲劇的な大戦を見た者と言うのは感情で分かるようで、クゥロはただ無言で頷く。
「そんな話...一言も......!!」
「...まさか、マビノギオンか?」
あの日以降、仲間にすら話してなかった事。リノア達はそんな話に驚くが、アヴァロンはクゥロが聖戦を知った方法を聞く。
「そう...。マビノギオンで母様の記憶を辿った時にあの聖戦を見た」
「母様...。外見からなんとなく分かっていたけど、やはり君はヴィルの子なんだね......」
ソロモンはまたも複雑な表情をする。クゥロはその表情を見て理解した。彼女は自身の母が死ぬことをわかっていたのだろうと。そして賢いクゥロは、同時に何かしらの理由で自身の母を助けられなかったのだと言うことを理解した。
「...クゥロ。君にとって悲しい話になるかもしれないが...心して聞いて欲しい。あの聖戦に何があったのか...」
数秒の沈黙の後、目を閉じ、覚悟を決めたクゥロはソロモンに頷く。その間カラ達は話を聞く為に無言だった。
「約9万年前にボクがとある未来を予知してから話そうか...」
────約9万年前。
「──そこの仕組みは少し違う。これをこう...あぁ......。ほらこうなった...」
「うげぇ...。もぉ...!この魔導式難しすぎるよぉ〜!!まだ私には早くない〜!?」
ソロモンの難解な式を教えられ、イライラしたせいで髪の毛がボサボサになるヴィルジナル。そんなヴィルジナルにソロモンはため息が出る
「ケッ。神聖化して記憶魔導になった癖に頭は悪ィまんまだナ...」
「私は悪くない!!ソロモンの魔導式が難しすぎるのが問題!」
「あまつさえ人のせいカ。だせぇナ」
ナックラヴィーはソロモンのせいだと激しく怒っているヴィルジナルを見て、冷徹な感想を言う。
「まぁまぁ、頭を使いすぎましたからね。今は休めましょう」
「まぁでも実際、ソロモンさんの魔導式は難しいよね...。僕も1発ではいけないかなぁ...」
そんな口喧嘩を見てか、リャナンシーとムシュフシュもやって来るが、2人ともヴィルジナルの肩を持つ。
「テメェら2人、コイツの味方かヨ...。甘やかしすぎなンじゃねぇノ?」
「そうかな?僕はそう思ってないけど...」
どうやらムシュフシュは無自覚の様子だが、ナックラヴィーは、こいつは善性の塊だから仕方ねぇと納得する。
問題はリャナンシーで、ナックラヴィーがリャナンシーの方向を向く。すると、リャナンシーはムッとした表情へ変わる。
「前回の勉強時間と比べて+30秒です。ちゃんと計算をして許容量を超えてるのを確認してますので、甘やかしではありません」
「5分に+30秒超えただけで休ませるなんテ行為、甘やかしじゃねぇなら何が甘やかしになンだヨ」
リャナンシーのヴィルジナルに対する親バカみたいな感情を冷たくあしらう。
「そういえばまたアイツ来れねぇのカ...。まぁアイツの課題は全然違ぇからシャーなしではあるガ...」
「まぁ...ローレライは仕方ないよ。歌声そのものが魔導だから」
「あの子は一人で黙々と特訓してますよ」
そうやって妖精王の皆と、平和な日常を過ごしていた時だった。ソロモンの魔流感知に微弱ながら異常が発生する。
「...この反応......。ちょっとごめん皆、集中させて」
「...何かあったみたい」
ソロモンのその発言に、妖精王達も少しだけ気を張る。何故ならあまり見ない緊迫した表情と声色だった為だ。
「...皆、話を聞いてくれ」
数分後、険しい表情で戻ってきたソロモンが少し言い淀みながら話し始める。かなりやばい状況だということを理解した妖精王達は、念の為と言うことで、ローレライを呼び、真剣な表情でソロモンの話を聞くことに。
「...今から2万年先までの間に、世界を揺るがすほどの大戦争が起きるかもしれない......」
「ほ、本当ですか!?」
「かなり近いね...」
ソロモンの魔流感知による予知を聞き、妖精王達はざわめく。
「これはボクの力で、どうにか止めなければならない...」
「そんなに大きな戦い、どうやって止めるればいいの...?」
「確かにそうです...。」
ローレライの最もな問いに、ソロモンは俯く。案がない訳では無い様だが、どうやらかなり迷っている様子。
「......一つだけ案がある」
するとソロモンはヴィルジナルの方を見る。ヴィルジナルは驚いた様子で左右見て、自身を指差す。
「ヴィル...。君主軸でなんだけど、君の力と妖精王4人で作った樹を世界に5本生やすという案...」
「せ、世界に...っ!?」
「...時間に関しては大丈夫、2万年もあるから。目的地は前にマークした魔粒子の発生が多い場所5つ。そこに超巨大な樹を置く」
妖精王達は驚愕する。そして同時にそんなことをして大丈夫なのだろうかと心配する。
「大丈夫...。ここまでのラインならまだ禁忌を犯してはない」
「それとヴィル。後で個人的な話があるからボクのところに来て欲しい」
「...ん?わかった......」
ソロモンがヴィルジナルを名指しに1体1の話があると言ってその場から離れる。何を話されるのか分からないヴィルジナルは、何かあったかと自身の行いを思い返す。
「お前、いつの間にやらかしたんダ?」
「そんな訳ありません!ヴィルジィはそんな事をする子じゃありませんから!」
ナックラヴィーが意地悪げにヴィルジナルに問うが、リャナンシーがその発言に怒り始める。
「わーってる、テメェらが幼なじみでお互いのことを心の底から信頼しきってるってのハ。茶化しに決まってんだロ...」
ため息混じりにそう言うナックラヴィーだが、リャナンシーはまだムッと怒っている。そんな様子を見て思わず笑ってしまうヴィルジナルとムシュフシュ。
「ヴィルジナルがそんな事するわけないじゃないか」
「そうだよ!ほんとおかしいなぁ...。じゃあソロモンの所行ってくるね!」
「行ってらっしゃい!」
そう言ってリャナンシー達はヴィルジナルに手を振る。皆に笑顔で手を振った後、小走りでソロモンの後を追う。
「ソロモン!それで、話って...?」
ソロモンに追いついたヴィルジナルは早速、何の話をするのかと切り出す。すると、ソロモンは少し物憂げな表情をする。
「...君の力で世界樹を5本ほど建てるという提案があるだろう?」
「うん!さっきそう言ってたね」
「これはもしもの話なんだけど...。予言の戦いがボクの想定以上の規模だった場合、キミを代償に世界を改変させられるよう、最後の世界樹をほぼキミの力で作り、その樹の周りに住み着くことはできる...かな......」
途端にその場に流れる静寂。複雑そうな表情のソロモンを見ながら、その言葉に思考を停止させる。
「...どういうことなの?」
「この世界樹を建てるという行為は、争いによる例外発生時の世界安定用。だからヴィルの力が必要なんだけど...。もしこの予言の戦いがボクの想定より酷い場合、世界樹が崩壊し、世界が不安定状態へと入って人類は滅亡。下手すればこの世界そのものが崩壊してしまうかもしれないんだ」
ソロモンの言っていることを100パーセント聞き取れたわけではない。だが、概要は理解していた。
ソロモンが予知した争いは世界が滅びる可能性を抱えていると言うこと。そしてそれを阻止出来るのはヴィルジナルのみということ。
「だからもしもボクの想定よりその戦争が酷かった場合、世界樹のどこでもいい。キミが入って世界改変を起こしてくれ...。記憶の力はそれが出来るほどに強大な力なんだ...」
ヴィルジナルの肩に手を置き、言葉ではまるで縋る思いで頼んではいるが、ソロモンの表情はまだ迷っている様子。やはり愛弟子の1人であるヴィルジナルを代償にするという行為は、心苦しい物なのだと察せられる。
「...そうしないと世界が救えないんでしょ?」
自身の肩に乗っているソロモンの手に触れ、優しく微笑みながらそう言う。その表情はソロモンには分かっていた。それは心からの覚悟の顔だった。
「ほ、本当に良いのか!?頼んでいる身ではあるが、ヴィル...キミは......」
「うん、大丈夫。皆と長い間別れるんだよね?分かってるよ。でも私一人で世界を救えるんでしょ?なら軽いものだよ」
ソロモンに触れる手が少し震えている。覚悟を決めてはいるが、親友達と永遠に別れると分かっているのだ。そう簡単に受け入れられるわけが無い。
「...本当に良いんだね」
「うん...。それでいいよ。だってもしもの時でしょ?」
「......あぁ...そうだ!あくまで、もしもだ!」
しかし、現実はそう甘くはなく、ソロモンの考えとは裏腹に、そのもしもの可能性が段々と大きくなって行ったのを目にしていた。
ヴィルジナル達がソロモンの予言にあった戦争の被害を抑えるためにと、世界樹を五本建てる為に各国を渡り歩いていた時。ソロモンは一人ただ悩んでいた。
「どうすれば...。どうすればもっと被害を抑えられるんだ...」
今までの自身の経験を元に対策法を考えるが、どれも予言の対策にはなり得ない。すると、頭の中にいるソレがソロモンに云う。
──我が力を使え。
「...ダメだ。お前の力はこの世界では禁忌。それにお前の力ではなくボク自身の力でこの世界を救う」
頭を抑え、汗を流しながら自身の魔導式をこれでもかと書き続け、必死に計算し続ける。
──お互い、同じく人類が好きだと言うのに、何故それほどまでに我が力を使わない。
「確かにお前は人類の味方をしてくれているが、世界がお前の存在を許してない。だからボクの中でしか存在できない。それにボクは今までも自分の力で解決してきた...。この予言も僕だけで出来るはずだ」
──その予言が、我々と同じ種による物だとしてもか?
ソロモンの中にいるソレがそう言うと、頭を動かしながら書き続けていたソロモンのペンが、ピタリと止まる。
「...は?何だそれ......。どういうことだよ」




