仄かに揺蕩う
エイプリルフールが過ぎてしまいました。なにか特別編のようなものを書こうかなぁと思ったのですが、間に合いませんでしたね...
「兄上、なぜこいつを止めないのです?あんなことしていいわけが無いでしょう!命がいくつあっても足りないくらい」
「それがお父様のご意向なのだから受け入れろ。それ以外に対策は無いと知っているだろう」
カラ達は、アプチの後を着いていこうとすると、フンカメーがそう申し立てようとするが、アプチは声のトーンを変えず、冷静に反論する。
「ですが兄上!」
「今は人間達に話があるんだ。フンカメー、君は黙っていてくれるかな」
それでも何か言おうとしたフンカメーに、アプチは冷徹な声色で言い伏せる。その声のトーンには、死そのものが混じり気に入っていることを錯覚させてしまう程の苛立ちを感じる。
「これがボロンティクの統括者...」
ヴクブカメーの時なんて比にならないほどに、力の次元が違うことを察知させられる...。
「さて、行こうか」
そう言うと、背中に羽織っている外套がゆっくりはためき、アプチを守るように、ただ永遠と燃え続ける。
「黒い炎だ...」
「ん?このマントが気になるのかい?」
ルヴラはその外套を見て思わず呟くと、アプチは聞き逃さず、優しくそう質問する。
「え、あ、はい...!」
「そうか」
一瞬戸惑ったが、元気よく答えたルヴラを微笑ましく思ったのか、少し笑みがこぼれる。
「このマントは僕の力、黒炎で出来たものでその名もカパ・クァーク。敵襲に備えていつでもこれを着ているんだ」
「かぱ...?」
聞いた事のない単語にカラ達が困惑していると、それを見たアンデスは代わりに説明する。
「カパ・クァークというのは、炎纏。つまり、炎を纏うと言う意味なんだ」
〝な、なるほどです!〟
「そういう意味なのか...」
アンデスが説明してくれたおかげで、カラ達は意味を理解し、少しだけスッキリする。
「じゃ、じゃあついでに質問なんですけど、良いですか!?」
「いいよ。なんでも答えてあげる」
リノアが少し緊張気味にしているのを見て、アプチは瞬時に察知し、優しい声色で頷く。
「その黒いフクロウさんは何なのですか?」
許しを貰ったため、リノアは、先程からアプチの肩に乗っている謎のフクロウについて質問する。
「あ、あ〜...。この黒いフクロウか。これは僕にも分からないんだ。黒炎の力が発現した時に何故か現れたんだ。僕にも何故、不吉なフクロウが現れたのか、知りたいくらいなんだ。」
「そうなのですか...」
「すまないね。答えられなくて」
リノアの質問に答えられず、アプチは少し申し訳なさを覚えつつ、リノアを宥める。
「つまり、肩のそれは自身の意思では消せぬものということか?」
「あぁその通りだ。何度か消そうと思ったんだがどうやっても消えなくてね...。ここエルドラドにおいて不吉な象徴であるフクロウが、僕の力で顕現するなんて、不快以外の何物でもないが、消せないのなら放置するしかないさ」
そう言いながら、アプチはぎこちない笑顔を見せる。すると、アプチの言葉に疑問に思ったのか、クゥロは何か考え始める。
「ん?どうしたの?クゥロ」
傍にいたルヴラは、考え事をするクゥロを見て不思議に思い、質問をすると、クゥロは少し間を置いた後答える。
「自身の力なのにまるで制御できていないように思えて...。それが少し疑問に思っただけだよ」
「...ふむ。確かにそうじゃな」
相変わらずクゥロの勘は鋭く、クゥロの発言を聞き、アプチは反応し、アンデスも少しだけ気まずそうな表情になる。そんな2人の反応を見て、更に不思議に思うカラ達。
「アプチ、話してもいいのか?」
「うん、大丈夫。そこまで深刻なことでは無いからね」
そんなアンデスの心配そうな顔を見て、思わず優しく笑みを浮かべると、アプチはアンデスの頭を撫でる。
「実はさっきのクゥロ君の発言、本当のことなんだ。本来僕は...。いや、僕とアンデスは半神とは名ばかりの、言ってしまえば普通の人間となんら変わり無かったんだ」
「人間...それはつまり、神としての能力や力が備わってなかったってこと?」
リノア達がアプチの話に衝撃を受けている中、クゥロは発言の中で気になったことを質問する。
「いや、多分元々はあったんだと思う。けれど、人間として生きていたから、力なんて無いと思って生きていたんだ」
アプチの話を真剣に聞いているせいか、周囲に階段を下りる音が反響する。
「でもある日、俺達は冥界への道を見つけてしまったんだ。そこを眺めていたら体勢を崩してしまって、俺が落ちないようアプチが庇って、そのままアプチが冥界へ落ちてしまったんだ」
「という事は不慮の事故...という事?」
アンデスはかなり自身のことを責めているような表情をしている。おそらく、アンデスは自身のせいでアプチが冥界へ落ち、黒炎と言う能力に目覚めさせたことを許せないと思っているのだろう。だがこの事件はアンデスが悪いわけでも無ければ、アプチも悪くない。誰も悪くない事件だ。
「アンデス、そんなに自身を責めないで欲しい。僕は君のせいだとは微塵も思っちゃいないし、話を聞いたこの子達もそう思っているはずだ。だから」
「君たちはそうだろうけど、俺は違うんだ...。俺は...俺だけは絶対に俺を許せない。あれは俺のせいなんだ...」
「アンデス...」
アンデスは自責の念に駆られ、体が震えている。リノア達は慰めることも出来ず、ただ見ること以外できない。そんな中、カラはアンデスの肩に手を置く。
「...カラ様?」
「カラにも分かるんだ、自身のせいだと嘆くそんな時が。だってカラにも同じ時があったから」
いつにもまして優しいトーンでそんな話をしていると、アンデスは涙ながらに顔を上げる。
「カラは親友を助けられず死んでしまった事があるんだ」
「そんな時期が...」
カラの衝撃の過去にリノア達は驚きを隠せ無い様子。しかしカラは、そんな事を気に停めず、話を進める。
「それの影響で、5年の間家から全く出れなくなった。それどころか部屋ですら出ることも出来なかった」
「なるほどな...。確かに親しい友が亡くなれば、鬱にもなろう...」
アヴァロンはカラに同情する。長命種だからか、その時の感情がどのようなものなのか理解している優しい声で。
「けれどある日、その親友のとある言葉を思い出したんだ」
「──────友達が亡くなったと知った時、あの時あーしてれば、こうしてれば、そう思う人っているだろ?あれって理解は出来るけど、同じ気持ちになれないんだよな」
下校中、灰色の髪を風でなびかせながら、空を見上げる青年は、突拍子もなく、そんなことを言う。
「...え?なんで?だって助けられなかったんだから自分を責めるだろ。事故なら無理かもだけど、自殺は流石にさ」
そんな青年の言葉を理解できないと言った表情で、隣の紫髪の青年は言葉をぶつける。
「うーん。確かに友達からしたら嬉しいかもしれないけど、嫌でもあるだろ。だって自分のせいで他人の人生の歩みを止めてるんだぞ?」
「...いやでも」
「それにさ」
言い返そうとすると、それに被さるように灰色の髪の青年は、空を見つめながら続ける。そんな青年に少し不機嫌になる花楽。
「その人のことを思うのなら、自分のせいでーってよりも、友達なんだからその人の分まで頑張ろ!って思わね?」
こちらを向き、満面の笑みから放たれるその言葉に、花楽は強く心を打たれる。何故そのように考えてこなかったのだろうか...。そんな事が脳内で埋め尽くされる。
「俺らって、それまで人生頑張った人の友達じゃんか。亡くなったんならお疲れ様って言ってさ、その人の分まで出来る限り頑張る!ってのがその人に対しての報いってやつじゃねぇのかなーって俺は思うな」
「...でも、人間誰しもお前みたいに強いわけじゃねぇだろ」
「あ、確かに!えっと、これは...そう!あくまでも俺は!だから!こ、個人の感想だから!!」
花楽にそう指摘され、焦る灰髪の青年。必死にそう言い訳をする。そんな今の様子を見て、花楽は少し呆れながらも、どこか尊敬のような眼差しをして青年を見つめる。
「なるほどね。その人の分まで頑張る。か...」
「いい考えですね...」
カラの話を真剣に聞いていたリノア達は、カラの方を見ながら、様々な反応を見せる。
「カラはそれを思い出して、心に刻んだ。そうしたら一気に気分が軽くなってね...。それで5年で鬱を払拭出来たんだ」
「アンデス。君は何のために生きているの?」
そう言うと、カラは優しい眼差しをアンデスに向ける。アンデスはハッとし、考える。自分は何のために生きているのかと。
「俺は...」
すると、突然激しい揺れに襲われるカラ達。一同動揺していると、とてつもないオーラが発生したのを感知する。
「このオーラ...下だ!」
「まさか、僕の階層にいるんじゃないだろうな...っ」
カラ達は急いでアプチの間へと向かう。すると、段々とオーラが大きくなっているのが伝わる。近づいている事が感覚的にわかるのだ。そうして、カラ達はアプチの間の前にまで到着する。
「...ここが」
「オーラが...」
闇で濁ったオーラがカラ達を襲う。その禍々しいオーラに当てられルヴラとシフィは失神してしまう。
「ルヴラ!シフィ!」
「...動くな、こいつ七大悪魔じゃぞ」
「っ!!」
アヴァロンは、謎の存在が放つオーラの種類が魔であることを察知する。しかし、あまりにも膨大すぎるオーラに苦笑いが出る。
「...冥王は」
重くのしかかる殺意の籠った声。カラ達はその場で察する。勝てる相手ではないと。歯向かえば死。それをただ喋っただけで理解させられる。
「冥王は僕」
刹那。悪魔はアプチを殴っていた。カラ達は攻撃の予備動作すら見えなかった。しかし、アプチは悪魔を睨みながらも避けていた。
「なんだいきなり...」
アプチは、悪魔がこちらに対し明確な殺意があると理解し、オーラが放つ。そして、アプチは自身に黒炎を纏い始める。
「避けた...」
悪魔は攻撃が避けられたことに驚いている様子だが、表情や感情が変化しているようには見えない。
「もしかしてあいつが、君たちの言っていた七大悪魔と呼ばれる存在なのかい?」
「...はい。ですが、あれ程のオーラを放った七大悪魔はあったことがないです...。あれは七大悪魔なんて言う領域では無い。まるで...」
「ロキが現れたみたいな...」
悪魔は表情一つ変えずにただ無心でアプチを殴り続ける。しかし、アプチもその攻撃を見切り、避け続ける。
「君はもしかして無能力者なのかなッ!!」
隙をつき、黒炎を悪魔に浴びさせる。黒炎は対象を塵も残さず燃やし尽くす。が、何故か悪魔には黒炎が効いていない。そんな出来事にアプチは狼狽する。
「燃えていない...?」
「無能力者に、見えるか。」
悪魔は自身の手を見つめながらそう質問する。アプチは先程の出来事を目にした為
「...無能力者じゃないね」
と、少し焦りを見せる。判断を見誤ったのだ。だがしかし、無能力者では無いのに攻撃する際に能力を使わない。と言う戦い方に疑問に思ったアプチは、その理由を考え始める。
無能力者じゃない、だけど攻撃時は能力を使わない...。つまり...能力が攻撃系では無い...?ならば一体なんの能力なのか...
「油断、するなよ」
アプチは必死に考えていたため、油断していた。そのせいで悪魔の攻撃が食らってしまう。その瞬間、血反吐を大量に吐く。思わず失神してしまうほどのとてつもない威力、アプチは尋常じゃない速さで壁に打ち付けられてしまう。
「アプチ!!」
「嘘でしょ...」
冥王が簡単に吹き飛ばされるほどの強さ。そんなものに今のカラ達で勝てるのかと絶望する。そんな絶望している最中、悪魔はこちらににじり寄ってくる。
「ロキの命令だ。転生者。貴様を殺す」
カラに攻撃が命中しそうになった次の瞬間、アプチが悪魔の右手を掴んでいた。
「残念だが、その子たちは先に僕と話があるんだ...。話はそれからだ。悪魔君...」
血を吐きながらアプチはなんとか余裕そうな顔をして、悪魔に告げる。目の前の悪魔はそう言われても表情一つ変えず、カラを殺そうと力を出す。
「カパ・クァーク!」
アプチの呼ぶ声に反応したのか、身体に纏っている黒炎が燃え盛り始める。すると、なにかに勘づいたのか、悪魔は突然離れる。
「はは...。少しは退いてくれたようだ...」
「アプチ様...」
「大丈夫だ...。僕に任せてくれ...」
リノア達はアプチを心配そうに見つめる。それもそうだ、血を大量に吐き出し、今にも倒れそうなアプチをただ見ているだけなのだから。戦えるのであれば戦いたい。しかし、戦ったら確実に足でまといになる...。そんな自身の弱さに嘆きながらただ見つめる。
「アプチ。カラも戦うよ」
「...なっ!?」
「カラ!?」
そんなアプチを見て、耐えきれなくなったのか、カラはアプチの隣に立ち、真剣な表情でそう言う。
「というかカラよ、マスクが外れておるぞ...」
「え?あ、ほんとだ...」
「だとしたら何故瘴気を吸っても何も無いのですか...?」
アヴァロンの指摘に気づき、動揺するカラ。しかし、そんなことより、何故何ともないのかが疑問に思うリノア達。
「まぁ細かいことは良い!とりあえず倒そう!アプチ!」
「...あぁ。カラ君!」
そうして2人は背中合わせで悪魔の方を向き、戦闘態勢へと入る。
さて、次のゲストは...っとこの人!七大悪魔さんの███さんです!!
「ここどこ」
ここは文字の空間だよ
「何も無い」
そりゃ、ただの空間だからね
「何するの」
...えーと。文字さんと話さないかなぁなんて...
「話すの、めんどい」
そ、そうですか...




