張り裂ける程の後悔
少しばかり遅れました...。色々立て込んでおりまして。あと、今年以降、もしくは12月中かもしれませんが、何も書けない可能性がございます。
個人的な事情で時間が全く取れないかもしれないのです。その場合大変申し訳ないのですが、無期限休載とさせていただきます。いせロリを追っている方々本当に申し訳ありません。もし私が生きていたならばこの作品は必ず終わらせますので安心してください。
いせロリ豆知識22
ティルナノーグの監獄に1人も囚人がいない理由は、国民全員が各妖精王に強い忠誠心を抱いているので、ほぼ違反者が存在しない為。
「あ、ありがとうございます」
カラは軽くお礼をする。
とある一件で、ティル・ナ・ノーグにある唯一の監獄へと案内してもらう事になったのだ。
「いえ大丈夫ですよ。これも妖精王様直々の命令ですから。それより俺が言うのもなんですが、本当に良いのですか?」
看守の妖精は、少し心配した様子でカラに尋ねるが、カラは首を縦に振る。
「はい。大丈夫です。カラがここに来たかっただけなので...」
大丈夫ならばと、看守の妖精は檻の鍵を開ける。どうやらここから先は一人で行かないといけない様子。ふぅ。と一息吐くと、真剣な表情で檻の中へと入っていく。
「...なんか、アヴァロンの城の地下に似てる......?」
壁に使われている素材や、その建物の特徴がルズシュバラに酷似していることに気づき、違和感を覚える。
「少し暗いけど、すぐ慣れるか...」
そう言ってから僅か数秒で暗闇に慣れるカラ。しかし当の本人は何も気にしておらず、そのまま下へ下へと階段を降りていく。
「...着いた」
最下層までたどり着いたカラは辺りを見渡し、何処に牢屋があるか探す。
「んー...。とりあえず歩いて探すか」
空間に鳴り響く足音。それはその一帯が音も何もない静かな空間であることを十二分に表している。
すると、魔法によって作られた障壁があるのを見つけ、その前で立ち止まる。
「こっちっぽいけど...どうやって入るんだ」
カラは困惑する。魔法障壁を壊す訳にもいかない。かと言ってこの先に行かない訳にもいかない。
少し悩んだ後、意を決し、これは仕方が無い事と魔法障壁に触れるが、普通に手が通る。
「あ、あれ?......通れるんかい...」
壊さずに済んだことに肩をなでおろし、そのまま前へと進んでいくと、辺りには使われていない牢屋が沢山あり、誰が見てもここが監獄であると分かる。
「もっと奥...なのかな?」
曲がり角でひょこっと顔を覗かせるが、そこにも目当ての物はなく、少し戸惑うカラ。どうやら想定よりも奥にある様子。
「奥...奥......って絶対あそこじゃん」
先程の障壁が異常なほど重ねられている扉を見つける。扉の前で一息つき、先程と同じ原理なら...。と一縷の願いの中で障壁に触れる。
「....お、いけた!」
扉の軋む音が辺りに鳴り響くと、それに呼応してか、何処かから鎖が動く音が聞こえる。恐らくカラに気づいたのだろう。カラもその音に気づき、鳴った方向へ小走りで向かう。
「はぁっ...。居た...っ」
やっとここに来た目的を見つけるカラ。何故ここに来たのか、それはムシュフシュと話す為である。
「...何故ここに来た。転生者カラよ」
「貴方に聞きたいことがあってね...」
首にのみ錠を付けられている様子のムシュフシュ。どうやら最奥に置かれているものの、監獄から出たりはしないだろうと判断されこうなったのだろう。
「聞きたいこと...?わざわざここまで来てなんだが、僕が言えることは無いに等しいよ」
日の妖精王とは程遠い活力のない声。かなり反省している様子が伺える。6000年間騙されていた。という事があったのだから無理もない。
「...ムシュフシュさん。貴方は過去に『嫉妬』以外の七大悪魔や魔王と会ったことありますか?」
ムシュフシュと同じ高さにまで腰を落とし、かなり真剣な表情で質問するとムシュフシュはカラの顔を見つめる。
「何故僕が悪魔たちと出会ったのを知ってるんだ...?僕ですら覚えていないことなのにどうして...」
「あの時の貴方の異様な怯え方です。アレを見てただ嫉妬の悪魔一人と出会った様には見えなかったので」
カラは推測する。おそらく6000年前の記憶が無いのはサタンによるものだと、それなら記憶消去ではなく封印の為、表面上には消えてるように見えても、本当は記憶が眠っているだけなのだと。
「少し、近づいてくれますか」
ムシュフシュにそう問うと、少し悩んでから鉄格子へと近づく。カラはムシュフシュの頭に触れ、目を閉じて集中する。
「な、何を...」
何が起きるのか分からず戸惑うムシュフシュ。しかし今集中するべきはムシュフシュ記憶にある封印を解くこと。そのため、一心不乱に記憶の封印場所を探す。
「何処に......」
カラの様子を見て何かを察したのか、何も言わずカラの行為を受け入れるムシュフシュ。
「あ、あった......。これを」
と、カラが少し力を入れると柔らかい光が指先を包み始め、その光を見てムシュフシュは静かに驚愕していると、突然記憶がなだれ込み始める。
それは今まで封印されていた6000年前の記憶。その情報に思わず頭を抑えるムシュフシュ。
「大丈夫ですか...?」
「あぁ、大丈夫だ。ただ記憶の激流に驚いただけさ...。それより、君のおかげで全ての記憶が戻ったよ」
心配するカラを見て、感謝するムシュフシュ。どうやら6000年前の出来事を今じっくりと思い返している様子。
「騙されていたとはいえ、本当に......申し訳なかったな...」
指で目頭を抑え、声を震わせながら妖精王たちに謝罪するムシュフシュ。そんなムシュフシュを見て、悲しんだカラはただ無言で肩に手をそっと置く。
数分後、充分に悲しみ終えたムシュフシュはカラにお礼をと、かなり深く頭を下げる。
「カラ君。僕は君に感謝してもしきれない...。本当にありがとう...」
「いえいえカラは......。私はただ悪魔たちの詳細を知りたかっただけですから...」
その言葉にムシュフシュはとある描写を想起する。その謙遜の態度、敵対していた相手にも慈悲を与えるその姿に。
「......君は、彼に似てる」
「彼...ですか?」
少し懐かしむような顔をするムシュフシュ。その表情を見たカラは質問をする。彼とは一体誰なのか、その疑問解くために
「ライニグ君だよ。前の魔王討伐し、光の勇者と呼ばれた伝説の男だ」
「ライニグ...。前々から話には聞いていて、アヴァロン達からも人柄は聞いたけど、どれほど強かったの?」
「どれほど強かった...か......」
自身の手を合わせ、ライニグと出会った時のことを思い返す。
「ライニグは僕たち妖精王が5人全員で挑んでも勝てるかどうか分からなかった。それ程にあの人は強かったよ」
「本当ですか...!?」
「あぁ、本当だよ」
そんな苦笑いをカラに向けるも、当時の事を懐古するムシュフシュの顔は最初に見た表情と比べ、明るくなっているように見える。
「そりゃあそれだけ強かったらライニグさん一人で魔王を倒せるなぁ...」
「...その伝説、僕は嘘だと思ってるよ」
「...えっ?」
辺りが静かになったように感じる程の衝撃的な意見。ライニグの実力を目の前で見ても尚、この噂が嘘ではと言う意見。そんなムシュフシュにカラはただただ驚いた表情で見つめる。
「...こんな話じゃなくて悪魔たちの話、だろ?」
「...そうでした。今はそっちでしたね......。切り替えます」
そう言うと、ムシュフシュはそのままのトーンで、自身が会った時の七大悪魔と魔王についてを話し始める。
「まず七大悪魔っていうのは、元々ソロモンによって封印された悪魔の中でも特筆して強い7人の悪魔を指す言葉なんだ」
「ソロモンによって封印...」
カラは驚愕する。それはソロモンが七大悪魔を封印したという話もだが、封印をしたという事はつまり、あの悪魔たちを単独で制覇したということと同意義。それほどまでにソロモンは強いのかと少しだけ恐怖する。
「そんなに怖がる必要は無いよ。あの人はとてつもなく優しいから...」
「...もしかして、ソロモンさんと知り合いなんですか?」
カラの質問に、少しばかり沈黙するムシュフシュ。すると、上を向いて独り言のように呟く。
「僕はソロモンさんの弟子...だけど......。同僚を裏切ってあんな事をしたのに、彼女の弟子と言えるのだろうか......」
ムシュフシュはソロモンの弟子。だが彼は王の身でありながら悪魔と手を組んだ。本来やってはいけない行為。そんな彼に対し、慎重に言葉を考えるのが正しいが、カラは違った。
おもむろにムシュフシュの手を握り始めるカラに驚き、困惑しながら見つめると、カラは真剣な表情でこう答える。
「言っていいと思います」
真っ直ぐな瞳でじっと見つめられながら、そんな返答にムシュフシュは顔を俯かせて聞き返す。
「国を、民を、師を...。友すらも裏切ってしまったとしても......?」
再び声を震わせるが、カラは手を握る力を少し強くし、変わらず真っ直ぐな瞳でこう答える。
「裏切ったとしても。じゃないとムシュフシュさんをこの監獄に入れた意味がないじゃないですか」
「監獄入れた意味...?」
ムシュフシュはカラに問う。監獄に入れられた際、理由も何も言われることもなく速攻で入れられたため、妖精王達の真意を知らないのだ。
「リャナンシーさんが言ってましたよ。一時的に王権を無くし、監獄の中で反省して欲しいと。つまり妖精王さん達は皆、ムシュフシュさんにまた戻ってきて欲しいんだと思います。リャナンシーさん、優しいですから」
国外追放や死刑等ではなく、監獄で反省というこの罰についてを自分なりに推測するカラ。
どれだけ妖精王達が優しいのか、どれだけこの5人が仲が良いのか、ムシュフシュに対する処罰を考えるとそれが良く分かるなぁと内心思い、笑みを浮かべる。
「そうか......」
「そう、だな...。あんな事をしたのに監獄で反省だなんて......。あまりにも...あまりにも優しすぎる...」
慈悲で溢れている自身の仲間に自分はなんてことをしていたのだという後悔や、こんな自分に慈悲をくれた仲間への感謝...。そんな様々な感情が要り混ざり、限界だった物が遂に溢れ出る。
そんな咽び泣くムシュフシュの傍で、カラは優しく微笑み、鉄格子にもたれ掛かり、ただ無言で座り続ける。彼の全ての感情が吐き出されるその時まで。
「本当に後悔しかないよ...」
周りに恵まれてるよ。君は
「文字君...。あまりそんな声色で言わないでくれないかい?また泣いてしまう」
はは、申し訳ない。ただ本当に恵まれているのが羨ましくてね
「...君はどうなんだ?」
さぁ...どうなんだろうね。恵まれているのかな




