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転生概念における願望空想論  作者: coll
ティル・ナ・ノーグ編
75/91

相反する二人

この調子だと、完結するのに3年ほどはかかりそうな気もしますが、まぁ気長に書いていきますので、皆さんも気長に待っていてください。


いせロリ豆知識⑬

ティル・ナ・ノーグにマビノギは全部で4本ある。各部族に1本ずつ。しかしどれも界憶の大樹程大きいわけではない。

「はは...なるほどのぅ。お主が何故、死の妖精王と呼ばれるのかこれで理解したわい」


「こ、これは...」


場所は変わり、リノアとアヴァロンの方。2人は森林を既に抜け、夜の砂浜に着いていた。辺りには何も無く、あるのは砂と水辺のみ。

しかし2人は、目の前の光景に畏怖している。何故か?それは至って簡単。


「あれはもしかして、マビノギ...ですか......?」


何故か2人の前にはマビノギに似たような樹が存在しており、更にそのマビノギは、リャナンシーの所にある物と比べ、枯れ果てているからだ。


「まさかマビノギが複数あり、1本は枯れているとはの...。ナックラヴィー」


アヴァロンは警戒心を強め、少しばかり言葉の牽制をする。それに対し、ナックラヴィーは嘲るように笑っている。


「外界のガキども、テメェら循環女に教えて貰えなかったのカ?この国には、マビノギ(これ)があと4本あるってよ」


「4本じゃと...!?」


「ヘェ...。その様子じゃ、教えて貰えなかった感じカ」


アヴァロン達の反応を見て、すぐさま察するナックラヴィー。


「やっぱ中立派が1番親切じゃねぇナァ。ダメだ...。俺様の区域のマビノギが枯れてる理由は、俺様の力が勝手に発動してるからダ」


鋭くとがった歯がチラりと見えつつ、目の前の真っ黒な妖精王は、自身の力について説明していく。


「勝手に発動...ですか」


「つまり、お主のその力は意識的にではなく、自動的かつ永遠に発動されておるということか?」


ナックラヴィーは目を閉じ、鼻で笑う。


「あァ...その通りダ。俺様の力は生まれつきのもので、周囲のものの寿命を奪ウ。そのおかげで、俺様の区域には循環女や歌唱厨とは違い、民がいねェがナ」


その声色は少しばかり悲しそうで、どこか、他の妖精王を僻むようなそんな雰囲気が混じっていた。


「...同情や慰めは必要ねェ。この独りの状態を俺様は長年やってんダ。今に始まった事じゃねェ」


「そうですか...!」


(やはり妾の様に半不老不死の種族は、何かしら複雑なものを抱え込んでおるな...)


複雑な心境を持っているナックラヴィーを見て、何処か親近感が湧くアヴァロン。するとアヴァロンは話を切り込む。


「ナックラヴィー。妾はリノアの光魔法の異変を調べるため、ムシュフシュに会いにいく」


それを聞いた瞬間、ナックラヴィーの纏う雰囲気が急激に変わる。アヴァロンはやはりな...。と心の中で何かが確信に変わる。


「じゃから、お主が知っておるムシュフシュについてを教えて欲しい」


アヴァロンは手を胸に当て、お願いする。少しばかり無言が続くと、ナックラヴィーはアヴァロン達を睨むように見つめる。そこ瞬間、アヴァロン達は死を錯覚する程の殺気を感じる。


(い、今のは...まるでアプチと出会った時と似たような感覚...)


「はぁっ...はぁっ......」


ナックラヴィーは威圧をやめ、大きなため息を吐く。


「...俺様が何故、アイツを毛嫌ってるのカ。それはアイツが偽物だからダ。それ以外に理由は無イ」


「偽物...?」


アヴァロンはそう聞き返すと、何かを憎むような表情をしているその黒い妖精は、静かに目を閉じる。


「アイツは6000年前の時とまるで違ウ。アレは俺様からすれバ、アレは──」


刹那、目の前に何かが降ってくる。砂埃の中、ソレは光り輝き続けている。その魔力の多さやオーラから一瞬で察した。


「何を話しているのかな。ナックラヴィー」


「...今、テメェについて話してたんだヨ。操られた太陽さんヨ」


そこにいたのはムシュフシュ。怒りのあまりか、焦点があっていないように見える。

リノアは、ナックラヴィーがムシュフシュを"操られた太陽"と言っている事に困惑していると、アヴァロンがそれを汲み取り、説明し始める。


「おそらくナックラヴィーは、6000年前にムシュフシュが何者かによって操られ、それまでとは全く違う様子へと変貌してしまった。と言いたいんじゃろう...」


「なるほど...。という事は、本当の敵がいて、その敵の力が洗脳の類って話になりますね」


アヴァロンの説明を聞いたリノアは、全てを理解し、冷静に現状と、それによって生じる先の事を考える。


「その通りじゃな...」


(しかしこの状況、かなりマズいな...。ムシュフシュと出会ってしもうた。更にいえば、ナックラヴィーから此奴の内情を知った上で...)


アヴァロンは剣を発現し、ムシュフシュをかなり警戒する。


「操られた太陽?ふふっ何を言っているんだ。僕は操られてなどいないよ。ただ────自分の正義のために、愚者を演じているだけさッ!!」


「──っ!!」


ムシュフシュとナックラヴィーがぶつかる。二人の放つ力が強く衝突したことにより、辺りに大きな波動が生じ、強い風が発生する。アヴァロン達はその衝撃に必死に抵抗する。


「こ、これがっ...妖精王同士の戦い...!?」


「死と光...反対の力が強くぶつかるとこれほどの力が発生するのか...っ!!」


この力の衝撃は国中に伝わり、皆、大騒ぎしていた。森の民、とある森林の中では──


「......この力のぶつかり...まさか、ムシュフシュとナックラヴィーが戦いが始まったのですか!?」


「ああそうだ!だから早く出ろリャナンシー!早くムシュフシュを止めねぇと!!」


湖の民、湖の中では──


「...始まったな」


「仕方ない、アイツは警戒心が強すぎる。このくらいまだ想定内だ。それよりも早く儀式を終わらせるぞ」


そうして、ティル・ナ・ノーグ中が大騒ぎし、循環の妖精王、リャナンシーは急いで2人の元へと駆けつけている最中、シフィは


〝ふぅ...。何か、マズイ事が起きているみたいですけど。アヴァロンさんとリノアさんは大丈夫なのでしょうか...〟


と、周りの状況を察知し、急いで家の中へ入り、2人を心配そうに思いながら、窓の外を見つめる。


「──さすがナックラヴィーだ。僕の攻撃を受け止めるなんて」


「...貴様は俺様に勝ったことなど一度もないだろう」


「それも...そうだったなっ!!」


若干宙に浮いている状態で足を振り、頭部に当てようとするが、ナックラヴィーはそれを読んでおり、足が当たる前に魔法陣を発現させる。


死露しつゆ


「...っ!!」


自身の異変に気づいたのか、即座にその場を離れるムシュフシュ。すると、突然口を抑え始める。


「久しぶりに効いたか?俺様の魔法を」


「こ、これは...」


2人は、ナックラヴィーの魔法を見て驚く。それは、今まで見たどの魔法とも近くないからだ。


「これが俺様の魔法、禍源かげん魔法ダ」


「禍源...?」


「禍源とは災いの生じる根源......。つまり此奴の魔法は厄災そのものと同じじゃ」


アヴァロンは冷や汗を流す。何故か?それはナックラヴィーの力が、ニーズヘッグを軽く超えてしまっていることにある。

本来、魔法では呪いに勝つことは出来ないとユピテルから話を聞いており、その事実はアプチとニーズヘッグの差から分かっていた。のだが、ナックラヴィーは魔法を極めすぎた影響か、ニーズヘッグを超えている。これはつまり、本来起こりえない事である。そのため、アヴァロンは恐怖しているのだ。目の前の妖精王に。


「...リノア!アヴァロン!」


後ろから声が聞こえ、振り向くと、そこにはクゥロが居た。


「...ッ!!クゥロ様!」


「クゥロ!」


リノアはクゥロに抱きつき、アヴァロンはクゥロの体の周りを見て、怪我をしていないか心配する。


「私は大丈夫。それよりとんでもない衝撃が発生してたけど...」


「あぁ...あれじゃよ」


クゥロは、アヴァロンに指された方向を見ると目を開き絶句する。


「あれが、妖精王同士の戦い...?」


「...クゥロ、妾達も同じことを思っとるぞ。あんなもんただの神同士の戦いじゃ」


「妖精王クラスになるとあの規模になるのですね...」


3人は妖精王の戦いを呆然とただ見つめる。するとクゥロは2人に話す事を思い出す。


「2人とも、実は────」


そうして、クゥロはシフィ達に話した内容と同じ事を2人に話すと、リノアは驚愕し、アヴァロンは考え始める。


「もしそれが事実ならば、今妾達が持っておる情報で最も怪しいのは、あそこにおる赤い髪のやつじゃな...」


「ですね...」


「え...。あの人って確か、光の妖精王だよね?」


クゥロの考察を当てはめると、現状それに該当するのはムシュフシュ。それを聞いたクゥロは驚く。


「...なるほどだから今、死の妖精王が戦っているんだね......」


しかしクゥロは理解力と適応力が高いので、すぐさま冷静になり、現状を把握する。


「しかし、記憶の妖精王か...。確かにそう考えると、全てが納得いくのぅ」


「って待ってください!という事はまだカラ様は治すことが出来ないってことですよね?」


「...申し訳ないけどそういうことになる。私も早く治したい一心なんだけど......」


リノアは焦りながらクゥロに聞くと、クゥロは気まずそうな表情をしながら謝罪する。


「しかし、記憶の妖精王の封印を解くとしてもどうやって解くんじゃ?彼奴を倒したとしても解かれるとは限らんじゃろ?」


「それは分かってる。だから私は別の可能性に賭けてる...いや、信じてる」


「別の可能性...?」


ソレはムシュフシュとナックラヴィーが戦う数分前の事。



「ここが湖の民の領域......」


「お前さんはもしやハーフフェアリーの...」


誰かが来る気配をしたヴォジャノイは、湖から顔を出す。


「貴方が湖の民の賢者...ですか?」


「ん?あぁそうだが...どうしてここに来た?お前さんは確か、マビノギの最奥にいるはずでは...」


ヴォジャノイは、リャナンシー等の妖精王から聞いていた話と違い、クゥロに疑問をぶつける。


「色々事情が変わりまして...。それよりも湖の賢者である貴方にお願いしたい事があって、ここに来ました」


「...ふむ、ワシにお願いか。内容によるな」


「ローレライさんの歌の対象を変えては貰えないでしょうか」


頭を深々を下げるクゥロ。自分でもわかっている。無理難題を押し付けていることを。だが、今はそんなことを考えている暇では無い。その為ヴォジャノイに、一か八かを賭ける。


「...それが何を意味するのか分かっているのか?」


「はい分かっています。それによって生じる様々な事を。ですが今は、外敵よりも内敵を危険視すべきです」


(あの時、シフィには安心させるようにああ言ったけど、実際はかなりマズい。ムシュフシュとリノアたちが出会ったら、十中八九戦いが始まる...何とかしないと)


クゥロは2人がムシュフシュと接触してしまった際のことを考え、早急に事を済ませ、ムシュフシュを詰ませるよう動いている。


「...内敵......つまりムシュフシュが動き出す可能性があると言うことか?」


(やっぱりここの賢者はムシュフシュを怪しんでる。ヴォジャノイという賢者は音魔法を使うと聞いた。それも精密重視の。そんな魔法を使えるのであれば、仲間内の放つ微細な音の変化も気づけるはずと予想したけど、ちゃんと当たってた...良かった)


ヴォジャノイの問いに頷き、クゥロは記憶の妖精については話さず、ムシュフシュに関する推測を話し始める。


「...なるほど、やはりそうか。ワシらも薄々感じていたのだ。もしかするとあの光魔法の子はムシュフシュによって殺されるのではと...。そうなると話は早い。水姫の歌の対象を変える儀式をしよう」


「...っ!!本当ですか!?」


ヴォジャノイの答えに目を大きく開くクゥロ。一か八かの賭けに成功したのだ。


「あぁ。だがこの儀式はかなり時間がかかる。できる限り間に合わせるが...」


ヴォジャノイはそう言うと、クゥロは首を横に振る。


「大丈夫です。私たちが間に合わせます」


その表情を見たヴォジャノイは、クゥロに何かを重ねるように視界がぼやける。しかし、すぐさまそれは消え、普通に戻る。


「......そうか。ならワシらも全力を賭すとしよう──」



「それが別の可能性...か......」


「しかしどうするのですか?ナックラヴィー様が負ける可能性だって──」


「んなもんねェ...」


リノアはもしもの可能性を話すと、戦闘中のナックラヴィーは肩で息をしながら


「俺様はコイツに負けた事など一度もねェ。テメェらは俺様の戦う姿だけ見てりゃいイ!」


と少し声を荒らげて皆に言う。


「...では、戦闘はしばらく任せたぞ...死の妖精王!」


アヴァロンがそう言うと、ナックラヴィーは獲物を狩るような無邪気な笑みを浮かべ、ムシュフシュとの戦いを再開させる。


「ナックラヴィーが時間稼ぎをしてくれる間に何かせねば...」


「そうだ...マビノギの本体、本体を探しに行かなきゃ!」


なにかを思い出したかのように、クゥロはそんなことを口にしだす。


「マビノギの本体ですか?どうして...」


「母様を助けるためだよ」


「あの妖精王さん大丈夫なのでしょうか...」


あ〜。ナックラヴィーの事?


「はい...」


んー...。どうだろう。その話の展開は文字さん的にも分からないなぁ。


「えぇ...!?文字さんなのに...って思いましたけど、最初からこんな感じでしたから仕方なくはありますか...」


あはは...。まぁ文字さん的にも分からないから、ナックラヴィーに勝手もらえるよう願おう


「はい...!!」

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