憶空の呼応、醒ます導
1ヶ月も遅れて大変申し訳ないです...!!
色々重なり合った結果、こんなに遅れてしまいました...!!その代わりいつもより少し長めに書きましたので楽しんでお読み下さい!!
いせロリ豆知識⑳
この世界の総人口は圧倒的に多く、173億人いる。その中で魔法適性者は84億人おり、ロキはその中の6700万人を13年連続で殺戮している。
そのため、とんでもない勢いで人口が減っており、各国の王はかなり困っている。
七大悪魔との戦いから数日が経過したある日、妖精王達から召集があり、カラ達はマビノギオンに集まる。
「クゥロさんが記憶の力に目覚めたお陰でこのマビノギオンという本当の神樹を思い出すことが出来ました。改めてありがとうございました...」
「そんなお礼を言われるなんて...。私はただカラを救いたかった一心だったので...」
「それでもありがとう...」
クゥロはリャナンシーに感謝され謙遜するが、ローレライはクゥロの手を握り、笑顔で感謝する。
どうやら、マビノギオンが現れて以降、この国にローレライの認識改変魔法は必要なくなったようで、ローレライも妖精王としての仕事をし始めるようになったらしい。
「それにしてモ、常に歌ってたお前が歌ってないのも少し違和感があるナ」
「仕方ないよ〜...元はムシュフシュが提案したことだったからね〜」
「という事はその時点でこの国は停滞してたのか...」
ムシュフシュが話題に出て、少しばかり気まずい雰囲気が流れる。カラはふと気になったことを妖精王達に質問する。
「そういえば、そのムシュフシュさんって今どこにいるんです?」
「あの問題がありましたので今は謹慎の身です。一時的にですが王権を剥奪し、監獄で反省させております」
(はぇ〜...。複数の王って意見がぶつかって色々面倒くさそうだなと思ったけど、やっぱりメリットもあるんだなぁ...。それにやっぱ長年やってるからか、常に安定してる気がする...。複数の王も悪くないんだな)
カラはリャナンシーからの話を聞き、ティル・ナ・ノーグの良いところを見つける。
「それで、どうしてわたくし達はここに呼ばれたのですか?」
リノアは妖精王達に何故マビノギオンに呼んだのかを聞くと、その立案者だと言わんばかりに手を挙げたリャナンシーが前に出て話し出す。
「このマビノギオンが顕現したお陰で、私たちは大半の記憶を取り戻しました。ですがまだモヤがかかっている部分があるのです。何か忘れているような...そんな違和感を」
「だから氷魔法のガキにその穴の空いた記憶を戻すよう提案があったんだヨ」
2人がそんな話をしている時、ローレライは三角座りでボーッとしている。あの人にも話したのだろうか...なんて、リノアたちは思いながら話を聞く。
「ですので、クゥロさんに頼みたいのです。私たちの記憶を完全に戻してはくれないですか...」
リャナンシーは頭を深く下げてお願いする。それを見たカラ達は、突然の行動に困惑し、クゥロに確認を取る。
「どうする?クゥロ」
「そんなの、お願いされなくたってやるつもりだったよ」
クゥロはそう笑顔で応えると、妖精王の3人は嬉しそうに各々反応をする。
「まぁクゥロ様ならそうですよね!」
「これまでも人のためにずっと動いてきたからね...」
「それじゃあ、早速マビノギオンを稼働するね」
待ってる時間などないと、クゥロはそそくさとマビノギオンを動かし出す。クゥロの魔法発動に呼応するように、内部の光が強まっていく。
〝わ!す、凄いです!!〟
シフィが周りの光景に興奮し、それをリノアが避けようとした時、思わずカラの足を踏んでしまう。
「ったァ!?」
「あ!ご、ごめんなさいカラ様!!!」
その場で悶えるカラと、カラを踏んでしまったと言う罪悪感で慌てまくるリノア。
「だ、大丈夫...。リノアのせいではないから...」
「ほ、本当に申し訳ないです...っ!!」
何回も頭を下げるリノアだが、カラはわざとではないからとリノアを安心させる。
「って...ここは......?」
カラ達の場所に映された景色はティル・ナ・ノーグではない氷によって包まれた別の場所だった。
〝...あれ?妖精王の皆さんは......?〟
後ろを振り向くといつの間にか妖精王が消えている。まるで神隠しにでもあったかのように。
「...とりあえず、探しに行く?」
「あぁ、そうするとしようかのぅ」
そうして記憶によって展開された領域を歩く事約10分。困っている様子のナックラヴィーと傍にいるローレライを見つける。
「あ!あそこにナックラヴィーさん達が居ますよ!」
「ン...?ンダ。テメェらカ...」
カラ達に手を振るローレライとほんのり落胆の表情を見せるナックラヴィー。そんな彼の姿を見て気になったクゥロは質問をする。
「一体どうしたんです?」
するとナックラヴィーは、言い淀みながら話し始める。
「...ずっとこの氷の物体が俺様に着いてくんだヨ。こいつに言葉通じねぇし全力で逃げてもすぐに追いつかれるシ...。それで困ってンだワ」
「困ってるところ申し訳ないけど、コレ、ナックラヴィーさんの記憶の欠片だよ」
「これが記憶の欠片なのね〜...」
クゥロはナックラヴィーの傍に漂っている氷の物体を見ながら言う。
「これガ俺様の記憶の欠片...?ンだヨ、なら逃げなくてよかったじゃねぇカ」
「これに触れたら記憶が戻るけど、その際に頭痛が生じると思うから、そこだけは注意してね」
「頭痛カ...。まァ、消えた記憶を戻すって言ったからナ。仕方ねぇカ」
そう言うと、ナックラヴィーは目の前に記憶の欠片に躊躇なく触れ、脳内で蓋されていた何かが開放される。
「ッ...グ!!」
クゥロに言われた通り激しい頭痛が生じ、ナックラヴィーは必死に頭を抑える。すると、ナックラヴィーの脳内に失った記憶が流れ始める。
──最初の1本目ー!
──遂に着いたナ。
──んふふっ。でもまだまだ始まったばかりだよっ!張り切ってこ!ね!ムシュフシュ!
あくまでも断片。話した相手の姿に靄がかかっており、更には誰なのかも分からない。しかし、何故か知っている気がする。そんな変な感覚に陥るナックラヴィー。
「──この記憶ハ...」
「ナックラヴィーどうしたの......?」
「...いヤ、これハ......何デ...」
涙が突如出てくるナックラヴィーを心配そうに見つめるローレライ。だがナックラヴィーは困惑している様子で、どういう状況か把握できない。すると小さな声でとある事を言い出す。
「ヴィル...ジナル......?」
ナックラヴィーのその一言で、突然ローレライの目の前に記憶の欠片が出現する。ローレライはナックラヴィーに続いて記憶の欠片に触れると、ローレライの脳内に断片的な記憶が流れ始める。
──っよし...2本目だぁ...!!
──...ローレライ。私ね、前からずっと思ってたんだ。貴方たちと世界を旅できてよかったって...。だって、こんな広い世界、一人で旅するの寂しいでしょ...?
──え?ほんと!?ローレライも嬉しいの!?っはは!良かった!やっぱ私たち仲良しだねっ!
突如脳内に流れ始める記憶に頭を抑え、戸惑いながらも見続ける。そしてその記憶は段々と断片的ではなくなっていき、やがて完全な記憶へと戻り始め、ローレライの目頭から涙が滲み出る。
「ヴィルジナル......そうだヴィルジナル!」
そう言うと、ローレライはいきなり走り出す。突然の行動にカラ達は驚くが、何かあるのだろうとローレライの後を追う事に。
「一体どこへ向かってるのでしょう...?」
「さぁ、それは妾達にも分からぬ。じゃが、おそらく着いて行った方が良いじゃろうな」
そんな話をしていると、いつの間にかローレライの目的地に着いたようで、そこにはリャナンシーが居た。
「ローレライ...!どこに行っていたのですか?」
「やっと...やっと思い出したよ...!!」
嬉々としてリャナンシーに話すローレライ。その表情を見て、リャナンシーも嬉しそうにする。
「そうですか...!良かったです!それで何だったのです?」
「傍にある氷に触れたら分かるから!」
ローレライにそう言われたリャナンシーは、不思議そうに首を傾げる。
「氷...ですか?そのようなもの私の周りに氷は出現していないのですが...」
「えっ...?」
(タイムラグ...?いやそんなはずは無い。ローレライもナックラヴィーもほぼ同時に氷が出現していた。だとしたら、リャナンシーだけ出現しないのは一体...)
カラは顎に手を当てて真剣に考えるが、何が原因なのか検討がつかない様子。すると、徐ろにクゥロが前に出てくる。
「ナックラヴィーさん、ローレライさん。前に出てくれないですか?私が試してみます」
クゥロの話を聞き、何か思いついたのだろうと2人は言うことを聞き、クゥロの前へと近づく。
「先程の記憶の欠片を前に出してください」
2人は何をするのか分からず、目を合わせた後、記憶の欠片を前に出す。
「...これで良いカ?」
「一体何を...?」
クゥロの言動を不思議に思っていると、魔法を発動し始めるクゥロ。そしてそれに呼応するかのようにマビノギオンが大きく揺れ始める。
「な、なんだこの揺れ!?」
〝あ!見てください!!記憶の欠片が!!〟
シフィが指を差すした方向を見ると、ナックラヴィーとローレライの記憶の欠片が重なろうとしている様子が見える。
「な、何が起きるの...?」
「分からん...。神聖魔法は妾もあまり見た事がないもんでな...。しかし、とんでもないことが起きることは間違いないじゃろう。何しろ神聖魔法や、それらを扱う超越者達は想像を絶する力の持ち主たちじゃからな...」
「超越者...」
どこかで聞いたあまり聞き馴染みのない単語。しかし、その話は今すべきではない。今重要なのは、記憶の欠片が重なる事により発生する何かを見る事。
マビノギオンの揺れが更に激しくなり、記憶の欠片が重なった瞬間、眩い光がカラ達を包み込む。その眩しさに目を伏せる一同。
「な、何が起きたンダ...」
〝眩しすぎて目が...〟
光が消えた後も、その眩しさに目がやられている妖精王やカラ達。すると、辺り一帯の温度が急激に下がったような感覚に陥る。
「...急に温度が......」
「それは私が現れたから...だと思うよ」
「その声...!!」
聞き馴染みのある声が聞こえる。その声に皆は目を開けざるを得なくなり、ゆっくりと目を開けると、そこには紺の髪色をした美しい妖精が現れる。
「...久しぶり皆」
「ヴィル...ジナル!!!」
ヴィルジナルが目を開け優しく笑うと、妖精王達は涙ながらにすぐさまヴィルジナルの傍へと寄る。
「ごめん、ごめんよぉ....。大事な友達なのに忘れてて.....っ!!」
「ごめん...。誰にも言わずに消えて」
膝から崩れ落ち、号泣するローレライと、今にも泣きそうになるほど涙目になるヴィルジナル。
「......遅せェ...」
「...ごめん......。また会えるのがこんなに遅くなって...」
素っ気ないような態度を取るが、その声は少し震えていた。それを察したヴィルジナルが涙ながらに微笑み、そう答える。
「...ヴィル......」
僅かに絞り出したその小さな声、その声からわかるように、この中で一番彼女を待っていたのはリャナンシーだった。
様々な感情が交錯しているような表情のまま涙を流すその姿は、まるで現実が受け入れられない様に見える。
「リャナ......本当にごめん...。コレは誰にもこの世界に残る人には伝えられなかったの...」
「ううん...大丈夫......っ。私は......ただ、貴女を忘れていたという事だけが悲しくて......」
ヴィルジナルは涙するリャナンシーを見て微笑むと、ゆっくりと近づいていき、涙を拭う。
「変わらないね。泣き虫で、私の後ろを着いてくる......。私の知ってるリャナ...」
「だ、だってっ......」
(どうしても涙が溢れて止まらない。ヴィルの話を聞きたいのに。ヴィルと話がしたいのに。今だけは止まれ、止まれ。そう思ってもヴィルを見る度に溢れ出る。無理だ...。)
目の前で泣きじゃくるリャナンシーを見て、少し困りながらも頭を撫でる。
「...仕方ねェ。6174年失ってたんダ。感情爆発しちまうのも無理ねェ......」
邪魔しないよう少し遠くへと行き、目を閉じるナックラヴィー。まるで、今の状況を静かに楽しむかのように。
「こんな所で泣いてちゃ、妖精王やって行けないよ...ほんとに...」
いつまでも泣き止まないリャナンシーを見て、困り笑いが出るヴィルジナル。すると、一息置いて、真剣な声色で
「......ねぇ。皆、聞いて欲しい」
と伝える。その声を聞いた瞬間。辺り一帯に緊張感が漂う。ナックラヴィーは覚悟を決め、ローレライは不安げな顔に、リャナンシーは話を聞く為か、涙がピタリと止まる。
「私ね......もうその6000年前に死んでるの」
リャナンシー達はヴィルジナルのその一言を聞き、言葉を失う。しかしナックラヴィーは何となく察していたのか、腕を組み、上を向く。
「え、えっ...?ヴィル、もう死んで...る......の...?」
「...うん。この今の私は記憶の欠片が合わさったことで発現した、記憶の残響なの。実際の私はもうこの世に存在しない...」
皆に動揺と焦りの感情が現れ、リャナンシーの目に再び涙が溢れ出る。
「や、やだ......ヤダよ...。私まだヴィルと別れたくない...!!」
「死を超えることは禁忌ダ。理を破ることになるからナ...。今更どうすることも出来ン。諦めロ」
ナックラヴィーはリャナンシーを諭すように優しく言うが、リャナンシーは首を横に振り否定する。
「それでも嫌だ!!どうしてそんな酷いこと」
「それが現実なンだヨ!!分かレ!!テメェ『循環』の妖精王なンだロ!!!」
そんなリャナンシーに対し怒号を放つナックラヴィー。しかし事実その通りであり、もう止めることの出来ない出来事。
更にリャナンシーはナックラヴィーの手が震えていることに気づき、静かになる。やはり彼も別れるのが辛いのだと言うことを理解したからだ。
「...本当にごめんね......。私が不甲斐ないばかりに」
涙が段々と止まらなくなってきたヴィルジナルは、声を震わせながら妖精王達に謝罪をする。
「私はさ、記憶の妖精王だからさ...。皆のことを記憶しなきゃならないのに、死んじゃったせいでもう記憶できないって思うと...。寂しくて...」
今度はヴィルジナルが別れを惜しむかのように、声が震える。
「でも、私は未来を託して、それが成功したから...。だから、もう悔いないよ...っ。だから...だから.........」
(何も言葉が浮かばない。記憶の残響なのに、涙が止まらない。今の私は記憶そのものなのに。覚悟してたのに...離れたくない...。)
そんな感情がヴィルジナルを渦巻く。しかし、体が少しずつ砕け、塵となり始める。もう時間が無いと悟ったヴィルジナルは涙ながらに、順繰りに伝え始める。
「......ナックラヴィー。アナタは基本的に皆が意見した時のもしもを出してくれてたよね...。ここが不備があるのではとか...。アレのおかげでいつも助かってたよ......」
「......そうかヨ」
声が震える。目を閉じないと何かが溢れてきそうで、そっちを向くと決壊しそうな、そんな表情で俯く。
「ローレライ...。アナタはこの中で最年少だけど、アナタのおかげでマビノギオンは顕現できた...。本当にありがとね。アナタのおかげでマビノギオンは最後まで守られたんだよ...」
「ヴィルジナルにそう言って貰えるの...1番嬉しい......。出会う前から...ずっと憧れだから......」
その優しい声と、優しく撫でられている感覚のせいで涙が溢れだして止まらなくなるローレライ。
「...リャナ。本当にごめんね......。やっと再会できたのにもう帰らなきゃならなくなっちゃった...」
「やっぱり別れるの嫌だ...」
少しの沈黙の後、リャナンシーはそう呟く。それを聞いたナックラヴィーは止めようとするが言い留まる。何故なら、自分も心のどこかでそう思っているからだ。
「でも...。別れなきゃ、進めないもんね......?」
涙に塗れたその顔のまま笑顔になるリャナンシーを見て、ヴィルジナルも涙が出始める。
「...うん......そうだね...。アナタの成長のためにも...私はもう離れなきゃね......」
リャナンシーの頬に触れ、優しく撫でる。まるで愛しい妹を見るようなそんな眼差しで。
「絶対...もう、忘れないから......!!」
リャナンシーも涙ながらにヴィルジナルの手を握る。最後の最後まで感じる為に。
「......うん。私も一生...忘れないから────」
淡い輝きを放つ氷の結晶はそのまま空気中へと霧散していく。記憶の涙も散っていく。消えた。幼なじみが。そんな喪失感がサイクルし、感情のままに嗚咽する。ローレライとリャナンシーの2人がヴィルジナルとの別れを心の底から惜しむ声がその空間に響く。
「......じゃあナ...」
ナックラヴィーも彼女を偲ぶが、その声は寂しげで虚しい。そんな声色をしていた気がした。
味方サイドのネームドキャラが死ぬor死んでいた描写があるのはこれが初めて...ですかね。
ヴィルジナル自体は最初の方から元々死んでいたフラグがありましたが、最後で明らかにしました。
もうそろそろでティル・ナ・ノーグ編も終わるので、良ければ読んでくださると幸いです。




