御伽噺の世界
ティル・ナ・ノーグ編突入です。良いですね、かなり楽しみです。
いせロリ豆知識④ティル・ナ・ノーグは、妖精が99%の世界で、言語は一緒だが、使用している文法や文字がティル・ナ・ノーグ独自で、読み取る事が非常に難しい。
「とりあえず、ここの一番偉い人に会いに行かなきゃですよね!」
「うん。そうだね」
リノアはやる気を出すために自身の拳をギュッと握り締め、眉をクッと寄せる。
「は〜...童話世界すぎだ〜......」
ルヴラは辺り一帯を見ながらリノア達と同じ歩幅で進んでいく。
〝空がシフィ達の世界とか違う...のでしょうか?〟
シフィは上を見て、普段の青い空ではなく、青白く光っている空であることに疑問を抱く。
「あ、本当だ!それにさっきエルドラドにいた時は夜じゃなかったのに、もう月が出てる!」
「本当だ...。一体どういう国なの......」
時空が違うのかな?それとも作られた空なのだろうか......。ティル・ナ・ノーグの特異性を不思議に思い、推察を始めるクゥロ。リノアはメタトロンに助けを求めようと目線を向けるが、そこには宙に浮きながら丸くなって寝ているメタトロンの姿があった。
「......ね、寝てる...」
「ち、力を使ってたから仕方ないよ!!ははは!!それに寝てても力は使われてるまんまだし!」
ルヴラはリノアを落ち着かせるため、必死にリノアを説得する。
「...ここの国には四人の妖精王が居てな、その四人の妖精王が織り成す魔法の障壁によって、本来は認識することが出来ないんじゃよ」
皆でわちゃわちゃしていると、突如アヴァロンが話し出す。先程まで無言だったアヴァロンが突然喋りだしたのに驚いたリノア達は、思わず思考停止する。
「なんじゃそんな驚いた顔をして...妾が喋ったらいかんのか?」
「い、いやだって......」
先程までのアヴァロンを思い出し、直接は口に出さないが、匂わせるように各々口をもごもごしながら顔を合わせる。
「ん?あー......そういう事か。妾がいつまでもクヨクヨしておるわけないじゃろう!7万年も生きておるんじゃぞ!?」
アヴァロンはそう答えると、一瞬の静寂が訪れた後、一斉に吹き出すように笑う。
「な、何故笑っておるんじゃ!?」
アヴァロンは困惑しており、皆の反応を不思議に思っていると、ルヴラは笑いながら
「何でもないよ!」
と答える。アヴァロンの心の中に疑問が残るが、何も無いならと追求せず話を終える。
「それにしても、本当に童話のような世界ですね!」
「そうだね...」
リノアはクゥロに満面の笑みで言うが、クゥロは何とも言えない複雑な表情で答える。ずっと傍に使えてきたリノアはその表情に気づいているが、心の中に留めることに。
「カラ、治るといいねー」
〝そうですね!!カラさんが治るまでティル・ナ・ノーグに居続けましょう!〟
柔らかな日差しの中、草木をかき分け進んでいると、一緒に歩きながら隣でルヴラとシフィが仲睦まじく会話しているのが小さく聞こえる。
「平和ですね...」
「そうじゃな」
リノアが思わず発した言葉に、アヴァロンは優しい笑みを浮かべながら即座に反応する。リノアはその反応に一瞬驚くが、ほんの少し照れくさそうに笑い、目を閉じ、暖かい気温を全身で感じる。
「ところで、四人の妖精王について聞いても良い?」
「うむ。遠慮なく聞いてくれ」
クゥロは先程アヴァロンが話していた事を質問したいと、直接伝えると、アヴァロンは笑顔で頷く。
「その妖精王って言うのは、一体どのような存在なの?」
「...妾もティル・ナ・ノーグは来たことがない。それ故、妾の知っておることだけ話そうか」
アヴァロンはそんな前置きをし、ティル・ナ・ノーグについて、自身の知っている事を話し始める。
「ティル・ナ・ノーグは古代からある国と言われておってな......じゃから妾と同年代の老人しか、その存在は知らないんじゃよ」
「...はなしにはきいたことある〜......。たしか、たいこれき、だっけ?」
古代、アヴァロン達の話す"それ"は、太古にあったとある大戦争の生き残り、或いは"それを見届けていた者達"の事であり、この世界の歴史の始まりで、世界の暦に使われる程の影響があった、言わば、世界の命運を分けた本当に大きな戦いであった。 しかし、そんなことを知らないリノア達は、へぇ〜。と受け流しそうになるも、目を開き驚愕する。
「え、太古歴......!?」
「なるほど...太古歴......。ティル・ナ・ノーグはそんなに昔からあるんだ」
アヴァロンとメタトロン。2人の話を聞き、各々、色々な反応をする。
「あ、そういえば太古歴とアヴァロン様の年ほぼ一緒でしたね......」
「今思えばそうだね...」
「妾はかの戦争から生まれたからな...。まぁアヴァロンとしての意思は、じゃが」
太古歴は、かつてあった大戦争の終戦から始まった暦であり、その大戦でアヴァロンは誕生した。当時を生きていたメタトロンですら話にしか聞いた事のない、言わば数少ない生き残りであり、そして数少ない大戦経験者なのである。
〝メタトロンさんですら聞いたことある、なんですね......〟
「メタは妾と違って天使族じゃからな、エリュシオンから見ていた、或いは当時は寝てたのやも知れんのぅ」
「あのときのめたはおきてたよ〜...。ちょ〜おーきなたたかいがおきるってわかってたからね〜。でも、とーじのえーゆーがつよすぎたから、さんかしなくてもよかったんだよね〜」
目が横棒状で、三角口になりながら当時のことを語るメタトロン。そんな話を聞き、あぁ〜と声を漏らすアヴァロン。
「何か心当たりがあるのですか?」
「もっと当時のこと聞きたい!!」
ルヴラが興奮気味にそう言うと、シフィやリノアもうんうんと頷く。
「そうじゃな...じゃあ、中心地に着くまで、当時のことについて話そうかのぅ」
そんな2人を見て、笑みを浮かべながらアヴァロンがそう言うと、リノア達は目を輝かせる。
「前にも言ったように、当時の妾は剣そのもので、まだ生まれてもおらんかった。じゃが、記憶はあるんじゃよ」
「へぇー!そうだったんですか!」
「つまりアヴァロンは、剣として生まれた時点で記憶があるってこと?」
アヴァロンの話を聞き、疑問に思ったクゥロは質問をしてみると、アヴァロンは頷きながら答え始める。
「妾は、妾自身が宿ったこの剣、カラドボルグがこの世に生まれた時点で、記憶を持っておった。まぁ意思を持ち始めたのはほんの少し後じゃがな」
「ほんの少し後...どのくらいなんですか?」
「ん?まぁ20年くらいじゃの」
アヴァロンは軽くそう言うと、でしょうねと言わんばかりの表情のまま空笑をする。
「しかし、妾の持ち主が誰じゃったのか思い出せなくてなぁ......。7万年以上生きてるとは言え、持ち主を覚えておらんなんて事、ある訳ないんじゃがのぅ......」
当時のことを思い出そうと、眉を顰めるアヴァロン。しかし、当時の戦争の記録はほとんど残っておらず、更に、見守っていた者や生き残り等もほぼ存在せず、言わば誰も知らない大戦状態なのだ。その為、一同は何も教えることが出来ないという状況にあるので
「って言っても、その大戦自体、前聞いた時に初めて聞いたからなぁ......」
「わたくし達に聞いても何も分からないですよ、アヴァロン様...」
と、当然こんな反応になる。先程言ったように、アヴァロンが経験した大戦は記録が残っておらず、更には経験者もとんでもなく少ない。世界中探しても1人見つけられるかと言うくらいには。なので、皆が知る訳もなく。そんな中クゥロの口が動く。
「ならティル・ナ・ノーグにいる妖精王に聞いてみたら?何かわかるかもだよ」
そんな風に和気藹々と話していると、アヴァロンは何かを察知し、警戒し始める。アヴァロンのその様子に、何かいると察したリノア達は、アヴァロンと同じく警戒をする。
「ほう、我らの気配を感じたのか。外界族よ」
草木を分けて、現れたのは透明の4つの羽が生え、耳の尖った生命体。その見た目を見て皆理解した。あれは妖精だと。そんな突然現れた妖精に、目を開き驚愕するリノア達。
「は、初めて見た....」
思わずそんな言葉が口から出てしまう。すると、その発言を聞いた妖精の1人が、クスクスと笑い始める。
「そりゃあ当然だろう?我ら妖精は外界になど出ん。この国だけで十分だからな」
先程から話しているリーダーのような妖精は、少し強めの語気で、まるでリノア達を蔑むように吐き捨てる。そんな言葉に少しムッとするリノア達。
「お主ら、落ち着け。今はカラを治すのが先じゃ」
そんなリノア達をアヴァロンは抑えると、真面目な表情になり、妖精に交渉を持ちかける。
「妾達はただ、旅の仲間を治療して欲しいが為にここに来た。治療が終わればすぐにここを去るつもりじゃ。頼む、妾達を通してはくれぬか」
そのあまりにも真剣な表情は、リノアたちが今まで見た事のない程だった。しかし、そんなアヴァロンの話をぶった斬るように妖精は嘲笑しながら
「なぜ我々が見ず知らずの外界族の手助けをしてやらなければならん?それもなんの見返りも無しに。そんな自分勝手な行動を一言二言で簡単に了承出来ると思うか?」
と、少し毒のある言葉を吐く。しかしぐぅの音も出ない。この妖精の言うことは正論だからだ。何も言い返せないアヴァロンは顔を俯かせる。すると、今度はクゥロが前に出てきて頭を下げる。
「お願いします妖精族の人。私たちにどうか手助けを......」
1番前にいる妖精は、だから...と、呆れながらも言い返そうとクゥロの方を見る。すると、頭を下げたからか、クゥロの耳が見え、妖精達は驚愕する。
「お前まさか妖精族か....?」
「え......はい。そうです...」
何も分かっていないクゥロは素直にそう答える。すると、妖精達はざわつき始め、今度は恐らく偉い人に連絡を入れている様子が見える。そんな様子に戸惑う一同。すると
「入れ」
と言われ、何故入る許可が降りたのか分からないまま、奥へ奥へと進んでいくことに。
「な、何で入れたの?」
「さぁ、妾もわからん」
ルヴラは小声でアヴァロンにそう聞くが、アヴァロンも首を横に振る。今の状況に少し戸惑いながらも入れたという事を受け入れ、妖精達の後をしっかりと着いていく。
「ローレライ様から認められた客人だ。何も分からない状態では不便だろう。だから質問があれば答えられる範囲で答えるぞ」
数分無言で歩いていると、妖精のひとりが、こちらに向かって語りかける。リノア達は少し驚きながら顔を合わせ、どうするかとアイコンタクトする。
「じゃあ1番気になること聞いていい!?」
突然興奮気味に言い出すルヴラ。妖精は何も答えず、ルヴラの方をチラ見する。恐らく黙認したのだろう。そう理解したルヴラは話し始める。
「妖精王達の詳細を知りたい!!」
「あ〜...確かに......」
ルヴラの提案を聞いたリノア達はその案に賛同し、妖精のリーダーから妖精王についての話を聞く。
「ティル・ナ・ノーグには4人の妖精王がいるのは知っているだろう?そこに寝ている天使がいる上に、その茶髪はおそらく我らより生きているだろうしな。そのくらいの情報はあるだろう」
妖精のリーダーはそう言うと、リノア達は2回頷く。その反応を見た後、話を続ける。
「まずは、貴様らに特別に許可を出してくれた、慈悲深い妖精王から話そう。先程も名前は出したと思うが、1人目はローレライというお方でな。ローレライ様は水の民の長で、ずっと湖の大きな岩場の上に座りながら歌い続けておられる方だ」
「歌...ですか......?」
ローレライという妖精の話を聞き、不思議がるルヴラ。その表情は本当に強いの?と言った表情をしているようだ。しかし、それを見たアヴァロンは舌を3回鳴らす。
「歌だからといって舐めては行かんぞお主ら。世の中には、吟遊詩人と言う冒険者のジョブもあるんじゃからな」
「ぎんゆーしじん?...って何?リノア」
ルヴラは、吟遊詩人という聞き馴染みのない単語を聞いた直後、ラヴィリニでギルドの人たちと仲が良かったリノアが詳しいだろうと思い、小声でリノアに質問をする。
「吟遊詩人って言うのは、魔法使いよりも魔力消費が低くて、歌で対象にバフをかけられるジョブだよ。でも、歌しか出来ないから、なる人はそこまで多くないけどね」
「へぇ〜......」
リノアの説明を聞き、吟遊詩人についてなんとなーく理解したルヴラと、その隣でなるほど...!と思ったのか、小さく数回頷くシフィ。
ルヴラは、何かを考えているような表情をしているが、特に何も話さない為、そのままにするリノア。
「まさにローレライ様は、その吟遊詩人に似ていてな。例えばティル・ナ・ノーグを覆っている魔法の障壁は、ローレライ様が歌っておられるから、常時発動しているということになっている」
「いやそれ、吟遊詩人と全然似ても似つかないんですけど」
妖精が言ったことに対して、ジト目でツッコミを入れるリノア。
「......確かに似てないな、なんなら超えているじゃろう。歌だけで認識を歪ませる魔法の障壁を作るなど、明らかに常人技では無い」
「それは当然だろう。ローレライ様は妖精王のお一人のだからな」
先程アヴァロンが話していた、この国で発現し続けている魔障壁の詳細を聞き、様々な反応をする一同。そんな反応にリーダーの妖精は自慢げに、さも当然の如くと言った口調で、片側の口角を上げて言う。
〝妖精王って凄いですね...!!〟
シフィはキラキラとした笑顔でクゥロにそう言うと、クゥロは
「...そうだね」
と、優しく微笑み、可愛がるようにシフィの頭を撫でる。
いやぁついに来たね!ティル・ナ・ノーグ!どう?楽しみ?
〝はい!楽しみです!妖精さんたちがいっぱいで!童話の世界みたいです!〟
そっかぁ!楽しみかぁ!いやぁそれにしても、本当に童話みたいな世界だな。
「そういえば、ティル・ナ・ノーグは魔法が栄えてるらしいですけど、本当なのですか?」
んふふふふ。それは街に着いてからの秘密だよ!
〝えー!教えてください!!...ダメですか?〟
ぐっ......。し、仕方ないな...じゃあこっそりね
〝...ふむふむ......。え!?そ、そうなのですか!?〟
ふふふ。どうかな?
〝ティル・ナ・ノーグって...そんな国だったんですね!〟
そうだよ!!
〝教えてくれてありがとうございます!〟
良いのよ良いのよ。他の誰でもないシフィたんのおねがいなんだから




