記憶を奏でし者
何だかんだでティル・ナ・ノーグ編も段々と終わりへと向かっております。今回のティル・ナ・ノーグ編はクゥロ主体の話でしたね〜。まさかの世界樹が妖精王達(主にヴィルジナル)によって作られた物だったり、新たなに超越者という概念が現れたり...。話の展開が少しづつ進んでる感じがします。
いせロリ豆知識21
クゥロによって開放されたマビノギオンは、ティル・ナ・ノーグの天空で永遠に存在しているが、その姿ははっきりとしてる訳ではなく、半透明で存在している
「...母様......」
クゥロも妖精王たちと同じように胸に穴が空いたような感覚に陥る。自分にとってそれは初めてのこと。しかし何故か寂しくは感じなかった。自分の中に母が存在しているようなそんな不思議な感覚を覚える。
──実際アナタの中に入るからね〜
〈...え?〉
──うふふ〜。驚いた?
フリーズする。先程まで見ていた光景は?あれ?もう消えたんじゃなかったっけ...?様々な思考が脳を巡り廻る。
〈な、なんで私の中にいるの!?だって母様はとっくの前に......!!〉
──どうやら、アナタと会った時に記憶体としてアナタの記憶に定着しちゃったみたいねぇ...。
絶句である。そんなことありえるのか...と、クゥロは思わず頭を抱える。
──基本は喋りかけたりはしないわ。クゥロちゃんが話しかけてくれた時だけ喋るからねっ!
〈そんなこと言われても...〉
その口調から、想像するだけで自分の母がウインクしている様子が思い浮かんできて、ただひたすらに困惑する。
──...でも、もう私という存在はもうこの世には居ないから、私の力自体は全てアナタに渡ってるわ。
〈そうなんだ...〉
──だから、私のことはアナタを助けるアドバイザー的な存在だと思っててね!!
(このテンションは是非とも頼ってくれと言わんばかりの声色...。)
少しばかりめんどくさいテンションになっているヴィルジナルを無視し、クゥロは妖精王たちと話し始める。
「とりあえず...ここを離れますか......」
そう提案すると妖精王達も頷き、ぞろぞろとその場から離れていく中、リャナンシーだけがその場に残る。
「...リャナンシー様?」
気になったリノアは問いかけるが、無言でカラに止められる。
「少しの間、あのままにさせてあげよう」
皆、神妙な面持ちでいるせいか、少しばかりどんよりとした空気が辺りに漂う。そんな中、ただ一人クゥロは気まずいの一心であった。
〈皆、母様が消えたから重い空気になってるのに、私の中にいるせいでめっちゃ気まずいんですけど......〉
──それはごめんって...。私だって消えた後に気づいたんだから...
〈いや、消える前に気づいて欲しかったんだけど...。そうしたらこんな気まずくなかったんだけど〉
──...てへっ
(こいつ本当に私の母か...?)
あまりの天然さや自由さに、ヴィルジナルを本当の親かと疑うクゥロ。
「カラ、皆を集めて。後で話したいことがある」
「...え?うん、分かった......」
(なんの用だろ...?)
クゥロに呼ばれたカラは不思議そうに思いながらも、そのまま遠くへ去っていくクゥロを見つめる。
「皆呼んだけど...どうしたの?」
「一体なんでしょう...」
〝わ、分からないです...〟
数分後、カラはクゥロの言った通り旅の仲間全員を呼んで集まったが、皆なぜ集まったのか疑問を抱いている様子。
「皆には伝えとかなきゃって思って...。実は────」
そうしてクゥロは自身の心の中にヴィルジナルが居ること、自分が完全に記憶魔法を受け継いだことを事細かに全て話した。
「...な、なるほど......。神聖魔法を会得し、クゥロの中に記憶の妖精王が顕現してしまったと...」
「先程消えたばかりの妖精王がまさかそんな方法で現れるとはのぅ...」
先程消えたはずなのに、もうクゥロの中に現れているという現状に呆れ、ため息を吐くアヴァロン。
「でもこの事妖精王さんたちに話せるの?無理じゃない?」
〝あの感じじゃ無理...ですよね......〟
ルヴラとシフィがそう危惧するのも無理はない。
何故なら妖精王達はヴィルジナルを失ったものとして扱っており、すぐにクゥロの中に戻りましたなどと言ったらどうなるか分からないからである。
「んー...妖精王達ってそこまで幼稚かな...。クゥロの中に生きてるってだけで嬉しいんじゃないかな?」
「うむ、妾はカラ側の意見に近いのぅ。妖精王達は妾より生きておる存在じゃ。ナックラヴィーは怒るやもしれぬが、他2人はそんなことで怒る気はせんがな」
カラとアヴァロンの2人はそこまで心は狭くないだろうと異を唱える。4人は悩んでいると、クゥロが手を挙げ、とある提案をする。
「マビノギオンに残さない?それで見つけた時に生きてる事を知れたら、良いと思うんだけど...どう?」
「...なるほど!それなら両方の不安を防げますね!」
「けど、それで気づくかな...」
クゥロが両意見の間を取ってくれたが、その提案をしたことによって、新たな懸念点が現れる。
「それなら大丈夫だと思う。妖精王達なら気づく。特にリャナンシーはそうだと思う」
「彼奴はヴィルジナルと旧知の仲のようだしのぅ。そうなると、毎日のように追悼すると思えるのも無理ないわな」
クゥロとアヴァロンはリャナンシーなら...と、この案の懸念点を拭えることを説明する。
「人だよりにはなりますけど...。リャナンシー様ならありえそうですね...」
「まぁ、なんとかなるでしょー...」
〝そうですね...!!〟
と、満場一致し、クゥロとカラ以外は妖精王達の方へと向かうことに。
「そういえばクゥロに話さなきゃならないことがあったの忘れてたよ」
「ん...何?」
「実はカラの意識がない時にこんなことがあってね...」
そう言うと、カラは自身が封印されていた時にヴィルジナルに会ったことを話すと、クゥロはキョトンとした目でカラを見つめた後、質問し始める。
「...つまり、この国に入って間もない時くらいに母様を見たと?」
「そうだね...。時期的にはそんな感じかも」
ここでクゥロはとある疑問を抱く。自分が母様と話せるのは分かる。魔法が同系統な上、自分の母だ。血筋的に考えたら全然有りうる。しかしカラがヴィルジナルを見れたのは何故なのか。
「...どうして、カラに?」
「それがカラにも謎で...もしかしたらその時から新たな段階へと進んでたのかなって思ったんだよね......アヴァロンも言ってた、適応...変換?って奴に」
カラ自身も疑問に思いながら自身の手を見つめる。周りが着けた仮の名はあれど、未だ謎のカラ本来の力。元から限界だったものを超えてきたのか、或いは...。そんな疑問を持ちつつ、2人はマビノギオンへと入っていく。
「というか今思ったけど、マビノギオンに刻むって言ったってどこに刻むの?道だったり部屋だったりはあるけど、基本的に何も無いし...」
「そりゃあ母様が最後にいた場所にする...。いや、あそこにするよ。巨大な氷塊がある所」
クゥロは行き先を決めると、カラは何も言わずに頷き、そのままクゥロについて行き、巨大な氷塊の前まで辿り着く。
「やっぱいつ見てもすごいなぁ...。こんなのを妖精王達で作ってたの凄いな...」
カラは周りを見回し感嘆していると、そそくさとマビノギオンにヴィルジナルを刻むための儀式を開始するためにクゥロは魔法を発動させると、部屋はクゥロの魔法に共鳴するように淡く光り出す。
(すげぇ...やっぱり血筋なのか......。この部屋がクゥロに呼応してる...)
「...よし。これで良いかな」
カラが光る部屋を見回していると、氷塊の刻印は終わった様子。
「ん...もう終わったのか」
「刻むだけだからね。そんなに時間はかからないよ」
「じゃあ皆のところに帰ろっか」
クゥロの仕事が終わり、優しい笑みでカラ手を伸ばす。カラはクゥロの手を取り、隣で歩き始める。
「そういえばクゥロがカラの事を起こした時、キスしたってルヴラから聞いたけどほんと?」
「なっ...!?あ、あれは仕方の無いことなの...。ああしないとカラが起きてくれなかったし...」
クゥロはカラを起こした時にした行為を質問され、分かりやすく顔を赤くし動揺する。
「うん、わかってる。ただその事実確認をしたかっただけなんだ。ありがとうクゥロ。助けてくれて」
クゥロはカラの笑顔を見て、思わず胸を締め付けられるような感覚を抱き
「ほんと、好きだな...」
と、聞こえない位の小さな声で言うと、カラは少し手を強く握る。そんな突然のカラの行為にクゥロは驚き、カラを困惑した表情で見つめる。
「...知ってる。だって前に聞いたもんねっ?」
そうやっていたずらに笑うカラを見て、再び胸が締め付けられる感覚になる。カラに聞こえていたという恥ずかしさと、覚えていてくれたという嬉しさに襲われ、顔が更に赤くなっていく。
「ほら、もう出口だよクゥロ」
「......ん」
2人がマビノギオンから出ると、リノアたちが出口で待っており、皆、2人の側へと寄ってくる。
「カラ、クゥロおかえりー!」
「あ!!手繋いでます!!!!クゥロ様だけズルい!!わたくしもカラ様も手を繋ぎたいです!!!」
目敏いリノアは2人が手をつなぎながら帰ってきたのを見て、大慌てでカラの隣へと近寄り手を握る。
「えー!なら僕も!」
〝シフィも...!!〟
「ほれお主ら、カラが困っておるぞ?その辺にしなさいな」
アヴァロンがカラを奪い合う光景を見て笑いながら注意するが、聞いていない。どうしてもカラの手を握りたい様子の3人にもみくちゃにされる。
「カラの手は2つしかないから取り合わないで!」
「クゥロ様はもう十分握りましたよね!?離してくださいませんか!!」
カラの左手を握りながらリノアはクゥロに言うと、シフィとルヴラもそうだそうだと頷く。いくら相手が自分が仕える姫だったとしてもここは引けない様子。
「......やだ」
そんなリノアにクゥロは赤面しながらも抵抗する姿を見せる。そんな姿のクゥロを見たアヴァロンは少しばかり驚く。
「なんと、女子同士の面白い戦いじゃのぅ」
口元を隠し、くすくすと笑うアヴァロン。それほどまでに4人の喧嘩が面白いのだろうか。
「...あの。そろそろどいてくれないとカラ動け」
「カラは誰を選ぶの!?」
カラが戸惑いながら4人に言うと、それを遮るように4人が一斉に問い詰める。各々の口調は違えど、全員同じことをカラに聞いていた。
「た、助けて...アヴァロン......」
「ここは妾に縋るのでは無く、自らの行動で道を切り開いて行くものじゃよ」
アヴァロンに助けを求めるが、優しめに断り、その場から離れていく。
「さぁ、選んでカラ!!」
再び一斉に選択を迫られるカラ。必死に悩み、やっとの思いで思いついた案は...。
クゥロは右手を握ったままにし、ルヴラをおんぶ、シフィを抱っこ、リノアに左腕を抱かせるという結果に至った。
「...レッツゴー!!」
〝これ...窮屈じゃないですか......?〟
「カラ様〜...♡」
「なんか...ごめんね......」
ただでさえ4人に囲まれて必死だと言うのに、その4人が別々の方向で、尚且つ別の事を一斉に喋ったせいで何も聞き取れなかったカラであった。
クゥロ、どうだった?この国は
「凄く良かったよ。私の出生も知れたし、それに母様にも会えたから」
そっか...。それは良かったよ
「...ん......?あれ...?そういえば聖戦中に母様が亡くなっていて、その直前に私が生まれたと言うことは、少なくとも私は7万2000年前の段階で生まれたってことだよね...。その間私は一体......?」
やっぱりクゥロは鋭いね...。でもその話を今しても何も分からないよ。まだ完全に記憶が戻ってないからね
「...それって......」




