聖戦とは名ばかりの
ティルナノーグ編は割と王道展開や、群像劇的な場面が多いですね...。自分がそういうの好きなので書きたくなってしまう...。
いせロリ豆知識⑰
ティルナノーグの妖精王は全員割と同じレベルの力関係にあるが少しだけ差がある。
「夜」>「記憶」≧「光」≧「循環」≒「歌」
しかし、今は「光」は謎の強化を経て「夜」の力を上回っている。
〔世界中が...?それってまさかアヴァロンが話していたあの聖戦?つまり今は7万2000年前のティル・ナ・ノーグって事になる〕
クゥロは二人の会話を聞き、今が聖戦の時期であることを察する。すると続けて2人は会話をする。
「英雄が魔王と戦ってるんだってよ!」
「マジか!?て事は今日があの予言の時ってことか...」
2人の会話を聞いていると気になった単語が飛び交う。
〔予言の時...。これもソロモンが関係しているのだろうか、それとも別の存在?いや、今はそっちより妖精王達の様子!〕
妖精王の所へ行くため、急いでマビノギへと向かうクゥロ。するとそこにはリャナンシーと、泣き崩れるヴィルジナルがいた。
「ヴィルジナル...」
リャナンシーが宥めて数分が経過すると、ヴィルジナルが立ち上がる。
「██████...。あなたはもう覚悟が決まってるのね...。じゃあ私も覚悟を決めなきゃ...。リャナンシー、着いてきて」
「......ええ...分かりました」
そうして、ヴィルジナルとリャナンシーは自身のお腹を擦りながら、とある所へと向かう。
「ねぇ、あなた確か数少ない光魔法使いよね」
その場所へ向かうと、そこには金髪碧眼の妖精が居た。
「えっ...は、はいそうですけど。一体どうしたんですか?」
「あなたの力を借りたいの」
ティル・ナ・ノーグの端、認識改変魔法のすぐ近くにまで来たヴィルジナル達3人は何かを準備し始める。
「リャナンシー。お願い、今産めるようにお腹の子に循環魔法をかけて」
「えっ!?ヴィルジナル!それは...!!」
「お願い...っ」
ヴィルジナルと碧眼の妖精は一瞬動揺するが、ヴィルジナルの覚悟とその表情を見て承諾する。ヴィルジナルは碧眼の妖精にお腹を開けるように言い、妖精はヴィルジナルのお腹を切開する。
「ぐ...っ......!!」
「だ、大丈夫ですか...!?」
「私のことはいいから急いで!!」
ヴィルジナルは声を荒らげる。そんなヴィルジナルに驚愕するリャナンシー。彼女がここまで焦っている様子を見た事が無いためだ。そしてそれは同時に、ヴィルジナルの心の表れでもある。そこまでの覚悟を持っているということ。ならば自分も。そうしてリャナンシーも覚悟を決める。
「開きました!」
「生命廻...!」
生命に関わるため、間髪入れずに自分で息が出来るまでと赤子の年月を循環させるリャナンシー。そしてその魔法と同時に、ヴィルジナルは赤子に呼吸をさせるようにと自身の魔法で柔らかく細長い氷を作り、それを赤子の喉の奥へと入れていき、無理やり呼吸をさせる。すると
「...コホッコホッ!!」
「呼吸しました!」
「ヴィルジナル!早く魔法を!!」
赤子が呼吸をし、大声で泣き始める。ヴィルジナルは自身のお腹の傷を氷で塞いだ後、我が子に魔法を使おうとした瞬間、突然迷いが生じ、ヴィルジナルの眼に涙が溢れはじめる。
「......ヴィルジナル...」
「......ごめんね...。私...私......あなたのことちゃんと育てようと思ったのに...。あなたと過ごして、毎日毎日、幸せな日々を暮らしていきたかったのに......」
赤子は泣く、何も伝えるすべがない為。世界は泣く、それは土地が戦火に燃えているため。母親は泣く、我が子を育てることが出来なかったという悲しさから。しかし、ヴィルジナルの覚悟はもう決まっている。
「...あなたをコールドスリープさせて、未来の人達に託すわ...あなたには私を、私達を救う力がある『希望』なの...。だから、いつか必ずここに帰ってきて。未来があなたを待ってるから......」
涙を流し、嗚咽しながらもヴィルジナルは赤子の頬を優しく撫で、赤子に自身のを額をくっ付ける。それはまるで赤子に謝罪するかのように、そして生まれてからの祝福を願うかのように。
「...時間と記憶の凍結」
そうして、赤子はヴィルジナルの魔法によって凍っていく。最後までヴィルジナルは涙を流しながら、自身の子を育てられなかったという感情にのまれながら。
「......光の魔法を使って、出来る限り遠いところへ行って」
「...はい。分かりました......」
そうして碧眼の妖精は光魔法によって発動した光の屈折を使い、ティル・ナ・ノーグを後にする。
「...ヴィルジナル」
「......大丈夫よリャナンシー。私は、私のやることがあるもの...!」
何千年と一緒だったリャナンシーには分かる。それが無理して笑っていることを。しかし幼なじみのリャナンシーは何も言わずに涙を堪えながら頷く。
〔...母様...〕
「ッ...もうそろそろ障壁が......!!」
すると、ティル・ナ・ノーグの周りにある障壁にヒビが入り始めているのが見え、少し焦り始める。
「リャナンシー...。お願い、ローレライの方へ向かって」
「...分かりました。ヴィルジナルも気をつけて!」
(私は...マビノギへ行かないと...!!)
クゥロはヴィルジナルの向かう方向を見て、どこへ行こうとしているのか察する。しかし、例えマビノギに行ったとして何か変わるのかと疑問を抱く。
「はぁっ...はぁっ......」
なんとかマビノギに着いたヴィルジナルは、壁を伝いながら自らが出せる全速力で最奥へと向かう。
「は、早くしないと...民が...世界中の皆が......」
〔か、母様...。そこまで民のことを......〕
今にも倒れそうなほど疲れているヴィルジナル。それもそのはず、凍結によって多少はマシだが腹には傷、魔法は複数回使用しており、疲労困憊もいい所。そんな中、まだやることがあるのだとマビノギへと向かう...。
「着いた...。っしょっと、はぁ...はぁ......」
「早く、準備......しないと...っ!」
フラフラしながらもなんとか自らの足で立ち、目の前にある巨大な氷塊に手を伸ばし。魔法の準備を始める。
「拓け、記憶の扉よ...。一握の輝が為にその代価を示してくれ......」
なんとか力を振り絞りながら唱えると、氷塊はマビノギの中で乱反射するようにポォーンと音が鳴り、そして柔く光った後、重圧感のある声で喋り出す。
--代価ハ2ツ。ソレハ記憶ト存在--
「記憶と...存在......ね...」
〔待って...母様......ダメ...。それは!!〕
クゥロは涙目になり焦り始める。ヴィルジナルが何をやろうとしているのか察してしまったから。それは生命にとってとても大事なことで、本当の死。
「私の存在の記憶と、██████の存在そのもの...。これで...どう......?」
記憶と存在の抹消。生命体にとって記憶とはどれほどに大事なのか、これまでの旅で理解していた。しかしこれは過去の残影、変えることは出来ない。
--確認シタ。コレヨリ、此ノ2ツノ代価ヲ以テ世界改変ヲ行ウ--
クゥロは膝から崩れ落ち、涙は次々と頬を流れていく。溢れて、溢れて。留まることを知らない。
「...私はね。この国のために、でもあるけど未来のためにでもあるの」
「この世界の未来のために、希望しかない子供に託すの。過去によって発生した事象の波は、更に大きくなって未来へと発生させるから」
すると、その場で泣き崩れているクゥロの頬に、冷たくも暖かい感触がそっと触れた。その感触にクゥロは驚き、ヴィルジナルの方を向く。
「そして、アナタの為にでもあるの。愛しい我が子」
ヴィルジナルは優しい笑顔でクゥロの頬を撫でる。その体の一部一部は透明の小さな結晶へと変化し、空中へどんどん霧散しているのが分かる。
「っ......かあさまっ...!」
また更に、クゥロは大粒の雨を流す。そんなクゥロを見て、笑顔のままヴィルジナルはクゥロの涙を拭いながら話す。
「アナタには強い力がある。だからあの聖戦を、私を、アナタのお父さんであるディードリヒを...そして、今まで貰った愛をどうか...忘れないで────」
--世界改変、始動--
「────!!」
強い光がクゥロの視界を塞いだ。その後、クゥロは元の時間軸へと戻ってきた。しかし、涙で視界がぼやけており、まだここが何処か把握していない。
「ここは......。戻ってきたの...?」
まだ先程の暖かい感触が頬に残っており、クゥロは自身の頬に触れる。その後目を閉じ、自身の母に思いを馳せる。
「......私は、父様も母様の事も忘れない」
覚悟が決まったクゥロは涙を拭い、目の前の記憶の氷塊に手を伸ばす。
「記憶の回廊よ。私の名はクゥロ。クゥロ・スリュア・バットゥヴェリ。記憶の妖精王の血を引く者。再びここに顕現せよ」
突如、氷塊は眩く光り輝き始める。しかしクゥロは動じず、仁王立ちのまま光に包み込まれていく。
--記憶ノ血族ヨ、願ハナンダ--
光が弱まっていくと、内装が変わっており、先程の暗かった部屋から一変。光がある明るい部屋へと変貌している。しかしそんな事は関係なく、クゥロはある一つの願いを言う。
「私の願いは......。母様の...。ヴィルジナルの記憶の完全譲渡」
その願いに記憶の氷塊は数秒間沈黙する。想定外の願いだったのか不明だが、明らかに動揺はしている様子。
--記憶譲渡ニハ、権限完全譲渡ノ為ノパスキーガ必要トナル--
「...母様は入念だね。そりゃマビノギ本体であるこのマビノギオンを誰も掌握出来なかったわけだよ...。でも、私なら分かる。"ディードリヒ"」
--承認成功--
実の父であり、世界にディードリヒの記憶を持っているのはこの世界でただ一人、クゥロのみ。その為、ヴィルジナルは最初から最後まで血族のみでしか開くことが出来ないように設計していた。
--記憶ノ妖精王、ヴィルジナルノ記憶ヲ、対象、クゥロニ完全譲渡ヘ移行--
「母様。ありがとう。私、母様のおかげで平和な国で暮らせたし、友達にめぐりあえたし...とても幸せだった。だからその幸せとこの記憶を無くさないためにも戦うよ」
マビノギの権限が完全にクゥロに渡ったことにより、マビノギは大きく揺れ始め、各部族のマビノギは普通の大樹へと戻る。
「ク、クソォォオオオオ!!!!!もうヤケクソだァアア!!!」
「マ、マズイッ!!」
「なっ!?あの人まだ魔力あるんですか...!?」
ムシュフシュの全力を込めた放ったレーザーが、天空にあるマビノギに向かう。しかし誰も止めることは出来ない。皆、魔法の使いすぎによる消耗過多の影響である。
「ニセモンテメェ!!」
「もうどうだっていい!!どうせティル・ナ・ノーグは終わりだァ!!」
しかしそのレーザーは何者かによって受け止められる。
「何!?」
「ティル・ナ・ノーグは終わらせない。私がこの国に新たにルールを加え、この国の歴史を再起動させる」
発生した煙幕の中、聞き覚えのある声がそこから聞こえる。リノアたちはまさかと期待しながら見つめる。
「...間に合ったか」
「クゥロ様ぁぁぁぁあああ!!!!!」
3人はクゥロの姿を見て歓喜で湧き上がる。それに対し、ムシュフシュはクゥロの姿を見て目を開く。
(な、何だ...あの魔力...!先程までとは比べ物にならないほどに跳ね上がっている...。これではまるで...)
「妖精王と変わらないくらいの魔力、だったりするかな?」
太陽を背にして言うその姿は今までのクゥロと比べ、自信に満ちている様子で、別次元へと到達したように見える。
「ッ...ほざけェ!!!」
「遅い...」
ムシュフシュは認識することも出来ず、クゥロの攻撃をもろに喰らう。
「どうやら私の方がアナタより強いね裏切り者」
「クッ...!!!」
「クゥロ様ぁぁあああ!!!待ってましたよー!!!」
いやぁ激アツすぎるね!まさかクゥロが超強化されて帰ってくるなんて!!
「本当です!!ムシュフシュさんの攻撃を片手で止めてましたからね!!」
強くなってからの戦線復帰最高ー!
「さいこうでーす!!!!」




