一矢報いて
はい。何だかんだ80話ですね。未だ趣味の範囲ですが、それでも読み続けてくださっている方とても感謝しております。是非今後ともいせロリをどうかよろしくお願いいたします。
いせロリ豆知識⑱
転生者が特別な力を持っているのは当たり前。だが、この世界では転生者が来るのは大体600年に一度。
「...どこかであの姿を見たことがあります......」
「...あァ。俺様もダ。なんでか既視感があル」
クゥロの姿を見た妖精王達は、謎の既視感に苛まれ、戸惑っている。しかしそんな中ローレライは、ただひたすらにクゥロを見つめているのだった。
「いけー!クゥロー!!!」
「頑張ってください!!」
ゆっくりと下りながら浮遊しているクゥロに、ひたすらに応援するリノアとルヴラ。しかし、ムシュフシュは自身の計画が台無しとなった事実に限界を迎え、魔力を全放出させる。
「ッダァァァァアア!!!!」
「ッ...!?」
「な、なんだこの魔力...!!こいつこんなに魔力あったカ!?」
ナックラヴィーは驚愕する。だが、やはりこれまでのムシュフシュと明らかに違うのは、純粋な光魔法では無いということ。
「...やっぱりアレ、別人かな?」
「どうでしょう...。もしかしたら外部からの干渉により混ざってしまっている可能性もありますよ...」
妖精王はとっくに理解している。ムシュフシュが今までのムシュフシュとは違う全くの別人だという事を。そしてそれは記憶を全て見たクゥロも分かっていた。
「ムシュフシュ。お前は誰かに洗脳されたんだろう?6174年前、ここで」
「...はぁ?僕が洗脳?される訳ないだろう!僕は太陽そのものだぞ!」
「天空にあるマビノギの本体、マビノギオンは見ていた。この国が誕生してから9万年の歴史を」
空のマビノギを指を差しながら話す。するとクゥロは超巨大な魔法陣を展開し、辺り一帯を記憶の鏡だらけの領域にする。
「こ、これは一体?」
「...ティル・ナ・ノーグの記憶を遡ってンのカ」
「大体この辺かな...」
先程までの移り変わる景色がピタリと止まり、とある時期の記憶を映し出す。
「ここのムシュフシュ視点を見よう」
そう言うと、クゥロは視点移動させ、ムシュフシュの所へと変える。
「ふざけ────!!」
ムシュフシュがクゥロを止めようとすると手と下半身が凍っていることに気づく。
「そう来ると思って下半身と腕を凍らせてもらったよ。あなたが行動した約6000年の記憶があるんだからあなたの考えてることなんて理解してるに決まってる。ちなみにその状態で魔法を放とうとしても無駄だよ。私の氷は特殊な氷だからあなたに壊すことは出来ない」
「...クッ!!」
「とりあえず、6174年前のあなたを追おうか」
そうして、記憶の鏡はムシュフシュ視点に変わり、皆、その記憶を見始める。だが皆の想像と違い、その姿は自身の部族のパトロールをしているだけである。
「ふむ...。今のところ、ただ実務をしているだけの妖精王にしか見えんな」
「もう少し見ていましょう...。もしかすると何かしら起きるかもしれません」
すると、自身の姿を光へと変形させ、障壁をすり抜け始める。
「ティル・ナ・ノーグの外に出たように見えますけど...」
「おそらくその通りじゃろうな。此奴は国外へ出た。何らかの目的の為に」
しかし、ムシュフシュはティル・ナ・ノーグの外へと出た。マビノギの記憶ならば、国の記憶はあるが、国外までも記憶できるとは思えない。そう思ったリノアはクゥロに質問をする。
「外にはマビノギは無いですが...記憶出来るのですか?」
「大丈夫。私の母様はこの世界にある全ての世界樹を作った人だから」
クゥロがリノアの質問にそう答えると、3人は驚愕する。衝撃の事実である。
「え...え?全ての世界樹を作った...って......」
「つまりは界憶の大樹も作ったということか!?」
かなり動揺しながら聞くと、クゥロは頷く。3人は驚きの感情しか湧かず、まともに話が入ってこない模様。
「よし、いけた...。これで国外でもいけるようになったよ」
「え、国外の記憶見れるようになったの?」
「うん。だからムシュフシュの記憶をちゃんと見ることが出来る」
3人は困惑しており、脳が理解を拒んでいるのが分かる。それを見かねたクゥロはもう一度説明をする。
「私は今、ティル・ナ・ノーグだけじゃなくて、外の世界の記憶も見れるようになったの。まぁでもティル・ナ・ノーグの周辺のみだけどね」
「それでも凄いけども...」
妖精王達もクゥロの成長速度の速さに驚いている様子。
「もういい!!記憶を遡るのは!!」
すると、ムシュフシュは大声でそう言い出す。皆、突然の声に驚きを見せる。
「...どうしタ、いきなり大声を出しテ。今更命乞いカ?」
「いえ、あれはどうやら違う様子ですよ」
ナックラヴィーが殺意むき出しでムシュフシュの所へ向かうが、リャナンシーが止め、今の状況を理解する。
「僕は...。僕はただ、このままではこの国が滅亡してしまうと言われ、予言を見たんだ。だからマビノギを分断し、皆の6000年の記憶を消去させてもらったんだ...」
「...という事はムシュフシュ。君は嘘の予言を見せられて、一人で怯えて、誰にも話さずに勝手に行動したってこと?」
「ぁあ、そうだ...っ。僕が勝手に、やった事...なんだ......っ」
何故かムシュフシュの顔色が段々と青ざめていく。その変わりようを見てすぐさま怪しいと思ったナックラヴィーはムシュフシュに近づく。
「おイ、言エ。テメェを騙した奴ヲ」
「す、すまない...。その時の記憶は......無いんだ...。何も思い出せないんだ...」
声を震わせながらムシュフシュは顔を俯かせる。一体何に怯えているのか全く分からない一同は、手詰まりになってしまう。
「ンだト...!」
「止めてくださいナックラヴィー。それにあの子もどうやら無理だと諦めているようですよ」
リャナンシーの言う通り、クゥロは記憶の遡りを止めている。その表情には半分諦めのような感情が混ざっているのが見える。
「国外でムシュフシュを追おうとしたらいきなり記憶が吹き飛んだ。多分記憶の力ですら追うのが不可能だから...ロキ関連だと思うよ」
「ロキ...ッ!?」
「そんな!?」
クゥロの発言を聞き、目を開く一同。ティル・ナ・ノーグにもロキによる汚染があったという事だ。すると、遠くからゆっくりと拍手をしながらこちら側に近づいてくる足音が聞こえ始める。
「せーかいせーかい!凄いねー!『憤怒』のゆーとーり、やっぱ子供だからって舐めちゃいけないなー...。しかもなーんかいつの間にか1人神聖魔法を会得しちゃってるし?」
明らかに全身に感じる闇の力。そしてクゥロ達は今までも感じたことのあるその力。察するのにそう時間は要らなかった。
「七大悪魔...!!」
「まさか、二国連続で来るとはのぅ...。いや、エリュシオンを含めたら三国。道中も合わせると4人目か」
「はっはー。よく覚えてんね。ばあちゃんなのに記憶力ありすぎワロタでしょ」
一瞬だった。誰も何も反応出来なかった。その一瞬で悪魔はアヴァロンの肩を組み始める。アヴァロンは遅れて悪魔の肩を払い、警戒状態へと移る。
「...お主、何もんじゃ」
「オレー?っぱオレの名前が気になっちゃうー?いやー困っちゃうーなーっ。...オレはレヴァ『嫉妬』を担当してる。よろ〜♪」
薄ら嗤いで悪魔は云う。そんなレヴァに皆底知れぬ恐怖を覚える。
「...クゥロ。早くカラの所へ行け。カラの意識を戻してこい」
「...分かった」
「へぇ...ってことは今、あの転生者は意識不明ってことかぁ〜...。さすがサタン。『憤怒』は伊達じゃないねぇ〜」
思わぬ話が聞こえ、心の底から嬉しがっている様子を見せるレヴァ。どうやらカラが意識不明だと言うことを悦んでいる様子。
「サタンはどうだった?君たちのところに居る天使が倒したんだとオレたちは思ってるんだけど...。どっ?当たってる?」
リノアの目の前に瞬間移動し、不気味な笑みで質問するレヴァ。アヴァロンは咄嗟にリノアを抱え、レヴァから離れる。
「お主、何故妾達の所に近づくんじゃ」
「え〜?だって可愛い女の子には近づきたいじゃん?それがどんな年齢であろうと...ね」
刹那、アヴァロンの腹部に強烈な衝撃が降り掛かり、その衝撃の影響でかなり遠くへと吹き飛ばされる。
「アヴァロン様っ!!」
「まぁまぁ、落ち着いてよ。ね?」
尚も不気味な笑みを続けるレヴァ。それだけで皆は理解した。こいつ、とんでもなく強いと。
「んで、なんだっけ...。あ、そーそー!サタンは君たちの所にいる天使がやったんしょ?早く答えて?」
「...そうだよ。メタトロンがサタンを抹消した」
空中にいるクゥロはゆっくりと地上に近づく。その姿を横目に半笑いの顔で見つめるレヴァ。
「はぁ、神聖魔法会得者ねぇ...。んな簡単に超越者擬きが生まれてもらっちゃぁ、こっちとしても困るんだよ〜。分かるでしょ?」
“グラシアタス”
「そんなの知らないよ。だからそのまま凍結しといて」
気霜を口から漏らしながら気怠そうに凍った悪魔の隣を歩くクゥロ。レヴァはクゥロの放った魔法により、瞬間凍結する。
「ほ、本当に今までより強さが違います...!!」
「クゥロ...凄......」
「ルヴラは早くどこかに隠れ──」
鈍く、貫かれたような音が鳴る。周りの表情が怒りや恐怖など、様々な感情へ変化していくのが分かる。ふと、腹部が少し熱く感じ視線をやると、腕が自身の腹部を貫いている。
「フフ...ざんねーん。君レベルの神聖魔法じゃオレには効かないかなぁ♪」
「ク、クゥロ様ァァアア!!!!」
レヴァは皆の絶望的な表情を見て恍惚な笑みを浮かべる。すると、腹を貫かれたクゥロはレヴァの腕を掴む。
「腹を貫いてるのに凄」
レヴァがそうやって嘲笑いながら話そうとした瞬間、クゥロは自分ごと凍結し、なにか動く間もなく一瞬でレヴァを包み込む。
「...えっ」
「おい!クゥロがおらんぞ!」
「え!?」
確かにそこの氷には先程まで致命傷を負っていたクゥロが居ない。すると、アヴァロン達の後ろから冷たい空気が流れ出て来る。皆、そっちの方を向くと、白い空気から、極小の氷の粒が一点に集まり始め、どんどん大きさが変化して行き、やがてその氷がクゥロの姿へと変形していく。
「陽動成功...。ほら危ないから早く行くよルヴラ」
「え、え...どうやって悪魔を......!?」
一同、困惑や驚愕、動揺と言った様々な反応をしており、クゥロも皆に説明しようか悩むが
「ごめん。説明してる時間無い。今から私はルヴラと一緒にカラの所へ向かわなきゃだし、ほんとごめんね」
と一刻を争う時なので仕方なく断り、皆に一言謝罪を入れる。
「...後でちゃんと教えてくださいよ!」
「分かってる!」
そう言うと、クゥロはルヴラと共にその場を離れる。氷にヒビが入り始める音が聞こえ、皆、動揺する。
「...もう氷が砕けそうな予感もするしのぅ......」
カラの元へと急ぐ為、なるべくレヴァから離れ、キューブに触れる。そして2人はメタトロンな所へとたどり着く。
「とは言っても、どうやってカラを目覚めさせるの?」
当然の疑問である。クゥロが記憶魔法を扱えることによって何かが変わるのか。意識と記憶魔法に関係性があるのか?そんな疑問をするルヴラ。
「...ねぇ、メタトロン。カラの封印を解くために私が触れて、記憶魔法を使って強制的に流させるって方法ならいけると思う?」
真剣な表情をするクゥロの声を聞き、むくりと眠そうに身体を起こすメタトロン。
「たぶんいける。いまからのかかってるふういんは、しんせーまほーよりよわいちからだから」
そっか。とメタトロンの言葉により肩をなでおろし、2人は安心する。しかしメタトロンは続けざまにこう告げる。
「でもよわいといってもななだいあくまだから、ただふれるだけじゃむりだとおもうよ」
「...えっとそれはつまり......?」
ルヴラはメタトロンの言っていることが分からず、戸惑う。しかし、クゥロはわかっている様子。
「多分、相手に強い干渉をしないと無理ってことだと思う。そしてただ触れるだけで無理なら...するしかないね。キス」
「いや、なんで!?」
クゥロは真剣な顔でそういうと、ルヴラがそれを全力でツッコむ。
「いや、だってただの触れ合いじゃ無理ならそういうことじゃない?」
どうやらふざけていない様子のクゥロに、いやいやと否定しようとすると
「ん。めたもそのつもりでいったよ」
と、クゥロの提案に肯定どころか、そのつもりで言っていたメタトロン。そんな2人にルヴラは思わず絶句する。しかし、一大事なこのタイミング。仕方なしと受け入れる事に。
「お、王子様とのキスみたいに......」
「じゃあ、カラ...失礼するね......」
そんなツッコミを小声でいれるルヴラ。クゥロはそんなツッコミを耳に入れず、2人の唇が段々と近づいていく。
「ひゃぁ...」
唇が重なる寸前でクゥロは目を閉じ、そのまま何も止まることなく重なっていく。そんな光景に思わず乙女のような声が出るルヴラ。そしてその隣にいる相変わらず眠たげなメタトロン。その時、クゥロは魔法を使い、カラに記憶を流し込む。辺りに青白く淡い光が発生し、カラはその光を帯び始める。
「お...」
メタトロンはその重い瞼を頑張って開きながら見ている。どうやら天使にとっても珍しい光景の様子。その光は段々と弱くなっていき、終いには消えてしまう。
「...お、終わっ...た?」
「...多分。これでいけてるはず...」
「ん。だいじょーぶ。いけてるよー」
2人が少し不安そうな表情を浮かべていると、メタトロンはコクリコクリと頭を縦に振って言う。
「じゃあ、つかれたからおやすみー...」
「え!?あ、え!?」
仕事が終わったと思ったのか、メタトロンはそのままその場から消える。慌てて止めようとするがもう遅かった。そのままポツンと残されていると、後ろからとてつもない轟音が発生する。
「おい!クゥロ...早くアイツを止めてくれ...っ!!!」
「...やっぱり無理か......ッ」
一縷の願いを賭けて魔法を放ったが、やはりあの程度の魔法では足止めすることも出来ないと理解していた妖精王達。そんな周りの光景に思わず冷や汗が流れるクゥロ。
「さて、クゥロ。よくもさっきはやってくれたね...?」
「純氷の龍...!」
「グッ...!!先程と比べてかなり痛い攻撃だね...。オレと戦っていくにつれて強くなってるのかなっ!!?」
あまりにも早い。その速さに追い付けない為、皆反応ができない。これほどまでに差があるのか...思わずそんな絶望感に襲われそうになる。その刹那、何かがレヴァの攻撃を止める。
「ッ...!?」
「仲間に手ぇ出してんなよ...。悪魔ァ!」
その声と桃色の長髪で、皆は瞬時に理解した。そして妖精王達も悪魔の攻撃を真正面で受け止める存在を見て、何者かを問うまでもなく分かったのだ。何故ならその姿は、皆の窮地を救う英雄を彷彿とさせたのだから。
さぁついに復活しましたね。
「はぁ...やっと喋れるー!」
お疲れ様。封印されてた時の記憶はある?
「...今は思い出せないかも」
あー。そっかー...。まぁいずれ思い出した時に教えてよ
「おう!あたぼうよ!」
...性格変わった?
「ん?いや?」
あ、そう?




